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「蚊の撲滅」を目的としたブラジルでの「成虫になる前に死ぬ遺伝子操作」を施された蚊の放出実験が大失敗していたことがネイチャーの論文で発覚。遺伝子を操作された蚊たちは数世代で元通りに

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遺伝子操作によるブラジルでの蚊の撲滅実験が失敗したことを伝えるロシアの報道


naked-science.ru




あの計画は悪影響だけ残して失敗していた

ロシアの報道で、「ブラジルで行われていた、遺伝子操作により蚊を撲滅させるプロジェクトが失敗した」という内容の冒頭の報道を見つけました。

これに関しては、2016年から 2017年にかけて、何度か記事で取りあげさせていただいたことがあります。

たとえば、以下のようなものです。

全世界で進む「蚊の絶滅計画」は自然への反逆か人間文明への恵みか。アメリカでは広範囲でバイオモスキートが大量に自然環境に放出されることが決定

ブラジルでの「遺伝子操作を施された蚊の放出」と、現在のジカウイルスの流行の関係を私が完全に無視することができない理由

当時、ジカ熱とデング熱、そして黄熱病やマラリアなどの、それぞれ蚊が媒介する感染症が流行していました。

特にブラジルでは、妊娠した女性が感染すると、お腹の赤ちゃんに障害が出る可能性が高いジカ熱と、高熱と痛みに苦しめられるデング熱が大変に流行していまして、これらの感染症の拡大を防ぐために、

「遺伝子操作を用いて、蚊を根絶する計画」

を実施することにしたのです。

オキシテック社(OXITEC)というイギリスにある昆虫の駆除やコントロールをおこなう企業が、遺伝子操作により、ジカやデング熱を媒介するネッタイシマカだけを撲滅させるプロジェクトをブラジルで行う実験を開始しました。

この遺伝子操作は、

「次の世代の幼虫が成虫になる前に死ぬように遺伝子を組み替えた」

もので、その蚊たちをブラジルに一斉に放出したのでした。

このような遺伝子操作ですので、計画通りなら、この蚊の子孫たちは死に絶えることになります。

ブラジルで放出されたオキシテック社の蚊と通常の蚊の違い


OXITEC

このやり方は、WHO も、世界中の企業に呼びかけていました。以下は、2016年3月の報道からです。

WHOが「遺伝子組み換え蚊」活用を推奨 成虫になれない遺伝子の放出実験求める

産経ニュース 2016/03/19

世界保健機関(WHO)は、ブラジルなど中南米を中心に広がるジカ熱対策で、ジカウイルスを媒介する蚊を抑制するため、遺伝子組み換えの蚊を活用することを推奨する声明を発表した。

生まれた蚊が成虫になる前に死ぬよう、オスの親の蚊を遺伝子操作し放出する実験事業を行うことを求めている。

WHOは声明で「ジカ熱対策には、ウイルスを媒介する蚊の抑制が最も効果的な方法だ」と強調した。

いくつかの組織が、この試みを開始し、中でも英オキシテック社は、ブラジルで大規模な「蚊撲滅実験」を実施したのでした。

実験が成功していれば、ブラジルに放出された蚊と、その子孫は、今はすべて死んでいる「はず」で、その遺伝の繰り返しの中で、ブラジルの蚊は、大幅に減少していた「はず」でした。

ところが、現実には、

「放出された蚊たちは、大繁殖を再開していた」

ことが米イェール大学の調査でわかり、その結果が、9月10日の科学誌ネイチャーに掲載された論文に記されていたのでした。

つまり、実験は失敗したわけで、それどころか、予想外の悪影響の可能性だけを残したということになりました。

論文に書かれた実験は、2013年から 2015年にかけて行われた実験で、本来なら、実験終了後には、放出された蚊の家系はすべて滅びているはずだったものが、実験終了後の 2年以内に、「繁殖状態は元に戻った」ことが調査で判明したことが記されています。

成虫になる前に死ぬように改変された遺伝子を持つ蚊たちは、数世代で、

「その遺伝子が持つ死の運命を自らで変えた」

ということになります。

生命というものは、人間による遺伝子改変で「種としての根本」がどうこうされるものではないということがよくわかる話であり、「生命とは強いなあ」と、つくづく思います。

ふと、「ジュラシックパークみたいだなあ」とも思いました。

琥珀の中の蚊に残る恐竜の血液の DNA から、バイオテクノロジーを駆使して恐竜を現代に蘇らせるという内容の映画ジュラシックパークの中には、蘇った恐竜が「単独で生きのびないように遺伝子操作される」という話が入っています。

