血管病
新型コロナウイルス感染症というのは、初めて武漢型が出現したときから……もう、そろそろ3年ですが、その頃から今に至るまで、日本を含めた多くの国や地域で、
「気道感染症の線上としての対応や治療」
がおこなわれてきました。
要するに、風邪とかインフルエンザとか SARS とか、そういうようなものと同様ということで、発熱ならそれへの対応、肺炎などならその対応というような、ウイルス性の気道感染症として、つまり「風邪の延長線上」としての扱いが続いています。
しかし、「長期の後遺症」や、コロナワクチン(作用機序は、コロナウイルスと同じスパイクタンパク質の生産です)が出現した後に報告されていた症状の多くが、
「これまでの気道感染症と全然異なる。あるいは異なるもののほうが多い」
ということがわかってきてから、「もしかすると、コロナ治療というのは、対症療法からして完全に間違っているのではないか」と思うことは、よくありました。
脳や心臓や生殖機能(男女ともに)の障害、生理機能の障害、あるいは血栓や血流障害などの血液血管障害、ついにはガンや自己免疫疾患というものまで数多く報告されるようになって、「これはなんか違う」とは、多くの人々が思っていたことだとは思います。
そんな中、最近、科学誌ネイチャーに論文が掲載されました。
中国科学院 臨床研究病院の医学者たちによるものです。
彼らは、過去の膨大な臨床研究やデータ研究を行う中で、「結論」として、
「新型コロナウイルス感染症とは、血管の内皮機能障害に他ならない」
と結論付けました。
つまり、
「新型コロナウイルス感染症とは、血管の病気」
だと結論付けたのです。
また、その主要因は「スパイクタンパク質」とも明記されています。
論文は以下にあります。大変に長い論文です。
発表されたのは、10月17日で、最近のものです。
(論文) COVID-19 における内皮機能障害:エビデンス、バイオマーカー、メカニズム、および潜在的な治療法の概要
Endothelial dysfunction in COVID-19: an overview of evidence, biomarkers, mechanisms and potential therapies
nature 2022/10/17
重要なのは、ここに、
> 潜在的な治療法の概要
とあることです。
新型コロナウイルス感染症が「血管の内皮障害の疾患」だということから、研究者たちは、治療薬を含む「正しい方向かもしれない治療法」の可能性についてを提示しています。
この論文の結論である「新型コロナウイルス感染症は、血管の内皮の機能障害」という概念からは、まさに、先ほど書きました、
> 脳や心臓や生殖機能(男女ともに)の障害、生理機能の障害、あるいは血栓や血流障害などの血管障害、ついにはガンや自己免疫疾患というものまで、数多く報告されるようになって…
ということがすべて「理解」されるのです。
また、パンデミック初期から中期の頃は、「基礎疾患を持つ方や、高齢者が重症化しやすい」ということがありました。
これも、この「血管の内皮の病気」と考えるとわかりやすいことであり、基礎疾患を持つ方や高齢者の方々は、一般的には若い人たちに比べて、血管の内側はすでに「老化」したり「脆く」なっていることが多いと思われます。
そのような状態にところに、「内皮を傷つけるウイルス(あるいはスパイクタンパク質)」が感染すれば、健康な血管の人たちに比べれば、より重度の影響を受けるのは理解しやすいと思われます。
同じように、当初はコロナは若い人にほぼまったく重症化をもたらしませんでした(今は違います)。
この理由も、若い人たちは、一般に血管が健康であり、また炎症等に対しての治癒力も強く、ちょっとやそっと内皮を傷つけるようなウイルスが入ってきたところで、「炎症を治癒する力のほうが強い」ということで、重症化しなかったのだと思われます。
そもそも、2021年までのドイツの研究では、
「基礎疾患のない 5歳から 17歳のコロナ死者数はゼロ」
でした。
以下の記事にデータがあります。ドイツの該当年齢の全国民に対しての大調査です。
