まさかそこにまで?
今日、たまに見る有害事象関係の日本の SNS を読んでいましたら、その中のひとつのリプ(っていうんでしたっけ。返答のことです)に、
「スパイクタンパク質はテロメアを壊すらしい」
というものがあり、それを読み、「さすがにそんなことは」と思いながら、その後、英語を適当に繋げて、いくつか論文を検索していましたら、以下のふたつの論文が出てきました。
どちらもテーマは異なるものですが、これらは正確にいえば、「 COVID-19 のスパイクタンパク質が、テロメアの長さを減少させる」といっているのではなく、
「コロナの重症度が、その人のテロメアの長さと関係している」
ことに言及しているものでした。この「テロメア」というものについては、後で少しご説明させていただきます。
Sars-Cov2 Spike and Telomerase RNA’s Compared to Arrive at an Explanation for Increased Ageing in Alveolar Cells in Severe COVID-19
Sars-Cov2スパイクとテロメラーゼRNAの比較は、重度のCOVID-19における肺胞細胞の老化の増加の説明に達した
Shorter telomere lengths in patients with severe COVID-19 disease
重度の COVID-19 患者におけるテロメアの長さの短縮
上がオランダの研究者による 2021年4月の論文で、下は、スペインの研究者による 2020年12月の論文です。
オランダの研究の概要のはじめには、以下のようにあります。
COVID-19の最近の研究では、COVID-19の病気の重症度と末梢血リンパ球テロメアの長さの減少との間に統計的関係が見られた。 (longdom.org)
とあり、ここで参照されたのは、スペインの研究で、コロナがテロメアを短くしていると述べているわけではないですが、しかし、内容の把握云々以前に、コロナの話に「テロメア」という言葉が出てくるとは思っていませんでした。
なぜ、「テロメア」という言葉に反応したのかを少し書かせていただきます。
テロメアとは
なぜ、私がこのような「テロメア」などというような言葉を知っていたかといますと、過去記事に出てきたことがあるのです。
かなり以前の記事ですが、以下はそれぞれ 2016年と 2017年の過去記事です。
ヒトは幼少期のストレスで《染色体の生命の回数券》テロメアが短くなることで老化が加速し、寿命が短くなることが判明
投稿日:2016年10月5日
ストレスは「DNAレベル」でヒトの肉体を根本的に改変する(だからどんな健康法もどんな健康医療もストレスには勝てない)
投稿日:2017年10月25日
上のほうの 2016年の記事を書いた時に、初めて「テロメア」という言葉を知ったのですけれど、上のタイトルに、
> テロメアが短くなることで老化が加速し、寿命が短くなる
とありますが、そういうものらしいのです。
テロメアは辞書的な説明ですと、
> テロメア は真核生物の染色体の末端部にある構造。染色体末端を保護する役目をもつ。 (Wikipedia)
というようになりますが、もう少しわかりやすい説明として、以下は、 2017年の日経の健康記事があります。
「命の回数券」テロメアを守れ カギ握るは運動や睡眠
体をつくる細胞の染色体の端にあり「命の回数券」ともいわれるテロメア。テロメアの状態が、がんや動脈硬化といった様々な病気に関係しており、生活習慣を見直すことでテロメアの状態を良好に保てることも分かってきた。健康で長生きするためテロメアとどうつきあえばいいのか。
生物の遺伝情報が収納されている染色体 DNA の両端はテロメアと呼ばれ、染色体を保護する役割を担っている。
細胞が分裂するたびにテロメア DNA は少しずつ短くなる。これに伴って細胞分裂の回数が減り、やがて分裂しなくなる。これが細胞の老化だ。
…細胞分裂の回数には限りがあるため、テロメアは「命の回数券」とも呼ばれる。テロメアの短縮と、がんや動脈硬化、心筋梗塞、認知症といった病気との関係が分かってきた。
細胞に酸化ストレスや有害物質が作用するとテロメアが短くなり、こうした病気にかかりやすくなるという。 (style.nikkei.com 2017/06/08)
つまり、私たちの DNA の両端に「テロメア」というものがあり、それは、
> 細胞が分裂するたびに少しずつ短くなる
ようなのです。
このテロメアが短くなっていくことが「すなわち老化」であり、最終的にはこのテロメアが「寿命と関係している」ことがわかってきています。
