トルコ地震被災地は、最低気温「氷点下5℃」の場所も
トルコ南部の震源で、2月6日に発生したマグニチュード 7.7の地震の被害の実態は現状ではあまりわかりません。
2月7日のお昼過ぎの日本の報道では以下のように示されていました。
トルコで大地震 隣国シリアも被害 死者計4300人超
NHK 2023/02/07
6日にトルコ南部で発生した一連の地震ではトルコと隣国シリアの死者はあわせて4300人を超えました。
この地震で警視庁は7日、現地での救助活動などに当たる警察官や救助犬を派遣することになりました。7日夜、日本を出発し、すでに派遣されている国際緊急援助隊と現地で合流した上で、捜索や救助などに当たるということです。
地震そのものの被害も大きいのですが、気になったのは、地震以前からトルコを含む最近の中東各地が「異例に寒い」状態だったことです。
そのようなこともあり、地震発生後にトルコの報道などを見てみますと、寒さは継続しているようで、写真等を見ても、家屋が破壊された人々の中には相当厳しい状況で過ごしてらっしゃる方が多いようです。
2月6日 震源に近いトルコ南部のカフラマンマラシュ市
erkenhaberajansi.com
トルコのニュースサイトでの、被災地の天気予報は以下のようになっています。報道では、被災地域の主要 10都市すべての気温が出されていますが、ここでは、最初に挙げられていたカフラマンマラシュ市という街の天気予報のみを挙げます。
地震の影響を受けた 10都市では雪と雨となる
ERKEN 2023/02/06
トルコ気象総局の天気予報レポートによると、マグニチュード7.4の地震の被災地であるカフラマンマラシュ、ガズィアンテプ、マラティヤ、ディヤルバクル、キリス、シャンルウルファ、アドゥヤマンでは雪が予想され、ハタイ、オスマニエ、アダナでは雨が予想されている
カフラマンマラシュの天気は曇りで、時々断続的に雪が降る見込みで、最低気温は 0度、最高気温は 3度と予想されている。
明日は雲が多く、朝から雪が降る予報だ。最低気温は 1度、最高気温 3度。
2月8日は所により曇りの天気となる見込みだ。最低気温は氷点下 3度、最高気温は 2度の予想だ。
2月9日の天気は部分的に曇りで、氷点下 5度まで下がり、最高気温は 2度、 2月10日は、氷点下 5度、最高気温は 4度の予想だ。
トルコの大都市であるハタイ市の市長は、地震発生後に、
「低体温症の警告を発した」
と報じられています。
低体温症については、In Deep のこちらの記事などで記したことがありますが、体温が 33℃を下回り始めると、生命の危険が近づきます。
上の報道にありますような氷点下 5℃などの環境で、仮に、避難所などの設営が進んでいない場合、体の小さな人たち、つまり子どもなどで、かなり危険な状況になる可能性もあるのかもしれません。
今年の冬の中東の一部は寒すぎるのです。
やはり地震の影響を受けたシリアもかなり気温が低い地域があるように思われます。
寒さによる二次被害が広がらなければいいのですが、気温が低い状況は今後もしばらく続くと予測されているようです。
それと共に、アメリカ地質調査所の地震後 1日などの余震(といえるのかどうかわからないですが)の発生分布を見ていますと、
「なんだこの地震は」
と思わざるを得ないような状況となっています。
600キロメートルほどの距離で地震が発生し続けている
以下のマップは、アメリカ地質調査所 (USGS)の、日本時間で 2月7日の午後 1時頃までのトルコでの地震発生状況です。
トルコの地図だけですと、距離や面積がわかりにくいと思いましたので、日本の北海道の同じ縮尺での地図を併載しています。
震災後のトルコの地震発生状況
earthquake.usgs.gov
左下に「 100キロメートル」の目安を載せていますが、このトルコの震源域は、幅として、
「 500から 600キロメートルなどに及んで地震が発生している」
ことを示しています。
横に北海道の地図を載せていますが、非常に大ざっぱにいえば、
「網走から函館まで地震が起き続けている構図」
といっていいのではないかと思います。
こんなに広い範囲となると、余震という言い方でいいのかどうかわからないですが、その多くが、マグチュード 4 から 5などとなっていて、つまり、「十分に震度のある地震」がこれだけ広範囲で続いていることになります。
