アメリカの科学系メディアの報道より
寄生虫もまた植物や数々の細菌たちと同じように「人類が登場した時に、それを助けるため」に、人類登場以前から地球上に存在していた模様
昨日、冒頭のアメリカの科学記事を読みました。
そして、私は、
「ついに寄生虫までも……」
と感嘆しまして、この記事をご紹介させていただこうと思いました。
何が「寄生虫までも」かといいますと、最近、「腸内細菌」のことを何度か記事にさせていただいたことがありました。
いくつかありますが、たとえば下のようなものです。
・「腸は第二の脳」……ではない。腸内システムは脳をも支配している「第一の脳」である可能性が高まる。それが意味するところは「人間は細菌に理性までをも支配されている」ということで……
In Deep 2018/06/02・私たち人間の遺伝子情報(ゲノム)は「自らの腸内細菌によってコントロールされている」ことが判明
In Deep 2018/01/17
これらでご紹介しましたように、最近は、科学的あるいは医学的調査で次々と、「人間の健康と知性や理性を支配しているのは、細菌である」ということがわかってきていました。
そして、さらには以前の記事で、私は「植物がこの世に存在する意味」というものを以下の記事で書いたことがあります。
・植物が「緑色」であり続ける理由がわかった! そして人間の生活システムの完成は「植物との完全な共生」にあるのかもしれないことも
In Deep 2015/07/06
この記事は非常に長い記事ですが、その主要なテーマを簡単に書けば、
「植物は人間のために存在している」
という結論に行き着いたものです。植物は人間のために存在しているなどと書きますと、「おごった感じ」がされるかもしれないですが、そうではないです。
なぜかというと、
「人間も植物のために存在しているから」
です。
つまり、植物と人間の関係性というのは「完全な共生」だということに気づいたのでした。
もっとも、現在の社会でそれがなされているかというと、それはわかりません。
そして、この「完全な共生」は、先ほど書きました、腸内細菌と人間の関係にも当てはまります。
つまり、
「微生物(細菌やウイルス)は人間のために存在している」
と共に、
「人間は、微生物のために存在している」
と確信しているからです。
それについては、以下の記事でも記させていただいたことがあります。
微生物、植物…。地球上のすべてが人類と共生関係であり表裏一体であるかもしれないことを確認させてくれる「人間と細菌たちの共存=マイクロバイオーム」の概念
しかし、現実には、現在の私たち人類社会は、細菌やウイルスを含む多くの微生物を「敵」とだけ見なすような方向の社会として進んできました。
そういう中で、私は最近、いつも、今回ご紹介するような研究を待ち続けています。
それはどんなものかといいますと、
「現代社会で人間に嫌われ続けたり排除され続けてきた生き物が、実は人間のためになくてはならない存在だった」
というような研究です。
たとえば、ダニやハエなどのいわゆる害虫もそうですけれど、そういうものも、私の理念では「ある側面では必ず人間社会のために必要だから存在する」と確信しています。
極論すれば、多くの人を死に導くペストや鳥インフルエンザなどの強いウイルスも同じだと思っていますが、これは少し方向の違う難しい話となりますので、ここではふれません(このことについては、フレッド・ホイル博士が著作の中で詳しく解説しています)。
いずれにしても、私たちの現代文明は、
・多くの細菌やウイルスを排除してきた歴史
を持ち、
・多くの害虫と呼ばれる昆虫を排除してきた歴史
を持ちます。
さらに「排除」という意味では、今回出てくる「寄生虫」も同じだと思います。
ですので、今回、アメリカの名門カリフォルニア大学リバーサイド校が、アメリカ国立衛生研究所からの援助を受けて行った研究の中で、
「寄生虫は宿主に寄生したときに、カンナビノイドという大麻様成分を宿主の中に放出し、その痛みや炎症を軽減する」
ということが判明したことを発表したというのも、待ち望んでいたようなタイプの研究のひとつだったといえます。
嫌われもの的な立場でしか見られず、文明社会の中で、ひたすら駆除・排除されてきた寄生虫が、今回の発見により「腸内のさまざまな疾患に使用できる可能性が出てきた」のです。
そこにはグルテン不耐性の重症版といえるセリアック病も含まれます。
そして、今回の研究でわかることは、どうやら、寄生虫が人間などの宿主に入った時のこの働きは、「人間が地球に登場する前から存在していた」と推測されるらしいのです。
「人間が地球に登場したら、その病気を助けてあげられる」
そういう存在が寄生虫だったようです。
