2016年の2月と3月だけで「700頭以上の死んだウミガメ」が打ち上げられているメキシコ・ゲレロ州についての報道
世界中での大量死の報道が2016年4月の第一週に集中
まだ4月に入ってから数日ですが、このほんの数日の間に、世界中でやたらと「大量死の報道」が見られまして、以前からそういう傾向はあるのですが大量死は、「集中する時はとにかく集中する」というのがあります。
2月の終わり頃に、
・世界で再び始まった「鳥の大量死」の連続から思い至ったこと…
2016/02/26
という鳥の大量死のことについて書いたことがありましたが、今回は鳥もありますけれど(鳥インフルエンザ)、イルカやウミガメなど海洋生物の報道が多いです。
それにしても、冒頭の「2か月間で 700頭以上のカメがメキシコの海岸で死体で発見されている」というのは、この報道を読むまで知らなかったことですが、ちょっとすごい数ですね。
なぜ、あまり報道されていなかったのかというと、実際のところはわからないですが、報道だけを見れば、メキシコ当局がこの出来事をあまり公にしたくなかったようなフシがうかがえます。
これは長い記事ではないですので、先にご紹介しておきます。
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Tratan de ocultar muerte de tortugas en Costa Grande
メキシコ政府当局はゲレロ州コスタグランデのカメの大量死を隠蔽しようとしている
今年2月から3月にかけて、ゲレロ州の海岸に大量のウミガメが死んでいるのが発見され続けていることに対して、生物学者たちは、メキシコ当局はカメの死の原因について何の調査もせずに、ただカメの死体を埋めているだけだとして、非難を強めている。
そして、これらのウミガメが海洋絶滅危惧種であることから、メキシコ政府はカメの死の原因を調査して、社会に対して発表するべきだとしている。
海洋生物種の保護活動家らによると、メキシコ・ゲレロ州の海岸では、今年2月と3月だけで 700頭以上のウミガメが死亡して発見されている。
保護活動家たちは、この事態に対して、メキシコの自然保護委員会や環境保護連邦当局は原因を調査するのではなく、やっていることは、カメを埋めて、大量死の事実を隠しているだけだと述べる。
生物学者たちも、過去3か月、ウミガメの死を調査し続けているが、連邦政府は何もしていないと主張する。
このような感じですが、2か月で、同じ場所に 700頭のカメの死体というのは、私が今まで聞いた中で最大のウミガメの大量死のような気がします。
ゲレロ州は下の場所にあります。
この地図を見ますと、ゲレロ州というのは、ビーチリゾートで有名なアカプルコなどもある場所のようで、当局が「死んだカメが発見されたら一刻も早く埋めたい」という理由は、観光への影響などを無念してということもあるのかもしれません。
とはいえ、今のメキシコは、全土に「不穏」が拡大していますので、かつては有名な観光地だったアカプルコも下のような状態のようです。
犯罪まん延で観光業壊滅、人気リゾート地アカプルコ メキシコ
AFP 2015/10/19
メキシコ南部ゲレロ州アカプルコはかつて、米国人学生が休暇に大挙して訪れる人気の観光地だったが、今では「殺人の都」と呼ばれるようになり、ビーチリゾートを訪れる人の姿は珍しくなった。
1950年代にはハリウッドスター御用達のリゾート地だったアカプルコからは、華やかなにぎわいは失われ、断崖絶壁から海に飛び込む伝統行事のダイバーたちの姿よりも、死体写真が新聞に取り上げられることの方が多くなってしまった。州の検察当局によれば、アカプルコでは毎日2~6人が殺害されている。
現地日刊紙エルウニベルサルが公表した政府統計によると、今年(2015年)1月~5月の間に少なくとも336人が殺害され、その数は昨年の同時期と比べ42%増加した。また今年1月~8月までに殺害された人の数は500人超に上るという。
カメの死とヒトの死があまり変わらない土地・・・。
まあ・・・ここまで治安が崩壊していると、リゾートも何もあったものではないですが、別の見方をしてみれば、そういう場所で「当局による丁寧な科学的調査ができるかどうか」ということも関係しているのかもしれません。
ウミガメの大量死は、インドでも4月に入り、すぐに起きていたことが報じられていました。
2016年4月2日のインディアンプレスより
このインディアンプレスの報道では、漁師によるトロール船での違法漁業活動がカメたちの死の原因ではないかとしていますけれど、その違法漁業活動はこれまでもずっと続いていたもののはずで、その中で突然 80頭ものウミガメが死亡するというのは、原因として違和感も感じないでもないです。
そんなわけで、この 2016年4月5日までの数日間で報じられた大量死の報道を簡単にご紹介しようと思います。
ところで、大量死の集中と関係しているわけではないでしょうが、4月に入ってから、世界の「気温」が何だかすごいのです。
気温も4月と共に歴史的なカオス状態に
