最近は、少し前にイギリスでテロがあったり、まあ、いろいろと物騒なことは頻繁に起きていますけれど、たとえば、どこの国ということではなく、もうずっと「テロとの戦い」というようなキーワードはごく普通になっていて、私たちは何となく、とんでもない「テロ死時代」にいるのかなあと思いがちです。
しかし、冷静に数字を見てみると、「黙示録的な部分はそういうところにあるのではない」ことも何となく事実としてわかります。
たとえば、「テロとの戦い」のキーワードといえば、何よりアメリカ。その名の下にどのくらいのいろいろなことをしてきたかはともかく、その
「アメリカの死者」
というカテゴリーをただ見れば、下のようなことになっています。これは 2015年のものですが、直近 10年くらいは同じような感じではないでしょうか。
これは「病気を除いた」死因上位で、厳密な何位ということではなく、死因の上位はこういうようなことになっています。
アメリカでの病気以外の死亡原因の上位(2015年)
・自殺: 4万 3000人
・交通事故: 3万 2000人
・銃による殺人: 1万 3286人
・家庭内暴力: 1600人
・テロ: 19人
・サメの襲撃: 1人ソース:WHO
サメのあまりにも甚大な被害に驚きますが、サメはともかく、テロに関しては、
> テロ: 19人
という数になっています。
もちろん人の命は数の比較ではあらわせないでしょうが、事実としてこういう数となっています。
次の数字は、同じアメリカの死因ですが、「病気での死因上位3位」です。その数を、先ほどのそれぞれと比較していただければよろしいかと思います。
ちなみに、先ほどの「病気を除いた死因」の数は合計で「 89,906 人」でした。
アメリカでの病気による死亡数(2014年)
・心臓疾患: 61万 4348人
・ガン: 59万 1699人
・呼吸器感染症: 14万 7101人
この3つの病気を合わせただけで、
・135万 3148 人
ということになっていまして、冷静に「死の数」として見ますと、他のどんなものとも比較できないことになっています。
ちなみに、最初に示しました「病気以外」のアメリカでの死亡原因のトップは自殺となっていますが、自殺は、病気も含めたすべての死因の中では以下のようになっています。
・CDC
自殺は第 10位に入っていますが、その上は、交通事故や銃などでの事故を除けば、全部病気です。
アルツハイマー病が6位に入っているあたりが時代の変化を感じさせます。死因としてのアルツハイマー病は、20年くらい前にはランキングもしていなかったと思われます。
まあ、死因に関しては、昨年の報道で「アメリカの死亡原因の第3位は医療ミス」というような報道がなされていたこともあります。たとえぱ、下は米国 CNN のものです。
米国人の死因、第3位は「医療ミス」か 推計25万人が死亡
CNN 2016/05/04
米ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが死亡率に関する調査結果などを分析したところ、医療ミスで死亡する患者数は肺気腫や気管支炎といった呼吸器系疾患で死亡する患者数を上回り、心疾患とがんに続いて米国で3番目に多い可能性があることが分かった。
米国では年間少なくとも25万1454人が医療ミスで死亡していると研究チームは推計。この数字には自宅や老人ホームで死亡した症例は含まれないことから、実際の死者数はこれを大幅に上回ると推測している。
先ほど記しましたアメリカの死因の上位3位は、
・心臓疾患: 61万 4348人
・ガン: 59万 1699人
・呼吸器感染症: 14万 7101人
ですので、医療ミスで 25万人が亡くなっているとすると、ガンの次の死因となるということになりそうです。
ジョンズ・ホプキンス大学は、医学の学術研究に関しては最高クラスの研究機関を持ち、その発表ですから、ある程度は信頼できる数値なのだと思われます。
ということは、アメリカでこのような調査で、このような率で「医療ミスでの死亡率」が存在するということは、「アメリカと同じようなものか、あるいはそれを目指している医療体制と医療技術の国では、同じようなことが起きている可能性が高い」とは言えそうです。
つまり、日本を含む主要国のほとんど全部ですね。
それらでは、おそらく同じ率で同じことが起きている。
