ロシアのメディアより
ロシアの報道メディアで、ちょっと面白い記事を見かけました。
それは、
「オーロラが人に精神的な異常をもたらす」
ということについての記事でした。
まずは最初にその記事をご紹介したいと思います。
meteovesti.ru 2019/01/19
オーロラは精神的な疾患にかかりやすい人にとっては危険
他の北部諸国と同様に、ロシアにもまたオーロラの時期がある。
オーロラを見るために、世界中から観光客やカメラマンたちがロシアへとやって来るが、しかし、オーロラを見にやってくる人たちは、その前に知っておいたほうがいいことがある。
オーロラの発生原理は、ロシア地理学会のウェブサイトによれば、太陽から太陽風と呼ばれる荷電粒子の流れが地球に吹きつける。その太陽風が地球に到達し、地球の大気層へと降下した際に、大気中の粒子とプラズマが衝突しすることによって発光が起きる。これがオーロラだ。
通常、オーロラは、高度 100Km から 300 kmの高層圏で発生する。
オーロラの輝きは、当然、天候に強く依存する。湾岸の暖流により、コラ半島の上空にオーロラが出ることもあるし、それはムルマンスク地方やカレリア地方に出現することもある。
オーロラを見にロシアを訪れる場合は、いつでもどこにでもオーロラが出るというわけではないことを知っておく必要がある。場合によっては、オーロラを求めて、一晩中、あるいは、数日間も、車で遠距離を移動しなければならないこともある。
もうひとつ、オーロラには以下のような事実が存在する。
昔からオーロラと近い暮らしをしていた人たちは、そのことに気づいており、このように言う。
「オーロラは心を奪い去る」
そして、これは何かのオカルト話やホラーストーリーではないのだ。
極地のエスキモーの人々はこのオーロラの特性を「北極の星の声」と呼んでいる。
エスキモーの人たちがこのように呼ぶのは、オーロラがあらわれた下で、複数の人々が同時に異常な精神状態に陥るという事象が起きるためだ。
極地に挑んだ探検家として知られるノルウェーの探検家ロアール・アムンセン(1872 - 1928年)も、南極大陸の探検の際にこの奇妙な現象に遭遇している。
アムンセンは南極大陸沖の海上の船の中で、何度もこの現象と遭遇した。
探検隊の何人のメンバーが「北極の星の声」を聞いた。探検隊のひとりは、船から雪に覆われた外へと逃げだし、そして、もう1人の探検隊員は、斧でアムンセンに襲いかかり、彼を殺そうとした。
そして、たびたび、このように隊員たちの精神状態が異常になる事例が続いた。
極探検には医師が同行していたが、その医師は、彼らが異常行動を起こす規則性を調査しているうちに、以下のような事実を発見した。
「極地で異常な精神状態になった事例すべてが、オーロラの活動と一致している」
最も精神状態がひどいときは、オーロラの光が赤い場合と一致した。
このような遠征隊の精神的異常による攻撃的な事件の数は、明るいオーロラが発生する機会が多くなるにつれて深刻になっていった。その時期は、太陽活動の最大期であり、オーロラ活動が激しくなった頃でもあった。
もちろん、全員がそうなるわけではなく、一部の人たちだけであった。
その後、この現象について、ソビエト時代の科学者たちが一連の調査と研究を始めた結果、科学者たちは以下のことを見出した。
「ある形態のオーロラは、人間の脳の基本的なリズムに近い周波数で脈動する」
緋色(黄色みのある鮮やかな赤)の明るいオーロラの光の点滅は、脳のリズムに近い周波数と一致し、それらはてんかん等と同様の精神的な疾患や発作の悪化を引き起こすことがわかった。
被験者たちの中には、そのようなオーロラ発生の影響下で、頭痛および前庭(内耳の器官)の機能不全を経験した者もいた。
オーロラは、その発生の際には実際には「音」を伴っているが、これは超低周波音であるため、人間の耳には聞こえない。
この超低周波音が、人間の脳や心血管系にどのような変化をもたらすのかはわかっていないが、オーロラを目撃することは、自分自身を未知の身体の危険にさらしているということもあるかもしれない。こ
たとえば、超低周波音の効果のひとつとして、乗り物酔いのような感覚に陥ることがあり、あるいは、時に視力の喪失や聴覚の喪失と関係したり、脳の機能障害を引き起こす可能性もある。
特に 7Hzの超低周波音は人間にとって致命的であると考えられている。内臓への振動の干渉により、心停止につながる可能性があるのだ。
ここまでです。
この記事の後半の「超低周波音は人体に危険」とか、「 7Hzの超低周波音は人間にとって致命的」とかいう下りは、いろいろと問題がありそうですが、
「緋色のオーロラが、人をおかしくする」
という話は、その真偽は別としても興味を持ちました。緋色というのは、普通の赤よりさらに明るい赤という感じです。
