超変異ウイルス
最近、サル痘については、以下のような記事で書かせていただきまして、「形質転換している株である可能性」が高いこと、そして、もともとのサル痘は、エアロゾル伝播で感染することなどを取り上げました。
[記事] また武漢から始まるのかよ……。というわけで、武漢ウイルス研究所の石正麗博士が今年2月に発表した「サル痘 DNA の形質転換」の研究論文のご紹介
In Deep 2022年5月24日
[記事] サル痘ウイルスは「感染力を保持したままエアロゾル化して浮遊する」ことを示す過去の論文。そして、今後の問題となるのは、またもウイルスそのものではなく「ワクチン」かも
In Deep 2022年5月25日
さらに、このサル痘のパンデミックに関して、昨年、「シミュレーション」が一般に公開されていたことを以下の記事で書かせていただきました。武漢でコロナが発生した2ヵ月前に、世界経済フォーラムとゲイツ財団による新たなコロナウイルスのパンデミックがシミュレーションされていたこと(過去記事)を思い出させるものです。
[記事] また始まる…:コロナと同じくサル痘でも「パンデミック対応シミュレーション」が公式に行われていた。この演習では最終的に32億人が感染…
In Deep 2022年5月22日
このシミュレーションでは、サル痘の発生は、
「 2022年 5月中旬」
とあり、時期的にあまりにもシミュレーション通りなのがあれなんですが、そして、2022年6月に世界的流行の第一段階が始まるとしています。
シミュレーションはともかく、最近、ポルトガル国立衛生研究所などポルトガルの複数の保健衛生機関が、現在のサル痘ウイルスの解析を暫定的に発表していまして、このサル痘は、
「新しい突然変異を含む変異ウイルス」
であることが示されました。
このことについて、短くご紹介します。
ポルトガル当局のプレスリリースは以下にあります。
サル痘ウイルスの多国間発生:遺伝的分化と微小進化の最初の兆候
Multi-country outbreak of Monkeypox virus: genetic divergence and first signs of microevolution
ポルトガル国立衛生研究所などの複数の科学者たちによる迅速な対応研究です。
書かれてあることは、以下のようなことです。
・現在、多国間でサル痘が発生しているが、発生源は単一。
・発生ウイルスは西アフリカの系統のサル痘ウイルス
そして、
「APOBEC3編集によって引き起こされた、超変異ウイルスにつながる進化的ジャンプから分岐が生じたという仮説を破棄することはできない」
としています。
もちろん、これは「人為的にそうなった」としているのではなく、あくまで「自然にそう進化した」ということを述べていますが…… DNAウイルスが? ともやや思います。
しかし、ここにあります「 APOBEC3 」という知らない言葉がポイントのようです。
Wikipedia によりますと、以下のようなもののようです。
> APOBEC3G (アポリポプロテインB mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド様3G)は、ヒトのAPOBEC3G遺伝子によってコードされる酵素でありAPOBECファミリー蛋白の一種である。APOBECファミリー蛋白は自然免疫において重要な役割を果たすことが示唆されている
>
> APOBEC3Gはシチジンデアミナーゼの一種であり、一本鎖DNAに作用してシチジンをウリジンに変換(脱アミノ化)する反応を触媒する。 (APOBEC3G)
いやあ……もう何だか全然わかりません。ラテン語を読んでいるようです。
これはちょっと勉強しないと、概念自体がまったくわかりませんが、「一本鎖 DNA に作用して」とあり、そして「シチジンをウリジンに変換」とあるということは、DNA を構造から根本的に変えてしまう働きをするということでしょうか。
関係ないですが、こういう作用も生物は本来持っているものなのですね。
もしかすると、「 DNA レベルでのものすごい突然変異」を起こす可能性は、ヒトにもあるのかもしれないですね。突然進化するとか。
朝起きたら巨大な虫になっていたりとか(それは進化か?)。
まあ、話を戻しますと、APOBEC3 という言葉で検索すると、かなりページが出てきますので、APOBEC3 とは重要なもののようです( APOBEC3 の読み方もわかりませんが)。
こちらのページには、
> APOBEC3 は、HIV-1ウイルスRNA遺伝子の逆転写時、RNA塩基のCをUに入れ替え、変異を誘発することでウイルス複製を阻害する。BST2 は、細胞表面上にあってHIV-1の出芽を抑制する。
等とあり、何かこう、すごいことをするタンパク質のようなのですが、こういうものが、もともと変異しにくいはずのサル痘(二本鎖DNAウイルス)が、「自然に」変異するキッカケともなるということですかね。
先ほどもリンクしました記事「また武漢から始まるのかよ…」では、武漢ウイルス研究所の石正麗博士の最近の論文をご紹介していますが、この石さんが形質転換とアセンブラというものにより「作り直したサル痘」について論文では述べています。
しかし、今回のポルトガルの分析と、石さんお手製のサル痘ウイルスに同一性の概念が見られるのかどうかは私にはまったくわかりません。
いずれにしましても、ポルトガル国立衛生研究所などの今回の発表を読みますと、現在流行しているサル痘ウイルスは、
「今までにないサル痘ウイルス」
であり、もっと言えば、
「新種といえる」
ものかもしれません。
とすれば、従来の天然痘ワクチンに効果がない可能性がさらに高くなっている可能性があります。
これに関しては、現時点での症例者の年齢分布が公表されればわかるのですが(天然痘ワクチンを過去に接種した年齢層が確定症例に含まれているのかどうかという意味で、です)、感染者に関しての年齢や性別等に関しては、基本的に公表されていないようですので、それについてはわかりません。
知りたいのは年齢だけなのですけどね。
なお、現在のサル痘の確定症例と疑い症例は、349人となっていて、21カ国に広がっています。
フィンランド(報道)、スウェーデン(報道)、ノルウェー(報道)などのほぼすべての北欧でも確認されています。
いずれにしましても、このサル痘が「超変異体」であることが確認されたということで、このまま自然に流行が終息すれば何の問題もないですが、拡大の方向にいくと、いろいろと面倒ですね。
ドイツなんかは、「感染者の濃厚接触者にサル痘ワクチンを接種する準備」を始めていると報じられていましたが、そのワクチンは効かないかもしれません。
先ほどの過去記事の「シミュレーション」では、
・第一段階 2022年6月5日より 1421人が感染 / 4人が死亡
となっていましたので、6月の最初の頃までにこのようになるとすれば、シミュレーションが実施されている可能性も否定できないのかもしれません。
ここまで来たら、もうやりたいだけやってください、という思いもないではないですが、その場合、日常の回復がまた遠くなりそうです。
元の日常はもう来ないかもしれません。
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