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「PM2.5を含む大気汚染が認知症のトリガーとなる」ことがアメリカの研究でさらに明白に。しかし発症が物質からの影響だけではない事実もある中、私たちはどのように「防御」できるのか

      2017/11/16

2017年2月6日のニューヨークタイムズより

・NY Times

今年1月に、「大気汚染と認知症」の関係を示唆するかもしれないデータとして、

これから全世界の92%の地域で進むこと……。主要道路沿いに住む人たちの認知症リスクが異常に高い理由を考えているうちにわかった「ナノ粒子とPM2.5が脳機能(海馬、松果体)を破壊していくメカニズム」
 2017/01/13

という記事で、「高速道路などの幹線道路沿いに住む人たちの認知症リスクが異常に(カナダのデータでは7倍)高い」ということをご紹介したことがありました。

また、PM 2.5 などで知られる物質をはじめとする微細粒子が「脳にダメージを与える仕組み」を、ごく簡単にですが、記しました。

その後、アメリカの南カリフォルニア大学の研究チームの長期( 1995年から 2010年まで)の調査で、「大気汚染と認知症が関係していることは確定的なのかもしれない」ことを示すかもしれないという科学論文と、それに関しての報道がありました。

今現在、世界の非常に多くの場所で大気汚染が深刻な問題となっていますが、これらが直接、認知症に関わってくるとなりますと、先ほどリンクした記事のタイトルに入れました「これから全世界の 92%の地域で進むこと…」にある響きのように、

「これから全世界的に、認知症が感染症のように拡大していく」

という可能性は、それほど大げさな表現ではないのかもしれません。

今回は、その大気汚染と認知症の関係の論文を紹介した報道をご紹介すると共に、最近の記事で、いろいろと病気などのことについて書いていますが、「認知症も、また物質からの影響だけの問題だけではない」ということも、時間が足りれば、合わせて記しておきたいと思います。

まず、そのアメリカの研究論文について報じたニューヨーク・タイムズの記事をご紹介します。数値など明記されていない部分に関しては、もとのネイチャーに掲載された論文などから補足しています。

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Air Pollution May Contribute to Dementia
NY Times 2017/02/06

大気汚染は認知症の原因である可能性がある

最近の新しい研究は、大気汚染が脳の老化を加速し、認知症の進行の原因となっていることを示した。

また、特定の遺伝子変異を有する女性は、他の人たちよりも、大気汚染による認知症リスクが極めて高いことも示唆している。

研究は、南カリフォルニア大学の予防医学のジゥチュアン・チェン(Jiu-Chiuan Chen)准教授らによって、 1995年から 2010年にかけておこなわれ、アメリカ 48州の 65歳から 79歳の高齢女性 3647人の、調査開始時には認知症にかかっていない女性たちのデータを分析した。

十分に検証されたアンケートにより女性の精神的能力を追跡し、大気汚染レベルに関しては、アメリカ環境保護局の公的データを使用して算出した。

PM 2.5 として知られる肺に容易に浸透する微粒子状物質の濃度が高い地域に住んでいた女性は、認知能力の低下の危険性が最も高く、PM 2.5 による曝露が最も少ない地域に住んでいた女性より、認知症になる率が 68%から 91%高かった。

このリスク水準をアメリカ全体の人口にあてはめると、認知症の症例全体の 21%が大気汚染が原因となっている可能性があるとしている。

しかし、これに加えて、他の要因の特殊性も見られた。この最も PM 2.5 への曝露が高い人たちの中で「 ApoE4 (アポリポ蛋白 E)遺伝子変異体」の2つの型を有する女性の間では、295 %のリスク増加が見られたのだ。 ApoE4 は、それ自体がアルツハイマー病のリスクを高めることが知られている。

人口の全体の約 2 %の人たちが ApoE4 を持つ。


 

ここまでです。

記事に出てくる「 ApoE4 (アポリポ蛋白 E)」とは、かなり以前から、アルツハイマー病の危険因子と見なされている遺伝子型ですが、この論文では、「 ApoE4 を持つ人が大気汚染にさらされると、さらに高いアルツハイマー病の発症率となる」ことを示しているようです。

しかし、ApoE4 の遺伝子を持っていなくとも、「認知症になる率が 68%から 91% 高い」ということが示されているわけで、また、こちらの過去記事で報道をご紹介したカナダの 650万人を対象にした大規模な調査では、

高速道路から 50メートル以内の範囲に住んでいた人たちでは、高速道路からの距離が 300メートル以上の場所に暮らしていた人と比較して、認知症のリスクが7倍高かったことが示された。

とあり、大気の汚染の度合いに比例して(高速道路に近ければ近いほど)認知症発症の率が上がることが示されています。

7倍という数値はすごいですよね。

ところで、今回の南カリフォルニア大学の研究は「女性だけ」なのですが、これはどうしてなのかなと思っていました。

大気汚染が女性だけに特に影響を与えるというようなこともないでしょうし、こういう研究で男女をわける理由がわからなかったので、調べてみましたら、大気汚染の影響の問題ではなく、先ほど記しました遺伝子「ApoE4 (アポリポ蛋白 E)」の問題のようです。

下は、2012年6月の報道からの抜粋です。

遺伝子型「ApoE4」、アルツハイマーとの相関は女性限定

 AFP 2012/06/18

アルツハイマー病の主要な遺伝性の危険因子とされている遺伝子型「ApoE」が、女性にだけ影響し、男性には影響を及ぼさないことを初めて示す研究が、米専門誌「神経科学ジャーナル(」に掲載された。

