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日本の海が死に続けている理由は、デッドゾーンが過去最大となりつつある米メキシコ湾と同じなのかそうではないのか

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2018年のサイエンスに掲載された世界のデッドゾーン(死の海域)の分布


Declining oxygen in the global ocean and coastal waters




 

海はどのように死んでいくのか


shokuhin.net

今日のナショナルジオグラフィック日本語版の記事に、「メキシコ湾周辺の海のデッドゾーンが過去最大になりつつある」という記事が掲載されていました。

冒頭部分を抜粋しますと以下のようなものです。

「死の海域」が過去最大規模のおそれ、米国南部

ナショナルジオグラフィック 2019/06/13

米国南部の海が死にかけている。ミシシッピ川の河口あたりの海は毎年「デッドゾーン(死の海域)」と呼ばれる酸欠状態になるが、科学者の予測によると、2019年は観測史上で最大規模に達するおそれがあるという。

例年、春に雨が降ると、陸地の肥料や下水に含まれる養分がミシシッピ川に流れ込む。淡水は海水よりも軽いので、河口から海に出た水は表層近くにたまって循環を妨げる。養分を多く含む淡水層では藻類が大発生し、この藻類が死んで分解される際に大量の酸素が消費される。

そうしてできる低酸素の海では、生物たちは窒息して生きていけない。これがデッドゾーンだ。今年、メキシコ湾の大陸棚の上には、東京都の面積のおよそ10倍に当たる2万平方キロメートル以上ものデッドゾーンができると予測されている。

記事そのものはかなり長いものですので、全体にご興味のある方は上のタイトルのリンク先からお読み下さればと思います。

この記事を読んで驚いたのは、2万平方キロメートルというデッドゾーンの「面積」でした。

後で数字を示しますが、これはおそらく前年のピーク時の 7倍から 8倍に達するものと思われます。

そして、デットゾーンが拡大した理由などを考えているうちに、何というか、「何が何でも海を殺してやる」という見えざる意志が働いていることを実感します。

これだけ書くと、どういうことかおわかりにならないかと思いますので、順を追って書いてみたいと思います。そして、それと共に、

「メキシコ湾で起きていることは、日本の海で起きつつあることと似ているかもしれない」

ということも書かせていただこうと思います。

まず、この記事にあるメキシコ湾のデッドゾーンの面積ですが、科学者たちの予測では「 2万平方キロメートル」以上になると記されていますが、仮にこのような面積になった場合、最近と比較してどれほどものすごいものかといいますと、昨年の 8月に、以下の記事で、メキシコ湾のデッドゾーンが縮小していることをご紹介したことがあります。

日本にシロナガスクジラが打ち上げられた頃の地球の海はどこも死んだ様相……であることは事実だけれど、それでも海は自力で復活することをメキシコ湾の「デッドゾーンの急激な縮小」により知らされる

これは、2018年8月2日の米ワシントンタイムズの報道の内容をご紹介したものです。

それによれば、拡大し続けていたアメリカのメキシコ湾のデッドゾーンが、2018年に急激に縮小していたことがわかったというもので、具体的な数値としては、

2017年のデッドゾーン面積 が 8,497平方キロメートル

だったものが、

2018年のデッドゾーン面積 は 2,720平方キロメートル

と、3分の 1程度にまで縮小したのだそうです。

以下は、2017年のメキシコ湾のデッドゾーンの状況で、この頃は 8,000平方キロメールほどあったものと思われます。

2017年8月のメキシコ湾のデッドゾーンの状況


NOAA

なぜ、2018年に急速にデッドゾーンが縮小していったのか、その理由はわかりません。

もちろん、人為的なことは一切行われておらず、「自然のメカニズム」の中で、デッドゾーンが縮小していったのですが、正確な要因は不明のままです。

いずれにしましても、このように、昨年のメキシコ湾のデッドゾーンは、3,000平方キロメートル以下の規模に縮小していたのですが・・・今年のデッドゾーンの状況の予測は、先ほどのナショナルジオグラフィックの記事にありましたように、

「 2万平方キロメートル以上に拡大する」

という絶望的な面積になっていくと考えられているのです。

先ほどの地図のデッドゾーンの領域が、大体 8,000平方キロメートルほどだと考えますと、2万平方キロメートルとなりますと「メキシコ湾沿岸の大部分が生命のいない海域となる」といっても言い過ぎではないと思われます。

