秘策の行使
対ロシア制裁というようなことが行われて以来、明白になったことは、
「ヨーロッパはロシアが存在しないと生き残ることができない」
ということだけでした。
現在の状況がそれをよくあらわしています。
もともと、対ロシア制裁とか言いだしたときに、「何のため? 自死を希望してる?」というようには感じていました。
[記事] 誰を崩壊させるための対ロシア制裁なのか。目指すのは西の自死? それともこれもいわゆるグレートリセットへの道?
In Deep 2022年4月2日
ドイツへのロシアからの天然ガスは、輸送が打ち切られる観測が出ている上に、最近では、ロシアのガスプロムは、「フランスへの天然ガス輸送を停止する」と通知してきました。
(報道) ロシア、フランスへのガス供給停止へ 冬を前に不安高まる欧州 (毎日新聞 2022/08/31)
今のままじゃ、ヨーロッパのこの冬はどうにもならないじゃん……と思っていましたら、最近、米ゼロヘッジが、香港のサウスチャイナ・モーニングポストの報道と、フィナンシャル・タイムズの報道などを照合していまして、
「中国が、ロシア産の天然ガスを、ヨーロッパにガンガンと転売している」
と結論付けました。
フィナンシャルタイムズの記事のタイトルは「中国は、液化天然ガスの転売でヨーロッパにエネルギーの生命線を投げている」でした。
そして、建前上、ヨーロッパの多くの国は今でも、「対ロシア制裁」というような立場であるわけでして、
「中国からの天然ガスがどこから来たものなのかは、それは知りませんよ」
という態度により、その天然ガスがもともとロシア産だということを「知っていても知らないふりをしている」と報じていました。
まあ、ヨーロッパの指導者も単純なフールというわけではなかったようで、ドイツなどのヨーロッパの一部の国では、このままでは本当に「冬の大量死」に結びつく可能性があったわけで、どういう経由にしても、冬までのエネルギー確保に目処が立ったわけで、よかったです。
しかし、ゼロヘッジも指摘していますが、今後、
> 中国の政策決定がヨーロッパに影響を与える力を持つようになる。
ということになり、今のヨーロッパは、ほぼ完全にロシアと中国の「支配下に位置してしまった」ということになるようです。
なお、日本もロシアと折衷する方向で進んでいるようで、東京ガスなどが、ロシアのサハリン2エネルギープロジェクトの新規事業者と、液化天然ガスを購入する長期契約を締結した、と報じられていました。日本もロシアのエネルギーなしではいろいろと見通しが立たないようです。
そういえば、中国政府は、今度は、西側のテクノロジー企業の重要な拠点都市である深センを「ロックダウン」しました。
(報道) 中国南部のテクノロジーハブの主要都市である深センがロックダウン。数百万人が対象 (2022/08/31)
もちろん、深センの人たちも影響を受けるでしょうが、最も大きな影響を受けるのは西側企業です。上海のロックダウンの時もそうでした。
ロイターは、
> 野村は同日のノートで「市場は今後2、3週間で再び打撃を受ける可能性があり、エコノミストによる再度の見通し引き下げを誘発しそうだ」と警告。
と報じていまして、「私たちは何だってできるんですよ」という中国の態度を鮮明にしています。
表面的には、ゼロコロナ政策という言葉であらわされていますが、実際には中国政府はコロナなんてどうでもいいはずで、基本的には、「西側の企業への殲滅作戦」ともいえるものです。
「たとえば、深センを半年間ロックダウンしたら、西側の企業はどうなると思いますか?」
という脅しでもあります。
思えば、そんなことの繰り返しの2年半でした。
架空の世界に生きる
この2年半の一連の流れは、実にうまくできているものだと最近は感心します。
もともとコロナが武漢で発生したといわれた時、「道で突然倒れて亡くなった」とされたマスクをしたおじいさんの写真から恐怖の喧伝が始まったと思うと(あれは、役者でなければ、道で倒れた酔っ払い)、これからも何年も何年も架空の物語の世界が続いていくのだと思います。
マスクもワクチンも架空の物語上のものですが、中国から見れば、いろいろと都合がいい。
日本は特にファイザーのお得意さんのようで、お名前は忘れましたが、日本の首相は、「オミクロン株に対応した新たなワクチン接種について、9月に前倒しする」と発表しています。
ちなみに、この新しいワクチンは、
「ヒトでの臨床試験はしていない」
ものです。
