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4月19日にメルマガ私たち現生人類は「鉄の種族」であることから思う生き方を発行させていただきました。

2023年からの世界 アメリカの憂鬱 人類の未来 日本の未来 資本主義の終焉

銀行の破綻の連鎖が始まる(かもしれない)。米シリコンバレー銀行の取り付け騒ぎでは、「24時間で 5兆6000億円」が引き出された

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預金の保護と返還は事実上なし

リーマンショック以来、最大の銀行破綻が起きました。シリコンバレー銀行という米国16位の規模の銀行が破綻しまして、この銀行の総資産は、日本円で 28兆円でした。

これまでで最大のアメリカの銀行の破綻は、2008年9月の、貯蓄金融機関ワシントン・ミューチュアルという銀行の破綻だそうで、その際のこの銀行の資産が、33兆円だったそうですので、シリコンバレー銀行の破綻は史上2番目の破綻ということになります。

これがものすごいスピードであっという間に破綻したのですが、一昨日、シリコンバレー銀行の親会社であるシリコンバレー銀行ファイナンシャル・グループの株価が、

「 1日で 60%下げた」

と報じられました。

米国の新興企業向けに商業銀行サービスを行うシリコンバレー銀行Gの株価が上場以来最大の下げ (60%の下落)
 2023年3月10日

 

その翌日の破綻です。逃げられなかった預金者が多いと思われます。

アメリカで銀行が破綻した場合、連邦預金保険公社 (FDIC)という組織が管財人となり、預金者保護を行いますが、しかし、今回の預金は、事実上ほとんど預金者には戻らないようです。

たとえば、この破綻を報じていた読売新聞の記事では、

> 銀行が破綻した場合、1人当たり原則25万ドル(約3400万円)までの預金額が保護される。

 

とあり、これですと、ある程度の預金保護がなされると思われるでしょうが、アメリカの場合は、「保険に入っていないと預金の返還は行われない」そうです。

以下は、連邦預金保険公社 (FDIC)の公式な声明ページからです。

太字はこちらで施しています。

FDIC、カリフォルニア州サンタクララのシリコンバレー銀行の被保険者預金者を保護するために、サンタクララ国立銀行の預金保険を設立

FDIC 2023/03/10

カリフォルニア州サンタクララにあるシリコンバレー銀行は、本日、連邦預金保険公社 (FDIC) を管財人に指定したカリフォルニア州金融保護イノベーション局によって閉鎖されました。

被保険者を保護するために、FDIC は預金保険国立サンタクララ銀行 (DINB) を設立しました。クロージングの時点で、受領者としての FDIC は、シリコンバレー銀行のすべての保険付き預金を直ちにサンタクララ銀行に転送しました

被保険者のすべての預金者は、2023年3月13日、月曜日の朝までに、被保険者の預金に完全にアクセスできます。

FDIC は、保険のない預金者に来週中に前払い配当を支払います。無保険の預金者は、無保険の資金の残りの金額について管財人証明書を受け取ります。FDIC がシリコンバレー銀行の資産を売却するにつれて、無保険の預金者に将来の配当金が支払われる可能性があります。

このように、

> 無保険の預金者に将来の配当金が支払われる可能性があります。

と、配当金が支払われる「可能性もある」と。

では、どのくらいの預金が「保険に入っていないのか」というと、米ゼロヘッジの資料によれば、以下のようになっています。日本円で示します。

 

「 23兆6000億円の預金のうち、20兆円は保険に入っていない」

 

のです。

それ以前の話として、こちらの資料では、「シリコンバレー銀行の預金のうち、25万ドル未満の預金はわずか 2.7%」であり、つまり、

 

「 97.3% は FDIC の保険に加入していない」

 

ことが示されています。

しかもですね。上に 23兆6000億円 (1750億ドル)としましたが、これは、昨年 12月31日の時点でのシリコンバレー銀行の総資産です。

今はいくら残っているのか。

銀行に預金や資産がない場合、「預金者に何も配当されない」可能性のほうが高くなります。

ゼロヘッジの別の記事の前半をご紹介します。





記録的な銀行の取り付け騒ぎにより、SVBの預金の4分の1 または 420億ドルが数時間で流出し、10億ドルの現金だけが残った

Record Bank Run Drained A Quarter, Or $42BN, Of SVB's Deposits In Hours, Leaving It With Negative $1BN In Cash
ZeroHedge 2023/03/11

