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4月19日にメルマガ私たち現生人類は「鉄の種族」であることから思う生き方を発行させていただきました。

2022年からの世界 ディストピアへようこそ 人類の未来 資本主義の終焉

欧州はすでに「新たな暗黒時代」に入った

投稿日:2022年9月14日 更新日:


サンクトペテルブルクの「ロシアの英雄に栄光あれ」というスローガンを掲げた兵士を描いた看板。 Moscow Times




 

宣戦布告に来ましたよ…

先日の以下の記事で、知識人やメディアの間で「ロシアが正式な宣戦布告に移るのではないか」というような一種の噂が流れていることにふれました。

 

[記事] ロシアが、特別軍事作戦から「正式な宣戦布告」に移るときに懸念される「限定的な」核紛争
 In Deep 2022年9月12日

 

これについて、ロシア政府は昨日、「ロシアは大規模な軍事動員について議論していない」と連邦政府のドミトリー・ペスコフ報道官が正式に述べたことが、ロシアのメディアで報じられていました。

しかし、政府の発表とは逆に、ロシア政府内部からは「大規模で完全な動員をすべきだ」という声が大きくなっていることをモスクワタイムズなどは伝えています。

ロシア下院の安全保障委員会のメンバーである議員は、以下のように述べたと伝えられていました。

 

> 「完全な動員を行い、経済を含む戦争モードへの切り替えがなければ、望ましい結果を達成することはできないだろう」 ミハイル・シェレメット議員

 

まあ、前回の記事「終末を自覚し始める中で、ふとファティマのシスター・ルシアを思い出す」で思い出しましたように、地球の平和の状態は、ロシアに依存している可能性もなくもないようで、ロシア議会での動きはどうなりますかね。

あるいは、ロシアの元大統領であるメドジェーベフ氏が、昨日、自身のテレグラムに、聖書「ヨハネの黙示録 9章18節」を引用した「怒りの投稿」をしていたりもしました。

メドジェーベフ氏は、以下のように述べています。

 

(9月13日にメドベージェフ元ロシア大統領が投稿した文章より抜粋)

> ウクライナのヴァンパイアは、本質的に第三次世界大戦へのプロローグである「安全保証」のプロジェクトを生み出してしまった。

> 西側諸国が最も危険な種類の兵器でウクライナ政権を無制限に援助し続ければ、ロシアの軍事作戦は次のレベルに移行し、紛争当事者による行動の目に見える境界と潜在的な予測可能性が消去される。

> そして、戦争が常にそうであるように、紛争はそれ自体の人生を歩むだろう。

> そうすれば、西側諸国は……彼らの周りのすべてが燃える。その国の人々はその国の悲しみを完全に収穫することになる。大地は燃え、コンクリートは溶けるだろう。黙示録 9章18節の聖書にあるように。 medvedev_telegram

 

そのヨハネの黙示録 9章18節は以下のような節です。

 

ヨハネの黙示録/ 09章 18節

この三つの災害、すなわち、彼らの口から出て来る火と煙と硫黄とによって、人間の三分の一は殺されてしまった。

 

このメドベージェフ氏の投稿についての RT の記事は以下で翻訳しています。

(報道) ロシアのメドジェーベフ元大統領が、聖書「ヨハネの黙示録9章18節」を引用して、西側に戦争の拡大を警告 (2022/09/14)

 

このような「人間の三分の一は殺されてしまった」という聖書の一節を引用するという、怒りプンプン状態の文章となっていますが、つまり、こういう議員が多いのだとも推察できます。

メドジェーベフ氏の投稿には「核」という文字は見当たらないのですが、この RT の報道は、以下のように書いていました。

> 西側の「中途半端な人々」が、ロシアに対する混成戦争で自国を核アルマゲドンの道へと導いているとメドジェーベフ氏は書いた。 RT

 

どうなりますかねえ。私自身は何となく諦めムードですが、先ほどの、

「宣戦布告」

という文字を前々回の記事に書いたとき、私がこの「宣戦布告」という言葉で必ず思い出すことがありまして、それは、埴谷雄高さんの小説『死霊 (しれい)』の一節なんです。

