キューバという国を勘違いしていました
世界の新たな臨床試験の状況や、新薬の開発についての記事が掲載されているアメリカの医療系メディアサイトに「トライアルサイト」というものがあります。
最近、ここに、
「複数の非常に効果的な独自のワクチンでパンデミックから抜け出したキューバ」
という記事がありました。
「そういや、キューバといえば…」と過去の報道を思い出しました。
> キューバは9月6日、世界で初めて2歳以上への新型コロナウイルスワクチン接種を開始した。世界保健機関(WHO)による承認を受けていない国産ワクチンを使用する。
これが、9月7日の報道でした。
「 2歳以上とは無茶するなあ」とは思っていたのですが、何しろ「自国開発のワクチン」であり、どんなものだかわからないですので、それ以上のコメントはできませんでした。報道では、人口 1,130万人のキューバの国民の 89%がワクチン接種をしたとのことでした。
そして、ワクチン展開後のキューバの新型コロナの感染状況は、
「その接種開始の 9月以来、驚くようなグラフを描き始めた」
のでした。
以下が感染数の推移です。
キューバの場合
ourworldindata.org
まだワクチン接種展開後 3ヶ月くらいですから、何ともいえないのかもしれないですが、驚くような急減を見せています。死者は 11月初旬からほとんど 0か 1人となっています。
「なんか…非常にうまくいっているように見えるのだが…」
と思いつつ、早くからブースターショットを開始しているひとつの国と比較しました。
英国の場合
ourworldindata.org
イギリスは、ややキューバとは異なる曲線を描いていますが、これが先進国の威力ということなのかもしれないですが、ここまで異なると、
「キューバのワクチンってどんなワクチンなん?」
とは思います。
それで、本当に失礼な話なのですが、このアメリカの医療系サイトの記事で私は知ったのですが、キューバというのは「非常に高い予防医療技術」を持っている国だそうで、少なくともラテンアメリカでは最高峰なのだそうです。
キューバの外務省のウェブサイトに日本語のページがある記事がありまして、「平均寿命はアメリカ以上。医師数は日本の3倍 知られざる医療先進国だったキューバ。その歴史と実力に迫る」というわりと長い記事を読みますと、ソ連の崩壊と、その後のアメリカによる経済制裁などの中で、「国家戦略として独自に予防医療を発達させてきた」ことが書かれてあります。
特に統合医療という名の「予防医学」が非常に進んでいるようです。
その記事の中に「予防医療とワクチン開発で世界有数の医療大国へ」というセクションがあり、そこには以下のように書かれてあります。
> 難病治療薬、ワクチン開発の分野では、キューバは他国を大きくリードしている。ワクチン開発は、研究開発に莫大な予算と時間がかかる。民間の製薬会社がビジネスとしてワクチン開発を行なう場合、その開発が当たれば利益は大きいが、外れた時のリスクが大きすぎるため、積極的な投資を行いにくい。……しかし、キューバは社会主義国であるが故に、国家戦略としてワクチン開発に積極的な投資を行なうことができ、継続的なワクチン開発が可能になる。 (gob.cu)
のだそうです。
「へえ」と思い、キューバというのは、みんな昼から酒を飲んで葉巻を吸って楽しく歌っているのだと思っていたのですが(本当に失礼かよ)、なかなかイメージとは異なるものですね。
そして、西側諸国とは違い、キューバとでは、ワクチン開発も、お金になるビジネスとして存在しているのではなく、ある程度純粋な国策のようです。
こうなると、やっぱりどんなコロナワクチンだか知りたくなるのですね。
それが、「利益のため」ではなく「国民を殺すためのもの」でもないと仮にそうだったとすれば、今後の日本のワクチン開発にも参考にできる部分はありそうです(日本では利益は必要でしょうが)。
先ほどの医療系サイトを読んでいましたら、医療論文アーカイブのメドアーカイブ (medRxiv)に論文が提出されていることを知りました。
以下の論文です。
異種 3回投与の組み合わせの COVID-19 結合型ワクチンであるソベラナ02の有効性と安全性
Efficacy and safety of SOBERANA 02, a COVID-19 conjugate vaccine in heterologous three-dose combination
ソベラナ02 (SOBERANA 02)という名称のワクチンのようです(キューバには他のコロナワクチンもあるようです)。
開発したのは、キューバ遺伝子工学・バイオテクノロジーセンター(CIGB)というところです。
論文は、全体的には難しくて、よくわからないのですが、ある一点を見て、
「キタコレ」
と思いました。
スパイクタンパクの全長を用いないワクチン
論文でわかることは、キューバの国産ワクチンは、
「抗体依存性増強(ADE)を起こさないもの」
だったのです。
以下の部分です。
> ソベラナ02は、SARS-CoV-2 用に開発された最初の「結合型ワクチン」となる。抗原は、破傷風トキソイド(TT)にモル比 6/1で化学的に結合した組換え受容体結合ドメイン(RBD)タンパク質である。 (medrxiv.org)
「受容体結合ドメイン(RBD)タンパク質」と、RBD 部位のみを使っています。
この RBD という概念は大変に面倒くさいものなのですが、以下の過去記事と、リンクされています大阪大学などの研究をご覧いただければと思います。
幻のワクチン : ADE (抗体依存性増強)を誘発しないコロナウイルスワクチンが現行のファイザー社ワクチン以前に存在したことを明らかに示す厚生労働省の特例承認報告書
投稿日:2021年7月7日