ところで、「超低周波音は人体に危険」という表現がどうして問題があるのかといいますと、私たちは、「常にそのような低周波の中で生きている」からです。
以下の記事などで取りあげたことがあります「地球自身が発している音」であるシューマン周波数というものは、基本的に 7Hz 〜 8Hz のものなのです。
永久に不変と思われた「地球が発するシューマン周波数」が 7.83Hz から 8.5Hz へとアップし、ついに不安定化へ……。そこから思う「良い周波数」と「悪い周波数」の存在
その地球が発しているシューマン波は、1次、2次、3次とありますが、以下のようなものです。
シューマン周波数
このシューマン波の 1次観測波の周波数が 7.83Hzとなっていまして(最近、変化しつつありますが)、この 7Hz という周波数は、
「人間が最もリラックスした状態の脳波の周波数とリンクする」
のです。
人間の脳波の周波数
・デルタ波 4 Hz 以下 深い睡眠、あるいは昏睡状態の時の脳の状態
・シータ波 4 〜 7 Hz 入眠時や無意識の時の脳の状態
・アルファ波 7 〜 14 Hz リラックスした状態の脳の状態
・ベータ波 14 〜 30 Hz 通常の覚醒状態。数値が高くなるほど興奮状態
・ガンマ波 30 Hz 以上 興奮状態の脳の状態
ちなみに、アメリカの「高周波活性オーロラ調査プログラム」、いわゆる HAARP から発せられている周波数も非常に低くて、HAARP は、約 5hz の周波数を上空に向かって発しています。
まあ、HAARP はともかくとして、「 7hzほどの低周波」というのは、地球に住む私たちは「常にそのレベルの周波数と触れている」のであり、危険とか致死的ということはないと思われます。
さて、この低周波の話はともかくとして、オーロラと人間の精神との話。
オーロラというのは、かなり高度の上空で起きる現象ですが、そのメカニズムは、簡単に書きますと、
「電気を持ったプラズマが、地球の大気中の粒子と衝突して発光する状態」
というように説明されています。
プラズマは、太陽から放出されるエネルギー活動により宇宙空間に放出されていて、それが地球の大気圏に入ることによって起きる現象がオーロラということになります。
別の側面からオーロラという現象を書きますと、
太陽の物質と地球の物質が、地球の大気の中で反応している現象
ともいえます。
そういう意味では、オーロラは「太陽の物質と、地球の物質の出会い」が表現されているというような言い方もできるのかもしれません。
そして、上の記事には「特に、緋色のオーロラが人を狂気に導く」というようなことが書かれていました。
緋色というのは、とても明るい赤だと考えますと、オーロラの色の表現としては、「ピンク系」が近いのではないかと思われます。
明るい赤やピンク色のオーロラは出現すること自体が極めて珍しいものですが、こちらの過去記事でご紹介したことのある以下のようなものが近いかと思われます。
2017年11月にノルウェーで撮影されたオーロラ
実際には、通常あらわれるオーロラはそのほとんどが「緑色」で、それ以外の色はかなり珍しいものなんです。
オーロラの色の違いがどのようなメカニズムで発生するのかといいますと、太陽からのプラズマが、「衝突する大気中の粒子の種類と高度」によって違うとされています。
具体的に言いますと、
・プラズマが上空 200- 300kmで酸素原子に衝突すると、赤色に
・プラズマが上空 100- 200kmで酸素分子に衝突すると、緑色に
・プラズマが上空 100km ほどで窒素分子と衝突すると、ピンクに
なると説明されています。
図で示しますと、下のような分布です。
そして、今回の記事にある「緋色」という表現のオーロラが発生するのは、このうちの「プラズマが上空 100km ほどで窒素分子と衝突した」もので、つまり、鮮やかな赤やピンク色になったオーロラのことだと思われます。
上空 200- 300kmという最も高度のある場所でも赤いオーロラが発生しますが、その高度でのオーロラは、赤いことは赤くても、暗い感じの赤となります。ピンク系ではなく、「血のような色」です。
近いのは、下のような色のオーロラですかね。
2011年10月 米国ミズーリ州に出現したオーロラ
ですので、かつての南極探検の際、一部の隊員の精神を異常にさせたオーロラは、「上空の最も高度の低い位置で発生する鮮やかな赤やピンク系だった」と考えられます。
ということは、太陽からのプラズマが最も低い高度で地球の粒子と衝突して発生しているオーロラが出ている状態、というのは、
「太陽から放出された他の物質の影響もまた、地上までにも及んでいる状態なのかもしれない」
というように思った次第です。
