2018年2月の「数日」で起きた北極上空のすさまじい気温の変化
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国際的イベントの裏で起きていた「異常」
この1週間かそこらの間、たまにテレビをつけると、いつもウインタースポーツをやっていて不思議に思っていました。奧さんに「今の時代はこんなにウインタースポーツが盛んなんだね」と言いましたら、「そういうことではありません」と諭されました。奧さんが何を言っているのかよくわからなかったですが、複雑な時代となったものです。
そんなわけで、ずいぶん長い間テレビを見ていなかったのですが、そのために天気予報などもネットで見ることが多くなっていました。
日本やその周辺では最近は比較的穏やか……といっていいのかどうかはともかく、気温に関しては平年とそう違わない感じだったように思います。
ところが、この数日から1〜2週間くらいの間、「北極のほうを含んだ各地」では、気温などが大変なことになっていたのです。
それはカオスといっていいほどのものだったと思うのですが、冒頭に示しましたのは、この2月中旬の北極の上空の気温の変化です。
たった3、4日で「 40℃も気温が上昇」していたということがあったのですが、この現象自体は、気象用語では「成層圏突然昇温」と呼ばれるもので、頻繁にあるものではないにしても、何年かに一度くらいの単位では見られるものだそうです。
それでも 40℃の変化が一気に起こるというのはすごいですけれど、実はこれが起きたことが何をもたらしたかといいますと、少し前の記事、
・地球の気流がさらに崩壊中 : 北極上空の大気「極渦」が真っ二つに分断して北半球上空を進行中という異常事態が発生
In Deep 2018/02/18
でご紹介しました、「真っ二つに分断した北極の大気の北半球への流れ」というものを作り出したのです。
2月中旬に真っ二つに分断して共に進行した北極上空の大気「極渦」
この記事でご紹介した「ふたつにわかれた極渦」が、どんな影響を与えたか。
たとえば、「北極圏」というようにされているエリアがありますが、北極からのカオスな大気の流れは、この地域をどのようにしたか。
北極圏とは、北極点を含む下の地域です。
・北極圏
このあたりは、本来なら北極と同じような気温が続くのが普通ですが、では、今年 2月24日のこの「北極圏の最高気温の分布」を見てみましょう
2月24日のちぐはぐというよりカオスなグリーンランド周辺の気温
この「 6℃」を記録したグリーンランド北部は、通常は -15℃くらいの気温の推移なのですが、グリーンランドの南部からの北極圏がほぼ -20℃以下のところ、このあたりだけが「とても暖かくなって」います。
それだけなら、そういう年もあるのかもしれないと思われるかもしれないですが、何と、
「この変化は数時間で起きた」
のです。
下は、上の気温が記録された 2月24日から 25日までの「 24時間」の気温の変化となります。
・DMI
すごいでしょう。
これも、先ほどの北極からの「ふたつにわかれた極渦」の異様な動きによるものだと思われるのですが、影響はさらに広がりまして、アメリカやヨーロッパの一部も、やや似たような「異様な気温分布」となりました。
たとえば、アメリカは以下のようなことになっていました。
アメリカの2月20日の最高気温の分布
これは地図では下の範囲となります。
この現象をアメリカでは、以下のような表現で報じていました。
2018年2月19日のUSAトゥディより
そして報道の通り、アメリカ西部では異常な寒波、東部や南部では異様な暖かさ、あるいは熱波というようなことになりました。
これらの一連の現象を見て思いましたのは、以前、記事にもしましたけれど、「今の地球では他にも気流がいろいろと壊れている」ということがありまして、
「そういうものが複合的に組み合わさったらどうなっちゃうのだろう」
という思いでした。
2016年6月には、
・地球の気流が壊れた : ジェット気流が赤道を通過して北極から南極に進むという異常すぎる事態。このことにより、この先の気象と気温はこれまでに考えていた以上のカオスとなる可能性が極めて濃厚に
In Deep 2016/06/30
という記事を記したことがあります。
それは一時的なことではあったのだとは思いますが、
「地球のジェット気流の流れがムチャクチャになっていたかもしれない」
ということをご紹介したものでした。
普通は、地球の東西方向を旋回しているジェット気流が、2016年の春に「南北に進行していた」ことがわかったのです。
図で示しますと、下の青と赤のラインが通常のジェット気流で、白い矢印が 2016年の「異常なジェット気流」です。
2016年の春にジェット気流に起きた異変
この発表をしたのは、カナダ・オタワ大学のポール・ベックウィズ(Paul Beckwith)教授という方ですが、教授は以下のように述べています。
「これは気候システムの騒乱が進行中であることを示しています。現在の気候システムの動きは、私たちが予想し得ない気象の状況を作りだすか、あるいは過去に経験したことのない新しい、あるいは恐ろしい方法で私たちを驚かせ続けるかもしれません。私たちは今、地球規模の気候緊急事態に直面しているのかもしれません」
実際にその後の、つまり 2016年、2017年は「過去に経験したことのない気象」に多くの国や地域が見舞われました。被害や災害の規模だけのことではなく、「こういうことは(その地では)起きたことがない」ということが各地で発生しました。
とても長い間、地球上を安定した規則性と共に運行されていた自然の気流の営みが、理由はわからないながらも、
「突然崩壊した」
というのが、この2年から3年の間に地球の上空で起きたことです。
そして、こういう「様々な崩壊が複合的に結びつくというようなことがあった場合」には、さらに規模の大きな気象の大崩壊というものが起こり得るのではないかと思います。
日本も含めて、これから北半球では多くが春になっていきます。暖かい日もあれば寒い日もあるでしょうけれど、そういうゆったりとした繰り返しのはずのところに、「ある日、突然遮断されるような変化」がもたらされたりするかもしれないということですね。
何より、すでに、たとえば今回の北極圏でのことのように、「今現在それが起きている」わけですから、今後一切起きないと考えるほうが不自然であり、今後も形を変えてかもしれないですが、「これまでなかったカオス」が繰り返される可能性はあると思います。
ここ数年は、比較的ずっと「自然環境と自然災害は拡大の一途を辿る気がします」というようなことを書き続けていましたが、それが間違っている見識だとは、今のところは思えません。そして、「今後もさらに」この傾向は拡大すると私個人は思っています。
それでも人間は、様々な局面に対して、その環境に対応しながら慣れていくものでもあります。
場合によっては、次第に混沌とした状況も増えてくることになるのかもしれないですが、冷静にひとつひとつ対応しながら進むしかないのだと理解しています。