2009年のノーベル生理医学賞は、このテロメアの研究に対して与えられました。以下の「2009 年ノーベル賞を読み解く 生理学医学賞」に、その研究について、日本の理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターの中山 潤一さんが書かれた文書があります。
テロメアというのは、おおむね以下のような部分です。
この円で囲っている中の配列が、細胞分裂のたびに短くなっていき、最終的には「それ以上は細胞は分裂しなくなる」ということです。
再生されなくなるわけです。
これが老化や病気といったものと関係するとされています。
しかし、2009年のノーベル生理医学賞の研究で明らかにされたのは、さらに興味深いことでした。
それについての説明を先ほどの中山 潤一さんの文書から抜粋しますと、以下のようになります。
「細胞のがん化・老化にかかわるテロメアとは?」より
私たちヒトの細胞とテロメア・テロメラーゼの関係はさらに奥が深い。
ヒトの繊維芽細胞を取り出し、適切な条件で培養するとしばらくの間増殖を続けるが、約 50回分裂した後に計ったように増殖を止めてしまう。
最も興味深いのはこの分裂可能回数が、ドナーの年齢と逆相関するという結果である。1960 年代に Hayflick と Moorhead によって見出されたこの現象は、「 Hayflick - Moorhead の限界」 と呼ばれ、体細胞にはあらかじめ分裂可能回数が決められていることを示唆する結果と注目されていた。 (nsc.nagoya-cu.ac.jp)
この中にあります、
> ドナーの年齢と逆相関するという結果
というところが問題なのです。
これは、かなり大ざっぱにいいますと、
「テロメアの長さが、その人の寿命と関係する」
という可能性を意味しています。
もっと簡単にいえば、「テロメアが短いほど、寿命が短くなる」という示唆というか、観察上ではそういうことになっているようです。
テロメアの短縮は不可逆的なものですので、短くなったテロメアが後から直ることは基本的にはないと思われます。
先ほどの過去記事「ヒトは幼少期のストレスで《染色体の生命の回数券》テロメアが短くなることで老化が加速し…」では、カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究をご紹介してまして、その研究は、
「小児期にストレスが多い状況で過ごした場合、テロメアが損傷されやすい」
ことが判明したというものです。
つまり、非常に端的にいえば、幼児・子ども時代にストレスが多い状況で過ごした場合、その子どもたちは、慢性疾患などを含む疾患になりやすい要素を持つということで、さらには、その子どもたちの寿命の長さにも関係する可能性があると。
そういう研究でした。
これでテロメアというものを初めて知り、「 DNA にはそういう人の寿命の長さに影響を与えるものが存在するのだなあ」と思っていましたが、その後は特にこのテロメアというものとふれるようなこともなく、なかば忘れていましたが、そこで今回の上の論文たちを見たのでした。
しかし、オランダの論文には「とても気になる部分」があるのです。
スパイクタンパク質が DNA のテロメアに干渉する?
気になったのは以下の部分でした。オランダの研究論文の最後の部分です。
難解な部分が多いですが、とりあえずそのまま訳します。カッコ内は私による注釈です。
オランダの研究による論文より
結論
S2(スパイクタンパク質)の RNA がテロメラーゼ(テロメアの配列を伸長させる酵素)合成に対して予測される阻害効果を持ち、癌細胞に送達できる場合、このタイプの細胞の不死性は破壊される。
おそらく、不死化した AEC2 (受容体のACE2ではなく、肺の上皮細胞の一種)の カベオリン1 (タンパク質の一種)分泌の増加は、S2 RNA を送達する可能性のある寄生ベクターの兆候である可能性がある。 (longdom.org)
短い文章ながら、全体として難解でよくわかりませんが、要するに気になるのは、この以下の部分だけです。
> スパイクタンパク質の RNA がテロメラーゼ合成に対して予測される阻害効果を持ち
ここです。
「テロメラーゼ合成に対しての阻害効果」
という表現は、
「スパイクタンパク質は、テロメアの伸張を止める」
という響きにうつらないでしょうか。
このオランダの論文はとにかく難解でして、論文の中には、以下のような、私が最も苦手とするタイプの数式も出てきたりするもので、全部理解しての話ではなく、先ほどの「結論」の部分を読んで、そう思っただけなのですが…。
論文より
longdom.org
私が思った不安は以下の一点です。
「まさか、スパイクタンパク質が、テロメアを攻撃する?」
ということです。
テロメアとは、人の疾患、あるいは寿命の長さと関係があるものです。
それに干渉している?