[記事] ドイツの調査で、基礎疾患のない5歳から17歳の子どもたちの新型コロナでの死亡数は「完全なゼロ」であることが判明。一方、ワクチンによる子どもたちの被害は
In Deep 2021年12月11日
しかし、この「若い人たちは重症化しない」というのも、ワクチン展開以降は変化してしまって、子供や若い人たちの重症者や死亡事例も出るようになってしまいましたが、「何もしていなければ」それはなかったはずです。
それはともかく、自然感染でも、あるいはワクチンの「副反応」とか呼ばれているものの中に「発熱」がありますが、
「全身の血管の内皮が炎症、損傷を起こしている状態なら発熱は当たり前」
ともいえます。
発熱は、身体の損傷や外敵の侵入と「戦う」ために起きるものです。
全身の血管内皮が壊されようとしている場合に発熱を起こすことは理にかなっています。
一方で、原因が内皮の問題なら、アセトアミノフェンなどを渡して単に熱を下げることには、ほとんど意味がないこともわかります。
この中国の専門家たちの論文にある、それぞれの「見出し」等を書き写させていただき、新型コロナウイルス感染症とは「何なのか」を短く示させていただこうと思います。
なお、COVID-19 と SARS-CoV-2 という言葉が繰り返し出てきますが、
・SARS-CoV-2 → 新型コロナウイルス
・COVID-19 → その新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症
です。
内皮の機能障害にいたるメカニズム
まず、最初の「概要」から一部を抜粋します。
これが結論のようなものに該当すると思います。
論文「概要」より抜粋
SARS-CoV-2 感染は主に肺系に影響を与えるが、蓄積されたエビデンスは、直接、ウイルス感染を介して、または間接的に (サイトカインストームを介して) 肺外系の汎血管系にも影響を与え、内皮機能障害 (内皮炎、肺血管内皮炎、内皮機能障害)、および内皮症、多臓器損傷を引き起こすことを示唆している。
SARS-CoV-2 感染は、一酸化窒素(NO)バイオアベイラビリティ (※ 一酸化窒素の全身の循環)の低下、酸化ストレス、内皮損傷、グリコカリックス (※ 血管内皮を覆う薄い層)のバリア破壊、透過性亢進、炎症/白血球接着、内皮の老化、内皮への間葉転換 (※ 上皮細胞が周囲の細胞との細胞接着機能を失うこと)、凝固亢進、血栓症などを引き起こす。
したがって、COVID-19 は (微小) 血管および血管内皮疾患とみなされる。
内皮を保護するいくつかの候補薬は、COVID-19 患者の臨床症状を改善することが示されている。このレビューの目的は、COVID-19 における内皮細胞の活性化に関連するバイオマーカーの最新の概要を提供し、COVID-19 患者の大血管および微小血管系における内皮活性化/機能不全の分子基盤に関する機構的洞察を提供することだ。
難しい言葉もあるのですが、興味深いのは、
> 酸化ストレス、内皮損傷…
あたりから始まる一連の症状が、ワクチン後の有害事象とも一致しているということで、このような大きな血管から小さな血管まで「全身の血管の内皮が、炎症、損傷、機能障害を起こす」ことが、いわゆる「コロナの重症化」と言えるかと思います。
ただ、これらのことから思う懸念があるとすれば、
「流行波が繰り返されれば繰り返されるほど重症者が増えるかもしれない」
ということです。
その理由は、最初のほうにも書きましたけれど、たとえば高齢者や基礎疾患を持たれる方々の場合、もともと血管が老化したり損傷していたりしている場合も多いと思うのですが、流行が繰り返されると、「血管の内皮に損傷を受ける回数が増えていく」からです。
高齢者などの場合、血管組織の自然な回復力などは、どうしても若い人たちより鈍い面があるでしょうし、次第に「修復できないところまで損傷が進んでしまう」ということもあり得るのかもしれません。
これは若い人の場合でも、最初は健康な血管であるため、少なくとも無症候のコロナ感染など「以前はなんでもなかった」ものが、
「内皮の損傷が繰り返されることで、そうも言えなくなってくる (内皮の損傷が進んで回復が追いつかなくなってくる)」