いずれにしても、「病気に殺される人と、医療に殺される人」を合わせると、アメリカでは、それだけで毎年 200万人にも近づくような数の人たちが亡くなっている可能性が高い、ということになります。
「すごい時代だなあ」
と、つくづく思います。
そして、皮肉なのは、日本だけではなく、主要国はどこでもメディアから何から「健康のキーワード」のオンパレードでもあります。
先日、何となくテレビを回していたら、健康長寿系の情報のものをやっていて、それは「高齢者は肉を食べろ」という主張のものなんですが、まあ、別に異議はないにしても、 80歳、90歳といったような女性たちが、ガツガツと肉をほおばっている光景を見て、健康云々というより、むしろ、果てしない終末感をおぼえてしまいました。
以前、
・健康ブームの中でガンが増え続ける理由…
2015/04/10
というタイトルの記事を書いたことがありました。
最近の健康ブームは、そこに加えて、「人間の品格」とか「霊性」とか、そういうものはどうでもいいものとなっているのかもしれないなあとも思います。
最近の価値観は、
・生きている → 良いこと
・死ぬ → 悪いこと
・健康であること → 良いこと
・健康でないこと → 悪いこと
だけのような気がします。
「それの何が悪い」と思われる方もいらっしゃるかもしれないですが、生きて生まれることさえできなかった子どもたちや、理由がわからず健康とはいえない人たちはたくさんいて、この二元論から見れば、そういう人たちは存在を否定されていることになってしまいます。
まあ、それはともかく、こんなに単純な発想で日本人が生きていた時代があっただろうかと。
ほんの 100年 200年前までは、武士はわからないですが、少なくとも日本の庶民はそんなに死を恐れていなかった。
これに関しては、過去記事、
・日本式ファイト・クラブ:この世こそ極楽であることに感謝し、激動でも素晴らしい時代を死ぬまで生きる
2015/06/29
に、1857年(安政3年)から長崎で海軍の教官を努めたオランダの海軍軍人のカッテンディーケという人が以下のように言っていたことを、名著『逝きし世の面影』から抜粋しています。
オランダ海軍軍人のカッテンディーケの言葉
「日本人の死を恐れないことは別格である。むろん日本人とて、その近親の死に対して悲しまないというようなことはないが、現世からあの世に移ることを、ごく平気に考えているようだ。死は日本人にとって忌むべきことではけっしてない。日本人は死の訪れを避けがたいことと考え、ふだんから心の準備をしている」
外国人から見れば、
> 現世からあの世に移ることは、ごく平気に考えている
というように見えた日本人の面影は今や消えてしまったような……。
この本のタイトルの「逝きし世の…」という言葉そのもののような日本の移り変わりを感じます。
制度や表面的な文化だけではなく、日本は「生と死に関しての考え方」までも、西洋的な単純二元論に拐かされてしまったのかもしれません。
先日、
・悪魔の最終勝利を阻止する存在は… : 満身創痍でボロボロなれど、数百年間の「ヨーロッパ・ハザード」から生き残った日本、そして他のほんの数カ国は何のために地球に存在し続けるのか
2017/05/19
という記事を書きまして、このタイトルに、
> 満身創痍でボロボロなれど
と入れたことには、今書いたようなことも含まれます。
上の記事のテーマは「地球を悪魔の星にする」ために歴史がどのように進んできたかということでしたが、今もなお、なかなか厳しいですね。
というわけで、結局、何だか話がまたおかしなことになってしまいましたが、先ほどの死因の中の「ガン」について、世界でのガンに関わる「数」現状がどのようになっているかをご紹介しておきたいと思います。
地球は今、信じられない病気の時代にあって、それはどんどん拡大しています。
そして最近の歴史は、最先端医療が現れれば現れるほど、病気を取り囲む社会の状況は悪化し続けていることを示しています。
10 Must-Know 2015 Global Cancer Facts
cancer.org 2015/02/04
2015年の世界的なガンの事実
世界のガンに関する新しい報告書は、世界中でのガンの発生率と死亡率に関するデータと洞察を提供している。