生まれた恐竜には、今回のブラジルの蚊に施されたのと同じような遺伝子改変がなされるのです。

本来は体内で作ることができる必須アミノ酸(リシン)を、遺伝子操作で、自分の体内で作ることができないようにして、人間がリシン入りのエサを与えないと恐竜は死ぬようにされているのです。

そのままだと、たとえば、逃亡した恐竜たちは、ただ死ぬだけなのですが、ところが、遺伝子を改変された恐竜たちは、自然の中から必須アミノ酸の豊富に含まれる植物を見出しながら「生きる道を見つけていく」ことになります。

今回のブラジルの蚊も、遺伝子改変された後に、二世代、三世代、次の世代と「生きる道を見つけていった」のだと思われます。

 

皮肉な話ですが、今の地球では、「絶滅してほしくない昆虫がどんどん絶滅していって」おり、そして、この蚊たちのように、「人間が絶滅を試みている相手たちは、むしろ大繁殖していっている」という図式があります。

それと、問題としては、今回の「蚊の遺伝子に手を加えた」ことが、何か他の「反動」みたいなものと関係してこないだろうなあと思ったりします。

実際、今回ご紹介する記事でも、米イェール大学の科学者たちが、

> 蚊が以前よりも強くなる可能性

を警告しています。

そもそも、ブラジルでジカ熱とデング熱の大流行が始まったのも、オキシテック社が、ブラジルでの遺伝子操作した蚊の放出実験が終わった後からでしたからね。

記事をご紹介したいと思いますが、冒頭の記事はロシア語で、少し翻訳が心許ない部分がありましたので、探してみましたら、ドイツのメディア DW が、このことを英字で報じていました。

その記事をご紹介します。

 


Genetically modified mosquitoes breed in Brazil
DW 2019/09/13

繁殖しないように遺伝子操作された蚊がブラジルで繁殖中

2013年から2015年までブラジルで行われた遺伝子組み換えを施した蚊の自然界への放出実験の後、それらの遺伝子組み換えされた蚊は繁殖を続けた。研究者たちの当初の想定では、放出されたすべての蚊と、その子孫はすべて死ぬはずだった。

感染症を媒介するネッタイシマカを封じ込めるブラジルでの試みは失敗した可能性がある。そして、遺伝子の変異は、そのまま地元の蚊に引き継がれていっているようだ。

英国のバイオ企業オキシテック社は、ブラジルのジャコビナ市 (Jacobina)で、27週間にわたって、毎週約 45万匹の遺伝子改変したオスの蚊を放出した。この放出の目的は、デング熱、ジカ熱、黄熱病の感染症を制御するためだ。

蚊に対しての、この OX513A と呼ばれる遺伝子改変は、その遺伝子を改変された蚊の最初の子孫の世代( F1世代)が成虫になる前に死んでしまうように設計されていた。つまり、本来は、この遺伝子が引き継がれた蚊は、成虫になれないため、繁殖できない。

実験期間中には蚊の個体数が減少した

ラジル保健省の希望は、ブラジルの蚊の個体数を 90パーセント減少させることだった。そして、この希望は、実験の実施中にはうまく機能していた。蚊はその個体数を大幅に減少させた。

ところが、実験終了後約 18か月で、蚊の個体数は以前の状態に戻ったのだ。

放出された蚊の遺伝子改変は、最初の F1世代を他の蚊と区別することを可能にする蛍光タンパク質も産生した。

米イェール大学の研究者たちは、放出 1年後、および放出 27ヶ月後から 30ヶ月後の間に、実験が行われた地域で発見された蚊の遺伝的変異を調査した。

調査の中で、研究者たちは、遺伝子改変の一部は、この地域の蚊の群生に移動したという結論に達した。これは予想されないことだった。

この研究は 9月10日に科学誌ネイチャーに掲載された。

採取されたサンプルでは、​​蚊の 10〜 60パーセントがゲノムに対応する変化をもたらした。

当初の予測通りなら、最初に放出された蚊の子孫は成虫になれないために、繁殖することはできないはずだった。そのため、蚊の個体群に遺伝子の改変が移動するという可能性はないとされていた。

ただし、この遺伝子改変 OX513A は、その子孫の約 3〜 4パーセントが成虫に達する可能性があることは、以前の実験室での実験からわかっていた。しかし、科学者たちは、この数値は、現実に遺伝子改変された蚊が繁殖に到達するには弱すぎる数値だと想定し、事実上、繁殖することはできないと考えていた。

