ADEを引き起こさないワクチンがまたも
臨床試験や新薬の研究状況などを報告している医療系メディアであるトライアルサイトニュースに、インドネシア政府が、新しいコロナワクチンを承認したということが報じられていました。
それは中国企業のワクチンで、「ジフィバクス (Zifivax)」という名前のものだそうですが、その試験報告の内容を伝える部分に以下のようにありました。
ジフィバクスとは?
ZF2001 としても知られ、SARS-CoV-2 ウイルスの無害な部位である抗原として受容体結合ドメイン RBD の二量体を使用するタンパク質サブユニットワクチンだ。
これを読みまして、「ああ……。これも ADE 起こさないやつだ」と知ります。
あくまで論文などからの推定なのですが、この「中国製のこれまでのコロナワクチンは、ADE (抗体依存性増強)を引き起こさない作りになっているのではないか?」ということについては以下の記事で書いています。
中国ワクチンは、スパイクタンパク質の中和抗体部位の標的に特化した「ADE(抗体依存性増強)を引き起こさないもの」であることを今にして知る…
投稿日:2021年7月22日
これは、先ほどの記事に、
> 受容体結合 ドメイン RBD の二量体を使用する
とありますが、ここがポイントなんです。
やや面倒な話ですが、これは、以下の記事でご紹介しました大阪大学等の研究から初めて知ったことでした。
大阪大学が「抗体依存性増強の研究」論文を発表。そこから想像できる「ワクチン接種拡大と共に死者数が増加する理由」。そして、今のワクチンではADEは避けられないことも
投稿日:2021年5月31日
コロナのスパイクタンパク質にはいくつかの部位がありますが、その中に、
・RBD
・NTD
というふたつの部位があります。
大阪大学などの研究では、このうち、NTD というほうの部位が、「感染増強抗体」と関係していることを突き止めました。
平たくいえば、
「 NTD という部位がワクチンが作るスパイクタンパク質に含まれている場合、抗体依存性増強という状態と関係する可能性がある」
ということです。
抗体依存性増強とは、再感染した時に重篤になりやすく、そもそも「再感染しやすくなる」状態です。
ですので、NTD を含まないもの、すなわち、
「 RBD だけをコードするワクチンが望ましい」
ということになります。
先ほどの大阪大学等のプレスリリースには、
> 感染増強抗体の認識部位は現行のワクチン抗原にも含まれている。従って、感染増強抗体の産生を誘導しないワクチン抗原を開発することが望ましい。
とありますが、現在、日本で使われているすべてのワクチンは、「抗体依存性増強を引き起こす可能性のある NTD 」が含まれています。
これは、それぞれのワクチンの厚生労働省部局による特例承認書に明確に記載されています。
「コミナティ筋注 ファイザー株式会社 特例承認に係る報告書」の22ページには、以下のように書かれています。
> なお、本剤は SARS-CoV-2 の S タンパク質の全長体をコードする mRNA であり… (特例承認書 22ページ)
この「全長体をコードする」というのは、「 RBD も NTD もすべて作り出す」という意味です。
これについては、以下の記事で書かせていただいています。
幻のワクチン : ADE (抗体依存性増強)を誘発しないコロナウイルスワクチンが現行のファイザー社ワクチン以前に存在したことを明らかに示す厚生労働省の特例承認報告書
投稿日:2021年7月7日
モデルナ社のワクチンもそうです。全長をコードします。こちらの記事で取りあげました。
アストラゼネカ社のワクチンは、特例承認書には、
> 本剤は、SARS-CoV-2 の S タンパク質をコードする非増殖型遺伝子組換えチンパンジーアデノウイルスベクターワクチンである。
とだけ書かれており、全長体、つまり RBD と NTD のどちらもコードするとは書かれていないのですが、しかし、動物試験での報告部分には以下のようにあり、試験では、「スパイクタンパク質の全長でおこなっている」ので、アストラゼネカ社のワクチンも全長体をコードするものだと思われます。
> 曝露後 1~7 日目に動物から採取した末梢血単核球を S タンパク質全長で刺激した結果… (特例承認書 12ページ)
つまり、現時点で日本で使われているワクチンは、「すべて」スパイクタンパク質の全長をコードするもので、ADE を引き起こす原因ともなり得る NTD 部位が含まれていることになります。ですので、理論的には、ADE が起きる可能性があるものです。
この ADE については、フォーブス日本語版の 9月10日の記事で、東京理科大学の村上康文名誉教授が、わかりやすく述べられています。
村上名誉教授は、以下のように述べていました。「免疫化」とは「ワクチンを接種すること」です。
「同一の抗原で繰り返し免疫化を行った場合、5回目から死亡する例が激増。7〜8回繰り返すと半分近くが死亡するという動物での研究結果もある」 (村上康文名誉教授)
これについては、以下の記事でふれています。
東京大学等や大阪大学の異なる論文に見る「ワクチンによる逃げ道はナシ」という実感。強行した後に残るのは「無」
投稿日:2021年9月11日
また、村上名誉教授は、他のフォーブスへの寄稿文の中で、以下のように述べられていました。