この報告書「世界のガンの事実と数値(Global Cancer Facts&Figures)」は 2015年2月4日の「世界対がんデー」に、米国癌学会(IARC)との協力により発表され、癌の流行の拡大とその対処の可能性について記されている。
以下は、「世界のガンの事実と数値」第3版にある主要な「数値」の事実だ。
1410万人 : これは 2012年に、世界中で断された新しいガン患者の数だ。この半分以上の 800万人が発展途上国で発生している。
820万人 : 2012年の世界のガンによる死者数だ。
2170万人 : 西暦 2030年にガンと診断されると予想される新たなガン患者の数。そして、2030年には1年間で 1300万人のガンによる死亡が予測されている。しかし、これらの予測は今後の人口の増加と高齢化を反映しているだけなので、特に発展途上国での喫煙、食事の問題、運動不足、妊娠の減少などのガンのリスクを増加させることが知られているライフスタイルの拡大によっては、増加する可能性がある。
124万 1600件 : 2012年の世界中での男性の新規の肺ガンの患者の発生推定数。肺ガンは世界的には男性の中で最も多いガンだが、しかし、先進国だけを見ると、前立腺ガンが男性で最も多い。
167万 6600件 : 2012年に、世界中の女性で新たな乳ガン発症の推定数。乳ガンは先進国および発展途上国の女性の中で最も一般的な種類のガンとなっている。
52万 1900人 : 2012年に世界中の女性の乳ガンでの推定死亡数。乳ガンは、女性のガン死の主要な原因だが、先進国だけを見ると、2012年には女性のガンによる死亡数で、肺ガンが乳ガンを上回った。
58 % : 65歳以上の高齢者のうち、先進諸国で新たに診断されたすべてのガンの割合。この数字は途上国では 40%だ。報告書は、「この違いは主に集団の年齢構成の違いによるものだ」と指摘している。
23% : 感染による発展途上国におけるガンの割合。先進国では 7%に過ぎない。途上国では、男性(肝臓および胃)および女性(子宮頸部および胃)の5つの主要なガンのうちの二つが感染によって引き起こされる。
16万 3300人 : 2012年に世界の 0歳から 14歳までの小児で診断された新規のガン症例の推定数。2012年は世界中で約 8万人の子どもがガンで死亡した。
179 : 世界保健機関(WHO)が率いる条約「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約 (FCTC)」に調印した国の数。対象となる国の数は 196カ国だ。米国を含む主要なタバコ生産国は、この条約に批准していない。報告書によると、タバコは、毎年 600万人近くの早い死の原因となっている。
ここまでです。
なお、気になったのは、文中に「先進国は」とか「発展途上国は」とある中で、何となく、「発展途上国のほうが、ガンの状況が悪い」というように受け取ることができるような表現がありますが、数値的にはそれは間違いです。
過去記事、
・文明と医療と人々の健康知識が進んだ国であればあるほど…
2017/01/20
に書きましたように、いわゆる「先進国」のほうが格段にガンの死亡率は高く、特にヨーロッパは、発症率、死亡率共に最悪の状況です。
また、上の文章には、「 2012年に、世界中でガンと診断された新しいガン患者の数は 1410万人で、この半分以上の 800万人が発展途上国で発生」とあり、発展途上国の人たちのほうが新規のガン患者が多いような気にさせますが、ここでは「人口比」のことにふれていません。
詳しく書いても仕方ないですが、たとえば、
・世界の人口 約 74億人
・ヨーロッパの人口 約 7億人
・アメリカの人口 約 3億人
の比率から考えますと、いわゆる先進国の新規のガンの患者の比率のほうが圧倒的に多いことがわかります。
ちょっと時間がなくなりまして、中途半端ですが、いったんここで今回は締めさせていただきます。いずれにしても、今は 1年間に世界で 800万人ガンで死亡しているわけで、このペースのままにしても、累計すれば 10年で 8000万人の死、50年で 4億5000万人の死。すごいです。
何が黙示録なのかわからない世の中ではありますけれど、何とかとどまれますように。
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