6450発の核弾頭の行使権利を持つアメリカ唯一の人物は今
この1年は、パンデミックの対策下で「ブラックジョークのような訳のわからない社会生活形態」を見せ続けられてきましたが、次第にブラックジョークの質も変化しつつあるようで、ますます本番化が進んでいるかもしれません。
2月24日の米 FOX ニュースで、「数十人の民主党議員たちがバイデン氏に核兵器を発射する唯一の権限を放棄することを要望」というタイトルのものを目にしました。
アメリカにおいては、核攻撃を行う最終権限は国軍最高司令官である大統領が持ちますが、上の FOX ニュースの記事は「その権限を放棄してほしい」と大統領に求める書簡に 30人以上の民主党議員が署名したという内容でした。
その後、「核攻撃をアメリカ大統領が決断してから発射までの時間」に関して、2017年のブルームバーグの分析を引用した米ゼロヘッジの記事を読みました。
そこにおいて、
「米大統領が核攻撃を決断してから最速で 5分で核ミサイルが発射される」
ことを知りました。
統計サイトのスタティスタに、そのブルームバーグの分析を視覚化した「アメリカの核攻撃のしくみ」というページがありました。
そこには編集者が以下のように記していました。
このインフォグラフィックは、核攻撃を発生させるために必要な手順の概要を示している。米国大統領が核攻撃を決定してから大陸間弾道ミサイルが格納庫から発射されるまでわずか 5分しかかからない場合がある。ただし、潜水艦からの発射核兵器に関しては、もう少し時間がかかる。この場合は、大統領の核攻撃の決定から約 15分だ。 (Statista)
そのスタティスタのインフォグラフィックは、かなり縦に長いものですので、そこから「要点部分」を抜粋して日本語にしますと、以下のようになります。
途中の説明を省いても省かなくても、「意思決定から最短 5分で発射」ということになるようです。
How A U.S. Nuclear Strike Works
このようになっているようです。
最初の1分以内に「大統領が会議を招集」とありますが、ブルームバーグの分析には次のように書かれています。
大統領はワシントンと世界の軍と民間の顧問との会議を招集し、選択肢について話し合う。[意思決定からここまでの経過時間:1分未満]
協議は大統領の希望する限り続くが、敵のミサイルが米国に向かっており、大統領が反撃を命じなければならない場合、協議は 30秒以内に終わる可能性がある。 (bloomberg.com)
普通に考えますと、核兵器の攻撃実行というのは「ものすごく差し迫った状況」での判断となるはずで、多くはこのように「会議は 30秒以内に終了」ということになる可能性はあるようです。
結局、アメリカ大統領が「核攻撃の意思を決定」した場合、その 5分後(潜水艦からの発射の場合 15分後)には、核兵器が発射されることになります。
これは、核兵器を所持して以来のアメリカの歴代のどんな大統領でも同じだと思われます。
これまで、このシステムによる「間違い」が起きたことはありません。
そして、現在のアメリカ大統領が登場しました。
現大統領は、歴代最高得票数を獲得した国民の絶大な支持を持つ上に、日本には「知の巨匠」という表現があったり、あるいは優れた指導者を「知将」と呼んだりしますが、現大統領氏も「すべてを任せられる、国民のための知の巨匠」という意味が含まれるのか、任 知将大統領と呼ばれることも多くなりました。
大統領氏は、最近もテレビ番組でアメリカ国民を感動させていました。
1週間ほど前、大統領氏は、アメリカの CNN の番組に出演し(なんと生放送)、司会者から
「あなたは今や大統領で、ホワイトハウスにお住まいになられている。どのような感じですか?」
と質問されました。
大統領氏は、以下のように返答していました。一流のジョークなのでしょう。
「I wake up every morning, look at Jill, and say 'where the hell are we?'」
(毎朝起きた後、妻を見て『いったいぜんたい私らはどこにいるんだ?』と言っているよ)
「 where the hell 」と、ヘルが使われるあたりに大統領氏の紳士性を感じさせます。
その際のCNNより大統領氏の様子
CNN via Twitter
この放送の動画がソーシャルネットに投稿された後の最初のコメントは、
「He’s not kidding… (冗談として言ってない…」
でした。
いずれにしましても、ジョークに満ちあふれた楽しい生活をされている大統領氏ですが、
「この人が 5分で核攻撃が開始となる命令の権限を持っている」
ということになります。
大統領氏に関しては、以下の記事で、アメリカ建国史上最も多い数の大統領令に署名したことをお伝えしましたが、その時に放映されていた動画でも、氏は、
「何に署名しているのかわからない」
とジョークらしきことを述べていました。
アメリカ人民共和国 : バイデン氏は過去最大最速となる1週間で33の大統領令に署名。ただ本人はほとんど理解していない模様。そして氏のかつての夢は「新世界秩序」社会の建設
投稿日:2021年1月27日
それと共に、現在のアメリカ大統領氏が歴代の大統領と非常に異なるのは、
「まったく外国の指導者たちと会談していない」
ことにもあります。
すべてカマラ・ハリス副大統領が行っているようです。
フランスの大統領と最初に正式な電話会談をしたのは副大統領だと米ニューヨーク・ポストは報じ、カナダの首相とも最初に正式に会談したのもハリス副大統領(ロサンゼルス・タイムズ)でした。