大阪大学が「抗体依存性増強の研究」論文を発表。そこから想像できる「ワクチン接種拡大と共に死者数が増加する理由」。そして、今のワクチンではADEは避けられないことも
投稿日:2021年5月31日
コロナのスパイクタンパク質には、
・RBD
という部位と、
・NTD
と呼ばれる部位があり、このうち、
「中和抗体(感染予防と関係する抗体)は RBD を認識する」
のに対して、
「抗体依存性増強と関係する感染増強抗体は NTD の部位を認識する」
のです。
大阪大学等の研究でこのことが初めて明らかとなりました。
感染増強抗体というのは、時間の経過と共に、ADE (抗体依存性感染増強)というものと関係する可能性があります。 ADE というのは、大ざっぱにいえば、
・コロナの再感染時に重症化・致死化しやすくなる
・再感染しやすくなる
ということで、それが起きるのは 2年後、3年後、あるいはそれ以上後かもしれないですが、「起きる」可能性が高いのです (過去の動物実験では 100%起きています)。
場合によって「致死的になる」という意味では、いかなるコロナワクチンも、この ADE (抗体依存性感染増強)を誘発するリスクは避けなければならない、のです。
それには、先ほどのように、スパイクタンパク質の
「 RBD だけをコードする、あるいは用いる」
というものが理想的です (というか、そうでなければいけない)。
スパイクタンパク質の全体(全長)をコードする、あるいは全体を用いた場合、感染増強抗体が認識する「 NTD 」という部位が含まれるので、
「抗体依存性感強が後に発生するリスクが非常に大きくなる」
のです。
ところが、現在主要国で使われているワクチンは、ほぼすべて「スパイクタンパクの全長をコードしている」のです。
以下のようなワクチンは、厚生労働省の特例承認書などから、NTD が含まれていることが確定的になっています。
・ファイザー社ワクチン (スパイクタンパクの全長をコード)
・モデルナ社ワクチン(スパイクタンパクの全長をコード)
・アストラゼネカ社ワクチン(スパイクタンパクの全長をコード)
そして、これは詳細な仕様がわからないですので、推定としてですが、ロシアの国産ワクチンも、アストラゼネカ社ワクチンと同様のメカニズムと言われているので、NTD が含まれている可能性があります。
また、これも詳細な仕様がわかりようがないですので、推定でしかないですが、中国が展開したワクチンに関して、臨床試験前に提出された書類を読む限り「 ADE を引き起こさない」という可能性が示されている気配があります。
以下の記事で書いたことがあります。
中国ワクチンは、スパイクタンパク質の中和抗体部位の標的に特化した「ADE(抗体依存性増強)を引き起こさないもの」であることを今にして知る…
投稿日:2021年7月22日
そして、キューバの自国製ワクチンも「 ADE を引き起こさない」ものである可能性が高いようです。
ただ、最近の私は、
「スパイクタンパク質を用いるワクチンすべてが悪いことに繋がるのではないか」
と思っています。
以下の記事で書いています。
結局スパイクタンパク質を用いる治療・予防薬は開発中の国産を含めて「すべて」良くないのかもしれないと、中国での後遺症らきしものの報道を見て思う
投稿日:2021年12月8日
その理由は、「スパイクタンパク自体、毒性が極めて強いものだから」ということになりますが、では、それをクリアする方法はあるのかというと「ある」とは思います。
それは、スパイクタンパク質の配列を組み換えて、「毒性を消す、あるいは低下させる」ことです。
ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社のワクチンは、どれもスパイクタンパク質の毒性を下げる配列の変更を行っていません。
毒性のあるものが、そのまま体内で発現するようになっている。
以前、こちらの記事でご紹介させていただいた荒川央さんの「ブレーキの無いRNAワクチン」では、ファイザー社ワクチンなどの配列を分析されていますが、以下のように書かれています。
> アミノ酸配列からはスパイクタンパクの毒性を取り除くための工夫の跡は見られません。これは驚くべき事なのですが、「毒性の高いタンパクの遺伝子から毒性を取り除かず、ほぼそのままの状態のものを体内に投入している」という事です。 (note.com)
ここにある、
「アミノ酸配列からスパイクタンパクの毒性を取り除くための工夫」
が行われているワクチンであれば、比較的安全である可能性もあります。
キューバの遺伝子工学・バイオテクノロジーセンターがそれを行ったかどうかは、先ほどの論文ではわかりません。
しかし、まあ、甘い考えかもしれないですが、「キューバの研究者たちは、それをやったかもしれないな」とも思います。
予防医療とワクチン学が進んだ国であれば、そんなに難しいことでもないような気もするからです。
何より「国民を殺そうとする意図」がないのであれば、普通はそうします。
ワクチン接種の一義的な目的が、「自国民の生命と健康を守ること」であれば、そうします。
しかし、現在の主要国には、そのような姿勢は見えません。
とはいっても、まだ半年くらいは見てみないとわからないかもしれないですね。
キューバが、現在のアイスランド(成人のワクチン接種率 100%レベル)のようにならないのなら、キューバでの「独自路線のワクチン開発」は成功したということになるのかもしれません。
アイスランドの場合 (人口36万人の国で 12月20日に 658人の新たな感染数を記録。下は7日移動平均)
ourworldindata.org
しかし、どんな状況となっても、キューバのワクチンが西側諸国で承認されることは、日本や韓国も含めて、なさそうです。
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