滅亡的な渦中にある人間社会と生態系
日々の報道を見ていますと、今は実に「病気の時代」であることが強く実感されるときに生きていることを自覚します。
人間の世界では、いまだに主に新型コロナウイルスの話題が他を席巻している感じですが、この新型コロナウイルスにしても、「世界中でどんどん感染確認例が急増している」のです。
少し前よりはるかに加速していて、公式に発表されている世界の感染者数も 1300万人を超えました。
7月13日の感染状況
・worldometers.info
いくつかの国や地域では、それぞれの国が 3月にロックダウンを実施した前よりも確実に感染例が急増しているのに、欧米を含む多くの国では、経済を再開させ、観光なども再開させたりしています。日本でも、Go Toトラベルとかなんとか。
新型コロナの感染力のもともとの強さと、その後の変異の状態を思えば、現在のように「どんな対策をとったところで時間の経過と共に感染者数が増えていく」ことは多少予想はついていたと思われるのですが、今、感染拡大に関係なく経済を再開させようとしているのなら、なぜ最初からそれをしなかったのかと思います。
ロックダウン後で壊滅的な影響を与えた後に、今さら何をどうやったって遅すぎる。
観光と飲食に関わる多くの人や小さな企業はそろそろ限界を迎えていると思われます。
今日、近所の道を歩いていましたら、小料理屋さんというのか何というのか、やや高齢の女性が和服姿で対応してくれて、少し凝った料理などを食べられるというような小さな店があるのですが、扉に、
「7月〇日で閉店させていただきます。20年間のご愛顧ありがとうございました」
と書かれた紙が貼られていました。「 20年やってて、こんな理由で終わりか・・・」と寂しい気分になりました。
こういう告知の紙は、私の住む周辺に限れば、緊急事態宣言の直後ではなく、最近になって、むしろ見られるようになってきていますので、これからも相次ぐように思います。
緊急事態宣言などとは関係なく、毎日毎日「今日は何人感染しました」とか「夜の街に休業要請」とか、こんなことがこの先何ヶ月経っても続くのなら、経営が改善する兆しもないでしょうし、飲みにいくたびに、旅行に行くたびに、マスクだ、消毒だ、感染経路の追跡だとか言われていたら、誰も遊びに行きたくなくなるのが普通です。
飲みに行くのが好きだった私でさえ、消毒液を店員が持ってくる日常にうんざりしていて、ほとんど外で飲食しなくなりました。
もう今後もずっと行かないような気さえしています。
こんな「雰囲気」が半永久的に続くのだとすれば、賢い経営者なら「今やめるのが得策」と思うわけで、この先さらに激しい閉店ラッシュが訪れるように思います。
7月7日の報道の「消費支出、5月16.2%減 減少幅は最大」によれば、5月は、
・宿泊料は前年同月比で 97.6%減
・居酒屋などでの飲酒代は 88.4%減
と壊滅的な数字となっていたそうで、6月に緊急事態宣言が解除されたとはいっても、今の日々の報道のように「夜の街が、夜の街が」と言われている限りは、復活は程遠いと思われます。Go Toトラベル何とかにしても、世論調査を見れば、「今後も旅行の計画を立てるつもりはない」という人が 6割ほどを占めていることがわかり、元に戻るのは難しい世界だとわかります。
この新型コロナウイルスについて、最近、アメリカのスタンフォード大学の疫学教授が、ギリシャの報道メディアのインタビューに答えていて、
「新型コロナウイルスの致死率は、45歳未満はほぼ 0%です」
と述べていました。
もうずいぶんと症例の数が集まってのこの数値ですから、ある程度信頼できるものだと思いますが、基礎疾患や肥満がない限り、45歳未満の人は、死亡する可能性がない病気だと述べています。
ですので、現実として、「いったい、何を恐れて社会を止めているのかよくわからない」という形而上的な世界に今の私たちは生きているということはいえそうです。
まあしかし、こうなってしまったのですから、仕方ないですね。
さて、そのような新型コロナウイルスのような感染症が流行している中で、今、いろいろな「他の感染症」が流行の気配を見せていまして、それは人間も動物もなんですが、少しご紹介したいと思います。
いくつかは以前のブログなどでもご紹介したことがあり、羅列のような形となりますが、まあ、本当に「病気の時代だなあ」と思わせるものがあります。
人間の病気
カザフスタン:きわめて致死率の高い謎の肺炎
中央アジアのカザフスタンで、今年になって以来、「謎の肺炎」が流行していることが、カザフスタンにある中国大使館からの警告で明らかになっています。
以下の記事で、「半年で 1700人が死亡した」ことをお伝えしています。
カザフスタンで、新型コロナウイルスではない可能性が高い「謎の肺炎」が流行。すでに1700人以上が死亡したと中国大使館が警告
I地球の記録 2020/07/11
