カナダの山林火災は、5月7日の時点で「東京23区の3倍よりも広い地域」が消失しているという大変な火災となっていますが、数日前のカナダの下の写真は、それが壊滅的な状況になっていくことを示唆していたかのようでした。
2016年5月5日のカナダ・フォートマクマレーの光景
・AP
報道では、「制御不能状態」に陥っているとも言われていますが、NHK の報道によれば、
空気が乾燥しているため、依然、火の勢いは収まらず森林地帯に燃え広がっています。
現地では8日に雨が降ると予想されていますが、地元の防災当局者は「この地域ではまとまった雨が2か月間降っていない」と述べ、火はさらに燃え広がり、7日には焼失面積が東京23区の3倍以上に当たる20万ヘクタール余りにまで広がるおそれがあると指摘しています。
とのことで、世界で干ばつが広がっている中、カナダのこのあたりも、
> まとまった雨が2か月間降っていない
という状態だったようです。
山林火災もここまでの規模となりますと、経済への打撃もかなりのものとなるようで(しかも鎮火の見込みも立っていないですし)、ロイターには下のような記事がありました。
カナダ経済、森林火災で第2四半期はゼロ成長も
ロイター 2016/05/05
カナダのアルバータ州で発生した森林火災は、同州のオイルサンド生産に打撃を与えており、エコノミストからは第2・四半期がゼロ成長に陥る可能性があるとの声も上がっている。また、利上げ観測が出ていたカナダ中銀は金融政策を維持し、カナダドルは売られると予想されている。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、Robert Kavcic氏は、第2・四半期を年率1.3%の成長を見込んでいたが、森林火災を主な理由に、ゼロ成長に修正した。
スコシア銀行の資本市場責任者Derek Holt氏は、森林火災で少なくとも5、6月はオイルサンドが生産できないとみて、景気が急降下する可能性が排除できないと述べ、カナダドルの下落を予想した。
そして、先ほどの「2か月まとまった雨が降っていない」という話などから、農業大国であるカナダですが、おそらくカナダも地域的には干ばつがかなり進んでいる場所が出ているような気もします。
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山林火災は地球の「新しい」災害
ちょっと話は変わりますが、日本の小麦は、85%が海外から輸入されているそうですが、内訳は下のようになっています。
・日清製粉
これはつまり、アメリカが「日本との輸出入に関してなんだかんだ」というようなことがあったり、カナダやオーストラリアが干ばつなどの影響で、農業被害が相次いだりするようなことがあった場合は、今は安価な小麦粉も、なかなか貴重な存在となっていく可能性もあるのかもしれません。
上の表の「オーストラリア」ですが、こちらも、今、山林火災が頻発していまして、5月6日の時点で、下のような箇所で山林火災が発生しています。
2016年5月6日のオーストラリアの山林火災の発生状況
オーストラリアでも結構な数の山林火災が起きていることがわかります。
色は火災発生からの時間の経過を示していまして、「赤い丸」が 12時間以内に発生した火災で、色が薄くなるほど、発生から時間が経過していることを示します。
なお、上の地図を見ますと、 オーストラリア最大の都市であるシドニーの周辺でも多くの火災が発生していることがわかりますが、今のシドニーは下のように全体的に煙に覆われているようです。
撮影はこの数日内のものです。
山林火災の影響で煙に包まれるオーストラリアのシドニー
最近は、アメリカのカリフォルニア州などでは毎年のように激しい山林火災が発生していますが、まだ時期的に5月という段階で、カナダで今回のような激しい山林火災が起きているということは、今年の北半球の夏は、気候にもよりますけれど、山林火災の嵐が多くの地域で吹き荒れる可能性もあると思われます。
先月の、
・自然災害は予想以上の驚異的な勢いで地球の文明を崩壊させ続けている : ドイツの大学が発表した西暦1900年以降の災害損失データベースが示すこと
2016/04/20
という記事では、ドイツのカールスルーエ工科大学が発表した、西暦 1900年以来の自然災害の経済損失を示したグラフを載せました。その中の「山林火災」に注目しますと、興味深い事実がわかります。
1900年から 2015年までの自然災害での経済的損失の推移
・KIT
上のグラフの赤い部分が山林火災による経済的損失ですが、この山林火災というものも、1980年代くらいまでは「赤い部分」がほとんど見られないということで、
「山林火災というのは新しい自然災害」
であることがわかります。
