・What Does the Next Pandemic Pathogen Look Like?
私たちが持つ「恐ろしいパンデミック」の概念は間違っていた
何かこう、本日(3月9日)に至って、ついに「崩壊の局面」に入ってきたようで、リーマンショックの時でも見たことがないような、ちょっと非現実的な市場の急落が起きています。
株式市場も以下のように大変なことになっています。これまですでに何日も下げ続けた中でこうなっている上に、しかも「先行きが見えない」という。
最もひどいのが原油相場で、なんと今日だけで 30%以上暴落していて、いわゆる「クラッシュ」した状態となっています。
原油が下げたのは、OPEC が減産で合意に至らなかったという理由が述べられていますが、ここまで下がるのはすごい。
こんな様相は、かつて見たことがないと思っていましたが、ブルームバーグによれば、1991年の湾岸戦争以降では 1日の下げ幅として最大だそうですので、リーマンショックの時でさえ、こんなことはなかったようです。新型コロナウイルスの社会的影響が背景になって、ここまで来てしまったということになりそうです。
米ゼロヘッジによれば、市場の何もかもがクラッシュしている状態だそうで、何か大きな希望的進展がなければ、今晩の米株式市場も厳しいものとなるのかもしれません。
さて、このように、新型コロナウイルスは、すでに「公衆衛生上の危機」ではなく、「全世界の社会的経済的な危機」に直結してきたことが明らかになっているわけで、これは「病気そのもので重症化している人の数も少なく、致死率も低いのに、都市閉鎖や渡航の禁止、市場の暴落などで、社会だけが破壊されている」という意味です。
実は私は、昨日の夜中、この「新型コロナウイルス」という言葉から離れて、純粋にパンデミックのことを調べていました。
「本当に恐ろしいパンデミックとはどんなものなのだろう」と調べていたのです。
そうしましたら、2年前の 2018年に米ジョンス・ホプキンスの科学者により発表された「ある報告書」のことを知ったのです。
そのことを紹介していた科学記事を読んだ時に、私は、本当に「ああ…」と声を出してしまいました。
もう本当に目が覚めるような思いというのか何というのか。
ジョンス・ホプキンスは、アメリカの公衆衛生の最大の権威ですが、この論文は、そのジョンス・ホプキンスの科学者たちが、世界中の感染症に関する論文を 1年間かけて調査し、その後、世界中の科学者、社会学者、政府関係者などに聞き取り調査を行い完成したという渾身の報告書です。
科学用語では、人類と人類の文明に破壊的な影響を及ぼす生物学的事象(病原体の流行など)を、
「地球規模の壊滅的な生物学的リスク (Global Catastrophic Biological Risk / GCBR」
と呼ぶそうです。
そのような壊滅的な生物学的リスクをもたらす可能性のあるパンデミックを科学者たちは特定したということになるのですが、では、それはどのような病原体によるものだと科学者たちは結論付けたと思われますか?
エボラやペストのように致死率の非常に高い病原体だと思われますか?
違うのです。
ジョンス・ホプキンスの科学者たちが「最も懸念したパンデミック」は、次のような特徴を持つ病原体によるものだと結論付けられたのです。
2018年の報告書にある「将来的に最も深刻な影響を与える可能性のある病原体」の予測
・呼吸器系の感染症
・致死率が低い
・発症しない人が多い、あるいは軽症の人が多い
・そのような特徴を持つ RNA ウイルス
おわかりになりますでしょうか?
