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日本ではヒトとマウス、米国ではヒトとヒツジ、中国ではヒトとサル…。臓器移植という大義名分の中で次々とつくられる「動物と人間の異質同体キメラ」

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ヒトとサルの交配種の作成を伝えるスペインの報道より


elpais.com

ヒトとネズミを交配させた「臓器」の言及の承認を伝える日本の報道より

ネズミ体内で人の臓器 文科省、東大のiPS研究了承

日本経済新聞 2019/07/24

文部科学省の専門委員会は24日、東京大学のチームが申請をしている動物の体内で人の臓器を作る国内初の研究計画について、実施することを大筋で了承した。

同省は、動物の体内で人の臓器を育てる研究を禁止していたが、3月に関連指針を改正し条件付きで解禁した。

ネズミなどの小型動物の体内で人の細胞の臓器が正常にできれば、将来は人間の臓器の大きさに近いブタやサルを使い、実際の移植に使える可能性がある。糖尿病など向けに新たな移植治療への道が広がる見通しだ。




科学の恵みかパンドラか

最近、世界中で、

「ヒトと他の動物の混合生命体」

が作り出された報道、あるいは、その実験が承認されたという報道が相次いでいます。

正確には、他の動物の胚にヒトの幹細胞を移植するという改変のですが、なぜ、そのようなことをするかといいますと、「他の動物の体内に、ヒトの臓器を作るため」で、そして、目的は、「臓器移植のため」ということになっています。

この2週間くらいの間に、中国では、スペイン人科学者によって、ヒトとサルの交配種を作る実験が順調に進んでいることが報じられ、そして、日本では、それまで禁止されていた、「人間以外の動物の体内でヒトの臓器を育てる研究」が、文部科学省によって承認されたことが、世界的に報じられています。

この交配種のことを、科学用語では「キメラ」と呼び、あるいは、ハイブリッドと呼ぶ場合もありますが、いずれも、あまり馴染みはない言葉ではあります。

Wikipedia では以下のように定義されています。

キメラ - Wikiepdia

生物学における キメラ とは、同一の個体内に異なる遺伝情報を持つ細胞が混じっている状態や、そのような状態の個体のこと。嵌合体ともいい、平たく言うと「異質同体」である。

この語は、ギリシア神話に登場する生物「キマイラ」に由来する。

具体的には、どのように行うかといいますと、どのように動物でも、おおむね以下のような過程となり、その目的は、「動物の中で育った臓器を人間に移植する」ということを目指しています。

ヒトと他の動物との異質同体作成と臓器移植までの道筋

1. 他の動物(ネズミ、ヒツジ、サル、ブタなど)の DNA を改変する

2. ヒト幹細胞を対象の動物の胚に移植する

3. 新しい臓器を成長させるためにヒト幹細胞を使用する

4. 動物の体内で作られた新しい臓器をヒトの体内に移植する

Daily Mail

 

私個人は、DNA や細胞の改変に関わる試みについては、生命を唯物的なだけのものと見るという観点から、個人的には否定的でして、そのあたりは、昨年、アメリカで「ヒトとヒツジのキメラ」が作られた時に書きました以下の記事でも少しふれています。

アメリカの医学界の「人間と羊のハイブリッドを作り出すことに成功した」報道への賞賛から見る「人間は完全に単なる物質である」とする現代社会に生きること

しかし、ここにきて、ヒトと他の動物のキメラが、世界中で、怒濤のごとく、つくり出されているという流れを見ても、このような状態はさらに加速する可能性のほうが高そうです。まあ、パンドラとは言いませんけれども、「何かのフタが開いた」というような状態にはなっているようです。

そして、この実験の問題は、実際には、「技術的なところではない」という部分があります。

たとえば、先ほどの日本の場合も、報道に、

> 同省は、動物の体内で人の臓器を育てる研究を禁止していた

とありますように、この実験や研究は、多くの国で禁じられてきたのですね。

冒頭で取り上げました「中国でヒトとサルの同位体がつくられた」ことに関しても、なぜ、中国でスペイン人の科学者がおこなっているのかといいますと、

「スペインでは、この研究は禁じられているため」

でした。

中国には、キメラの研究とその作成の実行に関して禁止する法律はなく、誰でも、このような同位体を造り出すことができるということで、スペインから中国にラボを移して、研究を続けているようです。日本でも、部分的に承認されてきているということで、今後、日本でも、多くの同じ研究や実験がおこなわれる可能性があります。

この冒頭の中国でのヒト=サルのキメラについての報道からご紹介します。

 


Spanish scientists create human-monkey chimera in China
elpais.com 2019/07/31

中国で、スペイン人科学者がヒトとサルのキメラをつくり出した

フアン・カルロス・イスピスア (Juan Carlos Izpisua)氏が率いる研究チームは、人間の臓器移植用の臓器を動物の体内で成長させる方法を探る研究の一環として、ヒト幹細胞を動物の胚に注入した。

イスピスア氏の研究者チームは、中国の実験室で、はじめてとなる人間とサルのハイブリッドを作成する作業を行っている。これは、人間の臓器移植に動物を使用する重要な一歩だ。

このチームは、米ソーク研究所とスペインのムルシア・カトリック大学(UCAM)のメンバーで構成され、器官の形成に不可欠な遺伝子を不活性化するためにサルの胚に遺伝子組み換えを行った。その後、あらゆるタイプの組織を作成できるヒト幹細胞を胚に注入した。

