2019年3月1日の米メディアの記事より
・Amid the dimmest Sun since 1978 – a month without sunspots
歴史的に弱い活動の太陽であると共に、歴史的に「暗い」太陽
太陽活動は、ほぼ極小期に入りましたが、3月1日の時点で、ついに、
「1ヶ月間のあいだ、1つの黒点もでなかった」
という状態となっていたことが、スペースウェザーなどで報じられています。
下は NASA の太陽観測衛星ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)の撮影した 2月28日の太陽で、ご覧のように黒点はまったくないツルツルの状態が1ヶ月間続いています。
2019年2月28日の太陽
もちろん、太陽がこのように周期的に活動を弱めていくこと自体は普通のことなのですけれど、
「太陽活動の弱まり方が極端」
なのです。
「放射照度」という言葉がありまして、これは、物体へ時間あたりに照射される面積あたりの放射エネルギー量を示すものですが、太陽の放射照度の推移は、観測が始まった 1978年から以下のようになっています。
1978年から2018年までの太陽からの放射照度の推移
このグラフは放射照度つまり「太陽からの光の強さ」を示しているもので、必ずしも太陽活動の大小と比例するものではないかもしれないですが、少なくとも、この期間においては、
「現在が最も太陽が暗い」
ことは、わりと明らかになっているものだと思います。
1978年からの 41年間では、現在より前に太陽が「暗かった」のは、2004年のようですが、それよりさらに低い数値となっています。
グラフでは、2018年の時点に、ガガガッという感じで下がっているのですけれど、太陽活動が本格的に極小期に入ったのは、このグラフの後ですから、現在はさらに、「太陽からの光」は暗くなっているものと思われます。
文字通り、私たちは今、
過去 41年間で最も暗い地球に生きている
ということになりそうです。
太陽の明るさと共に、太陽活動そのものの比較(黒点の出現数の比較)でも、この 11年間の太陽活動周期のサイクル24は、「並外れて弱い太陽活動だった」と言えそうです。
下のグラフは、1975年から 2019年までの太陽黒点数の推移ですが、直近の太陽活動周期のサイクル24は、きわめて弱い太陽活動だったことがわかります。
1978年から2018年までの太陽黒点数の推移
なお、このサイクル24の活動と、今後については、以下の記事などで、ここ数年書かせていただいていたことですが、多くの科学者たちの見解としては、
・サイクル24は過去約 200年間で最も弱い太陽活動だった
・太陽活動が弱い傾向は次のサイクルでも続くか、あるいはさらに弱くなる可能性が高い
というようなことになっています。
なお、このサイクル24は、太陽黒点観測が始まった 1755年からの約 260年の間で「 4番目」に黒点が少ない太陽活動周期でした。
1755年の「サイクル1」から「サイクル24」までの黒点数の偏差
仮に次のサイクル25が、「さらに太陽活動が弱くなった場合」には、19世紀のはじめに、40年間ほど気温が低い状態が続いた「ダルトン極小期」という時代と同じような太陽活動になっていく可能性もあります。
その場合は、今の地球にもすでに見られていますけれど、いわゆるミニ氷河期という状態とかなり近いものとなっていくのではないでしょうかね。
このまま「太陽が眠りにつく」ということになるかどうかは今はわからないですけれど、それと近い状態となっていく可能性は高いような感じです。
しかし。
では、太陽活動がほとんどない太陽からの磁場や磁気嵐の地球への影響が消えていくかというと、そういうことでもないのです。
それは以下の記事以来、何度か記させていただいています「コロナホール」と関係があります。
「半分、黒い。」 : 磁気を噴出するコロナホールが太陽の大部分を占める異常な状態が「定着」し、人類が太陽からどんな影響を受けるのかがもはや分からない
コロナホールは、磁場を噴出する黒く見える領域ですが、かつては、こんなに頻繁に、そしてこんなに広い面積で出現することはなかったコロナホールが、「もうずっと出現しっぱなしの状態」が今も続いているのです。
冒頭のほうで、
> ご覧のように黒点はまったくないツルツルの状態で、これが1ヶ月の間続いています。
と書かせていただきましたけれど、黒点観測の衛星写真では、そのように映るのですけれど、コロナホールの観点から見ますと、
「今の太陽は、病気のようなボロボロの状態」
であるという現実が浮かび上がります。
下は、3月1日の NASA の太陽観測衛星による太陽の光景です。
黒い領域が、すべてコロナホールとなります。
2019年3月1日の太陽。黒い領域がコロナホール
このことを最初に記事にした 2018年12月の以下の太陽の状態より黒い領域が多いような気もします。
2018年12月6日の太陽
何だかこう、コロナホールの状態が次第に激しくなっているようにも感じますが、そのたびに地球も磁気嵐の影響を受けています。
最近では毎日のように弱い磁気嵐が地球で起きている状況で、太陽活動はまったく起きていないのに、磁気嵐だけはどんどん地球に送ってくるという今の太陽です。
いずれにしましても、太陽活動が完全に極小期に入ったことは間違いないようで、今後、黒点を観測できる日々は稀なこととなっていくでしょう。
普通のサイクルであれば、数年後にはまた再び黒点が活発に出現し始めることになるのですけれど、異様に弱い太陽活動周期になるという予測が多い中、太陽が次の数年の間にどのようになるのかは気になります。
予想以上に早くミニ氷河期に突入していくのか、あるいは、もう少しの間、太陽活動は何とか復活していくのか。どちらでしょうね。