アメリカとの国境の街メキシコ・ノガレスでは全員「消毒トンネル」を通る義務が
・Guardian
いろいろなところに設営されている「直接人体消毒トンネル」
冒頭の写真は、英ガーディアンが「メキシコの国境の町は、新型コロナウイルス感染対策のためにアメリカからの訪問者を消毒する《消毒トンネル》を使用している」という記事にあったもので、この記事を知ったのは、リープスマッグというウェブサイトの記事でしたが、そのタイトルは以下のようなものでした。
「誤った情報と恐怖に後押しされて《消毒トンネル》が世界中に出現している」
そういうことは知らなかったので、「へえ」と思って、少し読んでみました。この記事そのものは大変に長いもので、その冒頭をご紹介しますと、以下のようなものでした。
誤った情報と恐怖に後押しされて「消毒トンネル」が世界中に出現している
“Disinfection Tunnels” Are Popping Up Around the World, Fueled By Misinformation and Fear
leapsmag 2020/07/073月下旬、北インドのウッタルプラデーシュ州の当局が、新型コロナウイルス感染拡大への対策として、女性や子どもを含む何百人もの移民労働者たちに、彼らを「消毒」するとして化学剤を強制的に彼らに直接噴霧した。この出来事は、インド全土で人々の怒りを巻き起こした。
この際には、北インドの保健当局は、次亜塩素酸ナトリウムの希釈された混合物(人体に有害とされる漂白剤)をこのグループに使用し、多くの人たちが、皮膚の発疹と目の炎症を引き起こしたと報告されている。
このインドの事件は、化学物質を個人に直接噴霧することは、人体の危険が生じる可能性があることから人々の怒りを買った。
しかし現実には、その後、世界中の混雑した公共の場所、つまり、ショッピングモール、オフィス、空港、駅、市場など人が集まる場所に各地で「消毒トンネル」が出現しているのだ。
大量の消毒剤を人体に噴射して殺菌すると喧伝されているこれらのトンネルは、化学剤である消毒液を噴霧あるいは霧吹き状に数秒間ノズルから噴射して、人体の表面を消毒するという。使用されるのは、漂白剤として一般に知られている塩素化合物である「次亜塩素酸ナトリウム」の希釈された混合液が主流となっているようだ。
多くの保健衛生の専門家たちはこのような方法を強く非難しているが、消毒トンネルは 7月上旬の現在までに、インド、マレーシア、スコットランド、アルバニア、アルゼンチン、コロンビア、シンガポール、中国、パキスタン、フランス、ベトナム、ボスニア・ヘルツェゴビナ、チリ、メキシコ、スリランカ、インドネシアの少なくとも 16か国に登場している。
伝えられるところによれば、ロシアのプーチン大統領は彼自身の住居に自分用の消毒トンネルを持っていると言われている。
こんな感じになっているらしいのですね。
全世界の 16カ国で「人間消毒トンネル」がいろいろなところに設置されているようなのです。
冒頭のメキシコの街の場合の様子を GIF 画像で示しますと、以下のようなもので、
「中に入って、いったん両手を横に広げて、全身に消毒剤が噴霧されるようにしてから出る」
というようなもののようです。
「からだに悪そう〜」と心底思いますが、調べてみると、確かにいろいろな国のいろいろな場所に設営されているのです。
世界の「人間消毒トンネル」
バングラデシュのAB銀行は、すべての支店に消毒トンネルを設置。ここを通らないと銀行に入ることができない
・tbsnews.net映画「ショーシャンクの空に」のように中国重慶市の消毒トンネルを通る人。
・dailymail.co.ukイタリア・ローマのテルミニ駅の消毒トンネル
・giuliobarbieri.itケニア・モンバサ市のフェリー乗り場。ここを通らないと乗ることも降りることもできない。
・africanews.comインド・ティルプル市の市場の入口。トンネルというより周辺一帯に消毒剤の霧が。
・timesnownews.com
いやあ、身も心も洗われる光景ですねえ(洗われないよ)。
真面目な話として、これらのちょっと恐いところは、
