米国科学メディア「サイエンス・アラート」記事より
狙いは「電離層の支配権」の獲得
各国の「気象コントロール」については、たまに記事にすることがあります。というのも、そのターゲットが「電離層」などの高層大気であることが多いため、
「あまりにもやりすぎると、未知数の悪い影響が出てくるのではないだろうか」
というような懸念もあるためですが、最近では、以下の記事で、「アメリカと中国の気象コントロール戦争」というようなものをご紹介しています。
そして、つい先日、冒頭のサイエンス・アラートの記事で、「ロシアと中国が共同して、高層大気の電離層での改変実験を行っている」ということを知りました。
どのような分野であっても、中国とロシアが、このように大規模に協力して科学的実験をおこなうということは大変に珍しいことですので、科学的実験ではあっても
「軍事的な意味合いを帯びている可能性が強い」
というようなことになっているようです。
まずはその記事をご紹介します。
アメリカの HAARP などの単語も出てきますが、要するに、アメリカも中国も、そしてロシアも、みんな、「電離層をコントロールしたくて仕方ない」という様相が見てとれるのです。
電離層とは、地上 50キロメートルから 500キロメートルの高層大気にある場所で、この領域は、「電波を反射する性質を持つ」ために無線にとって非常に大事な領域です。
電波を攪乱させたいのなら、ここに介入することで何らかを成しうるわけです。
しかし、同時にこの電離層は「大地震と関係する領域」でもあります。過去記事でもこのことはふれていますが、それは後で記します。
まずはサイエンス・アラートの記事です。
China And Russia Have Run Controversial Experiments That Modified Earth's Atmosphere
sciencealert.com 2018/12/19
中国とロシアは地球の上層大気を改変する議論の余地のある実験を行っている
中国とロシアは共同して、地球の大気を高周波電波で改変するための一連の実験を行っている。
ロシアは、モスクワ東方のヴァシルスルスク近くにあるスーラ電離層加熱施設 (Sura Ionospheric Heating Facility)と呼ばれるロシアの施設から電離層に向けて高周波電波を放射した。目的は、電離層のコントロールだ。
そして、同時に、中国の「地震電磁観測試験衛星(張衡 / CSES)」が衛星の軌道からのプラズマ外乱の影響を測定した。
このような調査が行われたのは初めてではないが、中国とロシアでの共同での実験へと発展したことが、サウス・チャイナ・モーニングポストなどの各メディアで報じられ、このような科学的実験が軍事的応用へ転換され得ることへの懸念を引き起こしている。
その大きな理由は、電離圏とそこにあるイオン化ガス(プラズマ)は、無線通信に不可欠だからだ。
上層大気のこの部分を構成する荷電粒子を選択的に妨害することによって、科学者あるいは国家の政府は、理論的に長距離無線信号を、妨害あるいは遮断することが可能となる。
今年 6月に行われたこれらの予備実験でさえ極端な影響が見られた。この試験は、将来の電離層研究のためのテストケースとして表面上はおこなわれていた。
今回の実験の 1つでは、電離層障害の影響を受けた領域は、12万 6,000平方キロメートルに及ぶと報告されている。
別の試験では、大気中のイオン化したガスは、摂氏 100℃に上昇した。
実験の関係者たちは、これらの研究は純粋に科学的なものであり、大気への影響はないと主張する。
この実験に参加している研究者の中で匿名で中国紙の取材に応じた科学者は、以下のように述べている。
「私たちは神を演じているわけではない」
「中国はロシア人研究者と協力している唯一の国ではなく、他の国々も同様のことを行っている」
ロシアのスーラ電離層加熱施設は 1980年代初めにソ連によって設立された。
このロシアの施設は、アラスカに建設された「高周波活性オーロラ調査プログラム(HAARP)」と呼ばれるアメリカの大型大気加熱施設にインスピレーションを与えたと言われている。 HAARP はスーラ基地建設の 10年後に作られた。
スーラ基地よりもかなり強力な電離層刺激施設である HAARP は、当初、アメリカ軍の一部が資金を提供されていたが、現在はフェアバンクスにあるアラスカ大学によって管理されている。
しかし、アメリカ空軍は、上層大気のコントロールをあきらめたわけではない。米軍の他のプロジェクトの中では、最近、荷電粒子のプラズマ爆弾を上層大気に落下させ、それが電離層にどのような影響があるかを調査している。
さらに伝えられるところによると、中国は、南シナ海全域の電離層を操作することができる中国南部の海南島の三亜市に高度の電離層加熱装置を建設していると報じられている。
今年、ロシアは GPS 信号を妨害し続けていることや、電離層の操作実験に関与している可能性があることが様々な関係者によって告発されているが、証拠はない。
多くの研究者たちが言っているように、 HAARP を含むこの科学分野の情報は、あまりにも長い間、ゴシップ的に鼓舞された陰謀理論に悩まされてきた。
そのため真実がわかりにくくなっていたが、しかし、今年 6月からの中国とロシアによる実験は今までと違っていることを電離層操作の研究者たちは気づいている。
実験に関与していない中国西安大学の物理学者グオ・リシン(Guo Lixin)博士は、以下のように述べている。
「このような国際的協力は中国にとって非常に稀なことなのです」
ここまでです。
そこで、この「電離層への介入」というものが、電波の妨害などの他に、どのような効果を作りだし得るかということについて、これは過去記事から抜粋します。
先ほどリンクしました In Deep の過去記事からです。
In Deep 過去記事より
アメリカ軍が「 2025年までに気象を手にする」と記していた文書を出していたり、中国が建設している気象コントロールに関する装置が、
「上層大気の電離層の電子数に介入する」
