2019年4月10日のスペースウェザーの記事より
次の太陽活動周期はどのようなものに
NOAA (アメリカ海洋大気庁)や NASA の太陽研究の専門家集団による「次の太陽活動周期の予測」が発表されていたことを、スペースウェザーの記事で知りました。
現在の太陽活動周期である「サイクル24」は、歴史的に「弱い」ものだったことはずいぶん以前から書かせていただくことがありました。
以下の記事でも取り上げましたが、サイクル24という太陽活動周期は、少なくとも、過去 200年ほどで最も弱い太陽活動周期でした。
太陽黒点の観測は、今から 260年前の 1755年に始められました。
この 1755年の太陽活動に「サイクル1」という数字がつけられ、それから約 250年後の今の太陽活動周期が「サイクル24」ということになります。
以下のグラフは、そのサイクル1からサイクル24までの「太陽黒点数数の偏差」をあらわしたもので、数字が大きければ大きいほど、数多くの黒点が出ていたことを示し(太陽活動が強い)、数字が少なければ少ないほど太陽活動が弱いことを示します。
すべての太陽活動周期の黒点数の偏差
このグラフから、過去約 260年間の中で最も弱い太陽活動だった順に記しますと、以下のようになります。
・サイクル6 (1810年 - 1823年)
・サイクル5 (1798年 - 1810年)
・サイクル7 (1823年 - 1833年)
・サイクル24 (2008年 - 2020年)
サイクル24は、観測史上で 4番目に弱い太陽活動だったのですけれど、しかし、この偏差は 2016年時点のものですので、その後の太陽活動の弱さを考えますと、3番目くらいに弱いものだった可能性があります。
そして、そのような弱い太陽活動周期が終わろうとしている中で、「もうじき次のサイクル25がはじまる」のです。
そして、これがどのようなものになるかと予測されるかといいますと、いろいろな意見はあるにしても、ブログなどでも取り上げてきた主流の意見としては、
「サイクル25は、今よりさらに弱い太陽活動となる」
というものです。
あるいは、主張によっては、
「 70年間、黒点が出なかったマウンダー極小期のようになる可能性」
を言う人たちもいました。
そのような中で、今回の専門家による予測は「公式な予測」となります。
サイクル25が、サイクル24と同様に「弱い」ということは述べていますけれど、マウンダー極小期のような状態になることは否定しています。
この記事は、太陽活動の基本的なことなどにもふれてくれていますので、ご紹介したいと思います。
ここからです。
Experts Predict a Long, Deep Solar Minimum
Spaceweather 2019/04/10
次の太陽活動極小期は長く続き、程度も深いと専門家たちは予測する
もし、あなたが太陽活動極小期が好きならば、これは良いニュースだろう。なぜなら、次の太陽活動極小期は何年も続く可能性があるからだ。
この予測は先週、国際的な太陽研究の専門家集団「太陽活動周期予測パネル」(Solar Cycle Prediction Panel)により発表された。この太陽活動の予測は、毎年、NOAA (アメリカ海洋大気庁)によっ発表されている恒例の予測だ。
太陽活動周期予測パネルは、NOAA、NASA、国際宇宙環境サービス、その他の米国および国際的な科学者たちにより構成されている。
この専門家たちの予測が正しい場合、今後、2019年 7月から 2020年 9月までの間に、黒点の数は最低に達することになる。現時点でも、すでに太陽黒点の数は、非常に少なくなっているが、それよりもさらに黒点活動は小さくなる。
その後、 2023年から 2026年にかけて、次の太陽活動の新しい活動極大期に向かってゆっくりと太陽活動は回復すると見られる。
共同議長である太陽物理学者リサ・アプトン(Lisa Upton)氏は、次のように述べる。
「次の太陽活動周期のサイクル25は、サイクル24と非常によく似たものとなると私たちは予測しています。つまり、次のサイクルも、その活動極大期にもとても弱い太陽活動となり、また、極小期は長く続き、その間の太陽活動もまた極めて低いものとなると予測されます」
太陽周期にはサイクルがあり、約 11年ごとに太陽黒点が最大数を示す時期と最小数を示す時期のあいだを行き来している。この太陽活動のサイクルが発見されたのは 19世紀だったが、それ以来、研究者たちはこのサイクルを追跡してきた。
しかし、すべての太陽活動サイクルが似ているわけではない。時に、非常に強烈で強い太陽活動となる時があり、そのようなサイクルの極大期には、数多くの黒点が出現し、爆発的な太陽フレアが発生しやすくなる。
その一方で、太陽活動が弱いサイクルもある。最近まで続いたサイクル24は、そのような弱い太陽活動周期のひとつだった。サイクル24の極大期は、2012年から 2014年にかけて訪れたが、その活動は比較的弱いものだった。
研究者たちは、今でも太陽活動の衰退とその流れを予測することを研究している。予測手法は、太陽の内部磁気ダイナモの物理モデルからのものや、あるいは、株式市場のアナリストが使用するものと似た統計的手法での予測など多岐にわたる。
アプトン氏は次のように言う。
「私たちは、太陽活動に関する 61の予測を評価しました。その方法には、気候学、ダイナモ理論、機械学習、ニューラルネットワーク、統計法、表面フラックス輸送などがあります」
「その結果、次のサイクル25は、サイクル24とよく似た活動となることで専門家たちの意見は一致したのです」
