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パンスペルミア 人類の覚醒と真実 宇宙の中の地球

パンスペルミア説が証明される日 : 探査機ロゼッタがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の大気から「生命の基本的な構成要素」のアミノ酸やリンなどを宇宙観測史上はじめて検出

投稿日:2016年5月29日 更新日:

そして、宇宙全体に「生命の種子」が広がっていることも確定的に

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2016年5月27日のSPACE.comより
67p-building-blocksSpace.com




 

これまで、この In Deep では、

・パンスペルミア説

というものについて何度も記事にしてきた経緯があります。

パンスペルミア説というものは、提唱者によって内容に若干の違いはあるにしても、以下のようなものです。

パンスペルミア説 - Wikipedia

パンスペルミア説は、生命の起源に関する仮説のひとつで、生命は宇宙に広く多く存在しており、地球の生命の起源は地球ではなく、他の天体で発生した微生物の芽胞が地球に到達したものであるという説。

 

ついにパンスペルミア説の支持への最強の証拠が登場

パンスペルミア説を唱えた主な科学者としては、1903年にノーベル化学賞を受賞したスヴァンテ・アレニウスや、1866年に大西洋横断電信ケーブルの敷設に成功したウィリアム・トムソン卿など名だたる人が多いのですが、私が最も感銘を受けたのが、天文学者のフレッド・ホイル博士の説で、その著作を読んだことで、私の宇宙観は 180度変わったのでした。

というか、フレッド・ホイル博士の著作と出会っていなかったら、今の In Deep は存在していないといってもいいと思います。

そのホイル博士の説は、 Wikipedia から抜粋しますと、以下のようなものです。

ホイルは晩年、生命の起源を自然主義的に説明する化学進化の理論を頑強に批判した。

ホイルは、生命は宇宙で進化し、胚種 (panspermia) によって宇宙全体に広がったというパンスペルミア仮説を唱えた。

また地球上での生命の進化は彗星によってウイルスが絶えず流入することによって起こると主張した。

もっと簡単に書きますと、ホイル博士の主張は、

「地球の生命は彗星が運んできた」

という主張でした。

フレッド・ホイル卿
Sir-Fred-HoyleSir Fred Hoyle

 

フレッド・ホイル博士の著作を偶然知ったのは、6年か7年くらい前だと思いますが、以下の2冊を続けて読んだ時に、それまで自分が漠然と「知っていたつもりでいた」宇宙観がすべて間違いだったことに気づきます。

何しろ、ホイル博士の著作は、理詰め、理詰め、理詰めの完全な理論の中で展開されますので、否定しようがない説得力がそこにはあり、最初に下のどちらを読んだのか忘れましたが、本当にしばらくは呆然としたものでした。

・生命はどこからきたか
・生命(DNA)は宇宙を流れる

上の「生命(DNA)は宇宙を流れる」の Amazon の書評に、

> おそらくこれらの説が正しいかどうかは、あと50年もすればはっきりするような気が私はしている。

と書かれていた方がいましたが、そんなにかかりませんでした。

ホイル博士は、今から 15年前の 2001年に亡くなっていますが、いくつかの間接的証拠は数多く研究でとらえながらも、彗星が地球に生命を運んだという「直接的証拠」をつかむことはできないまま亡くなりました。

しかし、没後 15年目の今年 2016年、「地球の生命は彗星が運んだ」ということが、ほぼ確定的になる発見がなされたのでした。

それが冒頭の報道であり、5月27日にサイエンスに発表されたその内容は、海外の多くのメディアで報じられました。

それはタイトル通りで、「彗星から、生命の素材となる基本要素がすべて見つかった」のでした。

検出したのは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を探査していた欧州宇宙機関の無人彗星探査機ロゼッタなのでありました。

宇宙観測史の中ではじめてとなる「彗星を直接調査する」という重大な使命を帯びてチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に向かった探査機ロゼッタは、2014年8月に、お見事、彗星の軌道に到達し、11月にはランダー(無人着陸機)フィラエ の投入に成功し、人類の作った機器が始めて彗星に降り立ったのでした。

しかし!