これはまったく、現在流行している新型コロナウイルスそのものの姿なのです。
ジョンス・ホプキンスの科学者たちは、研究の結果、「こういうものが世界に壊滅的なダメージを与える危険性がある」として、全世界に警鐘を鳴らさなければならないと発表していました。
WHOのスタッフなどを含めて、多くの専門家たちは、
「新型コロナウイルスは、致死率が低く、軽症の場合が多いから、それほど心配することはない」
としてきました。
いや、私もそのように考えていました。「致死率が高いほうが恐ろしいだろう」と。
しかし、公衆衛生上の問題はともかくとして、社会に対しての影響は、「致死率が低い」ほうが高いようなのです。
まずは、そのジョンス・ホプキンスの発表を紹介していた 2018年の科学記事をご紹介しますが、理由のいくつかは、このようになります。
・致死率が低い → いつまでもウイルスの拡散が続く
・発症しない人、あるいは軽症の人たちが多い → 感染したことに気づかずに行動し、どんどん感染を拡大させていく
これは「今現在の社会の状況そのもの」だといえないでしょうか。
新型ウイルスは、病気で亡くなる人の数は少ないですが、しかし、昨日の記事「中国の上海市政府が「ビタミンCの大量投与」を新型コロナウイルスの標準治療に正式に採用…」でも書きましたように、感染した人の発症期間がインフルエンザなど通常の呼吸系感染症に比べてはるかに長い(それだけ、ウイルスが放出され続ける期間が長い)。
そして、若い人たちを中心に、新型コロナウイルスは、感染しても発症しないか、極度に軽症であることが多いため、「感染したまま社会で行動し続ける人がたくさんいる」。
こういう書き方は実に良くないですが、その逆の場合はどうなるか。
つまり「発症率も致死率も高くて、あっという間に重症化して亡くなってしまう」ような感染症の場合です。その場合は以下のようになります。
・感染すれば多くの人が早期に発症する → 感染したまま社会で行動する人の数は少なくなるので、ウイルスの広がりが抑えられる
・致死率が高い → ウイルスが放出され続ける期間が長くならない上に、死亡した人の体内でウイルスは生きられないので、ウイルスは次々と消滅していく
致死率の高い感染症として、エボラや SARS などがありますが、それほど感染は拡大しませんでした。少なくとも、国境を大きく越えた感染拡大は起こりませんでした。これは「発症率と致死率が高い」ことも理由のひとつだとは思います。感染が広がりようがないのです。
私たちの考え方は「逆」だったのです。
恐ろしいパンデミックは「致死率の高い病気」ではなかった。最も恐ろしいのは「単なる軽い風邪のような病気」によるパンデミックです。
それが正しい予測だったことは、単なる風邪により社会が破壊されていく様子を今の私たちが見ているところからもわかります。
記事をご紹介します。
次の致命的なパンデミックは、私たちが知っているどのようなタイプの脅威とも異なるものとなる可能性があると専門家たちは言う
The Next Deadly Pandemic Could Be Unlike Any Threats We Know, Say Experts
Sciencealert 20108/05/14
その病原体の名称はまだわからない。そして、その感染がどこから始まるのかも今はわからない。しかし、その病気は、ほぼ間違いなく私たちの社会にやって来ることがわかっている。
今、科学者たちが、次の致命的な世界的パンデミックがどのようなものになるかという可能性についての青写真を明らかにした。それは、世界中の国境を超えた 120人以上に及ぶ専門家たちによる洞察の集大成であり、将来、私たちに壊滅的な影響を与える病原体の姿についての予測が示されている。
ジョンズ・ホプキンス大学の感染症研究者であるアメシュ・アダルヤ(Amesh Adalja)博士は、以下のように語る。
「私たちは、呼吸器感染を起こすウイルスについて真剣に取り組む必要があります」
「世界の文明を変えてしまうような病原体は、呼吸器感染を通して感染拡大していくものとなる可能性があるのです」
アダルヤ博士が話している種類の病気は、「地球規模の壊滅的な生物学的リスク(GCBR)」を引き起こす可能性のあるものだが、それは、エボラやジカウイルスのようなものではないという。
確かに、エボラやジカウイルスは公衆衛生上では非常に深刻な病気だが、これらのウイルスには、地球規模の壊滅的な生物学的リスクを引き起こすような生物因子はないという。
最も懸念されるものは、私たちが呼吸する空気を通して自由に分散することができるタイプの病原体だ。
これが、アダルヤ博士が率いるジョンズ・ホプキンス健康安全センターが発表したパンデミック病原体の特性を調べる新しいレポートの結論だ。
調査結果によると、おそらく、そのような壊滅的なパンデミックの最大の脅威は、ウイルスそのものではなく、ウイルスが私たちの手に負えないような無制御状態となることだという。
