今朝から、どうも胃とか腸とか、あるいは全身的に強い違和感や吐き気みたいなものを感じていまして、毎日飲み過ぎではあるので、「胃が荒れたかな」と考えたりもしたのですが、単に胃の不調なら全身症状なんてないしなあ・・・と、ふと、やや昔を思い出しまして、「懐かしい不快感」に思い至るところがありました。
そして、「これはもしかすると、今」と、ニュースを見てみましたら、以下のようなニュースが出ていました。
ノロウイルス猛威、近年ない型原因か 10都県で警報
朝日新聞デジタル 2016/12/13
国立感染症研究所は13日、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者報告数が直近の1週間(11月28日~12月4日)で、1医療機関あたり17・37人に上ったと発表した。最近の同期比では2006、12年に次ぐ水準で、猛威をふるっている。
近年流行していなかった型のウイルスが原因の一つとみられ、免疫のない幼児が集まる保育所などを中心に集団感染も発生している。専門家は予防のため、食事や調理前などに積極的に手洗いをするように呼びかけている。
「あーこれだ。ノロだ」
と私はここにきて気づいた次第です。
ノロはもともと 10年以上前に1度、激しい症状を呈するものにかかったことがありまして、それ以来、何度か、おそらくノロと思われるものにかかっていますが、最初以降は本当に症状が軽く、今回のような「なんか違和感があるなあ」という以上にはなりません。
それらがノロだったかどうかわからない時もありますが、子どもが幼稚園に通っていた時に、親子餅つき大会でノロの集団感染が発生したことがあり、その時には、私たち家族にもちゃんとうつったのですが、今回のような感じだったことを思いだしたのです。
「あー、この微妙な不快感は懐かしいなあ」
と、子どもが小さかった頃のことなどを思い出していました。
それにしても・・・上の朝日新聞の記事にも、
> 積極的に手洗いをするように呼びかけている。
とありますが、実は、私はつい最近気づいたことですが、今の日本の生活習慣の中で「脅威」だと感じていることは、このことと関係しているのです。
書いても何かが解決するような気もしないこともあり、書くのを躊躇していましたけれど、この流れの中で少しだけ書いてみようかと思います。
数百万世帯の「無菌室」で育った子どもたちの未来
少し前の「思案中のままの一日。そして行方不明の事例で思い出してしまう今の旧約聖書的な世相 (2016/12/06)」という記事の中に、私は、
気づいたそのことを書くとすれば、タイトルに「日本人はこうして絶滅する」というような文言が入ってしまうような気がして何だか物騒なのですが、それだけに安易に書くのもどうかと思い、決めかねています。
というようなことを書いたのですが、実はこのことと関係したことなのです。さすがに「日本人はこうして絶滅する」というタイトルはつけられませんですが、しかし、大げさにいえば、それを少し思うところもあります。
現在、日本の子どもたちに、かつては考えられないような率で、アレルギーや、あるいは感染症が毎年猛威をふるっていることについては、特別に例を上げるまでのことでもないと思います。
最近の毎日新聞の「アレルギー治療 拠点病院整備へ」という記事の出だしは、
> 国民の約2人に1人がかかっているといわれるアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患。
というものでした。国民の約2人に1人がアレルギーにかかっている、という状態が異常でなくて何が異常かと思うのですが、では、
「昔はどうだったか」
というと、時代によっては、「アレルギーなど、ほぼまったくなかった」ものです。ほんの数十年前まで。
下のグラフを見ますと、アレルギー疾患は「ほぼゼロ」だったのが、現在の「国民の何人かに1人」という状態にまでなったことがわかります。数十倍という増加ぶりで、これはガンの増加などよりも激しいです。
日本におけるアレルギー疾患の患者の推移
いや、グラフを出さずとも、40年前、50年前に花粉症やアトピー性皮膚炎などは、少なくとも「ほとんど」なかったと思われます。当時は非常に公害が問題になっていた時代であったにも関わらず、です。
公害が減り、環境が衛生化していくと共に「対応できない病気が増え続けている」という奇妙な矛盾が生じていることになります。
今や、あらゆる種類の病気が増え続けていますが、ガンなどを含めて、多くが体内の免疫システムと関係しているという意味では、多くの病気にアレルギー的な意味も多少はあるかもしれません。しかし、多くの病気というのはここでは別にして、アレルギーに絞ってみても、世界中の多くの主要国(先進国といわれるような国々)では、驚異的な増加を示しています。
