もしかすると、地下には「巨大な火山のマグマ・コネクション」が存在するかもしれない
7月14日の科学系メディアPHYS.ORGの記事より
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桜島の噴火も今年140回を超える中で判明した「火山の共有」
昨日(7月16日)、鹿児島の桜島がかなり大きな噴火を起こしました。
7月16日 噴煙が4600メートルにまで達した桜島の噴火
この噴火で、2017年に入ってからの桜島の噴火数は 140回を超えたようで、きわめて活溌な活動が続いているわけですが、他にも、霧島連峰の新燃岳なども継続的に噴火しており、また、かつて「新しい島」として賑わった西之島も今月また噴火を再開しています。
そういうように、日本での火山活動が活溌な中で、最近、「九州のふたつの火山が地下でマグマを共有していることがわかった」という論文が発表されました。
これはもっと簡単にいうと、
ふたつの異なる火山がつながっていた。
ということがわかったということで、しかも、これまでこのことが科学的な研究で証拠として示されたことはなく、初めて「異なる火山同士が地下で接続している」ことが示されたのでした。
その「初めての証拠を示した火山」こそが、九州の霧島と姶良カルデラでした。
冒頭の記事にある図に説明を加えて、もう一度載せますと以下のようになります。
このふたつの白い円の火山系同士が「地下でマグマを共有していた」ということになります。
これはつまり、
「距離が離れているけれども、実際にはこれらのはひとつの火山」
という考え方もできるのかもしれません。
しかし、今回のように証拠が示されたのは、これが初めてでも、「火山の噴火に連鎖性のようなものがある」ということは、科学を持ちださなくても経験でわかっていたことでもあります。
たとえば、下のような「連鎖」という言葉のある物騒な報道も今年あったりしたわけです。
「列島消滅!」新燃岳が誘発する巨大カルデラ噴火の“恐怖の連鎖”
niftyニュース 2018/03/16
3月15日現在、宮崎県と鹿児島県境にある霧島連山の新燃岳では、噴火警戒レベル3(入山規制)が継続中。新燃岳火口から概ね4キロメートルの範囲で大きな噴石が飛散し、火口から2キロメートルの範囲で火砕流の警戒が発令されている。
「御嶽山や草津白根山の噴火は水蒸気爆発でしたが、溶岩が流出した今回の噴火は規模が大きく、これからどこまで噴火が広がるかは分かりません」とは、地震学が専門で武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏。懸念されるのは、観測史上初の溶岩流出となった新燃岳噴火が引き起こす“連鎖”だ。
「新燃岳は西日本火山帯に属していますが、九州全体の火山が活性化しています。火山がカルデラ噴火を起こせば、火砕流が鹿児島県の川内原発にも到達しかねません」
九州地方には、中央部の阿蘇山から南西方向に霧島火山帯が伸びている。そこには、北から順に阿蘇カルデラ(熊本県)、姶良カルデラ(鹿児島湾北部)、鬼界カルデラ(大隅海峡)などが形成され、特にこの3つは過去、とてつもない規模の破局噴火を起こしている。
このような話の中に出てくるのが、今回の「姶良(あいら)カルデラ」でもあります。
これは、先ほどの地図でもおわかりのように、以前、以下の記事で取りあげました鬼界カルデラとも近いといえば近い場所でもあります。
「噴火すれば最悪1億人が死亡と想定」 : 九州南方にある鬼界カルデラの活動の徴候の報道から再び「破局噴火の時代」をおもう
日本は巨大なカルデラが多い国土でもあり、特に北海道から東北、そして九州には、過去に破局噴火(カルデラ噴火)を起こした火山の形跡が多く残っています。
下は、日本の著名な巨大カルデラ火山です。
日本の巨大カルデラ
この中で、九州は、北から、
・阿蘇山カルデラ
・姶良カルデラ
・阿多カルデラ
・鬼界カルデラ
と、比較的近い距離で巨大カルデラが並んでいることがわかります。
そして実は、今回の論文の報道を読んで思ったことは、
「この巨大カルデラって実は全部地下でつながっているんじゃないの?」
という思いだったのでした。
なので、本当に地球の地質活動が激化した時には、この巨大カルデラ群にそれぞれで動きが出て来るという可能性も、決して「まったくない」とは誰にも言えないと思われます。
もちろん、九州だけではなく、他の火山系もそうです。
いろいろと思うところもありますが、冒頭の記事をご紹介させていただきたいいと思います。論文を発表したのは、アメリカのマイアミ大学の研究チームです。
Study finds deep subterranean connection between two Japan volcanoes
phys.org 2018/07/14
日本の2つの火山が深い地下で接続していることが発見される
科学者たちの研究により、日本の南部のひとつの火山の急激な変化は、そこから 22キロメートル離れた場所にある火山活動の直接的な結果として現れていることが初めて確認された。
これは、姶良カルデラと霧島の 2011年の噴火に至る数か月の間に、地下で共通のマグマの供給源を介して、ふたつが結ばれていたことが観測で示されたものだ。
日本の霧島と鹿児島は、日本で最も活発で、なおかつ想定被害が大きな火山に沿うように広がっている都市であり、また、鹿児島は人口も多い都市であるために、世界で最も詳細な観測が続けられている火山系のひとつだ。
火山がどのように相互作用するかを特定することは、噴火が遠方の火山の活動に影響するかどうかを知るために、あめいは、どのように異なる遠方の火山が相互に影響を及ぼし、他の火山の新しい強力な爆発事象の脅威を高めるかどうかを決定する上で重要なこととなる。
米マイアミ大学の研究チームは、この日本の 2つの火山を結ぶ共通のマグマ溜まりの存在を確認するために、この地域の 32の常設 GPS ステーションからの変形データを分析した。
姶良カルデラの膨張は止まっており、火山活動は休止をしている兆候が現れたとされている。しかし、この新しい研究の結果は、霧島が活動を停止した後に再び霧島が噴火を再開した間、姶良カルデラのマグマ溜まりが一時的に収縮し始めたという動きを示し、ふたつの火山で反対のことが起きたことを示している。
「霧島の噴火の前後に、姶良カルデラの動向に根本的な変化が見られたのです」と、この研究の筆頭著者であるエロディー・ブラゼランデ(Elodie Brothelande)氏は語った。
「この相互の作用を説明する唯一の方法は、このふたつの火山の間に接続関係が存在しているということなのです」
2つの異なる火山の間に明確な「接続」があることが科学的に示されたのは、この研究が初めてとなる。
この発見は、地質学的には表面的な明確なつながりを持たない火山同士が、巨大なマグマシステムの一部である可能性があることを確認したことになる。
研究の共同執筆者であるファルク・アメラン(Falk Amelung)氏は、以下のように述べる。
「火山のマグマシステムがどのように広がっているかを知ることは、火山噴火のリスクの観点から重要なことです。地下には多くのマグマが存在しますが、1つの火山の噴火が別の火山の噴火と関係する可能性について、これまで明確なつながりの証拠が示されたことがなかったのです」
「鹿児島のように人口密度の高い火山地域では、噴火の予測が非常に重要なこととなります。今や、姶良カルデラの動向の変化は隣人である霧島の活動の直接的な結果であることがわかったのです」
また、この発見からうかがえることは、姶良カルデラのような大きな火山系では、マグマの経路が定期的に開閉するために、共通の深い貯留層からマグマが供給された場合、その近くの火山での小さな噴火に反応する可能性があるということだ。
「今後は、このような火山同士の接続が、アジアのこれらの火山にだけ特有であるものなのか、それとも世界中に火山系に広がっているものなのかどうかを調べていく必要があるはずです」