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地球最期のニュースと資料

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メルトダウンの予兆を見せてくれた「北極に出現したパーフェクトストーム」。記録的な爆弾低気圧で北極各地の気温が「1日で20度から30度」上昇

   

2015年12月30日の米国ワシントンポストより

north-pole-freak-storm-topWashington Post

 

大晦日ですし、今日は「今年もありがとうございました」的なことだけにしておこうかなと思っていたのですが、今朝、ワシントン・ポストの記事を見て、「北極でとんでもないことが起きていた」ことを知りまして、そのことと、そして、それと対比する上で興味深いニュースとをご紹介して、今年を締めたいと思います。

このことは、個人的にも、今後の、あるいは 2016年からの気象や天候を考える上でも印象深い出来事です。

 

18時間で中心気圧が54ヘクトパスカル下がる超爆弾低気圧

起きたことを簡単に書けば、爆弾低気圧と呼ばれる急激に発達する低気圧の基準を3倍上回る急速な低気圧が北半球で発生して、これが、北極に南からの暖かい大気を送り込み、北極の気温が急激に上昇した、というものです。

その気温の急上昇の度合いは、

「1日で約25度、気温が上がった」

のでした。下のデータは、北極圏の海洋調査をおこなう「国際北極ブイプログラム」のものです。

north-pole-temperature

 

氷点下 25.7度から、プラス 0.7度へと一気に上昇し、「 0度の氷点を越えた」ことがわかります。

ちなみに、通常の今の季節の北極の気温は、氷点下 20〜 40度くらいの間が普通とのことで、少なくとも「冬に氷点を超える」ということは極めて異例のようです。

北極ではこの日、他の地域でも、「北極点環境観測台」の観測で、氷点下 37度から 氷点下 8度へと 30度近く気温が上がったことが報告されています。

この爆弾低気圧の発達の急激ぶりもすごかったようで、18時間で 50ヘクトパスカル以上も一気に中心気圧が下がったとのことですが、そんなものがこの季節の北半球の、まして北極に近い場所で発生していること事態が驚きです。

なお、今回の北極の出来事の重要点は、

「気温が上がった」

というほうの問題ではなく、

「そんな現象を引き起こしたものすごい低気圧の冬の嵐が、そんな場所で起きた」

ということです。

要するに、「こんなことがたびたび起きるようになったら、そりゃ北極の氷も溶けるわな」ということも意味するかもしれないことを示唆していると思うのです。

2012年の夏に、グリーンランドで、やはり異常な大気の流れによって、「4日間で、ほぼすべての氷が溶けてしまった」という出来事がありました。

そのことは、

メルトダウンの序章? : 「たった4日間でほぼすべて溶けて消えた」グリーンランドの氷床
 2012/07/26

という記事に書きました。

2012年7月8から7月12日までのグリーンランドの氷の変化
Greenland-meltdownNASA

 

これは確かに大変に珍しい現象でしたが、夏でしたので、大気の流れによっては「まったく考えられない」ほどのことではなかったかもしれません。

しかし、「冬の北極」が、突然、氷点を上回るような気温になることが、もし今回1度限りではなく、繰り返して起きることがあれば、絵空事と思われていた下のような事態も、可能性としては浮上してくるわけです。

SLR-Sea-level-risesodahead.com

 

これは、「いわゆる地球温暖化」と呼ばれていることによる海面上昇などという話ではなく、「大気と海洋条件が変化したことにより発生する異常気象による海面上昇」です。これまでにないという意味で、「異常な気象」による海の氷の溶解ということが、もしかすると、あり得るかもしれないことを、今回の北極の嵐は見せてくれます。

タイトルに「パーフェクト・ストーム」とつけたのは、このためです。

地球温暖化というような概念で語られる「 100年後には海面の高さがどうこう」というような悠長な話ではなく、先ほどのグリーンランドのように「数日で変化する」たぐいの話であり、そのひとつを今回の北極の嵐が可能性として見せてくれたわけです。

なんでも起き得るのだなあと改めて思います。本当に。

今の自然状況の異常さは、もはや何ら強調することなくとも、はっきりしてきていて、来年は加速するであろうことも予測できます。

というわけで、2015年のラストに、そのニュースをワシントンポストからご紹介いたします。

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Freak storm pushes North Pole 50 degrees above normal to melting point
Washington Post 2015/12/30

