脳と携帯電磁波の関係の研究を振り返ってみる
前回、米国 CDC が、アメリカで、自閉症の子どもの割合が 36人に 1人となったことを発表したことについて書かせていただきました。
米国CDCが、アメリカ人の子どもの「36人に1人が自閉症」と発表。やや過大な数である気がしつつも、日本も子どもの神経とメンタルの状態が今後著しく悪化すると確信できる理由
In Deep 2023年3月27日
そこで、以下のグラフを載せさせていただきました。
このグラフでは、ピンクで囲んだ 1990年代あたりからの増加が急激であることがわかります。
1970年 - 2018年までの米国の自閉症率の推移
CDC, Dr. J.B. Handley
それまでの、1970年からの約 20年間と比較して、上昇率が急激になっています。
これを見まして、「同じような曲線」が示されているもののひとつに以下のグラフを思い出しました。アメリカではなく、日本のものです。
日本の携帯電話の普及率の推移
yahoo.co.jp
これと自閉症スペクトラム障害 (以下、ASD)や ADHD(注意欠陥多動性障害)との関係があるのかどうかはもちろんわからないですが、過去の研究や論文を少し遡ってみたいと思います。
なお、前回の記事で、乳幼児あるいは妊婦さんのアセトアミノフェン (カロナール)の服用が、ASD と関係している可能性についての論文をご紹介しましたが、思い出しますと、
「アセトアミノフェンが単独でそのような障害を引き起こすわけではない」
として、以下のように書かれています。
> 自閉症スペクトラム障害におけるアセトアミノフェンの役割を理解するためには、このアセトアミノフェンが単独で自閉症スペクトラム障害を引き起こすわけではないということを理解することにある。
>
> アセトアミノフェンのマイナスの影響は「酸化ストレス」の存在下で起こる。
>
> …現在の多くの赤ちゃんや子どもたちは、感染、抗生物質による治療、ワクチン接種、心理的ストレス、重金属、ビタミンB代謝の問題、EMF (低周波の電磁界)への曝露、タバコの煙や、汚れた空気への曝露、有機リン酸塩への暴露など、さまざまな環境的および遺伝的要因によって過剰な酸化ストレスにさらされている。
このように、子どもや赤ちゃんの酸化ストレスの要因に「低周波の電磁界」つまり、携帯の電波を含めた電磁波も含まれていることが書かれています。何よりも、「胎内の赤ちゃん」は、脳にしても身体にしても、成長中であるわけですから、それより大きな子どもたちよりも影響は大きいと考えるのが妥当です。
では、携帯電話の電磁波にはどんな作用があるのか。
古いものから見ていきますと、2003年の英 BBC には、以下のような報道があります。この頃だと、まだ携帯は二代目くらいの世代(2G)の時代ですかね。
携帯電話は「アルツハイマー病を引き起こす可能性がある」
Mobile phones 'may trigger Alzheimer's'
BBC 2003/02/05携帯電話は主要な脳細胞に損傷を与え、アルツハイマー病の早期発症を引き起こす可能性があることを研究が示唆している。
スウェーデンの研究者たちは、携帯電話からの放射線が、学習、記憶、運動に関連する脳の領域に損傷を与えることを発見しした。
携帯電話に健康リスクがあるかどうかについては、長期にわたる議論がある。しかし、科学者たちは、携帯が人間の脳に損傷を与えるという決定的な証拠をまだ見つけていない。
研究者たちは、12~26週齢のラットで実験を行った。このラットたちの脳は、人間のティーンエイジャーと同じ発達段階にあると見なされる。
ラットは、携帯電話から放出される放射線と同等の放射線に 2時間さらされた。彼らの脳は 50日後に顕微鏡で調べられた。
研究者たちは、中レベルおよび高レベルの放射線にさらされたラットには、死んだ脳細胞が豊富にあることを発見した。
筆頭研究者であるルンド大学のサルフォード教授は、携帯電話が人間に同じ影響を与える可能性があると信じる十分な理由があると述べた。
「ラットの脳は人間の脳とほとんど同じです。同じ血液脳関門とニューロンを持っています」と彼は BBCに語った。
「ラットの脳で起こったは、人間でも起こっていると信じるに足る十分な理由があります」