これは、なんだ……とマップを眺めるしかないのですが、かつて、こういう震源域の地震ってあったのでしょうかね。
いわゆる普通の地震とはやや異なるようなものに見えなくもないです。
こんな地震が、トルコより国土が狭い日本などで起きた場合、何だか大変なことになるような気もしますが、ともかく、余震での被害もそれなりに拡大しているように思います。
最初の大きな揺れで建物に損傷を受けたような場合、その後の小さな揺れでも倒壊などにいたる場合は多いです。
21世紀は地震の時代
21世紀に入ってから地震は増え続けてきたという現実があります。
以下はちょっと古いデータですが、1966年から 2010年までの「 M6 以上の地震の発生回数」です。
2010年までの50年間のM6以上の地震の発生回数
Increase of Earthquakes in the last decade
約 120年前の西暦 1900年と比較して、
「21世紀は、地震の増加率が 2000%に達している」
ことが、アメリカ地質調査所のデータで 2018年に判明しています。
以下の記事で取りあげたことがありました。
[記事] 私たちは、もはや昔とは違う地球に住んでいる : 西暦1900年と現在とを比較すると「地震の増加率は約2000パーセント」にも達していることがアメリカ地質調査所のデータで判明
In Deep 2018年11月8日
トルコの今の地震の震源域の幅を見て、上のタイトルにあります「私たちは、もはや昔とは違う地球に住んでいる」という感じが実感されます。
宇宙の変化
なお、地震の「トリガー」が「宇宙由来」であることについては、以前かなり書いたことがありますが、2019年に、日本の京都大学の科学者たちによる論文がそれを決定させたことがあります。
以下の記事に記しています。
[記事] 「地震の原因は宇宙からやって来ている決定的な証拠」が、京都大学の科学者たちによる高層大気圏の「電離層の研究」から改めて提示される。巨大地震発生のメカニズムの解明と予測に科学者たちは近づけるか
In Deep 2019年10月23日
これは大きな地震だけの現象ですが、地震が発生する前に、高層の「電離層」という部分が震源上空で変化するのです。
この現象は、2011年の東北の震災で初めて観測されたもので、米マサチューセッツ工科大学が発表していました。2011年の以下の記事にあります。
[記事] 衝撃のデータ: 3月11日の地震の前に観測された日本上空の赤外線と電子量の急激な変化
In Deep 2011年05月20日
2011年3月8日の日本周辺の電離層の電子数の分布
In Deep
今回のトルコの地震で、この電離層の変化がとらえられていたかどうかはわからないですが(後になればわかると思います)、大きな地震のトリガーが「宇宙から来ている」ということは、おおむね科学の定説になりつつあります。
ですので、SF的な書き方ですが、「宇宙の状態がかつてないような変化を起こしているならば、今回のトルコの地震のような、とんでもない範囲に及ぶ震源域の地震も今後、他の地でも起き得るのかもしれない」というように思わないでもないです。
内容の確証がとりようのない話ですけれど、ハンガリーのブダペスト工科経済大学の科学者であるジャマル・S・シュレア (Jamal S. Shrair)博士という方が、2019年に、
「太陽系は現在、銀河系の中心の、最もエネルギーの高い領域に近づいている」
とする論文を発表したことがありました。
以下の記事にあります。
[記事] 太陽系は、現在「銀河系の最も中心部に近づいて」おり、地球を含む太陽系は非常に高いエネルギーが支配する宇宙の領域に突入するとハンガリーの科学者が警告
In Deep 2019年9月26日
その論文を短く編集して再掲します。
太陽系は銀河系の中心に最も近い位置に近づいている。そこは、太陽とすべての惑星の磁場を変えるエネルギー領域となる
Solar system approaching the closest position to the galactic core, energetic region altering magnetic fields of the Sun and all planets