「自由意志で選択できるものはない」
という部分と、たとえば、銀行なら銀行、市場なら市場、駅なら駅というように、
「そこを通らないと、目的の場所に入ることができない」
ということです。
この「人間消毒」については、多くの専門家たちが「メリットよりも人体へのリスクのほうがはるかに高い」と述べていまして、それでも、このような「人間直接消毒」は広がっているようです。
ところで、先ほどご紹介した記事に、
> 伝えられるところによれば、ロシアのプーチン大統領は彼自身の住居に自分用の消毒トンネルを持っていると言われている。
という下りがありましたが、「ホンマかいな」と探してみましたら、AP 通信のモスクワ支局の報道によれば、「本当」だそうです。
以下がその写真です。頭上の真上から直接消毒剤をかけていますね(笑)。
ウラジミール・プーチン氏の住居に設営されたとされる消毒トンネル
・wvlt.tv
以下のような報道でした。
プーチン大統領のために設置された特別な消毒トンネル
ロシアのプーチン大統領は、モスクワ郊外とクレムリンの 2か所に特別な消毒トンネルを設置したことをプーチン大統領の報道官であるドミトリー・ペスコフ氏がAP通信に確認した。
ロシアのリア通信社によれば、この消毒トンネルは、モスクワ近郊のペンザ市に拠点を置くロシア企業によって製造されたと報告されている。(WVLT 2020/06/17)
(笑)。
しかし、プーチン大統領はともかく、先ほど書きましたように、消毒トンネルの多くが、「ほとんど強制」である上に、健康上のメリットがほぼ「ない」というより「多くの人たちには、健康への悪影響のほうがはるかに高い」ことが問題だと思います。
今の日本での「施設や店舗や飲食店に入る時の消毒」が「ほぼ強制である」場合がよくあることなどを見ても、この
「意味のない消毒の強要」
というのは、特に主要国では、世界的に広がっていると思われる上に、まだまだこの先も続くことなのかもしれません。
これまで、このブログでは「過剰な殺菌」がいかに身体にダメージを与えるかということについては、何度も取りあげていました。
いろいろありますけれど、以下の2つの記事がわりと具体的に書いているものだと思います。
日本政府当局は、いいかげんに「あまりにも身体に有害な《空間と環境への消毒剤使用》を禁止する」という強い命令を出すべきだ。このままじゃ日本人の子どもたちが若くして死んでしまう
In Deep 2020/06/14
過剰な消毒と殺菌が「人間の肺を破壊するメカニズム」がわかった
In Deep 2020/05/25
しかしまあ、こういうような記事を書き続けているうちに、Google さんなどからも嫌われ、こういう関係の記事は検索では上位に表示されにくくなっているので、一般の人の目に止まることもあまりなくなってきています。
もちろん、ちゃんとした保健衛生の専門家のたちの中にも、現在の過剰な消毒はいけないと述べられている方々がたくさんいらっしゃるのですけれど、なぜか主流の報道にはならない。そういう記事や報道も、専門家の方が書かれているものであっても、インターネットでの検索上位には表示されにくくなっています。
今年の 3月頃まではまだあったのですよ。たとえば、以下は 3月23日のナショナルジオグラフィックの記事の冒頭です。
消毒はせっけんでOK、漂白剤よりいい理由とは、新型コロナ対策
人類は5000年近くにわたり、様々な洗浄剤を発明してきた。しかし、感染症を予防するには、せっけんと水という単純な組み合わせが最も強力な手段の1つであることはずっと変わりない。
それなのに、昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような集団感染が発生すると、人々はあらゆる種類の化学洗浄剤を買いに走る。だがその多くは、新型コロナウイルス対策には不要または無効だ。
新型コロナウイルスの被害が甚大な国々では、防護服に身を包んだ作業員が、公共の通路やオフィスビル内に漂白剤の溶液を散布している。しかし、専門家に言わせれば、感染拡大の予防に必要かどうかは疑わしい。