その理由がなぜかは、今ひとつわからないのかもしれません。
しかし、私は先日、テレビの通販番組を見ていて、「結局これだ……」と悟ってしまったのです。
それがどんな商品かとか、そういうことではないです。具体的なことはどうでもいいのです。
大事なのは……たとえば、CMなどを含めて、ふだんの生活の中やメディア上で、
「除菌」
というような言葉を今どれだけ目にするでしょうか。
除菌、抗菌、抗ダニ、除カビ、99.99%除菌……と数限りなくあります。
それがなされる製品群の種類も、ここ数年で大幅に増えて、
・掃除機
・エアコン
・スチームクリーナー
・空気清浄機
・さまざまな抗菌洗剤
・さまざまな抗菌石鹸類
他にもあるかもしれませんが、ここまで総動員して、そして高い日本の技術の製品で徹底して行えば、目的はある程度なされると思います。
その「目的」とは、
「住居空間の無菌室化」
です。
私がその時に見たテレビ通販の番組では、その商品を使ってらっしゃるお母さんが出てきて、「うちは小さな子どもや赤ちゃんがいるので、助かります」とおっしゃっていました。
これが何を意味しているかおわかりでしょうか。
「本来、地上に生まれて、地上のさまざまな雑菌やダニやウイルスやカビや微生物たちと共生して、あるいは対抗するための抗体を体の中に作る」
という、幼少時の成長の中で最も大事な部分を、その幼い子どもたちは、
「生活の中で奪い取られている」
のです。
生まれて、赤ちゃんの彼や彼女たちは、いきなり自宅の無菌室に置かれる。
そこは、あらゆる製品群により、99.99%などの徹底した「微生物排除」をなされているだけではなく、外気からも、あらゆる天然の要素が入らないような空間になっている。そして、今の家電製品では、それが簡単にできてしまう。
子どもたちは、本来なら、自然の中におびただしく存在する細菌やウイルスたちと、これからの人生で共有していかなければならないたくさんの「免疫作り」を、自然の生活の中でなしていかなければならない。
それに必要なのは、細菌であり、ダニの死骸であり、花粉であり、ウイルスであり、泥であり、土であり、つまり「ありとあらゆる不衛生」であるはずです。
ところが「完全無菌室」で成長した子どもたちには、その力がない。
「不衛生と共生する経験がない」からです。
そうなれば、あとは必然的に、
彼や彼女たちの体は「ダニも花粉も細菌もウイルスも何もかも体験したことがないから、それらは敵」と見なし、白血球があらゆる自然界のものに対して攻撃をしかけることになり、すなわち「アレルギーが発症」します。
昔の日本の家は「家の中にいても、ほとんど外にいるのも同様」的な環境が多かったと思います。
縁側に眠る赤ちゃんの周囲には、何千万、何億という細菌、ダニ、カビ、花粉、土、泥、変なちっちゃい虫などがガガーッといたはずです。
その世界にアレルギーという言葉は基本的にありませんでした。
人間とあらゆる微生物は共生している
過去記事で「人間とはどのようなところに生きているか」ということについて、
・生物、植物…。地球上のすべてが人類と共生関係であり表裏一体であるかもしれないことを確認させてくれる「人間と細菌たちの共存=マイクロバイオーム」の概念
2016/01/26
という記事で書いたことがありますが、「人間は細菌そのもの」です。
このマイクロバイオームという概念では、人間というものは、
単独で生きていく生き物ではなく、人間と共に競合する微生物を内部に秘めた複雑な生態系
だとされています。
これは完全に正しい概念だと思います。
しかし、その中で、医学の歴史では、細菌をそうは見なしませんでした。
たとえば、
「抗生物質で体内の微生物を殺す」
という方法論は医学の主流にまでなっています。そして、その抗生物質の時代が終わりを使えつつあることは、
・バクテリアが人類に勝利した日:「最終救済薬コリスチン」を含めた「すべての抗生物質が無効」のウルトラ耐性菌が猛スピードで全世界に拡大している
2015/12/07
など何度か記したことがあります
そして、さらに、
「傷口を殺菌・消毒、そして乾燥するという方法論がどれだけ人間の生体が持つ修復能力と逆のことだったか」
ということなども、
・怪我の功名から得た「傷と止血の対処の真実」について(今までの医学常識は根本が間違っています)
2016/06/16
などで書いたことがありますけれど、とにかく、この数十年の世界は、「菌という存在はすべて殺させばいい」という概念で突き進んできました。
しかし、それは間違っていることが今は明白になっています。
それでも、今でも、たとえば、風邪が流行する時は、
「うがい、手洗いをしましょう」
となります。
具体的な方法を書かずに「うがい、手洗いをしましょう」と言われれば、中には、