ということもあるかもしれません。
特に、ワクチンを複数回接種した若い人の場合は、自然の流行波以外でスパイクタンパク質を血中に迎え入れているわけで、内皮損傷のリスクはさらに高くなるようにも思います。
今後の重症率は、もうコロナそのものの病原性とはあまり関係ないかもしれず、今後、仮にまた大規模なコロナ流行が起きた場合は、以前よりも重篤になる方々が増える「可能性」もあります。あくまで可能性です。
それで、論文のそれぞれのセクションですが、最初は、「内皮機能と機能不全」というもので、このセクションは、血管の内皮機能についての解説と、その機能不全の一般的な解説です。
その次は、「内皮機能障害と COVID-19 関連の多臓器損傷」というセクションで、過去の臨床論文からコロナウイルスの症状が全身に起きることを示しています。以下のような図がわかりやすいです。
まるでワクチン有害事象そのものの図を見ているようですが、これはあくまでもコロナの自然感染を示したものです。
結局、すべての症例が「血管内皮の機能障害が原因となっている」ことになります。
論文では、特に重症化を引き起こしやすい症例として、
・急性肺損傷
・心筋損傷
・心筋梗塞
・肝障害
・腎臓障害
が挙げられています。
次のセクションは、「SARS-CoV-2 感染における内皮機能不全:エビデンス」というもので、それを理論的に長く説明していますが、難解すぎまして、ここを私が説明しても間違うと思いますので、詳細はともかく、その「証拠は、はっきりとしている」ことが書かれています。
次のセクションは、
「COVID-19 における内皮機能障害:メカニズム」
というもので、コロナ感染が、血管の内皮機能障害を起こすメカニズムについて述べられています。
このセクションも冒頭から難解で、
> COVID-19 は、重症患者のごく一部で炎症メディエーター (IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α、MCP-1、IP10、RANTES、G-CSF、および M-CSF) が過剰に産生されることを特徴としている。
と始まり、専門用語が飛び交いすぎて私には手に追えませんが、非常に長くメカニズムが説明されています。
あと、このこのセクションの中に、「ウイルスによる内皮細胞の老化」というサブセクションがあり、以下のようにあります。
> SARS-CoV-2 を含むさまざまな種類のウイルスによる感染は、内皮老化を引き起こす可能性がある。細胞老化は、ウイルス感染した内皮細胞における主要なストレス応答である。
コロナ感染は「血管の老化を引き起こす」可能性があるようです。先ほど書きましたように、高齢者などでは、個人差があるとはいえ、もともと血管がある程度は老化している場合もあるわけで、「そこにさらなる老化がくわわる」ということもあり得るのかもしれません。
今、「コロナ感染」と書きましたけれど、正確にいえば、先ほどの「内皮機能不全:エビデンス」のサブセクションである以下のタイトルが、よく示しているのではないでしょうか。
「SARS-CoV-2 のスパイク糖タンパク質が内皮細胞の活性化を引き起こす」
つまり、「コロナ感染」というのは曖昧な表現であり、
「スパイクタンパク質の感染が血管の内皮障害を引き起こす」
ということのようです。
何が書かれてあるのか全然わからないことを前置きして抜粋しますと、以下のように書かれています。
(「スパイクタンパク質の感染が血管の内皮障害を引き起こす」より)
> ヒト肺微小血管内皮細胞 (HLMVEC) は、S1 タンパク質または S1 感染ヒトマクロファージによる感染後に活性化され、凝固促進マーカーおよびサイトカイン/ケモカイン (ICAM-1、VCAM-1 および MCP1 ) の発現増加によって証明される。
>
> 同様の効果が、SARS-CoV-2 スパイク シュードビリオン (SCV-2-S) に感染した EC で観察された。
>
> さらに、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質 (S1) の S1 サブユニットは、培養されたヒト肺微小血管 EC の内皮バリア機能を低下させた。