Jamal S. Shrair 2019/09/22
物理的な現実として、宇宙は絶え間ない変化を遂げている。
私たちの惑星が位置する太陽系を含め、一定であるものは何もない。そして、銀河系内の太陽の真の運動の状態は円運動ではなく、原子内の電子の運動とまったく同じだ。
その中で、現在のすべての兆候は、太陽系は、銀河系の最も高い位置にある銀河コア(核)に可能な限り近い位置に近づいていることを示唆している。
この領域は、最もエネルギーのある領域となる。
そして、この密な領域は、太陽の磁場と太陽系のすべての惑星の磁場を変えている。有効かつ明確な太陽系の惑星の観測が示すところは、気候変動の影響を受けている惑星は、太陽系で地球だけではないということだ。
間違いなく、太陽系全体で変化が起きている。
たとえば、太陽の磁場の強さの増加は、太陽系内で起こっている劇的な変化の最も明白な証拠の 1つだ。米ラザフォード・アップルトン国立研究所の調査によると、太陽の磁場は 20世紀だけで 230%増加した。
太陽のエネルギーの変化は太陽風を通して外側に放射し、それにより星間空間の電荷を増加させる。
また、銀河系のスターダスト(星屑)の量も突然上昇した。
太陽の磁場は、太陽系を通過するスターダストの量に影響を与える。磁場が強まるにつれてより多くのスターダストを引き付ける。現在の太陽系では、このスターダストの量が著しく上昇している。観測によると、太陽系のスターダストの量は、2003年以降、3倍に増加した。
しかし、科学者たちを困惑させているのは、太陽活動の極小期であるにも関わらず、太陽系で増加し続けるスターダストの量だ。
通常、太陽活動極小期には、磁場が弱まるために、本来ならスターダストの量は減るのにも関わらず、スターダストの量は増え続けている。
ここまでです。
これを取りあげましたのは、この中に「太陽の磁場の強度の増加」の話が書かれているのですが、太陽からの磁気と地震には関係があるのです。
2020年に科学誌ネイチャーに発表された、
「太陽活動と地震に相関があるという信頼度は、99.999%以上」
とする論文が当時話題となりました。
以下の記事にあります。
[記事] 太陽フレアは大地震を誘発する : 太陽と地震の関係を過去20年のデータ分析から「確定させた」2020年のネイチャーの論文を、黒点活動が過激化している今再び読み返してみる
In Deep 2022年3月29日
このタイトルには「太陽フレアは」と書いていますが、これは正しくはなく、「太陽活動は」ですが、あえてこのように書きました。
太陽の磁場の状態が、地球の地震発生と関係していることは、ほぼ間違いないという論文でした。
まあ、地震そのものはもちろん地球の地中で起きるものなのですが、そのエネルギーは爆発的なものです。物理の世界では、爆発的な現象を起こすための原則があり、自然に圧力が加わっていっても、「トリガーがなければ爆発的なエネルギーの放出は起きない」のです。刺激を与えると瞬間的に凍結する過冷却というような現象もそうです。
日本の天文学者の戎崎俊一氏が、2010年に、「太陽活動と宇宙線と火山噴火の関係」を論文に書き、それが 2018年になり海外で話題となっていたことがありました。
以下に翻訳を載せたことがあります。
[記事] 地震も火山の噴火も「宇宙線」がトリガーとなっている可能性を再確認してみる…
In Deep 2019年10月16日
太陽活動そのものが地震と関係しているという先ほどの論文もあるわけで、なかなか難しいですが(太陽活動の大小と、宇宙線量の大小には逆の相関があります)、いずれにしても、「地球の地震のトリガーをひいているのは宇宙」であることは今では、グリグリのガチの理論といえます。
1年ほど前から太陽活動は急激に活発になりました。そして、今後もある程度はさらに活動は活発化していくと見られます。
そのことが今後の世界各地の大地震に結びつくかどうかはともかく、トルコのあの異様な震源域を見ていますと、本当にこれからいろいろなことが起きるのだろうなと覚悟します。
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