ウォールストリート・ジャーナルが報じたものを、アメリカのカトリック系サイトが伝えていました。
(ライフサイトニュースより)
> アメリカ食品医薬品局 (FDA) は、ファイザー社とモデルナ社からの新しいブースターワクチンの承認要求を承認する予定だ。両企業は先週、人間で試験されていないにもかかわらず、FDA に承認を求めた。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。 (lifesitenews.com)
日本で 9月から始まるとされるオミクロン対応 (といっても、抗体は、以前のオミクロンですが)ワクチンは、おそらく、日本でもアメリカでも、「はじめてヒトの臨床試験をスルーしたコロナワクチン」となるようです。
世の中もうムチャクチャですが、でも、ヨーロッパの今年の冬も当初想定していたほど厳しくはならないかもしれないですし(イギリスの家庭の電気料金は、この 10月から年間で 60万円近くになりますが)表面上は穏やかに進んでいくのですかね。
その中で、超過死亡は、この冬さらに拡大しそうです。
以下の記事では、ヨーロッパの若い世代の超過死亡について書きましたが、最近の海外メディアによると、「ヨーロッパの子供の超過死亡は 691% 増加した」そうです。
[記事] 超過死亡率データを見て思う、緩慢に進む子どもたちのジェノサイド
In Deep 2022年8月25日
それでも、691%でしたら、まだ 7倍とかそういう数字ですが、それが、いつの日か、 70倍とか 700倍とかいうような状況になることがあるのかないのか、というようなことも考えることはあります。
架空の物語ばかりの世界の中で、いろいろ考えることも多いですが、最初に書きました米ゼロヘッジの記事をご紹介します。
中国はロシアのガスをヨーロッパに積極的に転売している
China Is Aggressively Reselling Russian Gas To Europe
zerohedge.com 2022/08/31
住宅の暴落と景気低迷の中で、エネルギーへの欲求が抑制されているにもかかわらず、中国がロシアの自然エネルギーをより多く吸収しているという報道を 7月に香港の報道で読んだ。 (「ゼロコロナ政策」自体が、習近平皇帝の都合の良いスケープゴートとして登場したものだが)
7月に、香港のサウスチャイナ・モーニングポストは、中国税関のデータによると、今年の最初の 6か月間で、中国は合計 235万トンの液化天然ガス (LNG) を購入したと報告した。
輸入量は前年比 28.7%増加し、金額は 182%急増した。これは、インドネシアと米国を抜いて、ロシアが中国の 4番目に大きな液化天然ガスの供給国になったことを意味する。
ロシアの天然ガス企業であるガスプロムは最近、シベリアのパイプラインを介した中国への毎日の供給量が史上最高に達したと発表した。
ロシアは中国で 2番目に大きなパイプライン天然ガス供給元だ。ロシアのパイプラインガスの中国への供給が 2022年上半期に 63.4%増加したことが以前明らかにされている。
ロシアの液化天然ガス輸入のこの奇妙な急増の背後にあるものは何かアナリストたちは推測している。
結局のところ、中国は消費する天然ガスの半分以上を輸入しており、約 3分の2を 液化天然ガスの形で輸入しているが、今年の中国のエネルギー需要は、経済的な逆風と、ロックダウンによる広範な操業停止の中で急激に落ち込んでいた。
言い換えれば、
1. 国内需要がまったくなく
2. 他のすべてを犠牲にしている
のに、なぜロシアの液化天然ガスの輸入が急増しているのだろうか。
オックスフォード・エネルギー研究所の中国エネルギープログラムのディレクターであるミハル・メイダン氏は、「ロシアの液化天然ガスの中国への輸出の増加は、制裁、または需要の弱さのために、日本または韓国に向かう貨物の置き換えである可能性がある」と述べた。
1つ明らかだったのは、中国は、ロシアとの距離を置いたガス取引を可能な限り不明確にしたかったため、中国税関総局は年初からパイプライン天然ガスの貿易量の内訳を公表しなくなった。
スポークスマンの Li Kuiwen は、この動きは「関連する輸入業者と輸出業者の正当なビジネス権と利益を保護する」ためのものであると述べた。
……さて、私たちは今、この答えを知っている。