2014年11月になり、太陽電池で駆動している着陸機フィラエが消息を絶つという重大事態にいたり、それは後に、彗星の太陽光の当たらない部分に着陸してしまったことがわかったのですが、彗星の組成調査に暗雲が漂い始めたりもしたこともありました。

そのことは、

彗星の正体の判明はどうなる?:彗星に着陸した探査機ロゼッタの着陸機フィラエが電力不足により稼働できなくなる可能性
 2014/11/14

という記事に書いたことがあります。

しかし、そのようなトラブルはあったものの、ロゼッタ本体は着々と彗星の軌道上から地球にデータを送り続けました。

2014年10月には「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が強烈な悪臭を放っている」ことを示すデータを送信してきました。

「彗星は強烈な悪臭を放っている」ことが観測されたことから改めて思う「宇宙塵も彗星の母体も生き物」で、さらに言えば宇宙はすべてが生き物かもしれないという感動
 2014/10/27

昨年9月には、「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は大量の酸素に包まれていた」という衝撃的な事実をロゼッタは報告してきます。

この内容は、

衝撃のデータを送信してきた探査機ロゼッタ:チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は「大量の酸素」に包まれている!
 2015/10/29

という記事に書きました。

氷とガスを噴き出すチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の近影
p67-ice-jet2Daily Mail

 

そして、今回ついにロゼッタは、

「彗星の大気からアミノ酸やリンなど豊富な有機化合物を検出」

したのでした。

今回の発見により、「彗星上には、地球の生命に必要な基本的な物質がすべて揃っている」ことがはじめてわかったということだったのです。

ちょうど、先月、

《特報》「地球の生命は宇宙で作られている」ことがほぼ確定 — 発見の最後の砦だった「RNA(リボ核酸)」が宇宙空間で形成され得ることをフランスの研究チームが特定したことにより「地球の生命の構成要素がすべて宇宙に存在」することが確実に
 2016/04/08

という記事で、DNA の機能を実行させる RNA が宇宙空間で形成される可能性をフランスの科学者たちが証明したという記事をご紹介したばかりですが、そして、今度は彗星から生命の素材が見つかったという流れとなりました。

もちろん、生命を構成する基本的な物質が見つかっただけでは、それはまだ生命と直結はしません。

「それを生命にするもの」が必要なのです。

そして、ここが最も難しいところなのですが、それらの「生命の素材」を組み立てる原動力や、あるいは存在が何なのかということは考えれば考えるほどわからないのです。

生命を作る単純な酵素ひとつが形成されるためにでさえ、とんでもなく膨大で緻密な配列がなされなければならないですが、大型生物で、それが自然になされるということは、数字的に無理なものです。何かの「原動力」が作用している。

理詰めの科学者だったフレッド・ホイル博士も、最晩年には、それらのメカニズムについて、「巨大な知性が宇宙に存在していると考える他はない」というような思考となっていったようです。

この「素材を生命に結びつけるものが何なのか」については、あまりにも謎(というよりも、それが宇宙のすべての仕組みなので、真理といっていいかもしれません)であり、おそらくは永遠にわからないことだとは思います。

しかし、彗星が生命を運んでいること、そして、今回の記事でのロゼッタの主任研究員であるキャサリン・アルトゥエッグ博士の以下の発言。

「彗星に生命の素材があることがわかった以上、この宇宙で生命が存在する場所は地球だけではないということです。古代の宇宙と地球で起きたようなことが、宇宙のどこでも起きている可能性があると私は思います」

キャサリン・アルトゥエッグ研究主任
kathrin-altwegg-rosettaSRF

 

この発言などからもわかるように、この宇宙には、どこまでも果てしなく生命が広がっていることも間違いないようです。

このアルトゥエッグ研究主任は女性ですが、最近、このブログなどでもご紹介する科学記事などでの女性主導の科学研究やプロジェクトが出す成果はすさまじいものがあります。

それでは、この発見に関する記事をスペースからご紹介します。


Building Blocks of Life Found in Comet's Atmosphere
Space.com 2016/05/27

彗星の大気から発見された生命を作るための基本要素

無人探査機ロゼッタで 67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を調査している科学者たちは、彗星の塵状の大気の中から、生命を構成するために重要なアミノ酸と豊富な有機分子をはじめて検出した。