「スパイクタンパク質そのものが様々な症状を引き起こしていることは米国のソーク研究所が既に著名な学術誌に論文発表しています。そのため、追加接種に用いる抗原はスパイクタンパク質の全長を用いず RBD の部分のみとする。このことは抗体依存的感染増強のリスクを下げるためにも重要です」 (村上康文名誉教授)
このように、
> 抗原はスパイクタンパク質の全長を用いず RBD の部分のみとする。
ことを強く提言しており、たとえばブースターショットを受けるとした場合、それは「 3回目」となりますが、現在の状態では、基本的に以前と同じ「全長をコードするワクチン」のはずです。
つまり、すでに、
・1回目の接種で NTD (感染増強抗体と関係する)を得ている
・2回目の接種でも NTD (感染増強抗体と関係する)を得ている
という状態で、ブースターショットを受けた場合、
・3回目の接種でも、また NTD (感染増強抗体と関係する)を得る
ということになってしまうのです。
村上名誉教授は、
> 5回目から死亡する例が激増。7〜8回繰り返すと半分近くが死亡する
という動物実験の例を挙げるという「死亡する」という具体例を挙げ、かなりお強い意志で「全長をコードするようなワクチンを何度も打っては危険だ」と述べているわけです。
しかし、こういう超専門家の言葉は、全然当局には通じていないようで、昨日だったか、以下のタイトルの報道がありました。
ファイザーワクチン 1億2千万回分を追加契約 3回目接種用 厚労省
厚生労働省は8日、米ファイザー社から新型コロナウイルスワクチンの追加供給を受ける契約を締結したと発表した。来年1月から1億2千万回分で、締結は7日付。すでに2回のワクチン接種を受けた人たちへの追加接種に使われる見通しだ。(朝日新聞デジタル 2021/10/08)
この追加接種用の「 1億2千万回分」のワクチンは、これまでのものと「同じ」ものであるはずです(仕様が変更するなら、特例承認もやり直さなければならないですが、その形跡はないため)。感染増強抗体を作る可能性のあるワクチン × 3回目です。
そろそろリミットに近い回数に近づいています。
最初にご紹介しました中国の、
> 受容体結合ドメイン RBD の二量体を使用するタンパク質サブユニットワクチン
を読んで、今の日本の状況に落胆したのは、その点です。
中国企業は、それが感染抑制に効果があるのかどうかはさておいて(おそらくデルタ株以降には中和抗体が効かないと思われます)、「抗体依存性増強を引き起こさないワクチンを作成し続けている」という事実があります。
皮肉な話ですが、「中国が最も安全なワクチンを作っている」ということに愕然とするわけです。
他にもインドのワクチンとか、ロシアのスプートニクVとか、いろいろとあり、それらの仕様はよくわからないですが、しかしロシアのほうは、英アストラゼネカ社と同じタイプのものであるようで、DNA を使用しているとのこと。
それと関係しているのか他の要因があるのかどうかわからないですが、ロシアは他の国と比較しても、「死者数がどんどん増加」しています。
ロシア1日のコロナ死者、初めて900人超える
ロシアで6日、新型コロナウイルスによる1日の死者数が初めて900人を超えた。
政府の統計によると、過去24時間の死者数は929人で、流行開始後で最多となった。累計死者数は欧州で最多、世界で5番目に多い21万2625人となっている。 (AFP 2021/10/07)
ロシアの1日あたりの死者数の推移
ourworldindata.org
人口100万人あたりで日本と比較してみますと、以下のようになります。
10月6日の人口100万人あたりの死者数
ロシア 6.01人
日本 0.24人
日本の25倍です。
理由はわからないながらも大変なことになっているロシアですが、現在のことはともかく、仮にロシアのワクチンもまた「全長をコードする」ようなものだった場合、今後のほうが大変になりそうです。
そんなわけで、日本でもワクチンの研究開発が進んでいると思われますが、企業の方々は、先ほどの村上名誉教授や、大阪大学等の研究が示しますように、
「抗原はスパイクタンパク質の全長を用いず RBD の部分のみとする」
という方向で進んでいるはずだ、と思いたいところです。
国産のワクチンを心待ちにしている方々もたくさんいらっしゃると思いますので、そのあたりを善処された内容のワクチンが開発されることを願っています。
感染抑制に効果がなくても構いません。
後で人が死なないワクチンであれば、それでいいはずです。
というわけで、日本政府も追加接種分を 1億2000万回分契約した「全長をコードする」ファイザー社ワクチンについてのかなり以前の記事をひとつご紹介します。
数時間で設計が完了したワープスピードワクチン
ご紹介いたしますのは、FDA (アメリカ食品医薬品局)が、アメリカでのファイザー社ワクチンの緊急承認をした翌日の昨年 12月12日の記事です。
内容は、決して反ワクチンではないですが、ここに、
「このワクチンは、数時間で設計された」
という部分があります。
この部分は、推定ではなく、このワクチンを最初に設計したドイツの製薬企業ビオンテック社の CEO であるウグル・サヒン氏本人からの引用となります。
