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地球最期のニュースと資料

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確認された「永久の生命」:ヒドラは「老化では死なない」ことを米国ポモナ大学とドイツ・マックスプランク研究所が10年に渡る研究により明らかに

   

10年にわたる研究でほぼ確定された「死なない生き物」

米国ポモナ大学のニュースリリースより

hydra-life-foreverfPomona College

 

幹細胞で自分の体を更新し続けることにより「永久の生命を持つ」ことがわかったヒドラ

Hydra_15・Wikipedia

 

過去記事の、

…「なぜ老いるのか」という理由がわからなくなった科学界
 2013/12/12

というもので、ドイツのマックス・プランク人口研究所などがまとめた様々な種の生物の老化、死亡率、出生率などについての「なぜ私たちは年をとるのか? 科学では何の説明もできない」という記事をご紹介したことがありました。

この研究でわかったことのひとつが、

・これまでの「老化の科学的定義」は正しくないかもしれない

ということでした。

そして、さらに、

・人間は、他の生物と比べて「特異な老化と死亡率の関係」を持っている

ということもわかってきています。

たとえば、私たち人間は「年をとると死亡率が上がるのが普通」というふうに考えますが、生物種全体を見れば、この「老化とともに体が衰えたり、死亡率が上がる生物」はごく一部なのです(というか、人間のような老化と死亡率の関係を持った生物は人間のみ)。

地球の生命種のグループには、

・年を取るにつれて死亡率が上昇する

・年を取るにつれて死亡率が「下がる」

・死亡率が一生を通じて一定

などがあり、たとえば、ヤドカリは一生を通じて死亡率が一定ですし、砂漠に住むある種のリクガメは、年をとればとるほど死亡率が下がる(老化と死亡率が逆)という生物も多くいます。

年をとればとるほど「死ににくくなる」サバクゴファーガメ
Gopherus-agassiziiflickr

そして、先ほども書きましたが、

「人間のように、加齢と共に急速に容貌や体力が変化して、死亡率が上がるという生物種は他にはいない」のです。

たとえば、人間は 20歳と 80歳では明らかに死亡率が違います。そして、「平均寿命」という言葉があるように、80歳、90歳となるにつれて急速に死亡率が上がりますが、このような老化と死亡率の曲線を持つ生物は、現在までの生物学では「人間だけ」のようなのです。「年をとればとるほど死亡しやすくなる」というのは、生物界で人間にしか当てはまりません。

先ほどの記事には、マックス・プランク人口研究所などがまとめた、46種の生物種のカタログの中に「他のそのような生物はいない」ということで下のように書かれています。

人間の場合は、加齢と共に急速に死亡率が上がる。例えば、100歳の日本人女性では、死亡率はそれまでの人生の平均の死亡率の 20倍以上に上がる。

私たちはこれが普通のことだと考えるかもしれないが、これは実は人間という生物が非常に奇妙な生き物であることを示す。

なぜなら、研究者たちのカタログには、他の生物種では人間のように、ある年齢で急激に上昇する死亡率の曲線を持つものはないのだ。

他の哺乳動物の中では、ある年齢で死亡率が急激にあがる場合でも、せいぜい生涯全体の平均の5倍に達する程度だ。

そして、科学や生物界で続く大きな疑問のひとつが「なぜ老化するか」ということです。

これに関して、現在まで続く「進化論に根ざした」老化に対しての一般的な科学的推論に、

「生物が、繁殖できない年齢に近づいた時に、生物の肉体の衰えが始まる」

というものがありますが、自分たち人間を見るだけで、この推論が間違っていることがわかります。

先ほどの記事から抜粋します。

妊娠が可能である時期を過ぎた女性も男性も、その後に長く、しかも元気に生きているという事実がある。

今日では、多くのお年寄りの男女が長く元気に暮らしているが、彼ら彼女らの生殖能力はずっと以前に消えている。

このこと自体がすでに一般的な進化論と矛盾していることなのだ。

とあります。

いわゆる進化論というものは、「種の存続のための進化」ということになっている以上、進化論においては、生き物には生存競争と種の存続以外のことは「不必要」だという考えに立脚しているもので、極端にいえば、「人間も含めて、繁殖して、用が終わったら死ぬもの」という「生物の営みを機械のようなものとして見る視点」となっています。

