欧州糖尿病学会で発表された人工甘味料による腸内細菌の破壊の研究に関する報道
低カロリー甘味料がどのように腸内環境を破壊し、糖尿病を急速に悪化させるか
ここ 2日間ほど私用でわりと大きな移動をしていました。
その道中、馬に揺られながら(どんな移動をしているんだよ)ふと報道を見ますと、科学報道メディアで冒頭のような
「低カロリー甘味料が腸内細菌バランスを破壊する」
というものを見かけました。
私は馬を降り(馬はもういいから),そして、また馬に乗りました(そうかよ)。
こういう支離滅裂な思考になりやすい傾向というのは、私のように腸内環境が乱れている人にありがちなことですが、最近はこのブログでも
「腸の存在の重大性」
というものをよく取り上げます。
それは、腸というより、その腸に在住している「細菌たち」の重大性でもあるわけで、今はこの腸内細菌を破壊するさまざまなものが少しずつ判明してきていますが、今回は、ヨーロッパ最大の糖尿病の学会である欧州糖尿病学会の年次総会で、
「低カロリー(ノンカロリー)甘味料は腸内環境を破壊する」
ということ。
そして、それと共に、
「低カロリー甘味料は、糖尿病を発症あるいは悪化させる要因となる」
ということが発表されたということについてご紹介させていだたこうと思います。
この問題がどこにあるかといいますと、「多くの人たちが、健康や病気の管理のために低カロリーやノンカロリーの人工甘味料を使っている」ところにあると思われます。
しかし、今回の研究で、「人工甘味料の継続的な摂取は、短期間で腸内細菌の環境を破壊して、糖尿病の発症に大きく貢献する可能性」が示されたということになります。
簡単にいえば、
「低カロリー(ノンカロリー)甘味料はまったく健康のためにならない」
ということが、かなりはっきりとしたということかもしれません。
これらの人工甘味料が腸内環境に与える影響として、今回の実験からいえることは、
・体に役立つ良い腸内細菌群を減少(崩壊)させる
・しかし、体に「悪い」腸内細菌群は増加する
という一石二鳥の(使い方が違う)効果があるようで、良いものを消滅させて悪いものを増やすという、かつての高見山関が言うところの「2倍、2倍」という感じの効果であるわけです(何だかわからないですが)。
さらには、血糖値を下げる働きがあるホルモンに GLP-1 というものがあります。
糖尿病の人などは、この GLP-1 を補う薬を投与されますが、薬などなくても、人体には腸内に、もともとこの GLP-1 の放出を促す細菌たちがいるのです。
それは「ブチリビブリオ」という細菌で、この細菌が GLP-1 というホルモンの放出を手助けするらしいのですが、人工甘味料は、この有益な作用を助けるブチリビブリオ菌を「減少させる」こともわかったのでした。
つまり、
「低カロリー甘味料を摂取することは、糖尿病の発症に寄与するか、あるいは糖尿病を悪化させる可能性が極めて高い」
と言えそうです。
これは何だか皮肉な話で、なぜなら、低カロリー甘味料は、「糖尿病の人たちが血糖値を上げないために使っている」部分があるからです。
たとえば、糖尿病関係の、あるページには、以下のように記されています。
低カロリーやノンカロリーの甘味料は、急激な血糖上昇につながりやすい砂糖の使用量を抑える目的で広く使われています。
最近ではさまざまなタイプの甘味料が出回っており、これらを有効に使うことにより食事療法をより容易に行うことができるようになりました。
このようにありますが、実際には、
低カロリー(ノンカロリー)甘味料は GLP-1 の放出を手助けしている腸内細菌を死滅させることにより、摂取すればするほど血糖値が下がりにくくなる。
ということなりそうで、おそらく、このような人工甘味料を過剰に摂取している場合は、糖尿病が加速度的に悪化していく可能性があるように思います。
こういう「皮肉」は今の医学の世界には満ち溢れていますが、この場合の解決法は簡単で、「人工甘味料をとらなければいい」だけですので、皮肉を解消するのは難しいことではないと思われます。
人工甘味料は脳も破壊する
人工甘味料といえば、以下の記事で、人工甘味料入りドリンクは、脳に大変な悪影響があり、「脳卒中とアルツハイマー病の発症率が3倍になる」という内容をご紹介させていただいたことがあります。
人工甘味料入りドリンクが「脳卒中とアルツハイマー病の発症率を3倍にする」というアメリカの調査結果からふと思う、そういう飲み物が「糖質を極端に嫌う今の日本」には数十億本以上流通して……
腸は脳と直結していますので、腸内環境が乱れることにより、脳に悪影響がおよぶのはとても納得できます。
低カロリーの人工甘味料は、今の日本では、いわゆる缶入りチューハイのたぐいで大量に使われていまして、何億本、何十億本という「人工甘味料入りアルコールドリンク」が人々に消費されています。
これらの人体へのダメージは、アルコールによるものより、人工甘味料による腸内環境の破壊によるもののほうが大きいような感じがします。
個体差はかなりあるでしょうけれど、毎日、人工甘味料入りの飲料やアルコール飲料を飲んでいた場合、その期間に応じて段階的に腸内の「良い細菌群」が減少していき、あまりにも、その期間が長引いた場合(長期間、飲み続けた場合)は、回復できないレベルまで腸内環境が破壊される可能性もあるのかもしれません。
今回の実験では被験者数は少ないとはいえ、全員に腸内細菌の減少が見られていたようですので、個体差があるとはいっても、すべての人がある程度の影響を受ける可能性のほうが高い気がします。
今回の研究で被験者に使われた人工甘味料は、スクラロースやアセスルファムなど、低カロリー甘味料入りのドリンクや、缶チューハイなどに普通に使われているもので、日本ではありふれたものです。
それを「 2週間服用しただけで腸内環境は破壊された」のでした。
ここから、今回の記事をご紹介します。
