酪酸は老化を防ぎ、新しい神経組織を産生する
先日の、「抗ガン剤が腸内環境を破壊する」ということが判明した記事の時にも少しふれたのですが、私は、今年の 1月からですから、もう10ヵ月くらいになりますか、酪酸菌(製品名は、強ミヤリサン)というものを飲み続けています。
酪酸菌というのは「酪酸」という物質を産生するバクテリアですが、今回は「酪酸が身体の老化を抑制する」という話です。
私が最初に飲み始めたのは、小麦アレルギーの人が、酪酸菌を飲み始めて小麦を食べられるようになったということを聞いたからですが、まあ「不耐性に少しでも効果があればいいな」くらいの気持ちで飲み始めたのですけれど、これが、比較的いいことに気づきまして、それ以来ずっと飲んでいます。
今は他に薬とかサプリは飲んでおらず、飲んでいるのは酪酸菌とトリファラくらいです。
それで、以前、シカゴ大学のアレルギーに関する影響を試験した研究で、
「酪酸の産生が食物アレルギーを改善する」
という結果を示した論文を発表し、その際には、以下の記事で取りあげさせていただきました。
米シカゴ大学が乳幼児の腸内細菌を用いて食物アレルギーを改善する画期的な方法を発見。そして、キーである「酪酸菌」を用いて、日本人も誰でも食物アレルギーを飛躍的に改善できる可能性があります!
詳しくは上の記事を読まれていただければ幸いですが、この「酪酸」というのは、以前からの研究で、短鎖脂肪酸が腸の中で健康な微生物群を確立するための重要な栄養素だということがわかっています。
これは、酪酸の産生が活発になれば、「腸内環境が良くなる」ことを意味します。
そして、11月13日に、シンガポールの名門であるナンヤン工科大学の科学者たちが、イギリスとオーストラリアの科学者たちと共におこなった国際研究により、
「酪酸が、老化プロセスを抑制する」
ことを発見したのです。
つまり、この「酪酸」の産生が活発であれば、腸内細菌の環境が良くなるだけではなく、「老化が抑制される」ということがわかったのです。
アンチ・エイジングというのか、若返りというのか、そういうことに関係する可能性があることがわかったといっていいと思います。
最近は、「腸活」という言葉もあるようで、先日、何となくテレビをつけた時に、そのような番組を NHK か何かでやっていまして、確かに、腸の状態を良くされた方々は、一様にお若い感じはしましたね。特に肌のツヤが良かったですね。
あと、老化の抑制と関係あるのかどうかはともかく、私自身の体験としては、酪酸菌を飲み始めて以来、いわゆる、ベンハーというか「お通じ」のことですが、その質がまるで変わりました。
あまり具体的に書いて気持ちのいいものではないですので、そのあたりは書かないですが、「あからさまに健康なものになった」とはいえます。
とにかく、最近、この「酪酸」というものと「健康の関係」が、かなり大きく取り上げられることが増えていまして、タイムリーといえば、タイムリーな時に酪酸菌を飲み始めたものだなあとは思います。
腸内の状態は、肌の状態とも関連しやすいですし、女性などには、酪酸菌はよろしいのではないかと思ったりします。以前は、オススメするのも堂々とではなかったですが、ここまで来たなら、堂々とご紹介できます。
なお、酪酸菌の商品にはいろいろとありますが、アマゾンでも楽天でも「酪酸」と入れれば、多くの商品が表示されます。
私がずっと飲んでいるのは、日本製の強ミヤリサンというもので、下のリンクはアマゾンのものです。
食べ物から酪酸の産生を促すのが最も健康な方法であることは確かだと思いますが、加齢してきますと、こういうものも悪くはないのかなと。
では、ここから、シンガポールのナンヤン大学の研究について、アメリカの科学メディア「サイエンス・デイリー」の記事の翻訳です。
Bacteria in the gut may alter aging process
Science Daily 2019/11/14
腸内細菌が加齢プロセスに変化を与えている可能性
腸内に生息する微生物が、老化プロセスを変化させる可能性があり、これは、食品ベースの治療法の開発につながるかもしれない。
シンガポールのナンヤン工科大学(NTU Singapore)が率いる国際研究チームは、腸内の微生物が、老化プロセスを変化させる可能性があることを突き止めた。
人間を含むすべての生物は、その体内および上皮等に生息する無数の微生物たちと共存しており、過去 20年間にわたって行われた研究により、それら体内の微生物は、栄養、生理学、代謝、および行動における重要な役割を持つことが確立され始めている。
ナンヤン工科大学のスベン・ペターソン教授(Professor Sven Pettersson)が率いる研究チームは、マウスを使用し、年老いたマウス(24ヶ月)の腸内細菌を、若い無菌マウス(6週齢)に移植した。
それから 8週間後、移植された若いマウスたちは、神経新生として知られている腸の成長と脳内のニューロンの産生を増加させた。
チームは、この神経新生の増加は、「酪酸」と呼ばれる特定の短鎖脂肪酸を産生する腸内微生物の濃縮によるものであることを示した。
酪酸は、下部腸管での食物繊維の微生物発酵によって生成され、FGF21と呼ばれる長寿ホルモンの生成を刺激する。FGF21は、体のエネルギーと代謝の調節に重要な役割を果たす。
