連邦緊急事態管理庁(FEMA)指揮下での非常事態の行方
私は今日まで知らなかったのですけれど、アメリカのワシントンD.C.には、1月11日から「非常事態宣言」が出されていたのですね。日本経済新聞の記事で知りました。
首都ワシントンを封鎖、13日から 大統領就任式へ厳戒
20日に予定されているバイデン次期米大統領の就任式をめぐり、米国土安全保障省は13日から首都ワシントンの封鎖を始める。
期間中は連邦議会議事堂やホワイトハウス周辺の企業などに立ち入りができなくなる。連邦議会議事堂にトランプ米大統領の支持者が乱入した暴動を受けて当初予定の19日から前倒しし、1万人超の州兵らが厳戒態勢で警備にあたる。
トランプ米大統領はこれに先立つ11日夜、ワシントンに非常事態宣言を出した。 24日まで、連邦当局による市民の保護や支援に必要な設備の使用、動員などを可能にする。(日本経済新聞 2021/01/13)
米ホワイトハウスのウェブサイトには、以下のように記されていて、連邦緊急事態管理庁(FEMA)が封鎖と非常事態対応を担うと書かれています。「コロンビア特別区」というのは、ワシントン D.C. の正式名称です。
ホワイトハウス・ウェブサイトの声明より
ドナルド・J・トランプ大統領がコロンビア特別区の非常事態宣言を承認
本日、ドナルド.J.トランプ大統領は、コロンビア特別区に非常事態が存在することを宣言し、2021年1月11日から 1月24日までの第 59回大統領就任式に起因する非常事態のため、連邦政府の支援を要請した。
アメリカ国土安全保障省の連邦緊急事態管理庁(FEMA)が、非常事態によって引き起こされる住民たちの困難と苦痛を軽減することを目的としたすべての災害救援活動を調整し、必要な人々に適切な支援を提供することを承認する。
これはスタッフォード法(災害救助・緊急事態支援法)に基づいて認可された緊急措置となる。人命を救い、財産と公衆の健康と安全を保護し、コロンビア特別区での大災害の脅威を軽減または回避する。
具体的には、FEMA が非常事態の影響を緩和するために必要な機器とリソースを特定し、それを動員し、 FEMA の裁量でそれらを提供することが許可されている。
連邦緊急事態管理庁(FEMA)の長官ピート・ガイナー (Pete Gaynor)は、トーマス・J・ファージオン (Thomas J.Fargione)を被災地の連邦復興作戦の連邦調整官として任命した。 (whitehouse.gov 2021/01/11)
物々しい文面が続きますが、おそらく、先日アメリカの議会で起きたような暴動や議会乱入などの人的な混乱に対応した非常事態宣言だと思われます。
ただ、「 FEMA って人的な混乱や暴動の対応を担当する機関だっけ?」とは思います。
実際に、歴史を振り返ってみますと、ハリケーンや竜巻、山火事といった自然被害の復旧支援が圧倒的に多く、そもそも、FEMA の公的な役割は以下の通りです。
FEMAの目的
連邦緊急事態管理局 FEMA の主な目的は、米国で発生し、地方および州当局のリソースを圧倒する災害への対応を調整することだ。
災害が発生した州の知事が非常事態を宣言した際、 FEMA と連邦政府が災害に対応する。州の知事宣言要件の唯一の例外は、非常事態または災害が連邦財産または連邦資産で発生した場合の FEMA の対応だ。 (Federal Emergency Management Agency)
なるほど、
> 非常事態または災害が連邦財産または連邦資産で発生した場合
は、その事態に対して、自然災害でなくとも FEMA が対応するということになるということなのですかね。それでも、おそらくですが、
「 FEMA が暴動や乱入などの人的な混乱へ対応した事例は、これまでほとんどない」
のではないかというような気はします。
少なくとも、2003年に FEMA が国土安全保障省傘下となった後からは、こういうことに対しての対応はなかったように思われます。
「現在の状況」つまりパンデミックの中でも現在の FEMA はそれほど目立つ存在ではないようです。