中国は、ロシアの液化天然ガスを、何よりも切実に必要としている 1つの場所に静かに転売している。それはヨーロッパだ..。そしてもちろん、その過程で多大な要求をしている。
フィナンシャル・タイムズは最近、以下のように書いた。
「冬に向かうガス不足に対するヨーロッパの懸念は、予想外の白い騎士である中国のおかげで回避された可能性がある」
日経が所有する記事はさらに、「液化天然ガスの世界最大の買い手は、国内のエネルギー需要が弱いため、余剰の液化天然ガス貨物の一部を転売している。これにより、スポット市場に十分な供給がもたらされるが、ヨーロッパではより高い価格となる」と記している。
フィナンシャル・タイムズがおそらく意図的に無視しているのは、それが「余剰」ではないということだ。そうではなく、中国がヨーロッパに販売している液化天然ガスに記されているのは「ロシア語」だ。
ヨーロッパへのロシアのパイプラインガスは効果的に閉鎖されている。
調査会社 Kplerによると、ヨーロッパの液化天然ガスの輸入は 2022年上半期で前年比 60% 増加した。
大手液化天然ガストレーダーである中国の JOVO グループは最近、欧州のバイヤーに液化天然ガスを転売したことを明らかにした。
上海の先物トレーダーは日経に、そのような取引から得られる利益は数千万ドル (数十億円)、あるいは 1億ドル (百数十億円)に達する可能性があると語った。
中国最大の石油精製会社であるシノペック・グループも 4月の収支報告で、過剰な液化天然ガスを国際市場に流していることを認めている。
地元メディアは、シノペック・グループだけで 45カーゴの液化天然ガス、つまり約 315 万トンを販売したと述べている。転売された中国の液化天然ガスの総量は、おそらく 400万トン以上であり、6月末までの半年間のヨーロッパのガス輸入の 7%に相当する。
間違いなく、この「余剰」液化天然ガス は、部分的または全体的にロシアからものだが、中国が「通行料」を支払ったので、これは、もはやロシアのものではない。
これはすでに中国の液化天然ガスだ。
良いニュースは、ヨーロッパが購入した 5,300 万トンが中国と日本の輸入を上回り、ヨーロッパのガス貯蔵占有率を 77% に引き上げたことだ。
中国が経済不況に陥っていることは、実際にはヨーロッパに安堵をもたらしているが、それには大きな柱脚が伴う。中国で経済活動が回復するとすぐに状況は急速に逆転し、中国政府は、ヨーロッパを暖かく保つためのロシアの液化天然ガスを再輸出しなくなる。
それはまた、ガスをロシアに依存する代わりに、ヨーロッパが現在、エネルギーを中国に依存するようになっていることを意味している。
さらに悪いことに、ヨーロッパは、実際は習近平に追加料金を支払っているにもかかわらず、プーチン政権に資金を提供しないことを世界に知らせるためだけに、その代わりに 2倍、3倍 、またはそれ以上を中国に支払わなければならない。
面白いことに、フィナンシャルタイムズは、ヨーロッパが中国経由でロシアの液化天然ガスを購入していることを明確に述べずに、ほのめかしているだけだった。
ロシアがヨーロッパを罰する手段として、中国により多くのガスを輸出することになった場合、中国は余剰ガスをスポット市場に転売する能力をより多く持つことになり、間接的にヨーロッパを助けることになる。
中国は、ロシアが制裁を回避するのを助けており、ロシア、中国の両国はその過程で非常に裕福になるのだろうか。というのも、フィナンシャルタイムズ自身の判断は、結局のところ、ロシアのエネルギーに対する完全な禁輸を要求した新自由主義的思考が見事に裏目に出ていることになるからだ。
偽善的なヨーロッパによるこの種のロシア制裁の遠回りが長く続くほど、ヨーロッパに対する中国の影響力は次のとおりになる。
欧州がエネルギー供給に絶望すればするほど、中国の政策決定が欧州に影響を与える力を持つようになる。皮肉なことに、ヨーロッパはエネルギーのロシアへの依存から脱却しようとしているために、中国への依存度が高まっているのだ。
最終的に、ヨーロッパが行ったのは、1つのエネルギー供給源を別のエネルギー供給源に置き換えることだった。ロシアとともにヨーロッパの毎日のエネルギー摂取量を決定している中国が、ヨーロッパの善良なシグナル発信者からのぞき見ることなく、これらすべてを可能にした。
台湾を侵略するのにちょうど間に合うように。
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