こういう、人間の登場のために、それ以前の原始の地球で進んでいたと考えられることは他にもたくさんありまして、たとえば、以下の記事では、「 4.5億年前に海中の藻が陸上の植物になるメカニズムが判明した」ことをご紹介しています。
私やあなたはなぜ地球にいられる? それは「4.5億年前の藻が植物として地球を支配するため」に上陸したから : 英国の専門機関により初めて解明された「植物はいかにして地球に誕生したか」
これは進化論的な意味での適応による進化などではなく、「もともと陸地の細菌に、藻と共生して植物として生きられるようなメカニズムが、互いの DNA の中にあった」のです。
そして、先ほど書きましたように、「植物は人間のために存在する」という原則を考えますと、この地球の歴史は、何もかもが人間が地球に登場した時に「人間のためになる地球になるように」発展してきています。
実際には、この数百年間の地球の科学は、その「生命進化の完ぺき性」を否定し、ダーウィン的な「地球の生き物は適当に進化してきた」という方向で進みました。
しかし、DNA や RNA などの遺伝子研究が進化し、科学的実験も多様化していく中で、そのような「地球の生命の進化の曖昧性」は捨て去られていっているように思います。
この地球もそこにいる生き物たちもどちらも完全な存在なのです。
そのような生き物たちを私たちは必死に駆除・排除し、それは今も続いています。
というわけで、そろそろ、その研究についての記事をご紹介します。
ところで、カンナビノイドというのは、簡単に説明すれば、
カンナビノイドは、アサ(大麻草)に含まれる化学物質の総称である。
というもので、痛みや炎症、その他を軽減させますが、これは人を含む哺乳類には体内でも生成されることがわかっています。
そして、寄生虫は「それをさらに助ける」のです。
では、ここからカリフォルニア大学リバーサイド校の研究についての記事です。
In parasitic worm infection both the host and the worm produce cannabis-like molecules
sciencedaily.com 2018/08/22
寄生虫の感染では、宿主と寄生虫の両方がカンナビノイド分子を産生する
寄生虫は、その宿主の痛みや炎症を軽減させることによって自らが生き残るために役立つ可能性のあるエンドカンナビノイド系を持っていることが、学際的な研究チームにより発見された。
米カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームによる新たな発見によると、哺乳動物と同様に、寄生虫はエンドカンナビノイド系を持ち、これは宿主(寄生虫に感染した人や動物)の痛みや炎症を軽減することにより、感染する宿主と寄生虫に共に役に立っていると考えられることがわかった。
マウスで行われたこの研究は、エンドカンナビノイド系に関連する細胞シグナル伝達経路を同定することが目標であり、そのエンドカンナビノイド系は寄生虫感染の排除または寄生虫に感染した結果としての成果を目的とした治療法を開発できる可能性を持つ。
エンドカンナビノイドは、免疫、行動、およびニューロンなどいくつかのプロセスを調節するために私たち自身の体内に自然に作られた大麻成分様の分子だ。大麻と同様に、エンドカンナビノイドは摂食行動を強化し、疼痛および炎症を軽減する。
今回の共同研究の責任者であり、カリフォルニア大学リバーサイド校の生物医学の助教授ニコラス.V.ディパトリツィオ(Nicholas . V . DiPatrizio)氏は、以下のように述べた。
「寄生虫に感染すると、宿主の腸は、これらの大麻様分子を、痛みの反応を抑えるためのセーフティネットとして作り出していることがわかったのです」
「私たちが今回発見したのは、寄生虫も感染過程全体を通じてこれらの天然のカンナビノイドを生産しており、特に寄生虫が皮膚に浸透したときに宿主の痛みへの反応を軽減することでした」
調査結果は医学誌「ジャーナル・インフェクション・アンド・イミュニティ( journal Infection and Immunity)」に掲載された。
研究者のひとりであるカリフォルニア大学リバーサイド校の生物医学助教授ミーラ . G . ネアー(Meera G. Nair)氏は以下のように言う。
「これまで寄生虫感染症のエンドカンナビノイドについての調査はされませんでしたが、寄生虫の感染後に宿主の体内のエンドカンナビノイドが上昇し、宿主の身体から排出すべき寄生虫を排除することにも貢献していることが判明したのです」
「これは、以前は私たち医学者が知らなかった寄生虫の感染の中で働く人体の保護経路なのです。寄生虫は、宿主に摂食行動を増やすようにし、つまり食べ物を増やすように促し、炎症や痛みの原因となる組織損傷を減らすことができるようになるのです」