加齢に伴い、この酪酸の生産は減少していく。
その後、研究者たちは、酪酸を単独で若い無菌マウスたちに与えると、同じ成体の神経発生効果があることを示した。
この研究は、シンガポール、イギリス、オーストラリアからの研究者たちによって実施され、 11月13日に、科学誌サイエンス・トランスラショナル・メディシン(Science Translational Medicine)に掲載された。
ペターソン教授は、以下のように言う。
「古いマウスから採取した腸内微生物は、若いマウスの神経成長をサポートする能力があることがわかりました。これは非常に興味深い、驚くべき観察です。酪酸を単独で使用することで、神経刺激効果を模倣できるのです」
「これらの結果は、酪酸が脳卒中、脊髄損傷のような状況での修復と再構築をサポートするかどうかを探求し、老化の加速と、認知機能の低下を緩和することにつながることになるでしょう」
腸内微生物が消化器系に与える影響
チームはまた、消化器系の機能に対する老齢マウスから若いマウスへの腸内微生物移植の影響を調査した。
加齢と共に、小腸細胞の生存率が低下し、この小腸細胞の生存率の低下は、粘液産生の減少と関連していることがわかった。これは、年齢と共に、腸細胞が損傷し、腸細胞が死滅することにより脆弱になることを示す。しかし、酪酸を加えることは、腸のバリア機能をよりよく調節し、炎症のリスクを減らすことにつながる。
チームは、古いドナーから腸内微生物を受け取ったマウスたちが、腸の絨毛、つまり小腸の壁の長さと幅が増加したことを発見した。 さらに、小腸と結腸の両方は、若い無菌マウスよりも古いマウスで長かった。
この発見は、腸の微生物が正の刺激によって老化した身体を補い、支えることができることを示している。これは、酪酸塩の濃縮と活性化を模倣することにより、老化の負の影響に取り組むための新しい潜在的な方法を示す。
ペターソン教授は以下のように述べる。
「将来的には、健康な老化と成人の神経新生をサポートする酪酸塩を含む食品が、どのくらい老化の抑制に効果があるということについて、ヒトでの試験をおこなうことになるでしょう」
「食文化を活用して自分自身を”治癒する”ことを模索するシンガポールでは、この研究の次のステップは魅力的なものとなるでしょう。その結果は、シルバー世代の健康な老化をサポートするシンガポールでの探求において重要になるはずです」
ドイツのマックス・プランク老化生物学研究所の所長であるダリオ・リカルド・バレンツァーノ(Dario Riccardo Valenzano)博士は、この発見は腸内微生物叢の研究におけるひとつの転換点であると述べた。
バレンツァーノ博士は以下のように言う。
「これらの結果は刺激的であり、マウスの生活の中で、酪酸を産生する微生物を、食物から積極的に獲得できる方法があるのかどうかということや、非常に高齢となった場合に、これら酪酸を産生する微生物群が、体内から減少していくのかどうかなど、老化と腸内細菌叢の関係についての、いくつもの新たな未知のメカニズムを提起しています」
シンガポール国立大学の健康老化センターの代表であるブライアン・ケネディ教授(Professor Brian Kennedy)は、このように言う。
「年老いた生物たちの腸内の微生物叢が、若い受容者たちの体内の状態を促進できることは興味深いことです。加齢に伴う微生物叢は、宿主の蓄積不足を補うために修正されていることを示し、若い動物たちの腸内微生物叢が若い宿主に及ぼす影響が大きいか小さいかという問題にもつながります」
この研究は、健康なマウスからの腸内微生物の移植が、筋肉萎縮を伴う無菌マウスの筋肉成長と機能をどのように回復できるかについてのペターソン教授の以前の研究に基づいている。
ここまでです。
なお、この酪酸が、腸内の環境を良好にする仕組みについては、ある程度わかっていまして、以下は、今年 9月の産経新聞の記事からの抜粋となります。
酪酸菌 腸を整え、強く
産経新聞 2019/09/11
腸内細菌の酪酸菌から作り出される酪酸には、腸内環境を整え健康な腸内フローラを保つ働きがある。それは腸内を「弱酸性」にすることと「酸素のより少ない環境」にすること。
酪酸菌やビフィズス菌など、人にとって有用な菌は低酸素状態を好み、ブドウ球菌など有害な菌は酸素のある環境を好む傾向がある。
酪酸菌が増殖し酪酸を作り出すと大腸の上皮細胞が酪酸と酸素を使ってエネルギーを作り出す。これにより大腸がより酸素の少ない状態になり有用な菌が住みやすい環境に変化する。酪酸菌と上皮細胞が良好な関係を保つことで健康な腸を維持することができる。
また酪酸には腸を強くする働きもある。酪酸は粘液の分泌を促し、粘液は腸管上皮を覆い粘膜バリアとして病原菌の侵入を防ぎ大腸組織を保護する役割を持つ。
このバリア機能が低下すると炎症などの疾患を引き起こすことが報告されている。
最近は、腸活とかパパ活とか、いろいろな新しい言葉の表現がありますが、私のほうは、とりあえず腸活に専念しようと思います。
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