このことは、これら彗星の氷の塵のような物質が、地球に生命の基本要素の一部を運んでいるという仮説に対しての強い裏付けとなる。

ロゼッタは、有機分子の前駆体と生命体の必須要素であるリンの一部と共に、アミノ酸のグリシンを彗星の大気から検出した。

グリシンは、以前の NASA のスターダスト・ミッション(彗星の塵を地球に持ち帰るミッション)によってでの彗星の塵のサンプルから検出されていたが、今回のように、彗星の自然気化した大気から直接検出されたのは今回がはじめてだ。

彗星を取り巻く大気に生命を構成する基本要素が発見されたことは、彗星が初期の地球に生命を芽吹かせるための重要な役割を果たしていた可能性があるという考えを支持するものだと研究者たちは述べている。

ロゼッタ・ミッションの主任研究員であり、スイスのベルン大学で教えるキャサリン・アルトゥエッグ(Kathrin Altwegg)氏は、以下のように述べる。

「すべての有機物、そしてアミノ酸やリンなど、彗星の大気には、生命を作り出すためのすべてのものが含まれていると言っていいでしょう。ないものは、生命を作り出す原動力だけです」

「彗星には生命を作る原動力がないため、彗星上では生命が形成されないのです」

「しかし、彗星の大気の塵が、たとえば地球の暖かい海に落下したとします。そうすると、彗星の要素から生命が形作られる可能性があると思われるのです」

グリシンは、最も単純なアミノ酸の一つだが、これは地球からの観測など、遠くから検出することは困難だ。

しかし、ロゼッタは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から近い距離を周回しており、彗星から噴出する塵の粒子を獲得することが可能だった。

今回、彗星の物質の中に生命を構成する基本要素がすべて見つかったという発見は、古代地球の生命と彗星とが関係していることの強力な証拠となる。

米国メリーランド大学の彗星の研究者、マイケル・アハーン(Michael A'Hearn)氏は、「古代地球には、小惑星と彗星の両方の爆撃を数多く受けていた時代があることがわかっています」と言う。

「これまで、地球上での隕石から、様々なアミノ酸が検出されてきた歴史があったのですが、それらのアミノ酸は、すべて地球に落下した後に付着したものだとされてきたのです」

「それらの中には、本当にグリシンが含まれていたものもあったはずで、そう考えると、これまでの考え方は深刻なものだったと思いますが、今回ロゼッタが彗星から直接グリシンを検出したことはひとつの明確な答えになると思われます」

アミノ酸は生命をつくり上げる

アミノ酸は、複雑に折り畳まれた分子であり、タンパク質の基礎を形成する、地球上の生命にとって非常に重要なものだ。

アルトゥエッグ氏は、検出されたアミノ酸は彗星自体で形成されたものではなく、惑星が形成される以前の太陽系を構成した塵が広範囲に広がっていたことによるものだろうと述べる。

古代の地球の温度が下がってきた頃、彗星によって、地球に生命の基本的な構成要素が運ばれ、そして、それが地球の生命のきっかけとなったのではないかという。

グリシンなどより複雑なアミノ酸には液体としての水が必要なので、それらはおそらく地球で形成されたのではないかとアルトゥエッグ氏は述べる。この考え方は、ロゼッタがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星近くで、グリシン以外のアミノ酸を同定していないという事実によって支持される。

リンもまた生命には不可欠だ。とりわけ、これらは、DNA および、アデノシン三リン酸(ATP)が細胞によって使用される化学エネルギーを保存する分子の主要な構成要素となる。

今後、ロゼッタが検出したすべての有機物への理解と分析が進むと思われるが、次のステップでは、生化学的に、それらがどのように生命に結びついていくかの研究にも入ると見られる。

アルトゥエッグ氏は以下のように言う。

「今回の発見は宇宙生物学にとって非常に重要な検出となりました。つまり、彗星に生命の素材があることがわかった以上、この宇宙で生命が存在する場所は地球だけではないということです。古代の宇宙と地球で起きたようなことが、宇宙のどこでも起きている可能性があると私は思います」

そして、

「皆さんもご自身で想像してみて下さい:この宇宙にどのくらいの数の地球が存在している可能性があるかを。そして、どれほど数多くの進化した生命と、再進化した生命が存在している可能性があるだろうかということを」

とアルトゥエッグ氏は付け加えた。

この最新の研究は、5月27日の科学誌サイエンスのオープンアクセスジャーナル「サイエンス・アドヴァンセズ」に発表された。

 

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