エンドカンナビノイド系はすべての哺乳動物に存在するが、最近の研究は、それがより原始的(太古の時代から存在するシステム)であるかもしれないことを示唆している。
確かに、ある研究は、黒トリュフキノコが、トリュフを食べて胞子を分散させるトリュフ豚を誘引する機構として、エンドカンナビノイドの一種であるアナンダミドを作る可能性があると報告している。
寄生虫として知られる線虫「カエノラブディティス・エレガンス」は、その摂食を調節するために働くことができるエンドカンナビノイド系を有する。
エンドカナビノイドの研究にも詳しいパトリツィオ氏は、以下のように述べる。
「このエンドカンナビノイドのシステムは、疼痛反応を抑制することが知られています。寄生虫に感染すると、帰省された宿主の腸は、これらの大麻様分子を、おそらく疼痛反応を抑制するためのセーフティネットのような意味で生成しています」
「私たちが今回発見したのは、寄生虫自身もまた、感染過程を通してこれらの天然カンナビノイドを生産しており、特に寄生虫が皮膚に浸透すると、宿主の疼痛応答をさらに弱め、痛みを軽減するのです」
(※ 訳者注 / これは、人に痛みや炎症がある場合、人体の中でもカンナビノイドの働きによって痛みを軽減するメカニズムがあるのですが、寄生虫に感染すると、その寄生虫のカンナビノイドの効果が加わり、さらに痛みと炎症が軽減される作用を高めるという意味だと思われます)
そして、パトリツィオ氏は「これは、体内の生存促進シグナルの伝達経路であり、寄生虫感染の治療において、治療上の利点を有する可能性があります」と言う。
この論文の共同執筆者である寄生虫学者アドラー . R . ディルマン(Adler R.Dillman)氏は、蠕虫(ぜんちゅう)が自らの体内に大麻のような分子を自然に産生していることに驚いたという。
ディルマン氏は以下のように述べる。
「私たちは、寄生虫が自らの体内に大麻様の物質を産生しているというこの発見にとても驚きました」
「そして、この研究で調べたほとんどすべての虫(線虫、蠕虫などのいわゆる寄生虫)にエンドカンナビノイドのシステムが存在することを考慮しますと、その経路は膨大な数の種に渡って進化的に保存されていると考えられます。つまり、体内の古い、そして重要なシステムなのです」
カリフォルニア大学リバーサイド校にあるディルマン氏の研究室では、ラットの胃腸に寄生し、広く研究されている寄生虫である N. ブラシリエンシス(N. brasiliensis)がエンドカンナビノイド、特にアナンダミド(人間などの体内でも産生されるカンナビノイド)を産生することを発見している。
今回の研究により、このシステムは、ヒトに寄生する最も一般的な蠕虫である回虫および鉤虫を含む多くの寄生線虫内で保存されていることが明らかになった。
ネアー氏にとっては、これがチームの「最も刺激的な発見で、そして最大の発見」だという。
ネアー氏は以下のように言う。
「これらの寄生虫のカンナビノイド・システムはヒトの行動、痛みの軽減に大きな影響を与えている可能性があり、それは寄生虫と宿主の双方に影響を与え合っている可能性があるのです。このカンナビノイド系が存在しなければ、感染した宿主は、より大きな負担を担うことになるでしょう」
実際に、研究室でのマウスでの実験では、寄生虫のこのカンナビノイド系の経路を遮断すると、体調がより悪化してしまった。
「私たちの現在の研究は鉤虫に焦点を当てていますが、現在、他の蠕虫を調査する準備が整っています。 宿主と寄生虫がエンドカンナビノイドを誘発し、それにより宿主の組織の炎症が軽減され、摂食行動が改善されるかどうかを調べるのです」
「寄生虫は宿主の栄養素を枯渇させるので、それが摂食改善の状態を引き起こすということは理にかなっています」
また、ネアー氏はさらに次のように語った。
「抗炎症性エンドカンナビノイド系は、鉤虫感染症だけでなく、セリアック病および炎症性腸疾患の治療のための可能性についても洞察されています」
ディルマン氏は、寄生虫がヒトのカンナビノイド系を、胃腸機能を含む多数の病理および行動において支配していると述べる。そして、これまで、寄生虫がこのエンドカンナビノイド経路を操作していることを誰も知らなかったことを強調した。
そして、ディルマン氏は以下のように言った。
「私たちの研究は、私たちが当初追求しようとしていたことより興味深い研究課題を引き起こすことになっています。これは将来的に有望な治療につながる可能性があります」
この研究は、アメリカ国立衛生研究所からの 275,000ドル(約 3000万円)の助成金によって支えられており、カリフォルニア大学リバーサイド校が追加の支援を行った。