山林は昔からあったものでしょうが、その火災は最近の 30年くらいの間に「生まれた」自然災害のようです。
地震や洪水は、増加しているとはいえ、昔からあった災害ですが、ここ 30年くらいで急激に出現し続けているのが、
・山林火災
・干ばつ(上のグラフで「黒」)
・巨大な嵐(上のグラフで「紫」)
の3つだと思われます。
そして、基本的に、山林火災のシーズンは「夏」ですので、本格化するのはこれからだと思われます。ですので今年は、さきほどのグラフの「赤い部分」はさらに拡大するものと思われます。それにしても・・・本当に夏になったらどうなっちうのか。
頻発する「カタストロフィック」という言葉
今回のカナダの山林火災の報道タイトルで、多く見られる単語があります。
それは、
カタストロフィック / catastrophic
という単語です。
冒頭のカナダの山林火災の写真の記事にもその言葉が記載されていました。
2016年5月5日の報道より
この「カタストロフィック」というのは「壊滅的な」とか「大惨事の」というような意味の言葉ですが、一種「終末的なニュアンス」を漂わせているようにも感じます。
そして、最近は、自然災害だけではなく、さまざまなジャンルで、この「カタストロフィック」という単語が見られることが多いです。
これは 2012年頃までの終末ブームのようなものから続いている「雰囲気的」なものかと思っていたこともあったのですが、先ほどの自然災害の推移のグラフを見ましても、「カタストロフィック」という表現は、雰囲気ではなく「現実だ」ということを最近は強く思うようになりました。
先日、
・イギリス政府機関の推計資料 : これからの地球は「億単位」の人命の消滅と共に、文明に対しての多くの脅威を経験していく
2016/05/02
という記事で、イギリスの政府組織と科学財団が、「今後起こる可能性のある 12の大惨事」について発表したことがありました。
最近、そのそれぞれの内容を詳しく書いた記事を見ましたが、その記事のタイトルも「カタストロフィックな13の事象」というものでした。
その記事にあった「 13の壊滅的事象」は、以下のようになります。
・超巨大火山の噴火
・巨大小惑星や巨大彗星の地球への衝突
・パンデミック
・人工的に遺伝子を改変されたウイルスによるパンデミック
・人工知能の台頭
・人為的な天候制御
・核戦争
・イスラム過激派などによるテロ攻撃の拡大
・太陽フレアや核戦争による電気インフラの崩壊
・サイバー戦争
・経済のメルトダウン
・暴動などの不穏の多発
・壊滅的な地震
となっています。
どれも、特に非現実的なものではなく、あるいは「すでにそこに突入しつつある」というものも多いです。
上に加えて、私としては、
・食糧危機
・水不足
・人々の「悪魔化」の拡大
の3つが深刻になるように思っていて、この中の「人々の悪魔化」は、説明がやや難しい曖昧なこととなりますが、他の2つに関しては、かなり現実的で、そして、これはすでに進行していると思います。人間は水と食糧がなければ、基本的には生きていられません(なくても大丈夫な人もいるのかもしれないですが)。
水不足については、今度、別の記事でご紹介すると思いますけれど、ウィキリークスがリリースした機密文書に、
「2025年までに地球の3分の1の人々が新鮮な水にアクセスできなくなり、2050年までには、地球は壊滅的な水不足に陥る」
とあることが英国の報道に出ていました。
調査したのは食品メーカーのネスレですが、この原因は「世界中の人々が肉を食べ過ぎている」ことにあるのだそう。
食肉を生産するには、その動物を養うための作物や、動物自身が消費する水の関係で、ものすごい量の水がなければいけないそうで、そして、世界で中産階級がどんどん多くなっていく中、肉の消費量もどんどん増えているのだそうです。このまま食肉消費が増え続けると、水の供給の循環は破綻していくのだそう。
肉の消費量は、特にアジアで著しく伸びていて、日本も増えていますが、人口が多いために影響力の強い中国はすごいですよ。
もちろん、これは肉食がいいとか悪いとかのイデオロギー的な問題とは関係なく、人類の文明を維持していくのに、過度の肉食文化は向いていないということになるようです。
とはいえ、「こまのままでは 10年後に水がなくなっていきますよ」と喧伝したところで、この過度な肉食文化が縮小していくわけでもないでしょうし、それが止まるとすれば、たとえば、上の「 13の壊滅的事象」が順次、地球にやって来た時ということになるのかもしれません。
やっぱり、今の文明には、いくつか「基本的に無理がある」部分はありますよ。
過度な電気文明もそうですし、過度な通信依存(スマホとか)もそうですし、どこかである程度はリセットしないといけないものなのかもしれないです。
そして、少しずつではあっても、リセットの段階は進み続けているような気がします。