>
> 同様に、組換えSARS-COV-2 Sタンパク質で処理されたヒト大動脈EC(HAEC)では、炎症性分子の分泌の増加と血栓症のマーカー(IL-6、IL-18、MCP-1およびPAI-1)が観察された。
>
> さらに、マウス脳微小血管 EC におけるスパイクタンパク質 S1 受容体結合ドメイン (S1-RBD) の感染は、内皮接合タンパク質 (VE-カドヘリン、接合接着分子-A、コネキシン-43 および PECAM-1) の分解を誘発し、それによって内皮細胞を障害した。
まあ、わからないとはいえ、スパイクタンパク質は、以下のような影響を与えることが、過去の臨床や研究でわかっていると書かれてあるようです。
・血液凝固を促進させる
・内皮のバリア機能を低下させる
・血液の炎症を促進する
・血栓が作られやすくなる
・脳微小血管の何らかの分解を誘発する
このような働きで、スパイクタンパク質は、「血管内皮を破壊する」ということが、完全に証拠として示されているということになります。
くどいですが、ワクチンが作り出すは、このスパイクタンパク質です。
論文の最後は、このスパイクタンパク質による「内皮機能不全を標的とする治療薬」というセクションとなります。
これは、このような薬を使うといいということではなく、内皮機能不全に対する既存の薬剤の作用を述べているもので、こういうものから、新薬などの開発への助言としたいというもののようです。
薬に関しては、私はわからないですが、一覧の中には、副作用などで問題になったようなものもありますが、羅列しますと、以下のようなものが書かれていました。
・スタチン
・メトホルミン
・SGLT2阻害剤
・ヘパリン
・ACEI/ARB/ET-1 受容体遮断薬/ACE2 アゴニスト
・糖質コルチコイド
・トシリズマブ
・アナキンラ
・コルヒチン
・JAK阻害剤
・セノリティクス
・L -アルギニン
・フルボキサミン
とあり、その下に続いて、
・ビタミンC
・伝統的な中国医学 (TCM)
とあります。
この「伝統的な中国医学 (TCM)」に関しては、初期のパンデミックにおいて、中国で最も効果的だったのがこれでした。
以下は、パンデミックが始まった頃の、2020年3月に書いた記事ですが、ランセットの記録をご紹介しています。
[記事] 医学誌ランセットの臨床記録で「中国湖北省の病院では新型コロナウイルス患者のほぼすべてが《中国伝統漢方だけで完治》していた」ことが判明…
In Deep 2020年3月27日
中国では、その後、散発的なコロナの流行はあっても、重症化や死亡事例の増加はほぼ聞かなくなりましたので、今でもこの「中国伝統医学」と漢方での治療は継続されていると思われます。
でも、その最も重要な部分は、中国から外に出ることはなさそうです。生物戦の観点からいえば、国家最高機密ですし。
アセトアミノフェンを処方して終わり、という治療法との差はあります。
ともかく、今回の論文により、すべてが明らかになったと思われます。
新型コロナウイルス感染症は「血管病」です。
もちろん、以前から、コロナが、この「血管内皮を損傷させる」ことは、数多くの論文等で述べられてきました。アメリカの著名なソーク研究所が発表した論文はこちらにあります。
また、そのスパイクタンパク質の毒性について、複数の論文を精査した医学博士の文章を以下の記事でご紹介しています。
[記事] スパイクタンパク質の「毒性のメカニズム」が判明。それは、細胞膜を貫通する穴を形成する毒素…
In Deep 2022年3月22日
この毒性によって、全身のあらゆる血管が影響を受け、身体のあらゆる部位に損傷をもたらすということが今回結論付けられた気がします。
今後も流行の規模の大小はともかくとしても、日本でも次の流行が来るのは来るでしょうし、本当の治療法が確立されていくことを希望しています。
次の流行の開始まで、そんなに時間はないはずです。
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