2020年、ウクライナ・キエフの夜空。 livescience.com
ウクライナ国立科学アカデミーからの報告
最近、何だか「未確認飛行物体」に関しての公式な話題が多くなっています。
少し前にも、アメリカ上院の特別委員会が、未確認飛行物体について、「人工(地球の人間が作成したもの)ではない」という統一見解を発表したことを以下の記事でご紹介しました。
[記事] 宇宙人がたくさんやってくる…
In Deep 2022年9月4日
今度は、数日前のライブサイエンスに、
「未確認飛行物体が上空で多数観測されるとウクライナ政府報告書が主張している」
という内容の報道がなされていました。
ライブサイエンスは、非常に由緒正しい科学メディアです。
そして、その報告書、というより、ほとんど「論文」なのですが、その書類にもリンクされていました。書類を作成したのは、ウクライナ国立科学アカデミー(NAS)で、ウクライナで最も格式の高い科学機関だと説明されています。
報告書は以下にあります。
Unidentified aerial phenomena I. Observations of events
未確認の空中現象、事象の観測
arxiv.org 2022/08/23
日本語に機械翻訳したものを以下にアップしてあります。
https://nofia.net/unidentified-aerial-phenomena.pdf
報告書の冒頭に以下のようにあり、NASA についてふれています。
ウクライナ国立科学アカデミーの報告書より
NASA は、これらの既知の自然現象としては科学的に特定できない事象の観測された未確認空中現象 (UAP) の調査を研究チームに依頼した。
ウクライナ国立科学アカデミーの主な天文台も、UAP の独立した研究を行っている。 UAP 観測では、キエフとキエフ地域南部のヴィナリフカ村に設置された 2つの流星観測所を使用した。観測は日中の空でカラービデオカメラで行われ、UAPの特性を検出・評価するための特殊な観察技術を開発した。
私たちのデータによると、UAP には 2 つのタイプがあり、通常、
(1)コズミック (※ 宇宙、の意味)
(2)ファントム(※ 幽霊、の意味)
と私たちは呼んでいる。また、これらの飛行物体を鳥の名前(ツバメ、ハヤブサ、ワシ)で呼んでいる。
ファントムは暗い天体で、コントラストが数パーセントから約 50 パーセントだ。ここから、幅広いタイプの UAP をご紹介する。私たちは上空のどこにでもそれらを見ている。
ウクライナ国立科学アカデミーは、未確認の飛行物体を UFO ではなく、UAP (未確認空中現象 / Unidentified Aerial Phenomena)と呼んでいます。
また、報告書のその下には、以下の下りがあり、最近のアメリカの国防総省の動きについてもふれています。
(ウクライナ国立科学アカデミーの報告書より)
アメリカ国防総省は UFO に関心を持っており、「全領域異常解決局 (AARO) 」を創設した。 AARO の使命は、航空安全と国家安全保障への脅威に関連する、軍事目的の空域内のオブジェクトを検出、識別、および特定するために、国防総省およびその他の米国連邦省庁および機関の取り組みを同期させることだ。これには、空中、宇宙、水中の未確認の異常、およびトランスメディアオブジェクトが含まれる。 (arxiv.org)
この「全領域異常解決局」というのは、以下の記事でご紹介した、アメリカ国防総省の新しい組織です。
[記事] アメリカ国防総省が、未確認飛行物体に対応する新しい部局「全領域異常解決局」の設立を発表
地球の記録 2022年7月26日
今回のことは、場所が場所であり……つまりウクライナの話ということもあり、単なる UFO 話として扱っていいものかどうかは難しい部分がありますが、こうも、各国で、UFO が公式に調査、あるいは「地球人由来ではない」というような話が広がってくると、何だか怪しい部分も感じないではありません。
いろいろ思うところもありますが、まずは、ライブサイエンスの記事をご紹介します。
ライブサイエンスは、地球外由来であることを全力で否定しています。
「コズミック」と「ファントム」と呼ばれる UFO がウクライナの空全体にある、と政府報告書は主張している
'Cosmic' and 'phantom' UFOs are all over Ukraine's skies, government report claims
livescience.com 2022/09/15
ウクライナの天文学者たちが、「科学的に特定できない」数十の天体を観察したと発表した。
ウクライナ国立科学アカデミーの主要天文台からの新しい報告によると、キエフ上空に、未確認飛行物体(UFO)が群がっているという。