現在清算されているシリコンバレー銀行についての分析は、昨年 12月31日時点の古い財務データからのものにとどまっていた。

実際には、現在、米国の銀行システムが、2020年以来最悪の危機に苦しんでいる理由を以下に示す。

シリコンバレー銀行の有価証券は、そのほとんど、または、577億ドルは、満期保有モーゲージ担保証券であり、別の 105億ドルは CMO (不動産抵当証券担保債券) であり、 260億ドルが売却可能だ。 1,730億ドル (約 23兆円)以上の預金 (うち1,515 億ドルは保険に加入していない)によって資金提供されている。多くの点で、これは仮想通貨企業にほぼ独占的に銀行を提供していたシルバーゲート銀行で見られた問題を反映している。

(※) シルバーゲート銀行は 3月8日に破綻したアメリカの銀行で、仮想通貨関連企業の預金を積極的に受け入れていたそうです。日本経済新聞などに記事があります。

 

もちろん、大きな問題は、過去 24時間に何が起きて、どんなことが銀行を破産に追い込んだかということだ。

その答えはすぐに得られた。

カリフォルニア州金融保護イノベーション局は、シリコンバレー銀行が投資の売却による約 18億ドル (約 2400億円)の損失を発表した直後に資本調達を行っていたと報告した。

銀行は 2023年3月9日以前は健全な財務状態にあったにもかかわらず、投資家と預金者たちが 2023年3月9日の 1日だけで、銀行から 420億ドル (約 5兆6000億円)の預金を引き出し始め、銀行の取り付け騒ぎを引き起こしたのだ。

この猛烈な資金流出の結果、3月9日木曜日の営業終了時点で、銀行の現金残高は約 9億 5,800万ドル (約 1300億円)となった。

急激な預金の引き出しにより、銀行は支払いを行うことができなくなった。シリコンバレー銀行は現在支払不能の状態だ。

参考までに、12月31日の時点で、シリコンバレー銀行には 1,730億ドル (約 23兆円)の預金があった。歴史的な銀行の取り付け騒ぎにより、わずか数時間で銀行の資金の 4分の1を使い果たしてしまったことを意味する。


 

ここまでです。

記事には、シリコンバレー銀行の大口の預金を持つ企業名が並んでいます。ものすごい数です。

目立つところでは以下のような企業があるようです。私はよく知らない企業ですが。日本円表示です。

 

シリコンバレー銀行に大口の預金を持つ企業の一部

・ロク社 約 657億円
・ブロックファイ社 約 300億円
・ロブロックス社 約 4,000億円
・ギンコー・バイオワークス社 約 100億円
・ロケット・ラボ社 約 51億円

zerohedge.com

 

こんなような企業名が数十並んでいるのですが、企業名をよく知らないのは、破綻したシリコンバレー銀行というのは、テクノロジー系の新興・中規模企業向けに商業銀行サービスを提供していた銀行で、

「若い企業が多い」

ようです。

先日のメルマガのタイトルは、「準備はなさっていますか? リーマンがかすむような完全な崩壊まで、数ヶ月以内の可能性が」というタイトルだったのですけれど、これは、銀行や金融から先に始まるというものではなく、

 

 

「欧米のスタートアップ企業の 80%が 2023年に破綻する可能性がある」

 

ことが、最近のベンチャー企業への調査でわかり、多くのベンチャーキャピタリスト (ベンチャー企業に資産を提供する人たち)が「非常に強い警告」を発していたことをご紹介したものです。

そのうちの一人は、

 

「リーマンショックなどとは比較にならない混乱が来る」

 

として、特にベンチャー企業の創業者や経営者たちに警告しています。

それでも、政府のほうは、たとえば、NHK の報道では、

> 米財務省イエレン長官「銀行のシステムは現在も健全」

というように報じたり、

> 金融業界への影響には注意が必要だが、現時点では限定的ではないかと見ている。

 

など「この問題は大したことではない」という方向に持っていっています

しかし、アメリカでは銀行を含む金融への影響の波及は避けられない様相となっています。

特に、中小の銀行は、昨日 3月10日のアメリカの株式市場で、激しい下げに見舞われていました。以下は、その一部ですが、-30%だとか -40%だとかになっています。

2023年3月10日の米国の銀行株の値動きの一部

zerohedge.com

 

こんな極端な株価の下落を見れば、預金者や預金している企業が黙って見ているとも思えないです。

シリコンバレー銀行で起きたことと同じことが起きても不思議ではありません。

取り付け騒ぎですね。

 

今はオンラインで土日も送金はできますので(限度額などがあるのかどうかはわからないですが)、現在すでに預金が流出している銀行も少しはありそうです。

イエレン財務省長官は「アメリカの銀行のシステムは現在も健全」と述べていましたけれど、銀行の中には、「もたない」銀行が出てくるように見えるのですが…。

そして、このような銀行などの状態から、「スタートアップ企業の大量破綻の時期がさらに近づいた」ということもいえるのかもしれません。

 