しかし、この謎の感染症の流行と死者は、ここに来て急激に増えていることが、その後のイギリスなどの報道で伝えられています。
イギリスのデイリースターは、カザフスタンの保健省の発表を引用して以下のように伝えています。
6月29日から7月5日までの 1週間に 3万2000件以上の肺炎の症例の患者が発生し、この肺炎で 451人の死亡が記録されている。
この数値が正確であるなら、現在のカザフスタンでは、
・毎日平均 4500人ほどの患者が発生している(カザフスタンの人口は1800万)
ということになり、そして、
・その致死率は 14%に達している
ということなります。
新型コロナウイルスと比較して、あまりにも致死率が高いために、新型コロナウイルスの変異体ではないと思われますが、カザフスタン保健省は、「まだウイルスを特定していない」と述べたと報じられています。
そして中国の内モンゴルでは、「黒死病」として知られる腺ペストが発生しています。
中国:腺ペストが発生
中国の内モンゴルで住民が「腺ペストに感染した」と発表されています。
感染経路は今のところ不明ですが、腺ペストはげっ歯類の動物(ネズミやマーモットなど)が保菌している場合が多く、そのルートからの感染が疑われるとのことです。
現在のところ、人から人に感染する兆しはないとしていて WHO は「感染が拡大するリスクは低い」と述べています。
中国・内モンゴル自治区内のバヤンノール市当局は5日、前日に病院から腺ペストが疑われる症例が報告されたことを受け、警報を発令した。
WHOのマーガレット・ハリス報道官は「中国での感染状況を注視しており、中国および内モンゴル自治区の当局と連携している。現時点では高リスクとは考えていないが、注意してみていく」と述べた。
中世に「黒死病」と呼ばれた腺ペストは感染しやすく、死に至るケースもある。ペスト菌はネズミやリスなどの齧歯動物が保有していることが多い。 (ロイター 2020/07/07)
世界各地でデング熱の史上最悪の流行
そして、東南アジアでは過去最大級の「デング熱」の流行が起きており、シンガポールでは「過去最悪」になる見込みであることが報られています。以下の記事で、ご紹介しています。
シンガポールで過去最悪のデング熱の流行 : 30年間出現していなかった古いウイルス株の復活とロックダウンの後遺症による
地球の記録 2020/07/04
シンガポールでのデング熱の記録は、2013年の症例 2万 2170件が過去最大でしたが、 3週連続で週単位の感染者数が過去最大を記録しており、過去最悪の流行となると見られています。
シンガポールで最悪のデング熱の流行が起きた理由はふたつで、
・過去 30年間見られていなかったウイルス株が「復活」して出現したため、住民に免疫がない
・長期間のロックダウンの影響で、蚊が住宅地での繁殖を増加させる機会が増えた
と推測されているのだそうです。
時期はもう少し前ですが、スリランカでも壊滅的なデング熱の流行で 300人以上が亡くなっており、過去最悪の流行が続いているようです。
また、アメリカのフロリダ州でも、これまで見られたことのないデング熱の患者が発生していると FOX ニュースは伝えています。
ちなみに、このデング熱は「蚊」が媒介しますが、東南アジアや一部アメリカなど各地で患者が発生しているため、多くの地域で、
「大規模な消毒作戦」
がおこなわれ続けています。
スリランカでの殺虫剤散布の様子
・ucanews.com
以下の記事など、何度かふれましたけれど、
・新型コロナウイルスに対しての街頭での消毒剤の散布
・イナゴの大群に対しての殺虫剤の散布
が続けられている中、それに加えて、現在、
・蚊に対しての殺虫剤の散布
も、非常に広範囲に行われていると思われまして、これもまた後々影響が出そうです。
人類絶滅への道 : コロナウイルスとイナゴに対しての「殺菌と消毒の嵐」が吹き荒れる中、地球の微生物と昆虫類が「大絶滅」に向かう可能性。そしてその次は…
In Deep 2020/03/29
このようなことは、生態系全体に良くないことですけれど、単純な話として「人体にも悪い」と思われます。
おそらく、現在の過剰な殺菌・消毒環境は、人間の免疫を弱める(常在菌や腸内細菌が多少なりとも損なわれるので)ことにつながると見られ、感染症の流行はさらに拡大していくのかもしれません。
四六時中、環境中に噴霧されて、それでも人の体に優しいというような殺虫剤は基本的には存在しないはずです。
かといって、蚊を野放しにすれば、デング熱(あるいはジカ熱)が拡大し放題ということで、消毒せざるを得ないという・・・やや地獄の雰囲気となっていますねえ。
地球全域が、こんなにたくさん消毒された時代ってこれまでなかったでしょうね。
私たちは、いろいろな面で「初めての世界」に生きていることになりそうです。
そして、あと、「動物のパンデミック」も続いていまして、これは簡単にご紹介しておきます。
動物たちのパンデミック
ミツバチのパンデミックによる大量死が世界中に拡大中
