・7月10日 冠水した武漢の公園でマスクをつけて遊ぶ少女。bloomberg.com
三峡ダムにつながる巨大な淡水湖が次々と過去最高水位に
中国で少なくとも過去 100年程度の中では、最大規模といえる大雨と洪水に見舞われていることは何度かふれていまして、最近は以下の記事で取りあげました。
特に、世界最大のダムである「三峡ダム」に非常に大きな洪水の圧力がかかり続けていることにより、懸念が広がっているとされています。
庚子年の中国の今 : 降り止まない雨による歴史的な洪水、各地で発生し続けるイナゴ、そして、もしかすると風前の灯火かもしれない三峡ダム
In Deep 2020/07/09
その後、7月13日になって、三峡ダムと同じ水系列にある「中国最大の淡水湖」であるポヤン湖(鄱陽湖)の堤防が「決壊」したことが明らかとなりました。
7月13日 堤防が決壊した中国最大の淡水湖「ポヤン湖」の周辺地域
・taiwannews.com.tw
良い例えではなくて申し訳ないですけれど、日本も今年も含めて、毎年のように大雨や台風による洪水の被害に遭い続けています。
そうして、私たち日本人も数多くの「災害の光景」を見てきていまして、今年の熊本などの人的被害も甚大なものでしたが、そのような光景から考えて、上のポヤン湖が決壊した周辺の状況を想像すると、「とてつもない被害となっているのではないか」と思わざるを得ない部分があります。
そして、現在の中国では、このような光景が出現しているのが中国全土の 27省に拡大していると報じられているのです。
7月13日 香港メディアが空中から撮影した江西省の村
・NTD
日本もですが、中国の高齢化も著しく、特に都市部ではないこれらの村のような場所では大変に高齢率が多いと伝えられていまして、機敏な行動をとることができるのかどうかが難しい部分があるかもしれません。
上の写真の江西省の村については、 7月15日の中国語の報道には以下のようにあります。
継続的な大雨と三峡ダムの緊急放水により、長江流域の数千キロの水位レベルが警告線を超えたため、各地で氾濫が発生し、多くの農地や村が水没し、ダム、家、道路、橋が流されている。
7月13日、香港のメディアが、この江西省の村を訪れたところ、1.5メートル以上の水深があり、村の交通と通信は外界から完全に遮断されていることがわかった。しかし、村にはまだ多くの高齢者たちが残っており、村の人たちの安全が懸念される。 (NTD 2020/07/15)
どうやら、今のところ、 7月11日頃あたりからの長江に沿ったさまざまな川や湖の大規模な河川の氾濫での実際の被害の状況はわかっていないと思わざるを得ません。
今回の一連の大雨被害について、中国政府発表の公式なデータでは、
・141人が死亡
・29,000軒の建物が倒壊
・224万人の住民が避難
となっていますが、この数値が正確とは考えられない部分もありそうです。
先ほどの中国最大のポヤン湖の決壊については、具体的には以下のように報じられています。
中国最大の淡水湖で堤防の決壊が示されている
7月13日、中国最大の淡水湖であるポヤン湖に沿った堤防が決壊したことが、撮影された動画などから明らかとなった。
中国の三峡ダムは、本来はこのような下流の湖などの洪水を「制御」するために作られたものだが、ポヤン湖は決壊し、最悪の洪水が拡大しており、三峡ダムが洪水のコントロールを成し得ていない状況が示されている。
中国の中央部と南部では約 2か月間にわたり集中豪雨が続いており、7月11日のポヤン湖の水位は、1998年の洪水時(3000名が死亡した中国の洪水)に記録された 22.52メートルをすでに超えていた。
繰り返される大雨により、江西省の川や湖の水位が危険なほど上昇し、中国国営の新華社も「いくつかの堤防の決壊が発生した」と認めた。しかし、新華社は、三峡ダムが洪水を抑制しているといまだに賞賛している。