アダルヤ博士はこのように言う。
「健康セキュリティの準備は、まだ経験したことのない新しい脅威に適応する必要があります。過去の歴史でのパンデミックの概念に縛られないことが大事です」
「この問題に対するより積極的なアプローチは、最終的に地球規模の壊滅的リスク事象の発生を防ぐために役立つはずです」
この目的のために、アダルヤ博士と同僚の研究者たちは、新興感染症の特性と微生物の病原性に関する科学文献のレビューに 1年以上を費やし、そして、学界、産業界、政府関係者など 120人以上の技術専門家へ聞き取り調査をした。
その結果、チームの最終分析では、次の致命的な世界的パンデミックの原因となる病原体はおそらく呼吸器感染を介して広がり、また、その病原体は、症状が現れる前の潜伏期間中にも伝染するもので、あるいは、感染しても軽度の症状しか示さない場合でも、感染を拡大させていくだろうとした。
このような病気の場合、その致死率そのものは低いが、感染拡大によって、死者数は大きなものとなり、そしてこれは、病原体の全体的な感染率を実際に高める重要な要因となるだろうという。
これは言い換えれば、こういうことだ。
この将来パンデミックを起こす可能性のある病原体で死亡する人はごくわずかだ。ほとんどの人たちは感染しても生き残る。しかしそのために、伝染性を保ったまま次々と他の人たちに病気は伝染していくことになる。
一方で、非常に致死率が高く、発症率も高い病原体の場合、患者自身が次々と死亡していくので、病原体そのものが生きられる環境が少なくなる。つまり、致死率の高い病原体は、自らにも致死的だということだ。
研究者たちは、最も危険な「地球規模の壊滅的生物学的リスク」を引き起こす病原体は RNA ウイルスであると考えている。
新しい種類の RNA ウイルスが出現し、集団の中で、免疫的に問題のある人々の間で感染が始まった場合、そして既存の医薬品により効果的に感染を封じ込められなかった場合、それは「地球規模の壊滅的生物学的リスク」となっていく可能性があると研究者たちは言う。
「この病原体は非常に多くの人たちを病気にするでしょう。しかし、多くの人たちはその症状が軽度なので、深刻な病気の蔓延が起きているということが隠されてしまうかもしれません。そして、その病気により、恐ろしい死を遂げる人は、ほんの一握りかもしれないのです」
良いニュースとしては、最近の歴史では、このような病気による「地球規模の壊滅的生物学的リスク」が起きたことはないということがある。
悪いニュースもある。それは、過去の経験からそのようなことが突如として起こる可能性は常にあるということがわかっていることだ。
世界中の多くの優れた専門家たちが、直面している脅威への対応において、私たちの社会は十分な進歩を遂げていないと述べている。
願わくば、このジョンス・ホプキンスの新しいレポートが、科学界で新たな議論を巻き起こし、本当のリスクに直面する準備に結びついてほしいと思う。
何しろ、次のパンデミックは今まで私たちが見たことのないようなものになるかもしれないのだ。
ここまでです。
あまりにも現在の新型コロナウイルスの状況と似ていて、苦笑さえ浮かぶところですが、以下の描写などは、タイムマシンにでも乗って未来でも見てきたのかと思えるような現実感があります。
次の致命的な世界的パンデミックの原因となる病原体はおそらく呼吸器感染を介して広がり、また、その病原体は、症状が現れる前の潜伏期間中にも伝染するもので、あるいは、感染しても軽度の症状しか示さない場合でも感染を拡大させていくだろうとした。
驚くのは、このような病気の出現を予測したことではなく、
「そのような軽い風邪のような病気が地球規模の壊滅的災害に結びつく」
と予測したことです。
誰が「軽い風邪が壊滅的な災害となる」なんて考えるだろうということです。軽い風邪のパンデミックが社会を破壊するなんて、そんなことはあり得ないと普通なら思います。
ところが現実は、社会は、以下の報道のタイトルのような混乱に陥っています。
・ブラックマンデー型の大暴落の可能性がある (東洋経済 03/09)
・株2万円割れ、1276円安 円急騰一時101円台 新型コロナに懸念・東京市場 (時事通信 03/09)
・コロナショック 世界が陥る「封鎖のパラドックス」 (日本経済新聞 03/09)
以前、以下のようなタイトルの記事を書かせていただいたことがあります。
ジョンス・ホプキンスの先ほどの報告から、このコンセプトが間違いだったことを知ります。
> 単なる風邪が世界を終わりに導くストーリーを見ている
のではなく、
> 単なる風邪だったから、世界は終わりに導かれている
というのが真実のようです。
ここからは余談です。
新型コロナウイルスに人為的な手が加えられているという個人的な疑念はさらに拡大中
私が、この新型コロナウイルスが登場して、しばらくして思った「不思議なこと」のひとつは、
「なぜ、こんなに致死率が低いのだろう」