なお、この研究については、調査結果を国際的に著名な科学雑誌に論文を掲載する前であるため、詳細な情報を、まだメディアに提供していないが、研究チームは、これまでおこなわれたマウスやブタの細胞だけではなく、サルなどの霊長類に対しての実験を進めている。

イスピスア氏のチームは、以前、より類似した種同士のキメラ、たとえば、ラットとマウスの間にキメラを作成することに成功している。2017年には、革新的なゲノム編集ツール CRISPR を使用して、マウスの胚の、心臓や目、あるいは膵臓の発達に不可欠な遺伝子を非活性化した。その後、チームはこれらの臓器を生成できるラット幹細胞を導入した。

スペイン・バルセロナ再生医療センターの所長であるアンヘル・ラヤ (Angel Raya)博士は、キメラの実験は「倫理的障壁」に直面していると説明する。

倫理的な問題を回避するため、現在の科学界は、キメラの動物が妊娠した際には「 14日で妊娠を停止させる」というルールを暗黙の中で設定しているとラヤ博士は言う。

この日数は、胚が人間の中枢神経系を発達させるのに十分な時間ではない。そして、すべてのキメラ胚は、その妊娠期間が終了する前に破壊される。現在の規則では、どのような場合でも、妊娠したキメラ動物が、出産にいたることはない。

スペインでは、この種の研究は厳しく制限されており、致命的な病気の調査にのみ限定されている。そのため、イスピスア氏は、サルを使った実験を中国でおこなっている。しかし、スペインの倫理委員会は、2017年に、ヒトとブタのキメラ実験については承認している

研究者たちの最終的な目的は、動物の体内に、人体に移植可能なヒトの臓器を作ることだと述べる。


 

ここまでです。

日本で、キメラ作成に対しての承認のニュースが出た時に、ロシアの報道メディアは、ロシア科学アカデミーの科学者で、ロシアの移植人工臓器医療調査センターの所長であるセルゲイ・ゴチエさんという方に話を聞いていますが、ゴチエさんは以下のように述べています。

2019年8月7日のスプートニク「「結果は誰にも予見できない」 日本が動物体内でヒト膵臓づくりに了承にロシアの科学者がコメント」より

「日本の研究者らの行っていることは異種移植と言われるものです。このメソッドを使う際に一番障害となるのは感染の危険性です。動物に寄生するウイルスが人体に入り込む恐れがあるからです。自家移植であれば、ヒトが臓器のドナーであるのでこうした恐れはありません」 (略)

「こうした実験が最終的にどんな結果をもたらすか、それを正確に予見できる人はいません。人間が動物とヒトの両方の遺伝子を体内にもった場合、どうなるか。ヒトとしての動きができるのか」

「これは医師が動物を人間のように改造するという、あの有名な、ジョージ・ウェルズ作の『モロー博士の島』を思い起こさせます。もちろんこれはSFですが、遺伝子技術は壮大な将来性を持っており、これが我々をどこに導いていくかは最後までわかりません。この理由からこうした研究は管理されており、国によっては禁じられてもいます。科学は進歩を止めませんが、これ以上進むのは危険だという境界線を見極めさせるのは人間の倫理です」

ここまでです。

なお、ヒトの胚の幹細胞について、「人工多能性幹細胞」という言葉から、日本では「 iPS 細胞」と呼ばれることがありますが、この iPS 細胞というのは、つまりは和製英語で、海外ではまったく使われないですので、ここでも使っていません。

このキメラに関しては、今後も、「科学の花形研究」となっていく可能性がありますので、今回は、個人的な感想にはふれないでおたきいと思いますけれど、それにしても、こういう報道を見るたびに、

「人間にとって、《人体》とは何なのだろう」

と、ぼんやりと思います。

唐突ですが、「イエス・キリストが生まれる以前のキリスト教」というような概念があり、いわゆるローマ法王庁を頂点とするキリスト教というものとは別に、「キリスト教の本質」について、歴史的に、たびたび語られてきました。

そこでは、キリスト教の最終的な目的は、「自分の肉体をすべて変容させること」だとされていたようです。そして、その変容とは、「肉体を持つ」ということ自体から離れていくことで、それがキリスト教の本質であると。

私もそうですが、ますます現代人は、「肉体という存在に縛り付けられている」ということになってきていて、 遺伝子改変とか、そういう方向もまた、「肉体こそすべて」という世になっているということなんでしょうかね。

ロシア人のスヴェトラーナ・セミョーノヴァという人の『ロシア宇宙精神』から、「キリスト教の本質」だと、その人が書いている部分を抜粋して締めさせていただこうと思います。私たち人類は今、こういうところと最も離れた場所へと向かっているようです。

セミューノヴァ『ロシアの宇宙精神』序論より

キリスト教の神秘主義的伝統においては、将来の神化のためには魂や知だけではなく、肉体をも変容させ、肉体に光を与えることが必要とされる。重要なことは、意識を肉体から引き離し、意識によって人間の肉体のすべての器官と力を霊化し、統御することなのである。

人類は低次元の自由にひたりきって自己満足しているが、この自由とは、右往左往し、もがき回る自由である。そのままでは決して最良の選択として精神圏という理想を選び取るような、高度の自由を手に入れることはできない。

そのために人類は、現在の自分の肉体の自然そのものを変革する活動をはじめて、自然の肉体が少しずつこの精神圏というキリスト教的な高度の理想を実現することができるようにしていかなければならない。

人間の道徳的完成を安定したものにするためには、その前に、それと並行して、人間の肉体を変革し、他の生物を食べ、押し退け、殺し、そして自分でも死ぬという自然的な性質から人間を解放しなければならない。





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