気温は、特に、この2〜3日が異常気味で、アメリカやカナダでは、時期としては、歴史的な低温記録を更新したりしている一方で、ヨーロッパやロシアのシベリアなどでは異常なほど暖かい、あるいは暑い状態となっています。
2016年4月5日のカナダの報道より
・CP24
その気温は、4月5日は、オンタリオ南部の多くがマイナス 10℃以下などの、時期としては観測史上最も低い気温となったそうで、ティミンズというところでは、マイナス 24.5℃などということになっていたようです。まあ、一応4月ですしね。涼しいカナダとはいえ、オンタリオ南部全体が氷点下 10℃以下などに覆われるのはすごいと思います。
アメリカの一部もとんでもない寒さとなりましたが、その一方で、ロシアからヨーロッパあたりにかけては、こちらは、記録的な「高温」となったところが多く、下は 4月5日の気温分布ですが、ものすごい高温となっていることがわかります。
2016年4月5日のヨーロッパ周辺の気温分布
・Climate Reanalyzer
これを見ますと、イランやサウジアラビアより「ロシアやポーランドやルーマニアの方が暑い」ということになっているのがわかります。
この日のヨーロッパのいくつかの場所での最高気温は以下のようでした。
・ウィーン(オーストリア) 23.7℃
・ワルシャワ(ポーランド) 23.7℃
・ザグレブ(クロアチア) 26.5℃
・ポドゴリツァ(モンテネグロ) 26.0℃
・カリーニングラード(ロシア) 21.4℃
どれも、この時期としては記録的な高温で、どうやら、この 4月5日や、あるいはその前後の数日間というのは、「観測史上最も寒かった場所と、観測史上最も気温が高かった場所が同時に出現した」日であったようです。
気温の高い方も低い方も、どちらも実はかなり構珍しいことではありそうです。
というわけで、ここから、4月の大量死の主な報道となります。
2016年4月1日から5日までの大量死報道
2016年4月1日
英国コーンウォールに1月から3月までに61頭のイルカが打ち上げられている
・BBC
英国のコーンウォールの海岸に、2016年 1月から 3月の間に 61頭の死亡したイルカが見つかっているとのことで、これは過去 10年で最も多い数となっているとのこと。
2016年4月1日
米国ミシシッピー州に2016年だけで46頭のイルカが打ち上げられており、過去最悪のペースを更新中
・Eighth baby dolphin found dead on Mississippi beach
ミシシッピー州の海岸に、4月までに 46頭のイルカが死亡して打ち上げられています。昨年 2015年は、年間を通しての座礁数は 35頭だったので、3カ月で 46頭の座礁というのは異例の数のようです。
なお、ミシシッピー州の海岸は、2010年のメキシコ湾の原油流出事故の影響を受けましたが、その年でさえ、打ち上げられたイルカの数は 65頭だったそうで、今のペースだと、この年を上回ることになる可能性が高いと生物学者たちは考えているようです。原因は、藻ではないかとしていますが、決定的ではないです。
2016年4月1日
コロンビア北部の海岸に5頭のイルカが打ち上げられているのが見つかる
コロンビア北部のサンベルナルド・デル・ビエントという海岸で、イルカ5頭が打ち上げられているのが発見されました。現場には同時に、カモメ、ウニ、フグなども多数死んでいたとのこと。
原因は基本的に不明ですが、生物学者たちは、ウイルスによる影響を考えているとのことですが、カモメとウニとフグとイルカに同時に影響を与えるウイルスというのは・・・。
2016年4月1日
米国フロリダのビーチに数千匹のクラゲが打ち上げられる
・NBC
フロリダ州にあるハランデールビーチの海岸に、カツオノカンムリ(velella velella)と呼ばれる青いクラゲが大量に打ち上げられました。専門家によれば、この現象は3年ごとに起きるものなので、心配する必要はないとのこと。確かに、カツオノカンムリは昨年以来、たびたび打ち上げられています。
昨年5月にも、メキシコの海岸に大量に打ち上げられたことをこちらの記事でご紹介したことがあります。
2016年4月2日
インドネシアで鳥インフルエンザで11,000羽の鳥類が死亡
・Bird flu hits South Sulawesi in Indonesia
インドネシアの南スラウェシ州で鳥インフルエンザ(H5N1)の感染が拡大し、7000羽のアヒルと4000羽のニワトリが死亡。
2016年4月5日
台湾で1700羽のガチョウが鳥インフルエンザに感染して殺処分
台湾の嘉義県太保市で 1700羽のガチョウが高病原性鳥インフルエンザ(H5N2)に感染して殺処分されたようです。今のところ拡大の様子はない模様。
主なものは以上です。
他にもいろいろとあるのでしょうね。世界にはいろいろな言語での報道があって、見ることのできない同じような報道がたくさんあるのでしょうし、そもそも「報道になっていない大量死」は、それこそ膨大にあるような気もします。
そして、このように「生物が死亡する」という自然の変化は、その影響は人間にまわってくるものですので、この傾向がさらに拡大していくものなのかどうかをこれからも見ていきたいです。