ということでした。
そして、感染拡大につれて、「どうして、こんなに発症期間が長いのだろう」ということと「どうして感染しても多くの人が発症しないのだろう」ということも不思議でした。
同じコロナウイルスである SARS と比較しますと、以下のようになります。SARS の数値は、国立感染症研究所などからです。
致死率
・SARS → 全体で約 10% (65歳以上は致死率 50%以上)
・新型 → 不明ながら 1-3% (感染しても発症しない人が多いため、実際には 1%以下だと思われます)やはり同じコロナウイルスである MERS に至っては、致死率 35%です。
発症期間
・SARS → 多くの場合、発症後 6〜7日で軽快
・新型 → 不明ながら、記録を見ると多くの場合、軽快まで 3週間〜2ヵ月近く潜伏期間
・SARS → 平均 5日間
・新型 → 最大 14日間(24日間潜伏という報告があり)
このように、同じコロナウイルスである SARS と比べて、新型ウイルスは、
・症状が軽い
・致死率が低い
・潜伏期間が長い
・発症期間が長い
というように、ジョンズ・ホプキンス大学のアメシュ・アダルヤ博士たちの研究チームが懸念していた「地球規模の破壊をもたらすパンデミック病原体」の条件に見事に当てはまっているのです。
重症化しないし、あまり亡くならない上に、潜伏期間も発症期間も長いために、
「いつもまでもいつまでもウイルスが社会にばらまかれ続ける」
という条件が整っているのです。
「整いすぎている」
と私は正直思いました。
そして、私自身はいまだに、このウイルスが、武漢からではなくとも、何らかの人為的ミスで研究所などから流出したものだという思いが強いです。
それはともかくとしても、あるいは、このウイルスは「 SARS の最大 1000倍の感染力を持つ」ことを以下の記事で取りあげました。
インドの科学者たちが発表した「新型コロナウイルスの中に存在するHIV要素」を中国やフランスの科学者たちも発見。それにより、このウイルスは「SARSの最大1000倍の感染力を持つ可能性がある」と発表
その時までは、新型コロナウイルスというものは、この記事で示しましたように、
・強力な感染力を持つウイルス
だけれど、
・致死率も低いし軽症が多いから大丈夫
だと錯覚していましたが、リスクについてはその「逆」であることがわかった今、この病原体は、
「過去に例を見ない強力な感染力を持つウイルスが、地球規模の壊滅的災害リスクの要素を最大限に持っている」
ことになっているのです。・・・できすぎている。
世界には、アメシュ・アダルヤ博士のような優れた科学者は数多くいると思われます。中には、アダルヤ博士と同じような「パンデミックの脅威レベル」を導き出せる人もいるのかもしれないのです。
なお、ウイルスの感染性や致死性を改変することについては、技術的にできることが以下のネイチャーの記事からもわかります。アメリカでは、それを禁止していたのですが、2017年から解禁したことについての記事の冒頭です。
致死的ウイルスの改変実験を解禁
Nature 2018/01/04
米国政府は、特定の病原体の致死性もしくは感染力を高めるような「機能獲得」実験への研究助成金の交付を禁止していたが、論議を呼んだこの措置が最近解除された。米国立衛生研究所(NIH)が2017年12月19日、連邦政府からの助成金を使って再びインフルエンザウイルスなどの病原体を対象とする機能獲得実験が実施できるようになると発表したのである。
まあしかし、新型ウイルスと人為的改変の関係についての問題は、いくら推測しても真実がわかることがあるわけでもないでしょうし(なぜなら、流出は「陰謀ではなく、凡ミス」だと思われるので、証拠文書そのものが存在しない可能性が大)それは仕方のないことですが、ただ、今回のジョンス・ホプキンスの報告書でわかったことは、この新型コロナウイルスというものが、「仮に生物兵器だとしたら」ということですと、先ほどの報告による「リスク度」から考えて、
「新型コロナウイルスは、過去に類を見ないほど完璧に設計された究極の文明破壊兵器」
だということがいえるようです。
もちろん、これが自然に生まれたとしたならば、「過去最大の脅威を文明に与える自然のウイルス」だと言い換えてもいいです。
今となっては、どちらでもいいのですが、さて果たして、私たち人類はこの究極のウイルスに、文明が破壊される前に対抗することができるでしょうか。
ひとつ方法があるとすれば、「新型コロナウイルスのことなんて、もはや気にしないで、元通りに生活を始める」ことだけだと思うのですが。つまり、「実際には恐ろしい病気ではない」ことを社会全体で直視することが最善ではないかと思うのです。
しかし、事態がここまでとなると、もはや平静なままで進行していくのは難しいのかもしれません。
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