ものだったりするというあたりを読みますと、「あーあ」という感じは受けます。
何が「あーあ」かというのは、たとえば、このブログでかつて取りあげていました「 2011年3月11日の日本の巨大地震の直前に高層大気で何が起きていたか」という下の記事などをご参照いただいてもおわかりかと思います。
・衝撃のデータ: 3月11日の地震の前に観測された日本上空の赤外線と電子量の急激な変化
In Deep 2011/05/20この記事に書かれていることを簡単に書けば、
「 3月11日の巨大地震の直前に、東北上空の電離層の電子数が急増していた」
ということが起きていたのです。
これがどうして起きたか、あるいは、どうして電離層の電子数が増えることが巨大地震の発生と関係するのかなどはまったくわかっていませんが、電子数が増えたこと自体は検証的に認められていて、反証のない確定的な事項となっています。
そして、中国の新しいシステムは、「それ(電離層の電子数の増加など)を人工的に起こせるものなのかもしれない」というようなことが、今回ご紹介した香港のメディアの記事を読んでいると感じてしまうのです。
そして、ふと思ったのが、アメリカの HAARP の開発も含めて、
「地震を含めた地上での自然事象と高層大気の状態のあいだに関係があるということを、いくつかの国の一部の科学者たちは研究によって気づいていたのかもしれない」
ということも今回初めて思いました。
……と、このようなことなのです。
ここでは地震のことについて主に書いていますが、電離層など「上空の電子の状態などと関係する領域」というのは、地球のさまざまな自然現象に対し、大きく関与しているはずなのです。
あるいは、以下の記事などのように、中国では「大気の流れを変える試み」がわりと長くおこなわれています。この記事は 2016年のものです。
電離層には介入するわ、大気の流れを改変しようとするわ……と、やはり普通に考えますと、
「やりすぎじゃね?」
というようにみなさまは思われはしないでしょうか。
なお、今回の記事に出てきました「高周波活性オーロラ調査プログラム」いわゆる HAARP については、陰謀論的な概念も含めて、昔からいろいろと言われていることが多いです。
しかし私個人は、1990年代にカナダの CBC テレビがドキュメンタリーとして報道したものの中にあるようなことが実態なのかなと思っています。
それは「気象改変装置」です。
CBC テレビのレポートでは以下のように報じられていました。
CBC テレビの報道によると、アラスカ州にある HAARP 施設は、台風、地震、洪水、干ばつを誘発する能力を持っていた。
この指向エネルギーは、電離層を加熱して気象を戦争の武器として使用できる強力な技術といえる。洪水で都市を破壊し、あるいは、砂漠に近づいている軍隊を竜巻で壊滅させることが可能となる。
米軍は、戦闘環境を形作るための気象改変の開発に膨大な時間を費やしてきた。
(Global Research 2018/07/24)
まあ、電離層を刺激することで、ここにあるように、
>台風、地震、洪水、干ばつを誘発する
というようなことができるのかどうかは何ともいえないですけれど、「できない」ともいえないようには思います。
というのも、結局は、「もともと自然現象というのは、自然のなかにある粒子なり電子なり何なりの動きや変化の結果としての《現象》として起きている」のだから、
その自然の動きや変化の状態を人工的に作り出せば、自然の中に起きる結果は同じになる
というようなことが言えなくもないような気がするからです。
水を手でパシャパシャすれば、波のようなものができますけれど、同じように見える波は普通に自然の中の水場のどこでも起きているわけです。
風とか潮流とかの力で。
この考えをもっともっと壮大にしていけば、「かなりの自然の状態を人為的に作り出すことはできる」のかもしれません。
もちろん、それには強力な科学的な知識と裏付けが必要でしょうけれど。
地震については、電離層と大地震の関係性が明らかになりつつある今、あり得ないことではないとは思います。
しかし、「地震を発生する場所を特定させるのは無理なのではないかな」とも感じますが……。
それにしても、中国にしてもアメリカにしてもロシアにしても、環境や気象を改変する実験や技術は、その本当の目的が何かはともかくとしても、
「副作用のほうがずっと強くなりそう」
というような気がして仕方ない面はあります。
昨年、以下のようなタイトルの記事を書いたことがあります。
そこにあるのは神の摂理か気象操作の影響か : アメリカの2017年の自然災害の被害額は平年の2倍、森林火災の発生数は平年の10倍、そして、竜巻の発生数は「平年の100倍」 に達している
2017年の時点で、アメリカでの自然災害の発生数の増加は「信じられないほどのもの」でした。
そして、森林火災や洪水などの発生状況などから考えると、今年 2018年は、アメリカだけではなく、世界中でさらに自然災害の発生が大きく増加している可能性があります。
その原因は……まあ、もちろん最も大きな理由は地球自身の変化ということなんでしょうけれど、もしかすると、ロシアやアメリカ、そして中国がずっと行い続けている、
「高層大気への介入」
ということが、あるいは少しは関係していることもあるのかなと考えたりすることもあります。
これらの国々が気象への介入実験をやめるとも思えないですし、行くところまで行く……ということになるのでしょうか。
大体すでに「高層の大気は奇妙な状態になっている」のですよ。
それは今年 8月の以下の記事で書きましたので、ご参照いただければ幸いです。
この「中間圏」というのは、電離層の最も低い部分にあたります。
大気層「中間圏」がかつてない奇妙な状態になっていることがNASAの衛星データにより判明。そこは「電離層の電子を刺激する場所」であることから個人的に思うことは
気象も自然も崩壊の兆しを見せ始めているような部分もないではないですが、本格的に高層大気の状態が混沌としてしまうと、今どころではない自然や気象の状態が現れないとも限らないかもしれません。