そもそも、太陽嵐は太陽の多彩なものを放出します。
Wikipedia の説明では以下のようになっています。
太陽嵐とは、太陽で非常に大規模な太陽フレアが発生した際に太陽風が爆発的に放出され、それに含まれる電磁波・粒子線・粒子などが、地球上や地球近傍の人工衛星等に甚大な被害をもたらす現象である。
「粒子線」というのは、原子や分子などの粒子によるビームだそうで、電子線、陽子線、重粒子線、中性子線などがあるそうですが、まあ、そういうものが太陽から一気に放出される。そして、フレアの方向によっては、その一部は地球に到達し、そして、大気中にまで進んだそれらの太陽の物質が地球の粒子と「接触して光る」のがオーロラということになるわけです。
まあ・・・要するに、今回のこの「オーロラと人間の狂気」の記事に興味を持ったのは、太陽嵐などによる「太陽からの物質による影響」というのは、知られているよりも広いものなのかもしれないなあと思ったことによります。
たとえば、太陽が「人体そのもの」に対して与える影響は、これまで数多く記事でふれてきましたけれど、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券参与の嶋中雄二さんが 30年以上前に書かれた名著『太陽活動と景気<』に以下のような下りがあります。
嶋中雄二著『太陽活動と景気』(1987年)より
太陽活動や地磁気活動は、ヒトの精神活動を乱すことが知られており、統合失調症の患者数は、約 10年の周期的変化を繰り返していることがわかっている。
また、もしも、地磁気と生体膜の透過性との間に何らかの関係があるとするならば、中枢神経系への地磁気の直接的な影響の可能性が理解できる。
このあたりについての、ある程度の説明は以下の記事などで取りあげています。
さまざまなデータが、「太陽活動と人間の身体と精神の健康には関係がある」ことを示しています。
たとえば『太陽活動と景気』には、ドイツとアメリカの以下のような研究の事例も載せられています。
『太陽活動と景気』 より
二人のドイツ人研究者、B・デュールとT・デュールは、 50年ほど前に、黒点、磁気嵐オーロラといった太陽活動と人間の自殺との関係について、太陽活動が特に活発な日には自殺が約 8パーセント増加することを見いだした。
1963年、アメリカの整形外科医R・ベッカーは、精神病院への入院が太陽フレアと相関していることを見いだした。後に彼は、地磁気の乱れと入院中の精神患者の行動の乱れとの間に、相関を見いだした。
さらに、磁場や宇宙線の放射量が変化すると、患者の反応時間や課題遂行にも影響があらわれることを報告した。中枢及び末梢神経系への地磁気の効果としては、精神病や神経反応との関係が調べられている。
下のような医学論文のグラフもあり、太陽と人間の身体や精神との関係はかなり「直接的」です。
このような事例は、他にも過去に非常に多く医学的な研究の対象となっていました。
しかし、
「それはなぜか」
ということについては、結局はっきりしていません。
このブログでは、磁場が人体に影響しているということについては書くこともありましたけれど、今回のオーロラについてのロシアの記事を読みまして、
「他にもいろいろとあるんだろうなあ」
と感じます。
そして、かつては、太陽嵐や磁気嵐のようなものは、太陽フレアが頻繁に発生する太陽活動の大きな時期(約 11年の周期のサイクルでやってきます)に限られたものでしたが、昨年 12月の以下の記事でご紹介しましたように、今の太陽表面には常に表面にコロナホールと呼ばれる領域が存在しており、「常に磁場が放出されている」のです。
「半分、黒い。」 : 磁気を噴出するコロナホールが太陽の大部分を占める異常な状態が「定着」し、人類が太陽からどんな影響を受けるのかがもはや分からない
それは今も続いています。
今日なども、半分黒いとまではいかないまでも、100キロメートル級のコロナホールが太陽表面にあり、現在、地球に向いています。
このコロナホールの影響で、ちょうど今日(1月22日)あたりから地球は弱い磁気嵐の影響を受けると思われます。
かつては、太陽活動の強い時の特徴だった磁気嵐が、「今はいつでも」というようなことになっています。
そして、もしかすると、太陽のこの状態は今後もずっとそのままなのかもしれないですが、そのことと、今回のロシアのメディアの「オーロラが人間の狂気を呼ぶ」というような概念を照らし合わせてみますと、
「いつも狂気が満ちているような状態の今のこの世界」
と、太陽の現在の状況とが、まったく関係がないということもないのかなあと感じたりした次第なのでした。
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