……どう思われますでしょうか。
このオランダの論文を読破される能力のある方の検討を期待しています。
しかし、「仮に」ですけど、仮にスパイクタンパク質が、テロメアの伸張の合成を阻害しているのだとすれば、その影響は、
「別次元のもの」
となりはしないだろうかと思ったのです。
スパイクタンパク質は、そのもののよる病態などはこれまでも書いていました。
以下のような記事を含め、他にも数多くご紹介していました。
コロナのスパイクタンパク質が「人間に長期的な遺伝子発現の変化をもたらす」可能性が米国の研究で突き止められる。…とすると体内にスパイクタンパク質を生成するワクチンの影響は…
投稿日:2021年4月28日
スパイクタンパク質とポリエチレングリコールが「生殖機能を根底から破壊する」メカニズムのすべて。それは女性に対しても男性に対しても
投稿日:2021年6月21日
私自身、スパイクタンパク質自体が、有害を含むさまざまな事象の根本的な要因だと確信しています。
しかし、それはあくまでも、スパイクタンパク質による血管などの「内皮細胞への損傷」のダメージによるもののことで、つまり直接的な影響です。
自然感染でもワクチンでも、症状が強く出る場合に見られる血管系や脳や心臓関係、神経関係などの事象報告が多いのは、こういう、スパイクタンパク質による直接的な影響という、ひとつの共通した理由によるものだと考えています。
しかし、先ほどの論文で思ったことは少しレベルが違います。
生命の回数券と呼ばれるテロメアに……?。
自然感染でも、スパイクタンパク質は体内で作られますけれど、ファイザー社などのワクチンは、以前の以下の記事などで、マサチューセッツ工科大学のステファニー・セネフ博士が、配列の改変を調べた上で、ワクチン mRNA は、
> 自然の新型コロナウイルスの1,000倍のスパイクタンパク質産生能力を持つ
と述べています。
遺伝子コロナワクチンのさまざまな害についての「完全に科学的な側面から見たメカニズム」…
投稿日:2021年6月24日
仮にですが、スパイクタンパク質の量とテロメアの損傷の度合いが比例するようなことがあるのなら「これからの世の中は一体…」というように考えざるを得ないのですが、何ともわからないです。
ところで、上にリンクした記事「遺伝子コロナワクチンのさまざまな害についての…」に、実はこの「テロメア」という言葉が一度出るのです。
ジュディ・ミコビッツ博士という方が、「子どもにとって、mRNA ワクチンと、ウイルスベクターワクチンのどちらが影響があるか」ということについて語っている中に以下のように出てきます。
> 逆転写酵素はテロメアに発現していて「オン」になっています。子どもは成長しているのです。これが、子どもに mRNA ワクチンが悪いというすべての考え方の根幹です。
とミコビッツ博士は述べていたのですが、実は、意味がよくわからないまま訳していました。
今でもほとんど理解できていないとはいえ、調べてみますと、
「テロメアを伸長する酵素には《逆転写酵素》がある」
ことを知りました。
テロメアの長さ、あるいは伸張と関係する配列を決める酵素は「テロメラーゼ」といいます。
テロメラーゼは、真核生物の染色体末端(テロメア)の特異的反復配列を伸長させる酵素。
…テロメラーゼはテロメア配列の鋳型となるRNAと逆転写酵素、その他の制御サブユニットからなる複合体である。…テロメラーゼ活性自体はRNAと逆転写酵素の二つの構成因子で十分であることがわかっている。 (テロメラーゼ)
つまり、テロメアの配列や伸張と関係するテロメラーゼは、
・RNA
・逆転写酵素
が主になるということになります。
この「逆転写酵素」などというのは、以前から懸念されている言葉だったりもするのですが、その概念自体が今でも私には難しいです。
いずれにしても、仮に、スパイクタンパク質が、テロメアに影響を与えているということがあるとするならば、たとえば、
> テロメアは特徴的な繰り返し配列をもつDNAと、様々なタンパク質からなる構造である。 (テロメア)
とありますように、「テロメア」とは、「 DNA の領域」です。
スパイクタンパク質は、そこに干渉している可能性があるということなんでしょうか。
逆転写酵素… DNA 損傷の修復… など、いろいろな概念が浮かんできますけれど、それをひとつにまとめることは今はできなそうです。
今回のことは今日少し前に知ったことですし。
もう少し勉強しようかと思います。
ただ、最初のほうにリンクしましたスペインの研究からは、「高齢者が重症化しやすい理由」は、テロメアの長さと関係しているといえそうで、また、それは同時に、子どもや若い人たちに重症例が少ないこととも関係しているのかもしれません。
基本的には、若い人ほどテロメアの配列は長いです。
それにしても……。
ふだんの生活においても、スパイクタンパク質の駆除対策はもう少しきちんとした方がいいのだろうか…。テロメアに干渉されるのはちょっと…。
などと、いろいろと思わせてくれる論文と知見でした。
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