昨日のルシアの話もそうですが、またも本題から話がズレることをお詫びしますが、どうしてもそのセクションをご紹介したいですので、少し抜粋します。

昭和22年に発表されたものです。


埴谷雄高 『死霊』 第二章 「死の理論」 (1947年)より

---- 戦線布告にきましたよ。

数瞬の沈黙が過ぎ去った。冷静に身動きもせぬ津田康造は、眼もそらさずに訊き返した。

----- どうして私にです。
----- 貴方が極点だからです。
----- どういう極点?
----- アジア的思考様式の極点だからです。

(略) …貴方が眉も動かさずに、自然そのままの形で此処に坐っているとき、あらゆる懐疑、あらゆる叛逆が全地球上に灼熱した溶岩のように渦巻き、沸きたっているんです。

それを堰止めるべき如何なる権威、如何なる勧告ももはやありやしない。如何なる無視ももはやありやしないんです。人間はその危険な階段まで成長してしまった。人間精神を、生産的か否かで検証する最後の段階に到達したんです。人間の歴史なんてものを何処かの遊星にやってしまったらよいかどうかを判定すべき最終的な段階へまで成長してしまったんです。

おお、解りますか、僕の宣戦布告の意味が……。

もし冷厳な、曇りもない眼で貴方自身の眼前を直視すれば、貴方ははっきりとそれを見るはずだ。あっは、僕の眼を覗いて下さい。そこにあるのは、一体なんだろう? 生か死か ----- そのどちらかだ!

…そして ----- 何より重大なことは、生と死へかかった重みは、いま、死へかかっているということだ!


 

ここまでです。

この「戦線布告にきましたよ」というフレーズが、軽い響きで好きなんですが、その戦線布告の理由がさっぱりわからない(苦笑)という意味で大好きな部分です。

 

というわけで、いい感じで話が逸れてしまいましたが、今の危機はあくまで物質的な危機なわけで、実際には、この2年半進行した「人類の精神的崩壊」のほうが、崩壊度としては大きいとは思いますが、物理的な崩壊もそれは大変なことではあります。

最近、ヨーロッパのことを書くことが多いですが、「工業化の崩壊」が想像している以上に早く進行しているようで、最近、ヨーロッパの数十の金属系大企業が、連盟で、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長などに緊急の書簡を送ったことが報じられています。

この書簡を読みますと、ヨーロッパの産業は、「今後崩壊する」のではなく、「すでに崩壊している」ことがわかります。

それをご紹介すると共に、米作家のマイケル・スナイダー氏が、最近のヨーロッパの状況についてまとめていましたので、その記事もご紹介します。

欧州原子核研究機構 (CERN)の大型ハドロン衝突型加速器までも、電気不足で「閉鎖」される可能性を、英国デイリーメールが伝えていますが、何から何まで「文明的なもの」が消えていこうとしているようです。

ここからヨーロッパの最近について少し書かせていただきます。




 

生産停止の波

欧州の金属系企業の組織 Eurometaux が、欧州委員長に宛てた書簡は、以下にあります。

欧州の非鉄金属生産者たちは、電気とガスの価格の急上昇による永久的な脱工業化を防ぐために、EU に緊急行動を起こすよう求めます
urope’s non-ferrous metals producers call for emergency EU action to prevent permanent deindustrialisation from spiralling

ここには以下のように書かれています。それぞれ抜粋です。

欧州当局への非鉄金属生産業界による書簡より

…私たちのセクターは、過去12か月で前例のない削減を余儀なくされています。私たちは、これからの冬が私たちの事業の多くに決定的な打撃を与える可能性があることを深く懸念しており、EU と加盟国の指導者の皆様に、戦略的な電力集約型産業を維持し、恒久的な雇用喪失を防ぐために緊急行動を取るよう呼びかけます。

…EU のアルミニウムと亜鉛の生産能力の 50%が、すでに生産停止に追い込まれています。電力危機のほか、シリコンと合金鉄の生産が大幅に削減され、銅とニッケルのセクター全体にさらなる影響が及んだためです。

先月、いくつかの企業が無期限の閉鎖を発表しなければならず、さらに多くの企業が、多くの事業にとって生死にかかわる冬の前に危機に瀕しています。

工場が一度閉鎖されると、再開には大きな不確実性とコストが伴うため、恒久的な状況になることが非常に多いことがわかっています。

……EU のすべての戦略的金属事業とプロジェクトに対する長期的な投資環境は、壊滅的なリスクを冒しており、企業が 2022 年の電力価格のヘッジによって保護されなくなると、来年はさらに多くの閉鎖が続くでしょう。

eurometaux.eu

 