さらに、ホワイトハウスの報道官が、「バイデン氏は数ヶ月間は外国の指導者と直接会談する可能性は低い」と声明を出したことが報じられています。
会談できない理由は特に書かれてはいません。11月に犬と遊んでいて足を骨折したこととは関係ないと思われます。
そのようなこともあり、最近では、「どこにいて何をしているのかも次第に定かではなくなって」きていて、アメリカ大統領らしい話題が何もないということにはなっています。
最近の具体的な大統領の動静に関しては、2月15日の米ニューズウィークが、「バイデン氏、キャンプ・デービッドで孫娘とのマリオカートレースで勝利」というタイトルの記事を掲載していました。
キャンプ・デービッドは、アメリカ大統領の別荘ですが、そこで孫のナオミ・バイデンさんとマリオカートに熱中する様子がナオミ・バイデンさんのインスタグラムに投稿されていました。
マリオカートに興じる大統領氏(右)
Naomi Biden via Newsweek
ナオミ・バイデンさんによれば、この時は「私はどこに座っているのかわからない」とは言わなかったようですが、この報道が大統領就任以降の大統領氏の動静に関しての最も具体的なものでした。
いずれにしても、「楽しい日々を送っていらっしゃる」ようで何よりですが、しかし、くどいようですが、
「この楽しい人が、5分以内に核弾頭が発射されることへの決定権を持っている」
のですね。
何もかもがマリオカートのように楽しい勝利に終わればいいですが、そうならない場合もあります。
その中で、冒頭でご紹介しました、民主党の議員たちによる「核攻撃の権限」を「放棄してほしい」という要請書が提出されたようです。
そのアメリカ民主党議員 36人による大統領への要請書の書簡のについての報道をご紹介させていただきます。
みんなが必死になっています。
数十人の民主党議員たちがバイデン氏に核兵器を発射する唯一の権限を放棄することを要望した
Dozens of House Democrats want Biden to give up sole authority to launch nuclear weapons
Fox News 2021/02/24
「この(核攻撃の指示の)権限の決定権を 1人だけが持つことには、実際のリスクが伴います」と手紙には書かれている。
報告によると、三十数名の民主党議員がバイデン大統領に核兵器を発射する唯一の権限を放棄するように求める書簡に署名した。
最高司令官としての核攻撃実施能力を放棄させるという大統領からの約束は、将来の大統領からも、この同じ権限を奪う可能性がある。
民主党のジミー・パネッタ議員からの書簡は、「この権限を 1人に確定することは、実際のリスクを伴う」とし、「前大統領(トランプ氏のこと)は、核兵器で他国を攻撃すると脅迫したり、他の当局者たちが大統領の判断に懸念を表明するような行動を示したことがあった」と述べている。
パネッタ議員の事務所は、FOX ニュースからの取材にはすぐには応じなかった。パネッタ議員は 2月22日のツイートで、バイデン氏に「核の指揮統制構造にチェック機能およびバランス機能を設置するよう呼びかけている」と述べた。
書簡は次のように続けている。
「いかなる大統領でも、核攻撃を命じる前に、おそらく顧問に相談するだろうが、規定ではそれは必要とされていない。米軍は、戦争法の下で合法であると判断した場合、命令を実行する義務がある。米国の核軍の現在の規定から、その攻撃は数分で起こるだろう」
議員たちによると、副大統領と下院議長らは、(核攻撃命令の)執行前に大統領からの発足命令に同意することを要求するなど大統領だけが持つ唯一の核の権限に代わるいくつかの選択肢を用意しているという。
歴代の大統領は、「核のフットボール」と呼ばれることもある、特定のコードを使用して核攻撃を設定するために必要なすべての資料を含むブリーフケースを次の大統領に渡し続けてきた。
民主党は以前、トランプ前大統領がそのような権力にアクセスできることに懸念を表明した。たとえば、1月にナンシー・ペロシ下院議長は、統合参謀本部長のマーク・ミリー将軍と、トランプ大統領(当時)から核コードを保護することについて話したと述べていた。
ペロシ氏は 1月5日に、「不安定な大統領が軍事的敵対行為を開始したり、発射コードにアクセスして核攻撃を命じたりするのを防ぐための利用可能な予防策について話し合うために」ミリー統合参謀本部長と話したと述べた。
前大統領は新大統領の就任式に出席しなかったため、トランプ氏の後にバイデン氏が就任したとき、ブリーフケースは直接渡されることはなかった。これは通常なら、大統領就任式の日に大統領の間で直接引き渡される。
ここまでです。
なお、ここにナンシー・ペロシ下院議長の発言としてある「不安定な大統領が…」とあるのは、あくまでトランプ大統領のことを述べていたものです。現在の大統領に対してのものではありません。
今の大統領氏が、核起動システムが含まれるブリーフケースから「発射コードにアクセスして核攻撃を命じたり」ということはあまり考えられませんが、「私はどこにいるのかわからない」という状態の時などはやや不安です。
「テレビのスイッチがどれかわからない。これ?」
年齢と共に脳機能や認知機能が衰えていくことは普通のことであり、誰でもそうなりますし、そのこと自体に問題があるのではありません。
結果として「そういう人に核発射のすべての権限を持たせる状態となっている」ことのほうです。事前に検討しておくべきだったことを今となって大慌てで修正しようとしている。
パンデミック開始以来の世界はどこも暗黒なジョークに包まれています。
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