・cbc.ca
ミツバチのパンデミック
世界各地で、ミツバチの大量死や「消失」が続いていますが、その理由は、例えば農薬などが挙げられることが多かったですが、ミツバチが大量死し続けている理由のひとつが、
「真菌病原体によるパンデミック」
であることが最近わかってきたと報じられています。
これは、「ノゼマ病」といわれるミツバチの感染症なんですが、これが「どうやら過去 20年間、拡大を続けている」ことが、米カリフォルニア大学ボルダー校の研究によって突き止められたことが報じられていました。
ただ、このノゼマ病の拡大についてのメカニズムはわかっておらず、今後どのようになっていくのかもわからないようです。
ミツバチに関して、もうひとつ心配なことは、以下の過去記事で取り上げたことがありましたが、米ウィスコンシン大学とアメリカ農務省の科学者たちが、
「ミツバチがエサにしているのは花粉ではなく、花の中の微生物だ」
ということを突き止めたことと関係があります。
[衝撃] ミツバチは花の蜜や花粉を食べているのではない。彼らは食糧としての微生物がいなければ生きていけない「肉食」であることが判明。そのことから、ハチの大量死が「殺菌剤」と関係する可能性が浮上
In Deep 2019/08/31
ミツバチたちが「微生物を食べている」ということは、先ほど書きましたけれど、「現在の新型コロナやイナゴや蚊に対しての大々的な環境の消毒」は、結果として、花の中のミツバチのエサを消滅させてしまう事態に結びつくと思われるのです。
恐らくですが、現在、対象がイナゴであっても蚊であっても、草原や畑やその他の環境中に消毒剤・殺虫剤を噴霧している地域では、今後、ミツバチも急速に消滅していく可能性が考えられます。
それに加えて、ミツバチは、感染症のパンデミックの渦中にあり、存続自体が危ぶまれているのかもしれません。
ウサギのパンデミック
アメリカを中心として、「ウサギの感染症」が爆発的に拡大しています。
ウサギ出血病と呼ばれる致命的な病気で、これは以下の記事で取りあげました。
アメリカで「ウサギの致命的な出血性ウイルス」が拡大しており、全米のウサギが絶滅に至る可能性も
地球の記録 2020/06/01
この記事でご紹介したアメリカ CNN の記事の冒頭は以下のようなものでした。
アメリカ西部の複数の州で、ウサギに感染するウイルス性の疾患が散発的に発生している。
もしも感染が拡大し続ければ、米国に生息する数十種類のウサギ全てが壊滅的な打撃を受け、生態系が脅かされる恐れがある。
見つかっているのは「ウサギ出血病」を引き起こす致死性のウイルスで、このウイルスは感染力が強く、ウサギやナキウサギなど、ウサギの仲間にのみ感染する。(CNN)
ボツワナ:ゾウのパンデミック
アフリカのボツワナで、この 2ヵ月間、「次々とゾウが死に続けている」と報じられています。
英国 BBC によれば、これまで 350頭以上のゾウの死体が発見されたとのことですが、原因は不明で、密猟や事故などとは無関係であり、調査にあたった英国の科学者は、「干ばつ以外の原因でこれほどの数のゾウが一度に死ぬのは前代未聞だ」と述べています。
その後、アメリカのブルームバーグは、ボツワナ政府の声明を引用し、
「この大量死はゾウの新しい感染症を示唆している可能性がある」
と述べたと報じています。
これが事実なら、つまり未知の感染症による死であるなら、今後もゾウの大量死が続く可能性があります。
そして、「魚のパンデミック」も起きています。
カリフォルニア州の「由来不明の病原体」による魚の大量死
米カリフォルニアの養殖場で、今までカリフォルニアでは知られていない細菌により、数万匹のマスなどが死亡したことが、カリフォルニアのメディアで報じられています。
症状としては、感染した魚たちは、目が膨らみ、泳ぎが不安定となり、皮膚が黒ずみ、腹部が腫れて、そして死亡します。
検査の結果、ラクトコッコス・ガルビアエ(Lactococcus garvieae)という既知の細菌だとわかったのですが、この地域にはないものでした。魚の病理学者たちは、「そもそも細菌がどこから来たのかわからない」と述べています。
そして、問題なのは「今のところ対策がない」のです。
学者たちは、大量の抗生物質を飼料に混ぜて与えましたが、感染症の蔓延が止まることはありませんでした。
いろいろと書かせていただきましたが、今、人間の社会にも、動物たちの社会にも「近年見られたことがなかったような病気の時代」が訪れているようなのです。
今後、これらの状況がどのようになっていくのかはわからないですが、病気そのものもそうですが、それぞれの対策としての消毒、殺菌、抗生物質の多用、などによる生態系の乱れも相当激しいものとなっていきそうです。
そして、私たち人間のほうの社会も、病気そのものとは別に、歪んだ状態が続きそうです。
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