すでに欧州では、金属事業の「 50バーセントが生産を停止している」ということのようなのです。

しかも、普通に考えれば、エネルギー状況がさらに悪化するのは、「冬になるこれから」ですので、

 

「今後、加速度的にヨーロッパの産業が崩壊していく」

 

という可能性があります。

そもそも、多くのヨーロッパの国では、ロシア以外の代替の天然ガスの十分な確保がまだ確定できていないはずで、EU では、ロシアと独自で天然ガス契約を結んだ(ルーブルでの支払いに応じた)ハンガリーがエネルギーを確保した以外は、いくつかの国では、相当厳しいはずです。

アメリカのエネルギーメディアの最近の報道の「見出し」を見ても、ヨーロッパのエネルギー危機が深刻であることがわかります。

 

オイルプライスの最近の報道のタイトル

・エッフェル塔の消灯による省エネ計画 (9/14

・エネルギー価格の高騰が続く中、欧州の製錬所は操業を停止している (09/13

・何百万もの「安価な」電気ヒーターがドイツの電力網を破壊する (09/13

・ヨーロッパの天然ガス不足は食糧危機を引き起こす可能性がある (09/12

・米国のヨーロッパへの記録的な液化天然ガスの輸出は続かないかもしれない (09/11

・ヨーロッパに迫る電力不足 (09/09

・世界の燃料市場は今後数年間タイトな状態が続く (09/13

 

今後何年かエネルギー市場が厳しい状況になると予測されているようですが、先ほどの欧州の書簡を見ますと、「何年」といったような期間を耐え抜く余力はほとんどの企業にはもうないと思われます。

まったく比喩や冗談ではなく、「ヨーロッパから完全に重要産業が消滅する」ということが、たとえ一時的でも、あり得るのかもしれません。

今年の春に以下のようなタイトルの記事を書かせていただきました。

 

[記事] 誰を崩壊させるための対ロシア制裁なのか。目指すのは西の自死? それともこれもいわゆるグレートリセットへの道?
 In Deep 2022年4月2日

 

しかし、実際に起きていることは、想定していた以上であり、その速度もすごい。上の記事からまだ、ほんの 5ヵ月しか経っていないのです。

そのような短い期間で、製鉄や肥料といった工業生産や農業の根幹に関わる生産が次々と停止しているというのはものすごいことです。

今の世の中というのは、「ちょっとの間でも供給に変化があれば、崩壊してしまうものなのだなあ」と改めて知りました(これは日本も同じでしょうけれど)。

米国の作家マイケル・スナイダーさんがヨーロッパについてまとめていた記事をご紹介して締めさせていただきます。

ここからです。


この冬、ヨーロッパは「新たな暗黒時代」に突入する

This Winter, Europe Plunges Into “The New Dark Ages”
The Economic Collapse 2022/09/7

室温を 19℃以上に設定した場合、3年間刑務所に送られるというようなことを想像できるだろうか。しかし、これは現在スイスで実際に検討されている提案された規制だ。

アメリカでは、ヨーロッパで起きていることにあまり注意を払わない傾向があるが、私たちは目を覚ます必要がある。ヨーロッパの天然ガスは昨年初めの 7倍の価格になっている。過去数十年間、ヨーロッパは愚かにも、ロシアからのガスに極度に依存するようになっていたためだ。

実際、ドイツが通常使用する天然ガスの 55%以上はロシアから来ている。しかし、戦争がすべてを変え、ヨーロッパは深刻な物資不足、強制配給、そして狂気の暖房費の非常に厳しい冬に直面している。

今後数か月で、ヨーロッパ全体が非常に寒く、非常に暗くなるだろう。

メディアが先日、スイスでの新しい法律について、以下のように報じた

> スイスは、ウクライナ戦争のためにガスの配給を余儀なくされた場合、部屋を19℃以上に暖房した人を最長 3年間投獄することを検討している。

> 国はまた、提案された新しい規制に違反した人に罰金を科す可能性がある。

> 連邦財務省の報道官は、メディア Blick に、1日あたりの罰金率は 30スイスフラン(約 4500円)から始まる可能性があると説明した。

 