サルフォード教授は、携帯電話の放射線にさらされると、一部の人々がアルツハイマー病を発症する可能性もあると述べた。
この研究では、携帯電磁波に曝露した時間は「 2時間」です。現状の社会にように「社会の常にどこかで携帯電波が飛びかっている」というのとは状況が異なる条件で、このようなことが見出されていました。しかも、まだまだ携帯の電波が弱い頃です。
このような作用がラットで見出されたのなら、すでに脳が完成している高齢者より、「これから発達していく赤ちゃんの脳のほうが影響を受ける」ということは、普通に考えられることです。
携帯の電磁は、特に「脳」が影響を受ける
少し新しいところでは、2018年8月に、アメリカ保健福祉省の組織である「アメリカ国家毒性プログラム」が、
「携帯・スマートフォンの基地局からの放射は、特別な発ガン性を持つ」
ことを発表しています。
携帯・スマートフォンの基地局からの放射が「特別な発ガン性を持つ」ことがアメリカ政府内「国家毒性プログラム」とイタリアの著名な毒性研究所による史上最大の研究によって判明
In Deep 2018年8月19日
アメリカ国家毒性プログラムは、最近、フッ素の毒性についての研究を発表した組織でもあります。
米国政府機関である国家毒性プログラムが、「フッ素が子供の IQ を著しく低下させる」ことを正式に発表
In Deep 2023年3月23日
この国家毒性プログラムと、イタリアで発ガン性物質の研究をしているラマツィーニ研究所という組織の共同研究では、以下のふたつの特殊なガンについて、発ガン性が上昇することを、ラットの研究で見出しています。
国家毒性プログラムが見出した携帯電磁波が誘因する可能性のあるふたつのガン
・悪性脳腫瘍の増加
・シュワン細胞肥厚を含む前ガン状態の増加
この「シュワン細胞」というのは、MSDマニュアルによれば、「末梢神経線維の周りを覆う細胞」だそうで、ここに異常が起きる疾患を、神経線維腫症というそうです。子ども特有の指定難病のようです。
ちなみに、アメリカ国家毒性プログラムの「発ガン性の評価」は、以下の 4段階にわかれています。1がもっとも強いエビデンスがあるとされます。
国家毒性プログラムの4段階の評価
1. 発ガンがある明確な証拠がある(発ガンの要因と考えられる最高ランク)
2. いくつかの証拠がある
3. 明確とはいえない証拠がある
4. 発ガン性がある証拠はない(発ガンの要因とは考えられない)
この「携帯の電磁波への曝露」と、「悪性脳腫瘍」および「シュワン細胞の異常」の関係性は、
「1」
に分類されています。
つまり、アメリカ国家毒性プログラムは「携帯の電磁波が確実にこれらのガンを誘因する最大の証拠を見出した」ということです。
国家毒性プログラムの報告は、悪性脳腫瘍とシュワン細胞の異常以外のガンの増加を認めていないですので、つまり、
「携帯の電磁波は、特に脳と末梢神経に影響を与える」
ということも言えなくもなさそうです。
繰り返しになりますが、「お腹の中にある赤ちゃんは、脳や神経を含めて、あらゆる身体部位が成長中のとき」です。影響を受けやすい時期です。
今ではどんな小規模な都市であっても、人がいる限りは、常に携帯の電波が飛びかっていますが、妊婦さんがそれを避ける方法というのは、あまりないと思われ、または、妊婦さんご自身も、携帯やスマートフォンを使われる方が多いと思われます。
脳周辺の DNA が切断される問題
赤ちゃんの話とは少し逸れますが、2020年に以下のようなタイトルの記事を書いたことがあります。
アメリカで「若年性認知症」がすさまじく急増。2013年からの4年間だけで200%以上も増加。そして思い出す「携帯の放射線が耳周囲の毛根細胞のDNAを破壊する」という研究
In Deep 2020年11月25日
若年性認知症というのは、64歳以下の認知症と診断された成人のことをさします。アメリカでは、2017年には、10,000人あたり 12.6人でした。
そして、この 2017年までのデータでは、「若い世代の認知症の増加率が、最も高かった」ことが示されています。もっとも、すべての年代で大幅に増えてはいますけれど。
2013年と2017年の米国の認知症の比率の年代別の増加率
BCBS