しかし、研究が進めば進むほど、もはやそういう生存競争とか、種の存続とかの考えでは、「生物や生命の実相」というものをとらえることができなくなってきています。

そして、人間だけがなぜ、このような特異な老化の仕組みを持っているのかもわからないままです。

もっといえば、「なぜ生き物が年をとるのか、ますますわからなくなってきた」とも言えます。

 

しかしまあ、「なぜ生き物が年をとるのか」ということに関しては、唐突にオカルトめいた引き合いをだして恐縮ですが、「輪廻転生」という概念が、地球のすべての生物にあてはまるのなら、「永遠の命という存在があっては困る」ような気もします。

まあしかし、ここでは科学記事として、今回はこちらの話には踏み込みません。

 

さて、先ほどの記事の中に、以下のような下りがあります。

> ショウジョウバエの人生は数日間で終わり、人間は数十年、ヒドラは、数世紀に渡って生きる。

この「ヒドラ」というものが、数世紀の命どころか、永遠の命を持っていることがほぼ確定的になったことが、アメリカの科学アカデミー紀要に発表されたのです。

この研究は、10年を越える期間と、数億円に上るであろう資金を使っての執念の研究といえるもので、それにより「地球には死なない生物がいた」ことを、ついに、ほぼ証明に導いたようです。

ちなみに、バクテリアなどでは、相当長く生きると思われる生命がずいぶんいることがわかっていますが、ヒドラのような多細胞生物では「完全に永遠の命」というものは、他にはないのではないでしょうか。

[長い生命を持つバクテリアについての参考記事]
1億年の冬眠サイクルをもつとされるバクテリアがスヴァールバル島沖合の海底で発見される
シベリアで発見された「不老不死」のバクテリア

 

多細胞生物では、「ベニクラゲ」というものも、基本的に死なない(若返る)ことが確認されている生物です。

5年以上前ですが、不老不死の生物 ベニクラゲという記事で、紀伊民報の記事を資料として掲載したことがあります。

ベニクラゲ
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ベニクラゲの場合は、上の記事から抜粋しますと、

クラゲは通常、有性生殖した成体は死を迎えて溶け去るが、ベニクラゲは溶けずに肉団子状になり、再び走根を延ばしポリプ(刺胞動物の基本形)へと若返る。

このポリプがクラゲ芽を形成し、やがて若いクラゲとして分離して泳ぎ出す。この一連のサイクルを無限に繰り返すことから「不老不死」と言われる。

ベニクラゲの若返り現象は、1992年にイタリアの研究者が地中海産で初確認した。その後、久保田准教授らが日本産で世界第2例目として成功して以来、その回数を更新し続けている。

というもので、ベニクラゲの場合は、不老不死だとしても、幼生に戻るという「形が変わる(若返る)」という段階を踏みます。

 

beniseikatusi海響館

 

しかし、ヒドラの場合は、体の多くが「幹細胞で作られている」ため、自分の細胞を新しく更新していくというメカニズムで、「姿も同じまま永遠に生きることが可能」という、より完全な不老不死の体を持っているようです。

「死ぬことができない」というのは、人生をリセットできないという意味では、やや不幸な運命を持った生き物にも見えますが、少なくとも地球にはそういう生き物がいるということは興味深くはあります。

では、ポモナ大学のニュースリリースをご紹介します。

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Professor Martínez Confirms This Tiny Animal Might Just Live Forever
ポモナ大学 ニュースリリース 2015/12/07

ポモナ大学のマルティネス教授はこの小さな生物が「永遠に生きる」可能性があることを確認した

いくつかの生物に不死の可能性があることについての強力な証拠となり得るかもしれないが、12月7日に発表された全米科学アカデミー紀要( PNAS )に発表された共著論文によれば、小型ヒドラには「年齢がない」ことが確認された。

理想的な状態に保たれている場合は、ヒドラは永遠に生きる可能性がある。

ポモナ大学の生物学教授ダニエル・マルティネス( Professor Daniel Martínez )氏は、これらの数センチメールの淡水ポリープについて、その長寿の秘密を探るために、これまで 10年以上に渡る研究を続けてきた。