一部の人たちは、ポータブルヒーターを使用して、暖かさを保つだけのことだと予想しているかもしれないが、スイスが検討している新しい規制の下では、そのようなヒーターの使用は「許可されない」ようだ。サウナと温水プールも許可されない。

このような事態はこれまで見たことがなく、ウクライナでの戦争が長引けば長引くほど、ヨーロッパのエネルギー危機は悪化するだろう。

(※)このスイスの法律については、こちらの記事でヨーロッパの報道をお伝えしています。

 

ヨーロッパが深刻な景気後退に向かう兆しを見せていることが報じられるようになった。エポックタイムズは以下のように報じている

> ヨーロッパは景気後退 に向かう兆しを見せている。9月5日のニュースリリースによると、S&P グローバル・ユーロ圏総合生産高指数は 8月に 18か月ぶりの安値である 48.9 まで下落した。ユーロ圏の民間部門は、8月に「さらに収縮領域に移行」した。製造業の生産高は月間ともに減少した。ドイツでは、経済大臣ロバート・ハベック氏が、ドイツ経済の一部が「当面の間、生産を停止する」ことを公に認めた

そして、ヨーロッパで次々と生産が停止されていることが報じられている。

> 絶望を示すさらに別の本当に驚くべき発表では、ヨーロッパ最大の鉄鋼生産施設の 1つであるドイツの鉄鋼メーカー Arcelor Mittal が、高エネルギー価格のために操業を停止した。

> 「わずか数か月でガスと電気の価格が 10倍に上昇したため、25%を輸入品で賄っている市場ではもはや競争力がありません」と CEO の Reiner Blaschek 氏は述べている。

>これは、過去数週間に発表されたアルミニウム製錬所、銅製錬所、および、アンモニア生産工場の閉鎖に続くものだ。肥料に必要なアンモニアは、現在 EU で 70%が生産停止となっている。

 

今後数か月で、さらに多くの工場が閉鎖を余儀なくされるだろう。

最近、ヨーロッパの金属業界の 40人の CEO が共同で、欧州委員会宛に公開書簡を発行し、その中で彼らの会社は「ヨーロッパの未来に対する実存的脅威に直面していると」警告した。 (※) さきほどご紹介した書簡です。

経済崩壊だけではない。

事態は多方面で非常に悪化しており、たとえば、CERN の大型ハドロン衝突型加速器の閉鎖が検討されていると報じられている

> ヨーロッパのエネルギー危機は、スイスの大型ハドロン衝突型加速器にも影響を与える可能性がある。

> CERN として知られている欧州原子核研究機構は、粒子加速器をオフラインにすることさえ検討している。これは、加速器の高いエネルギー需要と、地域の電力網を安定させたいという組織の願望によるものだ。

 

全体として、今後数か月はヨーロッパにとって非常に不快な時期になるだろう。

状況がますます厳しくなるにつれて、普通のヨーロッパ人はますます怒りに満ちることになる。

NATO のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ヨーロッパで「内乱」が起こることを公然と認めていることが報じられているが、それでも、NATO事務総長は、ウクライナでの戦争を支援するために「ヨーロッパ人たちは犠牲を払わなければならない」と主張しているのだ。

> ウラジーミル・プーチンのヨーロッパに対する「エネルギー恐喝」は、この冬「市民の不安」につながる可能性があると、NATO 事務総長は警告した。

> イェンス・ストルテンベルグ事務総長は、今後数か月で「家族や企業がエネルギー価格と生活費の高騰の危機を感じる」ため、冬は「厳しいものになるだろう」と認めた。

> 同時に、事務総長は、ウクライナを支援するために、ヨーロッパ人は代償を払う価値があると述べた。

 

最終的には、米国の主要都市でも甚大な市民の不安が生じるだろう。

私たちはまだ、この新しい世界的なエネルギー危機のごく初期の段階にあるだけだが、それでも、私たちの生活すべてが激変しつつある。

一方で、私たちは恐ろしい世界的な食糧危機にも直面している。国連のトップでさえ、2023年に「複数の飢饉」が起こることを認めている。

私たちが知っているこれまでの「普通の生活」は変わる。

この冬、ヨーロッパは「新しい暗黒時代」に突入し、それと共に、全世界もまた極度の苦痛を経験することになりそうだ。

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  • この記事を書いた人

Oka In Deep

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