New study reveals that low-calorie sweeteners disrupt the gut bacteria in healthy people in association with impaired blood sugar control
eurekalert.org 2018/10/04
最新の研究で、低カロリー甘味料が血糖コントロール障害と関連して、健康な人の腸内細菌を破壊することが明らかになった
今年の欧州糖尿病学会(EASD)の年次総会で発表された新しい研究は、低カロリー(およびノンカロリー)甘味料(LCS)の消費は、グルコースレベルの調節の障害に関連し、腸内細菌のタイプを変えてしまう可能性があることを明らかにした。
この研究は、オーストラリア・アデレード大学医学部とアデレード大学健康栄養科学センター(Centre of Research Excellence in Translating Nutritional Science to Good Health)の共同による。
この研究では、腸内の微生物(腸内細菌)に対する低カロリー甘味料の影響と、体内でグルコースをどのように吸収し、そして調節するかについての研究がなされた。
これまで知られている医学的研究では、低カロリー甘味料入りのドリンク(ダイエットドリンクなど)を定期的に、あるいは多量に飲用している場合は、2型糖尿病の発症リスクが高くなることが明らかにされているが、しかし、糖尿病発症の根底にあるメカニズムについては不明だった。
アデレード大学の研究者たちは、糖尿病ではない健康な体の被験者たちの食事に低カロリー甘味料を 2週間添加することで、グルコースの消費に対して体がどのように応答するかを調べた。
その結果、臨床的にグルコース消費と関連性のある反応の増加を引き起こすのに十分であることを示した。
今回の研究には、糖尿病患者ではなく、平均的な体重を有する平均年齢 30歳の 29人が被験者として参加した。
そのうち 15人の参加者は無作為にプラセボを摂取し、14人は 1日当たり 1.5リットルの低カロリー甘味料入りの飲料を飲むことに相当する低カロリー甘味料の組み合わせ(スクラロース 92mg および アセスルファム 52mg )を摂取した。
用量は、2週間にわたって 1日3回、カプセルの形態で投与された。 低カロリー甘味料の摂取の前後に便を採取し、腸内に存在する微生物の種類を同定した。
この研究で、低カロリー甘味料を摂取した被験者群が、糞便中に存在する微生物の型のより大きな変化を示し、その中でも良好な健康と関連する細菌であるユーバクテリウム‐シリンドロイデス(Eubacterium cylindroides / ヒト腸内グラム陽性細菌の一種)が有意に減少することを見出した。
他に食物の発酵を助ける腸内の有益な細菌種の個体群も減少した。
しかし、11種の日和見菌(体が弱った時に腸内で悪い働きをする細菌)の存在は増加していた。
さらに、研究では、血糖値をコントロールするのに役立つホルモン GLP-1 (血糖値を下げる働きがある)の放出が低下したことに関連して、ブチリビブリオ(Butyrivibrio)細菌集団の減少を観察した。
また、ショ糖およびグルコースのような単糖の代謝に関与する微生物遺伝子の量にも変化があった。
研究者たちは論文で以下のように述べている。
「健康な非糖尿病被験者たちにおいて、2週間の低カロリー甘味料の補給は、消化管の細菌を破壊し、健常な人(の腸内)には通常存在しない(悪い)細菌類を増加させるのに十分であった」
「エネルギーを収穫するためにこれらの増加した細菌に使用される経路は、グルコースを調節する身体の能力を低下させると予測される」
「今回の私たちの知見は、人工甘味料が糖尿病患者の血糖コントロールを悪化させるという考えを支持することになった」
ここまでです。
腸の重要性について、最近、記させていただきました記事としては、以下のようなものがあります。
「腸は第二の脳」……ではない。腸内システムは脳をも支配している「第一の脳」である可能性が高まる。それが意味するところは「人間は細菌に理性までをも支配されている」ということで……
あるいは、生まれてくる子どもとの関係の話として、以下のような記事も書かせていただいたことがあります。
・自閉症の子どもが生まれる決定的な要因が米バージニア大学の研究者により特定される。それは「母親の腸内細菌環境」。その予防法も初期段階ながら提起される
最近のさまざまな研究によって、人間の器官の中で最も重要なものが腸であるかもしれないということが次々と明らかになっています。
身体の健康に対してだけではなく、思考や理性やメンタルに関してもそうです。
先ほどリンクした記事にもありますように、脳でさえも、
「脳は腸内細菌にコントロールされている部位に過ぎない」
ということがわかってきており、腸というより、「人間の中に住み着いている細菌が、人間の肉体存在そのものを支配している」ということが事実のようなのです。
もちろん、肉体と「本質的な自分」は違うものかもしれないですけれど、しかし、人間は、ある程度は健全な(五体の話ではなく、疾病や苦痛がないという意味)肉体と共にいなければ、その自分本人としての理性を生かし切れないのも事実です。
たとえば、「ずっと症状や病気で苦しんでいる状態だけでは、その人の素晴らしい理性も表現も思考も良い状態で外へは出にくい」と。
人が健康になったほうがいいというのは、人としての理性と理想を表現するためだけであり、長生きなどするためではないはずです。
自分の持っている、より良い思想や理性や理念を、ある程度の年齢の時に自由に発散するためのもので、そのためには、ある程度の身体の健康があったほうがいいと。
そして、適度な年齢が過ぎたら、さっさと「自分の本質の世界」へ戻っていくと。
いずれにしましても、その「ある程度の健康」は、腸内の環境を浄化していくことで、保持できる、あるいは、かなり回復できると確信しています。