漂白剤の使用は「ハエを叩くのにこん棒を使うようなものです」と英ケンブリッジ大学のウイルス学者ジェーン・グレートレクス氏は話す。そのうえ、漂白剤は金属を腐食するし、吸い込み続ければ呼吸器系の健康問題につながる恐れもある。 (ナショナルジオグラフィック 2020/03/23)
ここに書いてあることは特別なことではなく、「ごく普通の当然のこと」が書かれてあるのですけれど、それが今は消えてしまい、マッド・サイエンス的な常軌を逸した衛生の価値観が主流となってしまった。
そして、この記事にありますような、
> 吸い込み続ければ呼吸器系の健康問題につながる恐れもある
ような物質を、世界 16カ国では「人体に直接噴霧」し、噴霧していない日本などの国でも「ほぼ強制的に消毒剤を使用させられている」のが現状です。
影響が出る時間が早い可能性と、妊婦さんと胎児への大きな影響
ところで、この消毒剤は、ものによっては、「予想以上に早く影響が出る」ことを最近知りました。
オープンジャーナルの科学誌ブロスワンに 2019年に発表された論文に「ゼブラフィッシュへの化学物質投与による腸内細菌叢の変化」の研究があったのです。
・トリクロサン曝露はゼブラフィッシュにおけるマイクロバイオームの急速な再構築に関連した
Triclosan Exposure Is Associated with Rapid Restructuring of the Microbiome in Adult Zebrafish
使われた化学物質は消毒剤の「トリクロサン」というもので、これは今は日本でもアメリカでも使用が禁止となっていますが、ほんの少し前までは、日本でも「ごく普通の抗菌石けん」にいくらでも使われていたものでした。
その研究では、消毒剤トリクロサンを含む餌を与えられたゼブラフィッシュは、
「たった 4日で腸内細菌叢の構成が変化した」
のでした。
投与量とかの問題もあるでしょうけれど、4日間で腸内細菌環境が変化してしまうというのは、実に驚いた結果です。
まあ、過剰な身体の消毒の問題は、過去記事でもたまに書きましたけれど、最も心配なのは「小さな子どもたち」なんですね。
小さな子どもは、腸内細菌環境にしても、身体のさまざまな微生物環境にしても「発達途上」であるわけで、そのような状態で、今のような過剰な殺菌と、国によっては、「消毒剤のシャワーを日々浴びている」ということになっている可能性が高いのです。
やっぱり、いかんですよ。
そして、それまであまり考えたことがなかったのですが、最近、ある研究論文を目にしまして、それは、
「化学物質がお腹の赤ちゃんの肺機能に影響する」
ことを示すものでした。
これは、イギリスの国民保健サービスが発表したその研究で、ブリストルの 1万4541人の妊婦さんを対象とした大規模な研究であり、その結論は、
「妊娠中の母親が、家庭用の化学物質を使用しているクリーニング製品を使用すると、赤ちゃんのぜんそくの発症リスクを高める可能性がある」
というものでした。
調査した化学物質には、漂白剤や芳香剤そして化学物質を使用するあらゆる洗剤が含まれますが、お母さんが妊娠中にそれらを使用した場合、生まれた子どもがぜんそくになるリスクが、最大 41%増加するとのことでした。
この 41%というのは低い数値ではないです。
掃除用の洗剤でこのような結果となっているわけで、今の「新しい生活様式」では、消毒剤を使用する頻度が普通ではないですし、場合によっては空中に散布されているわけで、どうなのかなと。
今の時期は特に、妊娠されている女性はそれほど外出したりはしていないのかもしれないですけれど、それでも、買い物もあれば、銀行や何らかの公共施設に行くこともあると思うのですが、それらの場所で消毒剤の曝露に遭うたびに、
「少しずつ化学物質の体内の蓄積量が高まっている方もいらっしゃるのではないだろうか」
と思うのです。
それはあまり胎児に良いことではないようなのですよ。
新型コロナウイルスに関しての問題がそう簡単に沈静化しないと思われる今、このような衛生上の懸念は拡大するばかりです。
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