「消毒作用のあるうがい薬で毎日うがいをする人」
だとか、
「執拗に石鹸や消毒剤で手を洗う」
人なども出てくるかもしれません。
それは結果として、「喉の大事な常在菌を殺してしまい」、あるいは「手についている常在菌を殺してしまう」ということにつながります。
どのくらい常在菌が「死んで」、どのくらい復活しないかといいますと、こちらのページによれば、
石鹸やボディーソープを使うと、90%常在菌が流れ落ちるといわれています。若年層は12時間程度で再び常在菌が元通りになりますが、中高年では20時間と長い時間がかかります。
手は体に比べると常在菌の回復が早いのですが、界面活性剤配合の石鹸をたびたび使うことで常在菌が大幅に減少してしまうのです。
石鹸などで洗うと、「何時間も何十時間も常在菌による保護が消える」ということになります。喉も手も、あるいは全身そういうことになると思われます。
結果として、殺菌を続けていると、「体は保護を失い、弱くなる」という厳然たる事実につながります。
防御を失うわけですから、風邪を予防するために消毒薬で消毒することが、さらに厄介な感染症につながることも考えられます。
しかし、問題は、これらのことは医療従事者の人たちはわかっていることのはずです。
なら、どうしてきちんと「うがいや手洗いの正しい方法」を言わない、あるいは書かないのか。
うがいに関しては、結果として「水でうがいすると、ある程度、かぜの予防になる」ことはわかっていますが、うがい薬を使ってうがいをすることは、何にもしないことと同じという研究結果が出ています。
しかし、実は、うがいにしても手洗いにしても、これが問題ではなく、そもそもが「風邪を予防する」という概念が間違っているというのが、昨年の記事、
・人間にとって最も日常的で慈悲深い治療者は「風邪ウイルス」かもしれないこと。そして、薬漬け幼児だった私がその後の十数年経験した「免疫回復戦争」の地獄体験記
2015/04/21
以来の私の持論ですが、それはまた少しややこしい話になりますので、今回はふれません。
上の記事には、「風邪は自分を治癒させるためにかかっている」というセクションがあり、同時に、非常に病弱な幼児だった私自身の体験談を書いてありますが、生まれた時から病弱で、医師に「この子は5歳まで生きられない」と言われたという私が生き残ることができたのは、度重なる風邪だったと今は思っています。
20代までは高熱の繰り返しでしたが、その中で、気づくと、私は普通に生活できる体となっていました。
こう思えるようになったのも、野口晴哉さんの『風邪の効用』という本のタイトルを Amazon で見て、「風邪の……効用? おもしれーじゃないの」となぜか反抗的な態度で読んで、結果的に、劇的な小覚醒をいただいたものでした。
野口晴哉師(1911 - 1976年)
・野口晴哉
そういう私の体験も含めて、風邪は避けるものではないという考えはあるのですが、これについては人に勧められるものではないですので、そういう変な考えを持つ私という人間がいるというだけのことでいいです。
今回の記事での問題は風邪ではなく、少し大げさに書けば、
「過度な自然物の排除と、過度な清潔により、私たち日本社会は危機に陥るかもしれない」
ということです。
社会を組み立てていくのは、基本的に若い人たちの力ですが、この世の中に、先ほどのような、あらゆる家電から日常品にまで「殺菌」を含む、つまり「自然の物質を空間から排除する」という概念が徹底的に広まって一般化したのは、この数年だと思います。
今は家電もお安いですし、リッチ世帯ではなくても、「手軽に自宅に無菌室を作ることができる」はずです。テレビ通販では、抗菌機能のあるひとつの商品が百数十万台だとかが売れたとされていましたので、様々なメーカーがあることを考えますと「自宅の無菌室化」を実践しているご家庭はかなりありそうです。。
日本中に増える無菌室……。そして、そこで育つ赤ちゃんたちは、自然界にあるものを体に受け付けることができないまま、子どもになり、大人になります。
驚異的な数のアレルギー疾患の子どもたちは今後さらに増えて、そして、あらゆる病気もさらに増えていくことは、ほとんど確定的だと思います。幼少時に獲得できなかった免疫を、後に獲得するのが大変なのは、花粉症やアレルギー性皮膚炎などの完治が難しいところにもあらわれていると思います。赤ちゃんたちに必要な「不衛生」を奪われた体は、一生、何らかの免疫不全に苦しむ可能性が高いと思うのです。
誰かに、「それは違う」と言っていただきたいような気がするのですけれど、今回書いた内容に致命的な誤りはないような気がするのです。
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