このような、あまりにも急激な増加に「特別な原因がない」ということは、あまり考えられないことですが、もちろん公的には原因はわかっていません。
しかし、仮に強い電磁波がこのようなことと関係しているとすれば、これは 2017年までのデータですので、その後、現在はさらに増えている可能性があります。
この記事で、2011年に、医学誌「放射線生物学国際ジャーナル」に掲載された論文の一部をご紹介しています。
2011年9月の論文より
結果: データは、携帯電話で 15分または 30分間通話すると、携帯電話に近い毛根の細胞で一本鎖 DNA 切断が大幅に増加したことを示した。 15分と 30分のデータを比較すると、15分の電話使用後よりも 30分の電話使用後に有意に多くの DNA 損傷が発生したことも示された。
これは、
「携帯電話での通話後に、細胞の DNA の切断が大幅に増加した」
ことを示した論文です。
15分から 30分という比較的短い曝露で、耳の近くの毛根細胞の DNA 一本鎖の切断が大幅に増加したとあります。
通話する際に、耳と近い部位にあるのが脳であることは書くまでもないことかもしれません。
ちなみに、この研究で使われた携帯電磁の放射線は「 900 MHz」でした。
現在の 5G では、こちらのサイトには以下のようにあります。
> 5Gでは実効速度が 10Gbps程度、理論値の最大速度では 100Gbpsにまでなると… (digital-shift.jp)
えーと…… 2011年の研究の 900Mh との比較では、大体 10倍から 100倍ということでいいのですかね。
違っているとしても、「以前と比較して、格段に強い放射線になっている」ことは事実であり、現代人の DNA は相当破壊されている可能性があるといえるのかもしれません。
しかも、当然ですけれど、お腹の赤ちゃんや、あるいは乳幼児や小さな子どもたちも、日々、常に、下手すると 24時間など、この電磁にさらされているのですから、まあ…健康的とは言い難いです。
ドイツのメジャーメディア DW の2018年10月の記事には以下の下りがあります。
(2018年10月8日のドイツ DW の報道より)
> この研究では、1年分の携帯電話の放射線への曝露が、青年期の特定の脳領域の記憶能力の発達に悪影響を与える可能性があることがわかった。ここでの「曝露」という言葉は、ほとんどの場合、通話を意味する。
>
> 研究者は以下のように述べる。
>
> 「吸収された放射線の 80%は、電話を頭にかざすことによるものです」
>
> 興味深いことに、電話を頭の右側に持ったときに、脳の記憶機能が放射線の悪影響に対して、より脆弱であることを発見した。
>
> この部位には、記憶に関連する脳の領域がある。
>
> 研究者たちは、携帯電話の使用と認知の両方に影響を与える可能性のある思春期を含む他の要因を除外するために、より多くの研究を行う必要があると強調する。 (DW)
この「記憶に関連する脳の領域が影響を受ける」ということは、さきほどの「アメリカで若い世代の認知症が大幅に増加している」ということを何となく思い出す部分はあります。
他にも、脳と携帯電磁波についての多くの論文がありますが、内容的にはおおむね同じようなものが多いです。
携帯の電磁は腸内細菌および常在菌を減少させる
前回の記事で、自閉症スペクトラム障害の要因として、「妊娠している母親の腸内細菌環境」と「乳幼児の抗生物質の使用による腸内細菌環境の変化」を取り上げました。
ずいぶん以前のメルマガで、2016年のアルメニアの科学者たちによる論文をご紹介したことがありましたが、それは、
「携帯の放射線は、細菌 (バクテリア)を弱体化させる」
という内容のものでした。
(論文より)
> ミリ波または低強度で非常に高い周波数の電磁界は、大腸菌や他の多くの細菌に影響を与え、主にそれらの成長を抑制し、特性と活性を変化させた。
>
> これらの効果は非熱的であり、さまざまな要因に依存していた。
>
> ミリ波効果の重要な細胞への標的は、水、細胞原形質膜、およびゲノムである可能性がある。
ですので、小さな子どもなど、腸内細菌環境がこれから育っていく人たちの場合、強い携帯の放射線に曝露し続けることで、体内の常在菌が「弱くなってしまう」という可能性はあるかもしれません。