研究チームは論文で、今回の発見はアルツハイマーが女性により多く発症することの根拠になる可能性があると指摘。またApoE4の遺伝子型を保有する男性に、アルツハイマー発症の高いリスクがあると考えられるべきではないことも示唆した。

ApoE4 というものを持つ人は、女性にも男性にもいるわけですが、認知症に影響するのは女性だけということのようです。

今回の南カリフォルニア大学の研究が女性だけだったのは、そのことが関係しているのではないかなと思います。

 

 

広がる大気汚染の中の人類の未来

そんなわけで、「大気汚染、特に微細粒子などが認知症の原因」となっていることは、ほぼ確定的な感じなのです。

近年の In Deep は、認知症関係の記事も多いですけれど、それは、何といっても、今後の世界での確実な「脅威」のひとつが「認知症の飛躍的な増加」であることは間違いないからです。

日本でも、下のような感じで増加していくと、国は見ています。

厚生労働省による日本の認知症患者の2030年までの推計

日本経済新聞

この表に「認知症に影響する糖尿病の人が増え有病率が上昇する場合」とありますが、今回の記事にありますように、「大気汚染が認知症と関係している」のなら、それも関係してくるはずで、

「大気汚染(たとえば PM 2.5 など)の汚染が上昇した場合も有病率は上昇する」

と言えることに気づきます。

まあ・・・日本そのものが発祥の PM 2.5 の量はそれほどのものではないかもしれないですが(ただし、幹線道路沿いの微細粒子の量はすごいと思います)、中国の汚染は「最近さらに加速」していますので、日本もわりと頻繁に影響を受けています。

たとえば、下は 2月16日午後9時の予測で、中国本土はカオスとしか言いようがないですが、日本も、北海道や東北はそれなりの PM 2.5 濃度となっています。

PM2.5の濃度

大気汚染原因物質 PM2.5 関連対策情報

中国の大気汚染と、それに中国やアジアの車の交通量の増加がさらに加速すると、日本と、あるいは朝鮮半島も、耐えず微細粒子に曝露し続けるということになりそうです。現在ヨーロッパの大気汚染も大変に深刻ですが、「その主な理由は車」です。

とはいえ、中国から流れてくる PM 2.5 は、生活の中では避けようがないもので、普通のマスクをしている程度では、おそらくほとんど何の意味もないはずです。

下の中国の人くらいにすれば、少しは守れるかもしれないですが、これで学校や会社に行くのも、毎日だと大変です。

中国遼寧省にて 2015年11月

recordchina.co.jp

そんなわけで、中国本土はこれから大変な認知症激増に見舞われそうですが、日本なども周辺国も、ぼちぼち影響を受け続けそうです。

上の図を見ますと、最近、マサオさんが殺された北朝鮮などは、オレンジ色にまで濃度が上がっていますしね。北朝鮮自体には「 PM2.5 を排出するような要素は、ほとんどない」というあたりが皮肉であります。

大気汚染は今では世界的な問題で、

世界の人口の90%以上が危険なレベルの大気汚染にさらされ、毎年650万人が大気汚染が原因で死亡している
 地球の記録 2016/09/28

という記事で、2016年の大気汚染についての国際報告についてご紹介したことがあります。

2016年の大気汚染の状況 WHO

WHO

地図では、目立っていないかもしれないですが、最近はヨーロッパの大気汚染が、非常に深刻です。

そんなわけで、大気汚染と認知症の関係がさらに明らかになるにつれて、これからの世の中についての、あまり希望的ではない未来を考えざるを得ないのですが、しかし、このブログでよくふれる「病気の原因」の概念、たとえば、

「病気の存在しない社会」を作ることは可能なのかもしれない : 量子物理学的な医学見地から、病気は「意識と思考」で作られることを確信した日
 2017/02/07

などでも書かせていただきました「心が病気を作る」という概念は、認知症にも当てはまる部分はあると思います。

時間がなくなり、今回はふれられないですが、たとえば、2013年に、岡山大学の研究チームが、学術的に「タイプD」と呼ばれる性格(「否定的な感情や視点、考えを抱きやすい傾向」と「他者からの否認や非難などを恐れるために否定的な感情を表現できない傾向」を併せ持った性格)の人が、認知症に占める割合が 50%に近いほど高かったという調査を論文で発表したことがあります。

論文は英語ですが、その概要は、

岡山大学プレスリリース 高齢者の新たな健康リスク要因は“性格”!?

にあります。

他にもいろいろとあるのですが、認知症に関しても、基本的な原因は物質だけではないということは確かで、他の多くの病気と比較的同じような「心の対処」が効果的だと思えるのです。

つまり、「環境がどうであろうと、(理論的には)認知症は防げるはず」だと確信しています(幹線道路沿いの生活は厳しい感じもしますが…)。

具体的には今は書く時間がないですが、そういう心の置き方に注意する生活を心がければ、少なくとも、多少は良い方向に向かう方法論があるとは思います。

そうすれば、欧州宇宙機関のロゼッタが調査した彗星の名前もスララスラと出てくるというものです。それは、チ・・・チュ・・・(ダメじゃん)

このようにフェイルする場合もありますが、それでも少しでも各自それぞれが「精神的な防御」をすることは無駄ではないように思います。

医療者ではないですので、具体的なことは書けないと思いますが、そういうような示唆を理解できるような論文や研究を今後ご紹介できればと思っています。



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