2020年11月21日に、米ウォールストリートジャーナルのポッドキャストの中で、「 2020年1月25日に、数時間で設計した」と伝えられています。
ポッドキャストの音声は、以下にあります。
The Creator of the Record-Setting Covid Vaccine
もちろん、これは、「 mRNA ワクチン」という技術の鋳型があったからこそのことで、そこに当てはめれば、どんなワクチンでも、遺伝子配列さえわかれば、「数時間で完成する」もののようです。
対して、モデルナ社のワクチンの設計にはもっと時間がかかっており「 2日間」だそうです。
どちらもインスタントですが、そういうものが、数億人、数十億人に接種されているようです。
今後もこういう開発ペースが続きそうですね。
それらについて、報じていた 2020年12月の報道をご紹介して締めさせていただきます。
ビオンテック社の共同創設者は、ファイザー社が製造するコロナウイルスワクチンを1日で、しかもわずか数時間で設計した
The co-founder of BioNTech designed the coronavirus vaccine it made with Pfizer in just a few hours over a single day
businessinsider.in 2020/12/12
アメリカ食品医薬品局は(2020年) 12月11日にファイザー社 / バイオエヌテック社のコロナウイルスワクチンに緊急許可を与えた。2回接種ワクチンでは、アメリカで最初に承認されたものとなる。
ファイザー社ワクチンは、数ヶ月間の大規模な試験により COVID-19 の予防に 95%効果的であることがわかっている。
その開発プロセスはかつてないほど迅速だった。歴史上、これほど迅速に作成および製造されたワクチンは他にない。以前は、これまでに開発された最速のワクチンでも 4年以上かかっていた。
しかし、ビオンテック社の共同創設者のウグル・サヒン (Ugur Sahin)氏は、米ウォールストリート・ジャーナルによれば、わずか数時間でこのワクチンを設計したと伝えられた。
ビオンテック社のスポークスマンは、妻のオズレム・テュレシ氏と共に会社を設立したサヒン氏が、「ある週末に大まかな設計」を行ったことをビジネスインサイダーは確認した。
以前に報告したように、モデルナ社のワクチンも設計にはわずか2日しか、かかっていない。
両方のワクチンが非常に迅速に設計できた理由は、彼らが依存しているテクノロジー、つまりメッセンジャー RNA または mRNA に帰結する。
FDA はこれまで mRNA ベースのワクチンや治療法を承認したことはなかった。しかし、当局が、ファイザーとバイオンテックに承認を与え、今後はモデルナの承認が続く可能性が高く、mRNA ワクチンは新しい業界標準を設定する可能性がある。
メッセンジャー RNA は、細胞にタンパク質の作り方を教える遺伝物質だ。ファイザー社のコロナウイルスワクチン候補は、コロナウイルス mRNA の小片を体内に注入することによって機能する。その RNA は、ウイルスのスパイクタンパク質をコードする。これは、ウイルスが細胞に付着して侵入するのを助けるものだ。それはまた、抗体が標的にして中和するものでもある。
したがって、mRNA ワクチンは、同じ免疫応答を引き起こすために、スパイクタンパク質を生成するように刺激する。
mRNA ワクチン技術を利用するということは、バイオンテック社とモデルナ社がワクチンを設計するために必要なものはコロナウイルスの「遺伝子配列だけ」であることを意味した。なので彼らはとても早く前進することができたのだ。
武漢で新たなコロナウウイルスが出た報道以来、サヒン氏は、バイオンテック社の焦点を新型コロナウイルスワクチンに移すことに決めた。
中国の研究者が 2020年1月11日に公開した新型コロナウイルスの遺伝子配列を使用し、サヒン氏はその週末に自分のコンピューターで 10の異なるワクチン候補を設計した。その 1つが、後に大規模な試験に選ばれた候補であり、FDA が承認したものだ。
ウォールストリートジャーナルによると、サヒン氏は、そのワクチン候補をわずか数時間で設計した。
しかし、パンデミック前の労働力が 1,000人ほどだったバイオンテック社には、大規模な試験に必要な数十万の用量を製造する能力がなかった。そのため、2月、サヒン氏は、ファイザー社のワクチン研究責任者であるカトリン・ジャンセン氏に連絡をした。バイオンテック社は、2018年からインフルエンザワクチンについてファイザー社と協力してきた。
両社は 3月中旬にパートナーシップを発表した。
ファイザー社とバイオンテック社は、11月9日にワクチンの効果が 90%以上であると発表した。フェーズ 3試験の調査結果は、ワクチンがほとんどの人に重篤な副作用を引き起こさず、COVID-19 の予防に95%有効であることを示した。
>> In Deep メルマガのご案内
In Deepではメルマガも発行しています。ブログではあまりふれにくいことなどを含めて、毎週金曜日に配信させていたただいています。お試し月は無料で、その期間中におやめになることもできますので、お試し下されば幸いです。こちらをクリックされるか以下からご登録できます。
▶ ご登録へ進む