全米科学アカデミー紀要に発表された論文『ヒドラの年齢を越えた一定の死亡率と生殖能力』( Constant mortality and fertility over age in Hydra )では、ヒドラは理想的な条件に住んでいる場合、死亡率の上昇や加齢に応じた生殖能力の低下などの老化の兆候を示すことがないことが述べられている。

これまで、老化は、すべての多細胞生物において避けられないものと考えられていた。

最新の研究では、密接に関連する2つの種から 2,256匹のヒドラを対象とし、ポモナ大学と、ドイツのマックス・プランク人口研究所( MPIDR )の2つの研究室で実験が行われた。

この研究は、マルティネス教授が以前続けた4年間の研究の倍の8年間の時間をかけて続けられた。

マルティネス教授は、この研究により「個々のヒドラは、適切な状況の下では永遠に生きることができることを確信しました」と述べる。

「もっとも、野生環境で生きているヒドラは、常に外敵からの捕食、海の汚染、病気などの危険にさらされているので、永遠に生きるチャンスは低いです」

「私はもとはといえば、今回の結果の反対の証拠を求めて、この実験をスタートしました。つまり、ヒドラもまた老化から逃れることはできないということを証明したかったのです。ところが、私の研究のデータは、その私の考えが間違って居いることを示しました。ヒドラは老化しなかったのです」

ヒドラの研究と老化の進化に関する世界有数の学者のひとりとして、マルティネス教授は、ヒドラ属が老化しないことに関しての研究のために、アメリカ国立衛生研究所から 120万ドル(約 1億4000万円)の研究助成金を受けた。

2013年には、やはりヒドラの研究で、カリフォルニア大学リバーサイド校の不老不死プロジェクト( The Immortality Project )から助成金を受けている。

マルティネス教授が、生物の不死に興味を持ったのは 1990年代にまで遡る。ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の大学院にいた時、マルティネス教授は、ヒドラが不死である可能性を持っていることを聞いた。

しかし、誰もそれが本当なのかどうかの研究をおこなっていなかった。

「私が大学院でヒドラの実験を始めたとき、当時は、すべての動物は老化から逃れることができないというのが定説で、また、すべての動物がそうでなければならないとされていました」と、マルティネス教授は述べる。

「私が研究を始めた時、私は、ヒドラも老化するということを証明したかった。しかし、研究を始めてから4年後、ついにヒドラの死亡を検出しなかったのです。私は、ヒドラは加齢しないと確信し、1998年に論文を書きました」

マルティネス教授のこの論文は、国際的な注目を集めた。

「私のこの発見は、すべての動物が老いるという考えに再考を促しました」

「研究前は、どんな動物も老化から逃れることはできないだろうということを予測していたのですが、研究結果は、それらの定説の妥当性に疑問を呈することになったのです。」

マルティネス教授の研究は、ドイツのマックス・プランク人口研究所からの注目を得た。そして、2004年に人口研究所は、ポモナ大学との研究の連携と資金調達を提案し、教授のヒドラの寿命の研究が継続されることになった。

1998年の論文には、ヒドラの生殖能力などの決定について、至らない点があったとマルティネス教授は述べる。

それから 10年以上の研究の後に、ふたつの研究所によって書かれた共著論文で、マルティネスの初期の研究結果である「ヒドラは不死」ということを確認したのである。

それにしても、なぜ、この小さな生きものたちは、永遠に生きられるのだろう。人間は、いまだに老化から逃れることはできないというのに。

マルティネス教授は以下のように述べる。

「ヒドラが幹細胞から作られているのです。ヒドラの体のほとんどは、非常に少数の完全に分化した細胞と幹細胞で構成されています」

「幹細胞は、継続的に分裂する能力を有します。そのためヒドラの体は絶えず新しく更新されているのです。触手と足の分化した細胞は、常に身体から切り離され、体の各所は新しい細胞へと置き換えられるのです」

そして、マルティネス教授はこう加えた。

「私が望むのは、この研究が、他の科学者たちが不老不死の研究を支援するものとなってくれることです。ヒドラだけではなく、他の生物を含む老化の謎の解明への一歩となればいいと思っています」