アメリカには、「パンデミックおよび全危険への備えに関する法律 (PAHPA)」という 2006年に制定された法律がありますが、資料を見ますと、2006年に、この法律の内容に相当する対応や行使をおこなう権限が、FEMA のある国土安全保障省から保健社会福祉省に移管されたとありますので、FEMA は、パンデミック災害の管理の筆頭局ではないようです。
そこで今回の新機軸というのか、暴動など人的な原因によると想定される非常事態に FEMA が初の指揮権を持つということになったようです。
どんなことになりますかね。
そして、トランプ大統領が非常事態宣言を出した 1月11日に地球が影響を受けた、太陽での異変が起きていました。
謎の多い惑星間衝撃波がまたも発生した日に
スペースウェザーの 1月12日の記事を読んでいましたら、
「惑星間衝撃波」
という言葉が出てきました。
これは久しぶりに聞いた言葉なのですが、以下のような記事でした。
1月11日からの地球は、この惑星間衝撃波の影響で、磁場に影響を受けていました。
惑星間衝撃波が数多くのオーロラを作り出した
INTERPLANETARY SHOCK WAVE SPARKS AURORAS
惑星間衝撃波 (Interplanetary shock wave)が、 1月11日に地球の磁場に衝突したことは、予報官たちを非常に驚かせた。この日 08:30 UT直後の衝撃波は、地磁気嵐は引き起こさなかったが、しかし、直撃を受けた最前線の下流の強い磁場は、地球の磁気圏に亀裂を生じさせた。その影響で北極のオーロラが激しく輝いた。
この惑星間衝撃波の発生と地球への直撃は事前には予測されていなかった。
惑星間衝撃波の発生源に関しては、推定として、1月8日に巨大な磁力のフィラメントが太陽の表面から噴出したことが確認されており、これは当初、その磁力の風は地球には向いていなかったようには見えたが、しかし、11日の惑星間衝撃波は、この太陽からのフィラメントの噴出の一瞬の直撃だったのかもしれない。
この惑星間衝撃波で北極圏では、急激に増加した磁気の影響で非常に美しいオーロラが多数観測されていますが、ふだんは滅多に出現しないピンクのオーロラもノルウェーで観測されました。
1月11日 トロムソで撮影されたピンクのオーロラ
Markus Varik
なお、こちらの過去記事で書いたことがありますが、ピンクのオーロラが発生するには「太陽のエネルギーが、より地上に近い場所にまで到達している」ことが必要ですので、この衝撃波の地球への直撃はそれなりに強力なものだったのかもしれません。
ところで、先ほどのスペースウエザーの記事は、特に「その原因」について何となく曖昧な書き方となっている部分があると感じられると思いますが、実は、
「惑星間衝撃波が発生する理由はわかっていない」
のです。
以前、惑星間衝撃波について書かせていただきましたのは、2019年の以下の記事においてでした。
発生要因不明の「惑星間空間衝撃波」が地球を直撃していた。そして、この現象が「宇宙線を生成していた」ことが独自調査により判明…
投稿日:2019年5月29日
この時には、発生源不明の惑星間衝撃波が地球の磁場を直撃し、当時のスペースウェザーによれば、
この惑星間衝撃波は、地球の周囲の太陽風の密度を突如として4倍にし、惑星間の磁場の強度は2倍となった。(spaceweather.com)
のでした。
そして、この時の 2019年の時には「太陽では何も起きていなかった」のです。
どこからやって来たのかもわかっていません。
どういう発生源からこのような衝撃波が地球に直撃したのかはわからないままでした。
以下は東京大学 地球惑星物理科の「宇宙空間衝撃波・宇宙線物理」というページからですが、
> 惑星磁気圏の周りには太陽風が超音速で流れているため、高速プラズマ流が磁気圏を障害物となって急激に減速され、風上には衝撃波が作られます。非常に興味深い点は相対論的速度をもつ高エネルギー粒子も同時に形成されることです。
ということがひとつの要因でありながら、
> どのようにしてそのような相対論的エネルギーを持つ粒子を作るかは未だ謎に包まれています。
ということで、原因もわからないし、そのため発生の予測もできない現象となっています。
このような、