 

異常な嵐が北極を通常より20度高い気温に押し上げた

アメリカで2つの竜巻と、川の氾濫による大洪水の発生させたものと同じ強力な冬のサイクロンが、今週、北極を「氷点以上」の気温にまで上昇させた。

北極で気温が氷点付近となるのは、今の時期では通常より 20度以上も高い。

12月29日の夜から 30日の朝までのアイスランドでは、18時間で 54ヘクトパスカルという、気が遠くなるような気圧の低下が記録された。

この数値は、いわゆる「爆弾低気圧」とされる低気圧の発達の3倍に相当する。

爆弾低気圧は、急速に発達する嵐だが、気象学者は、中心気圧が、24時間のうちの 1時間に 1ヘクトパスカル低下する場合、爆弾低気圧と定義する(米国の場合)。

アメリカ海洋大気庁( NOAA )の海洋予測センターは、今回の嵐の最小気圧が、12月30日の午前 1時に 928ヘクトパスカルにまで低下したと述べた。

これは、おそらくは、この地域で記録された上位5位の嵐に並ぶものだ。

NOAA の記録によれば、この領域で最も強かった嵐は 1986年12月15日に発生したもので、それは、中心気圧が 900ヘクトパスカルだった。その次は、1993年1月に記録された 916ヘクトパスカルだ。

この嵐が、北極圏に暖かい大気を急激に送り込んだ。

北極海上空に、毎時 100キロメートル以上、瞬間最大風速 160キロメートル以上の南からの風が吹き渡り、南から熱波を北極に運んだのだ。

北極の気象予測は、人工衛星から北極の表面観測データを使用することによって、推定する。

GFS の気象予測モデルによれば、12月30日の朝の北極では、広大な面積での気温が 1.7度から氷点下 1.1度の間だった。

少なくとも、その時の北極の一部では、瞬間的とはいえ、氷点の 0度より高い気温だったのだ。

北極圏の海洋調査をおこなう国際北極ブイプログラム( IABP )も、また、12月30日に北極点に近い 87.45度の緯度で 0.7度を記録し、気温が氷点(摂氏0度 / 華氏32度)より上という異常な高温を示したことを確認した。

この地域の今の時期の通常の気温は、氷点下 20〜 30度ほどだということで、普通より極端に気温が高いという異常な高温を記録したことになる。この気温は、北極での真夏の気温と近い。

これは、他の言い方をすれば、12月30日の北極は、その時のシカゴと同じくらいの気温だったということだ。あるいは、その日のアメリカ中西部よりも、北極は暖かかったということもいえる。

北極がそのような異常な状態となった一方、北大西洋の周りのアメリカの海岸線の居住地域では、強風と荒波に見舞われている。

イギリスでは、途方もない大雨が続いたことにより河川の氾濫が相次ぎ、各地で大洪水が起こっている。英国気象庁は、今年 12月の降雨量が歴史的なものとなっていることをブログで述べた。


 

ここまでです。

ちなみに、上の記事に出てくるアメリカの洪水も、イギリスの洪水も、地域によって、ますます深刻な事態となっていて、「黙示録的」なレベルにまで拡大している場所もありますが、それはまた年始にでもご紹介したいと思います。

ちなみに、上のワシントン・ポストのニュースの前日頃、メキシコでは下のニュースが流れていました。

メキシコの12月29日の報道より

mexico-snow-2015Mexico News Daily

 

メキシコのチワワ州などで、大雪になると共に、各地で氷点下を記録したことが報じられていたのです。平地でも氷点下 10度近くにまで下がった場所があったようです。

チワワ州って下の位置ですよ。アメリカ南部にも近いこんな場所が、「北極より寒い」なんてのは・・・。

Chihuahua-mapGoogle Map

 

2015年の年末というのは、

「メキシコが北極よりはるかに寒かった、あるいは、北極がメキシコより暖かかった」

ことを記録したわけで、やはり何とも感慨深い1年の終わりであり、刺激的になるかもしれない新しい年の始まりだと実感します。

 

どうも年の納めも、やや物騒な話題となってしまいましたが、皆様方におかれましては、ご健康に楽しいお正月、そして、来年以降を過ごされることをお祈りしています。