どうしてこんなことになったのかということも、また明確な理由はよくわからないのですが、その中の理由のひとつとして、科学者たちは以下のように考えています。先ほどのナショナルジオグラフィックからの抜粋です。

今年のデッドゾーンが特に大きくなることについて、海洋生態学者ナンシー・ラバレー氏は驚きではないと述べる。

今春、米国中西部では、前例のない大雨に見舞われた地区が多く、海に流れ込む水の量が大幅に増加した。この大雨は、多くの農家に被害をもたらし、トウモロコシや大豆などを作付けできなかったところもある。

これは同時に、畑にまかれた窒素やリンを多く含む肥料が、すべてミシシッピ川に流れ込んだということでもある。

「ああそうだった」と思い出しました。以下の記事などで取り上げさせていただきましたけれど、今年の春、アメリカでは非常に広範囲が、かつてない大雨と洪水に見舞われていたのでした。

アメリカで始まった新たな大洪水伝説 : 米国立気象局が「今年5月までに国土の3分の2が洪水に見舞われ、2億人が危機にさらされる可能性がある」と発表

いくつかの州の地域では、いまだに農作が開始できていないそうで、今年のアメリカは、州によっては、農作において建国史上最悪となる可能性が報じられています。

以下の図は、ミシシッピ川などからメキシコ湾に大量の水が流れ込む様子を示したものです。

アメリカの主要河川からメキシコ湾に流れ込む水流の様子


NOAA

大小様々な河川が、最終的にはメキシコ湾に流れ込んでいる様子がわかります。

そして、今年は、通常を大幅に上回る「水」がメキシコ湾に流れ込んだわけですが、そこには、過去記事などで書かせていただいた、

「水システムに入りこむすべての要素が通常よりはるかに多く流れ込んだ」

はずです。

この「水システムに入りこむさまざまなもの」に関しては、最近の記事としては以下のようなものがありまして、河川の汚染の状況はかなり深刻ですが、それらの水は最終的には「海」に入っていきます。

地球の水は人間の薬により、もはや死につつある。そして、この大洪水の時代に次は大地が浸食され、完全絶滅への道程はさらに進行するはずで

ナショナルジオグラフィックの記事では、農地から流れた大量の肥料が、メキシコ湾に流れ込み、そこに含まれるリンや窒素が海中の栄養を豊富にすることで藻の発生を促し、それらの結果として「海中の酸素が減少」し、海域がデッドゾーンになっていく・・・というのが、デッドゾーンが作られる数々の理由のうちのひとつと言われています。

それに加えて、今年のアメリカの洪水は大規模でしたので、それはもうあらゆるものが、海中に入っていったと思われます。

除草剤や抗生物質などの薬も大量に流れたでしょうし、今年のアメリカの洪水では、住宅街や工場なども多く水に浸かりましたので、さまざまな化学物質を含むいろいろなものが大量に海に入りこんだと思われます。

いずれにしても、今年のアメリカの黙示録的ともいえる洪水が、メキシコ湾のデッドゾーンの拡大に影響を与えたことは間違いなさそうです。

そして、せっかく 2018年に、自然による自力によってデッドゾーンが 2700平方キロメートルほどまでに縮小していたものが、一気に 2万平方キロメートルにまで拡大、ということになったようです。

今のアメリカとヨーロッパの自然状況は、「絶対に環境を良好にはさせない」という強い「意志のようなもの」に支配されている感じがします。

ところで、最初にご紹介したナショナルジオグラフィックの記事の最後に、海洋生態学者ナンシー・ラバレー氏は以下のように述べています。

「メキシコ湾の原油流出事故のことは当然覚えているでしょう」とラバレー氏は言う。「デッドゾーンの問題は、何十年もの間に水滴がゆっくりと落ちるようにじわりじわりと変化した結果生じたものです。しかし、その影響はあの事故と同じく、重大です」

ナンシー・ラバレー氏は、2010年のメキシコ湾の原油流出も、デッドゾーンの拡大の要因のひとつだということを言いたいようです。

なお、このナショナルジオグラフィックの記事の最後には「参考記事」として、2014年4月の「メキシコ湾流出原油、今なお生物に打撃」という記事がリンクされていました。