「何の前触れもなく、地球が強力な磁気に包まれる」
ということは普通にあり得ることのようです。
今回の惑星間衝撃波の発生要因について、NOAA (アメリカ海洋大気庁)の予報官は「太陽から噴出したフィラメントが地球に影響を与えたのではないか」としています。
NOAA が推定した原因となったフィラメントの噴出は 1月8日の以下のようなものでした。白で囲んだ部分です。
ちなみに、現在、太陽には「黒点」はひとつもありません。
1月4日から 9日間連続で黒点ゼロの状態です。
何だかんだと黒点活動はまた弱くなってきているのですが、それなのに、こんな巨大な磁気のエネルギーが地球に直撃してくるという。
そして、この惑星間衝撃波が地球を直撃した 1月11日に、アメリカの首都で、トランプ大統領の署名による非常事態宣言が発令されました。
アメリカの大統領関係事象と太陽の働きは、昨年からわりと連動していまして、大統領選挙が始まった日に、サイクル25最大の黒点が出現したことを以下の記事で書かせていただきました。
アメリカ大統領選挙と同時に太陽に出現した「サイクル25最大の巨大黒点群」。今後、地球に向けて強い太陽フレアを放つ可能性あり
投稿日:2020年11月5日
この記事の中で、20世紀の初頭に太陽活動と人間社会の相関性を研究したロシア人科学者であるアレクサンドル・チジェフスキー博士の研究から「黒点の増加期の社会の特徴」を書いています。
黒点の増加期というのは、いつもと同じサイクルの動きなら、これからの数年のことで、具体的にはこれから 5、6年がそれに該当しますが、チジェフスキー博士は以下のように論文に書いています。
黒点増加期の社会と人々の特徴
・新しい指導者等が出現して大衆は次第に団結する
・政治的、軍事的な扇動が行われる
・新しい方針や計画が試される
・報道機関の影響力の拡大
・政治的、軍事的な問題が持ち上がり、大衆はそれに強い関心をもつようになる
・大衆は神経質でいらいらしているため、この時期の後期になると社会は次第に荒れてくる
今、私たちがこういう時代の始まりのときにいるということなのかどうかは今はまだわからないですけれど、これまでの歴史では、いつでもこのような状態でした。
なお、なぜ太陽活動が人間社会に影響を及ぼすかといいますと、
「人間自身もまた磁場を発している磁気的な生物だから」
です。
京都大学名誉教授だった前田坦さんの名著『生物は磁気を感じるか』(1985年)には、あらゆる動物や微生物たちが磁場と関係していることが示されます。以下は、人間の頭部の磁場です。
あるいは、最近、あらゆる生物は磁気的であるということから、携帯電波の生物界への悪影響を示した文章を読みました。非常に長い上に専門的なもので、翻訳は難しいのですが、この地球上のあらゆる生物は「磁気」に支配されている(あるいは支配している)ことがますます明確となっています。
ですので、太陽からの磁気が人間の心身に影響を及ぼすことは必然であるとともに、人以外のすべての生物も磁気によって行動が成り立っている可能性が高いです。
もう 5年ほど前ですが、あらゆる生物は磁気的であるということと関係するもので、以下の記事を書かせていただいたことがあります。
おそらく人間を含めた「全生物」は磁場により生きている:ハトや蝶が持つ光受容体がヒトにも存在していること。そして、そのハトや蝶が「全滅」に向かっていること
投稿日:2015年11月23日
こういうように「磁気で生きており」「存在そのものが磁気的」である人間とあらゆる生物が太陽の影響を常に受けることは、ある意味では当然でもあり、そして今、太陽からの磁気も、そして地球自体の磁気もややおかしくなっています。
今後の地球や社会がしばらく不安定化するのだとすれば、磁場や磁気の変化もその理由や原因となっていると考えます。
それとは別に、今回のような衝撃波がまったく予兆なく地球に直撃してくる可能性は常にあり、それが巨大なエネルギーの衝撃波だった場合、インフラなどの崩壊等の社会的な混乱に結びつくということもないではないのかもしれません。
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