昨年8月のイタリア地震被災地の廃墟に降り積もる雪 / 2017年1月7日
・Italy drone footage reveals earthquake damage following winter blast
昨年 2016年の 8月と 10月に大きな地震に見舞われ、大きな被害を出したイタリア中部で 1月18日に、またも比較的大きな地震が発生しました。
日本の報道では以下のようになっています。
イタリア中部地震で1人死亡 雪崩で3人行方不明か
共同通信 2017/01/19
国営イタリア放送協会によると、イタリア中部で18日に相次いだ地震のためアブルッツォ州で同日、崩れた屋根の下敷きになり80代の男性1人が死亡した。同州の山岳地帯グランサッソではホテルが雪崩の被害に遭い、少なくとも3人が行方不明になっているという。
イタリア中部アマトリーチェ付近では18日、マグニチュード5以上の地震が計4回発生した。幅広い地域で停電となっているが、雪で復旧作業などが難航している。アマトリーチェ付近では昨年8月の大規模地震以降、M5以上の地震が何度か起きており、警戒が続いている。
この記事の中に、「アブルッツォ州」とありますが、この地名を見た瞬間、いろいろ考えてしまいました。というのも、この場所は、今回のイタリアの地震が発生する少し前に、地球の記録の記事、
・収拾がつかなくなってきたイタリアの「雪のカオス」。中部は非常事態に陥り、軍が動員される事態に
地球の記録 2017/01/18
の中でご紹介しました場所で、その内容は「アブルッツォ州などに、当地としては想像を絶する大雪が降り、非常事態となっている」というものでした。
2017年1月17日のイタリアの報道より
つまり、「大雪での非常事態」の報道があった「翌日」に、今度は大地震による被害の報道がなされたということになるのです。
このような形で、複合した災害が連続で報じられた例を、少なくとも私は知りません。
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2016年から続く異常な地震の連続は収まっていなかった
下は、1月17日までに大雪と寒波で非常事態となった地域と、そして、1月18日に最大マグニチュード 5.7の地震が起きた震源の大体の場所を示した地図です。
無情なほど、そのエリアが重なっています。
1月17日の時点でも、多くの地域が雪で孤立していたようで、携帯などを含めて連絡の取れない世帯が多数あった中での大地震ですので、つまり、まだよくわかっていない被害が多いのではないでしょうか。
地震が起きる前には、すでにアブルッツォ州などでは、下のように車両の通行が難しくなっていた場所も多かったようです。
地震直前のアブルッツォ州の町 2017年1月18日
それにしても、この「町をスキーで移動する」という写真を見て、イタリアの風景だと思うことは難しいですよね。
地震が起きなければ、これはこれで珍しくも楽しいスキーの光景ということで終わっていた話ではあるのですけれど。
なお、これも重要なことですが、報道や先ほどの地図だけを見ますと、「1度の地震がひとつの震源で起きた」という感じがしてしまいますが、今回のイタリア中部の地震は、かなり厄介なものであることが、アメリカ地質調査所(USGS)のデータからわかります。
それは「複数の震源で地震が起きている」のです。
まず、下は、2017年1月18日にイタリア中部で発生したマグニチュード 4.5以上の地震の状況です。
1月18日にイタリア中部で発生したM4.5以上の地震
・USGS
すべて浅い震源ですので、このすべての地震において、比較的大きな揺れを感じたと考えられると思いますが、それが「6時間のあいだに9回」起きている。
さらに震源を詳細に見てみますと、上の地震は、「余震」とかそういうものと言い切ることのできるものではないこともわかります。
1月18日のイタリア中部の地震の震源
・USGS
このように、州の比較的広い地域に震源が分布しています、
地震の多い日本でも、マグニチュード5クラスの地震が、このような範囲で短い間に続けざまに発生するというのは、超巨大地震の余震を除いて、普通はほとんどないことなのではないでしょうか。
イタリア中部の地震の不思議さ、あるいは不気味さは、昨年から見てみても、本震が最大でマグニチュード5クラス程度のものなのに、同じようなクラスの地震が頻繁に起き続けているというところにもあると思います。
マグニチュード5クラスの地震の場合、普通の場合。その余震はそれほど激しいものになるとは思わないのですが、イタリアの場合、昨年 8月の地震後の余震は常軌を逸したようなものとなっていました。
これについては、昨年 10月の記事でご紹介したことがあります。
2016年10月23日の記事より
普通は余震というものは「減っていく」ものですが、昨年 8月のイタリアでの地震の後の余震は、
・地震後 10日間の余震が約 5,000回
・地震後 2か月間の余震の数が約 17,000回
となっていまして、収束する兆しを見せなかったのです。
上の「地球の記録」の記事のラストは、
(イタリア中部の)地震活動が「単なる余震なのか」という意見も出てきても不思議ではなく、要するに、何かまだ新しい地質活動が続いている最中ではないのかというような考え方もなくはないです。
日本の最近の地震もそうですが、これまでのような「本震と余震」という考え方だけでは対処できない局面も今後さらに多くなる予感もあります。
となっていますが、今回のイタリア中部の地震の「比較的広い地域で続けざまに起きるマグニチュード5クラスの地震」という現象を見ますと、上の抜粋に書いていますような「何かの地質活動が続いている最中ではないのか」という感覚はそのままだと言わざるを得ないです。
それにしても、つい最近、
・イタリアのソクラテスともノストラダムスとも言われた16世紀の哲学者マッテオ・タフーリが残した予言「イタリア南部に2日連続で雪が降った後に世界は終わる」から思い出す最近の数々の「黙示録的報道」
2017/01/16
というようなタイトルの記事を書きましたけれど、この「世界は終わる」という響きは、少なくとも、このイタリア中部に住まれている方々には、そのように思わざるを得ないような現実となっているのかもしれません。
BBC ヨーロッパは、この地震の報道に「カタストロフ(破局・壊滅的な大災害)」という言葉をつけて報じていました。
2017年1月18日のBBCヨーロッパの報道
・'Catastrophe' in central Italy on day of four big quakes
今のイタリアで起きていること、つまり、
・とめどなく連続する地震
・異常な寒波と大雪
というのは、2016年から 2017年をまたいで起きていることですが、地震にしても大雪にしても、現在地球の環境に対して示唆的ではあり、これからの状況をある程度あらわしているものなのかもしれません。
つまり、今のイタリアの光景と同化していく国や地域がこれからも次々と出てくるのかもしれないというような。
なお、イタリアの今回の地震の新しい情報として、下のように「ホテルで多数が死亡」というものが出てきていて、死者はさらに増え続けているようです。ただし、相変わらず、雪のために被害状況の確認は進んでいないと考えられます。
最近イタリアについての記事を何度か記していたこともあり、今回は、イタリア地震のことについて書かせていだきました。
しかし、気温や天候にしても地質的な事象にしても、2016年まで、そして現時点までの状況を見ていますと、同じような自然災害は他の地域でも、さらに拡大、そして連続していく可能性のほうが高いように思われます。