批評家たちが討論に加わる

イェール大学の研究チームは、新たに形成されたこれらの個体群の蚊が以前よりも強くなる可能性があると警告している。

ネイチャーの論文の筆頭著者のイェール大学教授のジェフリー・パウエル (Jeffrey Powell)氏は、「今回のこれらの結果は、遺伝子改変の結果として、その生物に予期しない事態が発生していないかどうかを検出するために、放出の際にモニタリングプログラムを実施することの重要性を実証している」と記している。

ブラジルの生物学者、ホセ・マリア・ガスマン・フェラーズ (José Maria Gusman Ferraz) 博士は、遺伝子工学への批判をさらに一歩進め、次のように述べている。

「遺伝子改変された蚊の放出は、何も明らかにされずに急いで行われたのです」

遺伝子工学に批判的なドイツ・ミュンヘンに本拠を置くテストバイオテック (Testbiotech)研究所は、十分な研究のない状態で、遺伝子を改変した蚊を放出する野外実験を開始したオキシテック社を非難している。

遺伝子ドライブ技術は使われていない

ブラジルでの今回の屋外試験では、科学界の論争の的となっている遺伝子ドライブ技術は使用していない。遺伝子ドライブでは、蚊は、生殖中に常に支配的な非常に断定的な遺伝子を与えられる。

厳密に隔離された研究所で遺伝子ドライブを実験する研究者たちは、最終的にこの方法を使用して蚊の集団全体を永久に根絶することを望んでいる。

しかし、このような実験で、種を永久に根絶した場合、元に戻すことはできず、したがって、これまで屋外で実際に実施されたことはない。


 

ここまでです。

記事に「遺伝子ドライブ」という言葉が出てきました。

これは、今年 1月に以下の記事でご紹介したことがあるひとつの生物種全体を、この世から消滅させることが可能と言われている技術です。

科学の進歩か新たな生物兵器の誕生か : 「ひとつの生物種全体を抹殺できる」可能性のある遺伝子ドライブ技術が史上はじめて哺乳類で試験され、成功した

Wikipedia では、以下のように説明されます。

遺伝子ドライブ - Wikipedia

遺伝子ドライブとは、特定の遺伝子が偏って遺伝する現象である。この現象が発生すると、その個体群において特定の遺伝子の保有率が増大する。

人為的に遺伝子ドライブを発生させることにより、遺伝子を追加、破壊、または改変し、個体群、または生物種全体を改変することができると考えられている。

具体的な応用例として、病原体を運搬する昆虫(特にマラリア、デング熱、ジカ熱を媒介する蚊)の拡散防止、外来種の制御、除草剤や農薬抵抗性の除去がある。しかし、改変された生物を自然環境に放つ行為は、生命倫理上の懸念がある。

この遺伝子ドライブで、本当に、ひとつの種を絶滅させられるかどうかは、実際にはわかりません。実際に行われたことはないわけですから。

しかし、今回の「蚊の復活劇」を見ていますと、そういうものさえ、少なくとも、蚊には通用するのかどうかという気にもなってきます。

なお、最初のほうにリンクしました記事で取りあげましたが、アメリカでも、ブラジルと同じような「遺伝子操作をした蚊を放出する」計画が進行しています。あるいは、もう実施されたかもしれません。

アメリカでも、今後、ブラジルと同じように、「遺伝子操作により、むしろ蚊のパワーが強化される」というようなことが起きないとも限らないかもしれません。

 

ちなみに、ずいぶん以前の記事で書いたことがありますが、 1億年以上前から、この地球にいて、そしてずっと、

「ウイルスと生物の仲介をし続け」

「生物と他の生物の血液の交換さえなしえている」

という「蚊」という生命が地球上にいる意味は、単なる感染症の媒介者というものを超えたものがあると、少なくとも私は考えています。

蚊が血液を介して生物から生物に媒介しているのは、病原菌だけではありますまい(古い言い回しかよ)。

死をもたらすものと、生をもたらすもの、どちらも蚊は媒介していると私は考えていたりします。

ミツバチが地球からいなくなったら人間は生きられないという説があると同様に、蚊という生命が地球からいなくなったら、多くの生命が生きられなくなるはずだとも考えています。

といいますか、地球の生命の成り立ちを考えれば、不要な生物なんてものが地球に存在するという考え自体がおかしいのでは? という話ではあるとは思うのですが。





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