それによれば、メキシコ湾の原油流出事故から 4年経った 2014年でもなお、以下のようなことが観察されていたのだそうです。

メキシコ湾の原油流出事故から4年後の2014年の状況

・ 2010年4月以降、900頭以上のハンドウイルカが原油流出域で死亡または座礁している状態で見つかった。

・原油で汚染された海域を泳ぐイルカに低体重、貧血、肝臓疾患や肺疾患の兆候が見られる。

・毎年、原油流出域では約500頭のウミガメの死骸が見つかっている。

・流出した原油に含まれる化学物質がクロマグロやキハダマグロの胚に不整脈を引き起こしていることが示された。

・BP社の油井近くを泳ぐマッコウクジラは、その体内に含まれるDNA損傷性のある金属の量が以前よりも増加している。

原油流出から相当年数が経っても、生態系への影響はなかなか消滅しないことを示しています。

結局、ここから、「メキシコ湾で起きていることは、日本で起きようとしていることと似てくるかもしれない」という考えにつながるのです。

 

今から 1年半ほど前に、九州北西の沖(海域は中国領)で、史上最悪かもしれないと言われた原油流出事故があったのをご記憶でしょうか。以下の記事で取りあげたことがあります。

もうじき日本の海が死ぬ : 「史上最悪の原油流出」が日本の海域を直撃する予測が英国海洋センターより発令。3ヶ月以内に九州から東北までの全海域が汚染される可能性

先ほどのメキシコ湾の、

・原油流出から 4年後のメキシコ湾の生態系の状況

・原油流出から 9年後の、つまり現在のメキシコ湾のデッドゾーンの状況

を考えますと、日本の海域に同じような「生態系の異変」が起きても不思議ではないと私は以前から考えています。

流出した原油が現在どのような状況となっているのかはわからないですが、原油流出から 3ヵ月目、つまり、昨年の 4月頃には以下のような状況になっていた可能性が高いです。

2018年4月の流出した原油の分布の予測


Reuters

そして、まだ、原油流出から 1年半ほどですが、「今」、日本の周辺の海域で、たとえば漁にどんなことが起きているのかご存じでしょうか。

この春以来ずっと「記録的な不漁」という言葉がさまざまな漁において報じられているのです。

もちろん、それぞれの原因はよくわからないわけですが、ただ、

「日本の海域に大きな異変が起きている」

ことは事実かもしれません。

今、世界中で、「人間の食べるもの」と関係するさまざまなものが自然形態の中で危機にさらされていますが、世界の中でも特に古来から海の恵みを大切にしてきた日本で、「海が死につつある」というのは、危機感のある話だと思います。

以下、つい最近の「不漁」についての報道のタイトルとリンクです。そして、おそらくは、今後も同じような報道が続いてしまうのかもしれません。

 

2019年5月-6月の不漁に関しての報道

記録的不漁続くサクラエビ 秋漁も見通し厳しいか
産経新聞 2019/06/08

テングサ記録的不漁か 西伊豆で漁開始、着生や生育悪化
 静岡新聞 2019/05/17

コウナゴ不漁、東北でも深刻 福島は今春ゼロ
 日本経済新聞 2019/05/18

メギス、新潟県で記録的不漁 飲食店など悲鳴
 日本経済新聞 2019/05/22

スルメイカ不漁、函館市が漁船燃料補助 食品企業支援も
 日本経済新聞 2019/06/03

ホタルイカ不漁続く 富山湾、過去10年で最少の425トン
 共同通信 20109/06/11

サンマ不漁深刻 八戸港2隻「ほぼゼロ」
 Web東奥 2019/05/29

江戸前ノリ異変 収量ピークの4分の1 千葉沿岸
 東京新聞 2019/06/07


 

この他にも、ワカメやモズクといった海藻類も記録的に収穫できていないようで、海苔などは現在次々と値上げしていっているようです。

環境の異変は、今後さらに、実際の生活に強く関わってくるようになっていくのではないかと思います。

特に、一度死んでしまった海はそう簡単には戻らないと思われ、日本の海域のこれらの問題は、なかなか難しい事態となっていくのかもしれません。





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