「現在のサイクル24の太陽活動は、今はまだ活動の最低レベルに達していません。すでに、数カ月間、黒点のないような状態も経験していますが、しかし、太陽活動の極小期となるのは、これから 2020年の終わりまでの間になると思われます」
なお、この数年、インターネット上では、次のような話題が出ることがある。
「今度の太陽活動に期間に、17世紀に 70年のあいだ黒点がまったく出なかったマウンダー極小期のような状態になるのではないか」
というものだ。
しかし、専門家たちは、このような意見は持っていない。
これについて、アプトン氏はこのように述べる。
「現在の太陽活動において、マウンダー極小期のようなタイプの太陽活動極小期が近づいているという徴候はありません」
次の太陽活動極小期は、確かに長く続き、度合いも深くはなるだろうが、マウンダー極小期のようなことにはならないという。
しかし、専門家たちの意見として、次のサイクル25の太陽活動は「かなり弱い」という点では一致している。
もちろん、太陽活動が弱いとはいっても、サイクル24の活動極大期にも激しい太陽フレアや強い磁気嵐が発生したように、弱いとされるサイクル25も同程度の事象は発生するだろう。
また、現在、私たちの太陽は活動の極小期に向かっているが、この活動極小期については、広く誤解されていることがある。多くの人たちが、この期間は、太陽でのすべての活動が静かになると考えるかもしれないが、しかし、実際には宇宙天気は興味深く変化する。
たとえば、太陽の磁場が弱まると、太陽の大気に穴が開く。これにより、新たな太陽風の流れが地球の磁場を覆い、太陽フレアや黒点がなくても、地球ではオーロラが出現し続ける。
観測者たちによると、太陽極小期のオーロラは、太陽周期の他の期間よりもピンク色のオーロラが発生することが多いという。
太陽の磁場が弱くなることは、また宇宙線が太陽系に多く入ることを可能にする。宇宙線は、深宇宙からの高エネルギー粒子だが、この宇宙線が地上の大気中の電気量の変化から飛行機に乗っている人々へ放射線曝露に至るまで、多くの影響を与えるほど地球の大気に浸透する。
そして、太陽極小期には最終的に極端な紫外線波長で太陽は薄暗くなる。これにより、上層の大気が冷えて収縮して空力抵抗が減少するが、それによって人工衛星を崩壊させるスペースジャンクが溜まる。
そのために、太陽活動極小期には、人工衛星が破壊される可能性がある時でもある。
ここまでです。
サイクル25がどのような太陽活動になっていくかは、2023年頃までには明確にわかってくると思われますが、「とても弱い太陽活動」になることは、ほぼ間違いないと思われます。
いったい「どれほどまでに弱くなるのか」ということを少し考えてみます。
極端に弱い太陽活動が作り出すかもしれない「かつてない環境」の地球
なお、現在のサイクル24というのが、いかに弱い太陽活動だったかを示すには、以下のようなグラフでもわかりやすいかと思います。
サイクル21 (1976年-1986年)から現在のサイクル24までの「黒点数」を比較したものです。
今の太陽活動が突出して弱かったことがおわかりかと思います。
そして、次のサイクル25に関しては、以下のような「極端な予測」もわりと多いのです。
1749年からの黒点数の推移と、2040年までの予測
とても弱かったサイクル24より、サイクル25はさらに激しく弱くなるという予測です。
しかし、この予測ほどまで弱くなってしまったら、ちょっとアレですよね。
仮に今後の太陽活動が、このような「度を越した活動の弱さ」を示したりする場合は、地球の環境にも大きな影響が出るわけで、今でさえいろいろとムチャクチャな気象や自然災害が連続する今の世界がどのようになっていくのだろうとは思います。
ちなみに、太陽活動が徹底的に弱くなった場合、増えるのは「雨」です。
太陽活動が弱まると、地球に到達する宇宙線の量が増えることにより、それによって地球での雲が多くなり、雨が増えるのです。
今では、「雲は宇宙線によって作られる」という説は、ほぼ確立した科学的意見といえるかと思います。
詳しいところは、2016年8月の以下の記事などをご参照くだされば幸いです。
スベンマルク博士の異常な愛情が今ここに結実 :「雲の生成は宇宙線によるもの」という説が25年にわたる観測の末に「結論」づけられる。そして、太陽活動が長期の地球の気温のコントロールに関与していることも
宇宙線と地球の雲の量の相関関係は、以下のグラフではっきりしているのではないでしょうか。
宇宙線(赤いライン)と地球の雲の量(青いライン)の相関
これが示すことは、次のサイクル25が、もし先ほどの予測のような「極端に弱い太陽活動」となっていったとしたなら、
「地球が直面するのは、かつてない大雨や大雪の連続」
であり、それがもたらすものは、
「かつてない期間と規模の洪水」
ということになる可能性もないではないかもしれません。
以下の記事でご紹介しましたように、アメリカをはじめてとして、今、世界のさまざまな国や地域が歴史的な洪水に見舞われているか、見舞われようとしています。
アメリカで始まった新たな大洪水伝説 : 米国立気象局が「今年5月までに国土の3分の2が洪水に見舞われ、2億人が危機にさらされる可能性がある」と発表
今後の太陽活動によっては、このような洪水が、さらに激しい規模のものとなっていく可能性はかなりあると考えられます。
世界規模で発生する「 21世紀の洪水伝説」のような状況もあり得ないことではないかもしれません。
私たちが経験したことのないようなカオスな気象や災害が各所に出現してしまうことも十分にあり得る状況となってきているのかもしれません。