しかし、銀行側も対抗策をとり始めているようです。

顧客の預金を「操作」、あるいは「銀行サービス停止」などをし始めています。

 

 

アメリカ第4位の銀行ウェルズ・ファーゴで起きていること

以下は、ウェルズ・ファーゴの「オンラインの銀行サービスの停止」の状況です。3月10日午前から、サービスの停止が急激に増加している。

ウェルズ・ファーゴのサービス停止状況

downdetector.com

それどころか、「顧客の預金が消滅した」とか「預金額が勝手に変わった」という状況が増加していることが、SNS で広く投稿されていることが伝えられています。

そんな投稿のうちのひとつ

Matthew Coombs

 

こういう報告が相次いでいまして、ウェルズ・ファーゴ側からのコメントは以下の通りです。

預金額の異常を訴える人たちへのウェルズ・ファーゴのコメント

ご迷惑をおかけして申し訳ございません。残高が正しくない場合や取引が見つからない場合は、技術的な問題が原因である可能性があります。お詫び申し上げます。お客様のアカウントは引き続き安全に保護されており、解決に向けて迅速に取り組んでいます。 -リチャード

Wells Fargo

 

このような「預金を引き下ろさせない」という根本的な方法を、今後、多くのアメリカの銀行がとった場合、いろいろと混沌としそうですが、どうなりますでしょうかね。

 

いずれにしましても「金融危機は、今週から確実に始まった」ようです。

昨年、以下のようなタイトルの記事を書かせていただいたことがありますが、これは、専門家などによる、債権などの問題から勃発する金融危機への警告をご紹介させていただいたものでしたが、今回は、巨大銀行そのものの破綻から始まったようです。

 

[記事] 市場と経済の「悪夢のシナリオ」の開始まであと半年もないのかもしれないとふと思う
 In Deep 2022年6月14日

 

日本の銀行システムへの影響はわからないですが、少なくとも日本の銀行の「株価」は、3月10日は、ボロボロでした。

ADR と呼ばれる、アメリカの投資家がアメリカ以外の外国企業にドル建てで投資できるように作られた「米国預託証券」というものがあり、その昨日の数値も日本の銀行株はひどい下げでしたので、週明けも、日本の銀行の、少なくとも株価は影響を受けそうです。

3月10日のADRの下落上位

adr-stock.com

 

たかが株価の下落でも、その幅が大きいと、銀行側の損失も大きく、シリコンバレー銀行破綻の前日である 3月9日には、アメリカの銀行株はいっせいに下げたのですが、

 

「その 1日だけで、アメリカ4大銀行の損失は、7兆円を超えた」

 

ことが報じられています。

デイリーメールが、「シリコンバレー銀行の混乱が市場のパニックを引き起こした:米国の4大銀行は評価額で520億ドルという驚異的な損失を出した」というタイトルで報じていました。

以下に翻訳しています。

3月9日の米国株価の下落で、アメリカ4大銀行の1日の損失が「7兆円」超え (2023年3月10日)

 

またもゼロヘッジとなりますけれど、別の記事のタイトルは、「シリコンバレー銀行破綻の影響がより広範な銀行システムに広がっている3000億個の理由」というもので、現状の分析では、少なくともアメリカの銀行システムには広範に影響が拡大する可能性はあるようです。

そうなれば、ヨーロッパあるいは日本などアジアへの影響も避けられないのかもしれません。

昨年の対ロシア制裁から始まった「西側の自死」の完成です。

 

[記事] 誰を崩壊させるための対ロシア制裁なのか。目指すのは西の自死? それともこれもいわゆるグレートリセットへの道?
 In Deep 2022年4月2日

 

ウクライナ戦争と、始まったかもしれない史上最悪の金融危機は関係ないように見えるかもしれないですが、関係はあります。

昨年の以下の記事に、「すべては突然始まったように見えるけれど、そうではない」というようなことを書かせていだいています。前半は戦争の話ばかりですが、後半にあります。

 

[記事] 戦争、市場の崩壊、食料危機。すべては突然起きる「ように見える」だけなのかも。ウクライナ侵攻までの14年間を見ていてそう思う
 In Deep 2022年9月24日

 

この記事の後半に、ヨーロッパのエネルギー産業から始まるリーマン級の金融危機についてふれていますが、そのリスクはいまだにあります。

まあ、多くの専門家たちが、ずいぶん以前から、「次の金融危機は起きる」と言い続けていたものが、単に起きたということかもしれないですが、その規模は想定以上のもののようにも感じます。

今後半年とか1年とかの間は劇的な時期となりそうです。

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