中国国営通信によると、洪水はすでに 510,700ヘクタール以上の作物を破壊し、経済損失は 822億万元(約 1兆2000億円)に達したと述べた。なお、中国政府は、7月15日から、さらに激しい大雨がこれらの地域を襲うと予測している。 (Taiwan News 2020/07/14)
ここでも農作物の問題が生じているようなのですけれど、それにしても、7月15日から「さらに激しい雨が降る可能性」が予想されているようです。
なお、この三峡ダムとポヤン湖の位置関係を調べてみますと、以下のようになっていました。
三峡ダムが上流にあるということになっているようで、つまり、三峡ダムが決壊していないのにも関わらず、ポヤン湖の堤防は決壊し、1998年のこの地域のかつての最大級の洪水の時よりも大きな被害を出しているということのようです。
これで、三峡ダムが決壊してしまったら、どうなってしまうのでしょうかね……。
ちなみに、どこまで本当なのか判断は難しいですが、台湾の複数の報道メディアが、
「中国政府は三峡ダムについて、お手上げの状態だと認めた」
というように報じています。
7月14日の台湾の報道
・newtalk.tw
以下のような内容です。
中国メディアは、7月14日、三峡ダムへの集中豪雨と洪水に対して政府は最善を尽くしたことをほのめかしており、中国政府はあきらめる準備をしていることを示唆している、と報じた。
中国政府は、三峡ダムは洪水との戦いで最大限の成果を上げているダムであり、世界最大の治水プロジェクトである三峡ダムに対しての非難をやめるように国民に呼びかけたという。
中国のメディアによれぱ、三峡プロジェクトは当初、揚子江渓谷の下流域を保護していたが、安徽省と江西省の最近の集中豪雨が、それらの地域にも氾濫を起こし、水力発電プロジェクトの潜在的なプラスの影響を打ち消したと述べている。 (Taiwan News 2020/07/14)
いくら何でも、中国政府が「万策が尽きました」と言うはずはないとは思いますが、しかし、仮に今後さらに雨が激しくなっていった場合、確かに有効な手段というものがあるのかどうかはわかりません。
なお、先ほどリンクしました記事「庚子年の中国の今…」では、この 7月のはじめは、世界各地で「記録的な規模の洪水」が起きていたことに簡単にふれていますが、その状態もいまだに続いていまして、この数日だけでも、インドネシア、バングラデシュ、ネパール、トルコ、ロシア、インドなどで、近年最悪級の豪雨被害が起きています。
しかし、その中でも、中国で起きている「降り止まない雨」による洪水は、歴史的なものになりつつあります。
思い出す「中国の巨大な人工降雨プロジェクト」
それにしても、中国を中心として、ここまでカオスな降水事象が起きている根本的な理由はわかりようがないにしても、「ふと」かつて記事にしたことを思い出していました。
それは以下の記事などでご紹介していました「中国政府による史上最大の気象コントロール / 人工降雨プロジェクト」についてでした。
いよいよ中国で実行される人工降雨のための「人類史上最大の気象コントロール・プロジェクト」は日本の、そして地球の気候にどんな影響を与え得るか
In Deep 2018/04/02
詳細は上の記事をご参照いただければ幸いですが、「来たるべき水不足」に備えて、中国政府は、大々的な「人工降雨システムの構築」を進めていまして、上の 2018年の記事で取りあげた報道では、この頃からシステムの稼働を開始していた可能性があります。
この人工降雨システムは非常に巨大な装置で、「スペインの全国土面積ほどもある装置」らしいのですが、これが設営されているのが、「現在、中国で大雨が降っている地域のやや北西」の青海省というところなのですね。関係あるかどうかはわからないですが、最近の中国は、武漢ウイルス研究所にしても、この気象コントロールにしても、大々的に他の国や地域を巻き込んでいく傾向にありますから、どうなのですかねえ。
今年はまさにカオスの年といえますでしょうが、中国という国がそれぞれに大きく関係していることは強く感じます。
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