もっとも、ロシアとウクライナが航空機とドローン偵察機に大きく依存する数か月にわたる戦争に巻き込まれているという現状を考えると、これらのいわゆる UFO の多くは、軍事ツールである可能性が高いとも推測できる。
arXiv にプレプリントで公開されたこの報告書は、まだ査読されていないが、ウクライナの天文学者たちが、キエフとその周辺の村の上空で、動きが速く、視界の悪い天体を監視するために取った最近の手順について説明している。
この報告書によると、キエフと約 120 キロ南にある村ヴィナリフカにある 2つの観測所に設置された特別に調整されたカメラを使用し、天文学者たちは「既知の自然現象として科学的に特定できない」数十の天体を観測した。
ウクライナ政府機関は、このようなオブジェクトを「未確認航空現象」の略である UAP と呼ぶ傾向がある。
研究チームは、「我々は、性質が明らかでない天体をかなりの数、観察している」とし、「私たちはどこでもそれらを見ている」と書いている。
研究者たちは、UAP 観測を「コズミック (宇宙)」と「ファントム (幽霊)」の 2つのカテゴリに分けている。
報告書によると、「コズミック」は背景の空よりも明るい発光体だ。これらのオブジェクトは、「ツバメ」、「ハヤブサ」、「ワシ」などの鳥の名前で指定されており、単独で飛行していることが観察されている、とチームは書いている。
対照的に、「ファントム」は暗い物体であり、通常は「完全に黒」に見え、あたかもそれらに当たるすべての光を吸収しているかのように見える、とチームは付け加えている。
参加している 2つの観測所からの観測結果を比較することにより、研究者たちは、ファントムのサイズの範囲が 3メートル から 12メートルで、最大、時速 53,000 km (53,000 km/h)の速度で移動できると推定した。
比較すると、大陸間弾道ミサイルは最大で時速 24,000 kmの速度に達することができる。
研究者たちは、これらの UFO が何であるかについての推測はしていない。
むしろ、彼らの論文は、オブジェクトを検出するために使用される方法と計算に焦点を当てている。ただし、アメリカ国家情報長官室 (ODNI) の 2021 年の報告書によると、少なくともこれらの一部の UAP は「中国、ロシア、その他の国、または非政府組織によって展開された技術」である可能性がある。
2022年 2月に始まったロシアのウクライナ侵攻が進行中であることを考えると、ウクライナの報告書で説明されている一部の UAP が外国の監視または軍事技術に関連している可能性があると疑うのは合理的だ。
アメリカ国家情報長官室の報告書によると、UAP の原因として他に考えられるのは、鳥や気球などの「空中浮遊物」だ。あるいは、氷の結晶などの大気現象。または機密の政府プロジェクトの可能性もある。米国もウクライナの報告も、地球外からの訪問者の可能性を提起してはいない。
アメリカ政府は、米海軍の航空機が撮影した複数のビデオがメディアに流出した 2017 年以来、UAP 調査への関心を公然と更新してきた。この今や悪名高いビデオは、正体不明の航空機が一見不可能な方法で動いていることを示しているが、それについての説明はない。
その後、アメリカ政府は映像の機密を解除し、最近、UAP との遭遇の軍事映像がさらに存在することを明らかにしたが、国防総省は「国家安全保障上の懸念」のためにそれらを公開していない。今年初め、アメリカ議会は、米軍による UFO 目撃報告の管理に特化した新しい機関を開設するための国防総省への資金提供を承認した。
ウクライナからの新しい UAP レポートの著者たちは、ウクライナ国立科学アカデミーがこの進行中のアメリカの研究への貢献に関心を持っていると付け加えた。
ここまでです。
ライブサイエンスは「地球外の由来」であることを否定していまして、
> 米国もウクライナの報告も、地球外からの訪問者の可能性を提起してはいない。
とありますが、先ほどの記事でご紹介しましたように、アメリカ上院特別委員会は、
「 UFO は、地球由来ではない」
と明確な方向性で一致したことがあったり、あるいは、上の記事には、
> UAP の原因として他に考えられるのは、鳥や気球などの「空中浮遊物」だ。あるいは、氷の結晶などの大気現象
等と書かれていますが、以下の一文で、それらの説明の可能性は消えてしまいます。
> 時速 53,000 km の速度で移動できると推定した。
時速 5万キロで飛ぶことのできる鳥やドローンは、知られている中では存在しないと思われます。
しかし、時速 5万キロってすごいな……。
地球の一周の距離が、約 4万キロですので、1時間で、地球を一周以上できる?