一方で、自然環境の普通の細菌たちも、現在は元気をなくしているのかもしれないですね。
細菌には、ウイルス感染から守ってくれるものがたくさんありますけれど、思えば、この数年、耳にする病気は、「ウイルス性のものが圧倒している」気もします。
ともかく、私たちの日常で、強い携帯の放射線から逃れられる術はあまりないですけれど、少なくとも「妊婦さん」たちは気をつけていただきたいと思います。
もっともいいのは、「スマートフォンを持たない」ということですが、現在の生活ではそれは難しいとも思います。ちなみに、最近のスマートフォンなどでは、電源を切っても、内部的に電磁が放射されるものが多いようで、それを避けるには、
「できるだけ機内モードにしておく」
というのがいいようです。
もちろん、今回ご紹介した論文や研究は、これと自閉症スペクトラム障害の増加が関係しているということを述べているのではないですが、
「携帯の電磁波は、小さな子どもの脳には悪影響が強すぎる」
とは言えそうです。
マンサル・デントン博士という方による「EMF (携帯の電磁波)からの保護プロトコル」というものを載せさせていただいて締めさせていただきます。
これは、「1」が断食の勧めからなのですが、断食は、ちょっと個人的な判断でおこなうと危険もありますので、割愛します。
EMF 保護: EMF プロトコル
必ずしも EMF について過剰に心配する必要はないが、その曝露には注意を払いたいと考える。EMF 放射が私たちの脳だけでなく、最も基本的なレベル (細胞と DNA)で私たちの体に影響を与えることは明らかだからだ。
EMF から保護するために使用できるツールやデバイスは多数あるが、EMF プロトコルは非常に単純なままだ。EMF 暴露を減らすために何千ドルもかける必要はなく、あまり神経質になることもない。
#2. グリシン酸マグネシウム
以前、EMF がどのようにして過剰な細胞内カルシウムを生成するかについて説明したが、完全なカルシウム・チャネルのブロッカーはマグネシウムだ。マグネシウムは西洋人の 70~ 80%に不足しているが、カルシウムを減らし、二次酸化ストレスとフリーラジカルを軽減するのに役立つ。
マグネシウムの 2つの最良の形態は、トレオン酸マグネシウム(血液脳関門を通過する)とグリシン酸マグネシウム(生体利用率が高い)だ。
#3. 機内モード
携帯電話の EMF に「簡単に勝つ」方法は、就寝時に携帯電話を機内モードにすることだ。できるだけ日中も機内モードにするのがベストかもしれないが、特に就寝中は機内モードにするのがいい。
#4. WiFiルーター
就寝中は WiFi を維持する必要はない。壁から装置を完全に取り外すことができれば素晴らしいのだが、電話から WiFi をオフにするだけのシステムをセットアップできれば、さらにポイントが高くなる。
#5. 電話を遠ざける
一般的に言えば、電話があなたから離れていればいるほど良い。ヘッドフォン、スピーカーフォンなど、携帯電話を脳の横で使わない方法で話すのが良い。
これには、体のどこに置くかが含まれる。EMF 曝露が精子の質と運動性を低下させる十分な証拠がある。あなたが子供が欲しいのなら、(いつでも)ポケットや下着から携帯電話を取り出してほしい。 ポケットに入っている場合は、機内モードになっていることを確認すること。
高度: 携帯電話/ラップトップケース
多少の余裕がある場合は、EMF の放出を防ぐように特別に設計された携帯電話やラップトップのケース (EMF からの保護ケース)を用意することをお勧めする。
この「ケース」は、いわゆるファラデーケージと言われているもので十分なはずで、つまり「鉄製の密閉された箱」なら何でも大丈夫だと思います。お菓子の空き缶でもなんでも、鉄(それが鉄製かどうかは磁石でわかります ← ピッブエレキバンでもわかります)で密封された箱なら、放射を防ぐことができます。
ファラデーケージについては、以下の太陽フレアの記事でふれています。
太陽、食糧、そして準備
In Deep 2022年2月24日
この記事の後半にあります。
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