地球から月までの距離が約 38万キロですから、月まで 7時間ちょっとでいける。
7時間って、日本からハワイまで飛行機で乗るくらいの時間でしょうかね。
7時間は、東京から新幹線で大阪まで行って、1時間くらいご飯を食べて帰ってくるくらいの時間ともいえます(どんどん話が小さくなるな)。
ああ……でも、思い出しましたけど、
「非常に高速の飛行物体が、地球上を飛行しているかもしれない」
ということについて、 2017年のアメリカ ABC ニュースの撮影記者が、偶然「気づいた」ということがありました。こちらの過去記事にありますが、その際の ABC ニュースの内容は以下のようなものでした。
デンバー支局のフォトジャーナリストがキャッスルロックの空で何か奇妙なものを撮影した
Denver7 photojournalist captures something strange in the skies over Castle Rock
ABC 2017/12/05これは何が起きていたというのだろうか。ABC デンバー局のフォトジャーナリストであるドミニク・リー氏が撮影したこのビデオは、それが何であるのかが、私たちには誰にもわからないものだ。一体何なのだろうか。
リー氏は 12月4日の午後、コロラド州ダグラス郡の教育委員会の投票の取材のために、キャッスルロックに赴き、撮影することが許可されたビルからカメラを構えていた。リー氏のカメラは崖の北東に位置していた。その後、リー氏は、日の出の時間経過のビデオを撮影し始めたが、撮影していた時には何も見えなかったという。
リー氏が自宅でビデオの編集を始めた時に、初めてそこに不思議で動きの速い物体をリー氏自身が撮影していたことが明らかになったのだ。
動画では、2つの物体が北から南へと移動しているように見える。その速さはいかなるタイプの飛行機でも、このようにはうつらない。
ABC のニュースルームで議論された可能性として、鳥や昆虫ではないかというものがあったが、対象物が移動するスピードからその可能性はないということになった。そもそも、この日のキャッスルロックの気温は氷点下で、昆虫が移動するには厳しい状態だ。
私たちの可能性の羅列に何かが欠如しているのかもしれないが、視聴者の皆さんはどのように思われるだろうか。
上の記事には動画はなくなっているのですが、下は、その撮影した動画を「数十分の1だったかのスローモーションをかけた」ものです。肉眼では見えません。
当時、 YouTube にその際の ABC ニュースの動画があり、そこにどのくらいスローモーションにしたのかの説明があったのですが、さきほどアクセスしましたら「動画を再生できません。この動画は非公開です」となっていました。肉眼ではまったく見えない速さではありました。
まあ、今回の報告書は、ウクライナから出されたものですけれど、本当に時速何万キロもあるものなら、それが存在する場所は出現した国に限定されたものではないとは思います。
それぞれの国で、ウクライナ国立科学アカデミーが使用した方法と同じ手法で観測した場合、同じような観測結果が出るのではないでしょうか。
その正体が何かはともかく、ウクライナの科学者たちは「どこででも見られる」と述べているわけですから、他の国でも同じような気がしています。
最近の話は、アメリカもウクライナも「公的な機関からの発表」ということもあり、今後もこの手の話は多く出されてきそうな気がします。
しかし、未確認なんですから、それが何かが確認されるまでは、話半分に聞いていてもいいように思います。
何かの大きな話題で人びとの注意をそこだけに向けるという手法が、パンデミックを含めて、21世紀に何度も繰り返されていますが、そういうものに使われるのも厄介です。
>> In Deep メルマガのご案内
In Deepではメルマガも発行しています。ブログではあまりふれにくいことなどを含めて、毎週金曜日に配信させていたただいています。お試し月は無料で、その期間中におやめになることもできますので、お試し下されば幸いです。こちらをクリックされるか以下からご登録できます。
▶ ご登録へ進む