50℃に迫る熱波に見舞われるオーストラリア、寒波での死者が100名を超えている台湾、真夏でも届かない高温を計測したアイスランド、大雪が恒常化するアラビア半島、そして確実にミニ氷河期に入りつつあるヨーロッパ
2017年2月8日と「その翌日」の米国ニューヨークの同じ場所での撮影
2月5日から11日のオーストラリアの最高気温
この2月に入って、世界の気温が「妙」な感じになっています。
全体が寒いとか暖かいとか、そういう単純なことではなく、何だかこう、グチャグチャな感じになっているのです。
いわゆる平年的なものとと比べて、極めてアンバランスな感じが強くなっていまして、まあ、この2月だけのことなのかもしれないですし、先は何ともわからないですが、気候全般はともかく、「気温」という意味では、ここ数年、気象などをずっと見てきた中でも、ここまで世界的にアンバランスの時期は珍しいと思います。
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オーストラリア:収まらない熱波の中、過去最高気温を更新し続ける
冒頭の気温図はオーストラリア全土の 2月5日から 11日までの最高気温の分布です。南半球のオーストラリアは今は夏ですので、暑いこと自体は当たり前なのですが「あまりにも暑い」のです。
この気温分布を見ますと、オーストラリアの半分くらいの地域が 40℃以上となっていることがわかります。シドニーでは、121年前の高温記録を更新して、過去最高の気温( 42.9℃)が記録されたことが報じられています。
北東部のクイーンズランド州は、建国以来、一度も 40℃を超えたことがなかったものが、今年は連日で 40℃に達しているのだそう。
この熱波のため、今、オーストラリアは同国としては史上最悪級の森林火災に見舞われていて、全国で 80以上の森林火災が起きており、2,000人以上が消火活動に当たっているという惨状となっています。報道記事の見出しに「カタストロフ」という文字が入るような壊滅的な状況となっているようです。
2月12日の英紙インディペンデントの報道より
そして、オーストラリア気候評議会によれば、現在のオーストラリアは、
「過去 100 年に起きた他のどんな自然災害より、夏の熱波による死者が多い」
ということになっていて、この国は今、「夏の猛暑が最大の国家の試練」ということが公的に語られるようになっています。
では、世界は全体としても、やはり気温は高くなっているのかといいますと、その逆も大変な感じとなっています。
通常は暖かい、あるいは「暑い」ような国々が厳しいさに見舞われて、しかも、それが結構繰り返されているのです。
サウジアラビアなど中東諸国:各地で大雪と、氷点下の気温に見舞われる
2月9日のサウジアラビアの砂漠の光景
・Alerta Roja
サウジアラビアは、昨年 12月に 大雪が降った後も、雪が断続的に続いているようで、今回の雪で、この冬の雪は3度目となりました。
[参考記事]サハラ砂漠で37年ぶりの「砂漠の雪」(積雪は観測史上初の可能性)。サウジアラビアでも雪が降り続く (2016/12/22)
同じ中東の、これまでは雪とはまったく無縁だったアラブ首長国連邦(UAE)やクウェートでも、この冬は雪がよく降るのですが、気温のほうも、かなりの低温に見舞われ続けているようです。
2月3日に氷点下にまで気温が下がったアラブ首長国連邦の状況
・earthreview.net
寒さでの被害といえば、台湾が寒波で大変な様相となっています。
台湾 : 異例の低い気温により多数の人々が死亡している
この台湾の寒波については、地球の記録の、
・台湾に記録的な寒波が到来。数日間で150人が寒さのために死亡との情報も
2017/02/14
という記事でご紹介させていだきまして、その見出しに「死者 150人」とありますが、その後の台湾の報道を見ますと、「 103人が死亡」というものが最も正確なものに近いようです。
台湾の報道の見出しを見ますと、なかなかショッキングな数字が並びます。
2月12日の台湾の報道
・kaixian.tv
1月26日の報道より
・news.ifeng.com
この寒さによる人々の死亡に関しては、凍死ではなく、「突然死」が多いようで、やはり慣れない気温ということなのですかね。気温そのものは、平地では 10℃前後のようで、日本の冬だと、わりと普通の気温ではあるのですが。
このうちの「 1350万匹の魚が凍死」というニュースは 1月26日のものですので、台湾では、比較的長く気温の低い状態が続いているのですかね。
そして、いろいろと注目を集めることの多いアメリカも今、異様に「カオス」な気温状況になっていまして、「寒いところと暖かいところが、共に極端な気温や気象状況になっている」ようなのです。
アメリカ : 気候のカオスの王道を走り続ける
最近のアメリカは、中部から東部などにかけて大変な大雪に見舞われているような天候となっていますが、一部では、「冬の熱波」に見舞われているのです。
基本的には、今のアメリカでは下のような大雪に関しての報道が多く見られます。
2月12日のUSAトゥディの報道より
このアメリカの広範囲での大雪と寒波は、わりと長く続いていまして、そんなこともあり、「アメリカは、今、寒いのだな」と思い込んでいたのですが、北米全体の気温を見ますと、えらいことになっていることに気づきました。気温が 30℃を超えているところがたくさんあるのです。
下は 2月11日の北米から中米にかけての最高気温です。
2017年2月11日の北米大陸の最高気温
アメリカは確かに広いですが、同じ国に「最高気温 37℃の場所と氷点下 16℃の場所がある」というのは何だかすごいです。
先ほどの USA トゥディの見出しでは「テキサス州にも雪が降るかもしれない」とありましたが、そのテキサス州は、2月11日までは、軒並み 30℃を超えていたのです。それから数日後に雪が降るという……。
冒頭に、 2月8日と9日のニューヨークの同じ場所の風景の写真を載せましたが、テキサス州の前に、すでに、ニューヨークとその周辺では、タンクトップで歩いていた場所に翌日、雪が降ったというようなことがあったのです。
さらに、北半球の寒冷地帯でも異様な気温となっています。
たとえば、アイスランドでは、時期として過去最高の気温が記録されていますが、それがわりと度を越えたものとなっています。
アイスランド : 真夏の気温を上回る気温が2月に記録される
アイスランドの西部にあるエイヤーバッカール(Eyjabakkar)という場所で、2月12日に「 19 ℃」の気温が記録されました。
19℃くらいどうということはないと思われるかもしれないですが、アイスランドは、その平均気温が下のようになっている国です。
アイスランドの平均気温
アイスランドは、気温が高くなる 7月や 8月でも、平均気温は 10℃程度で、2月の平均気温は「 0.1 ℃」とこのグラフにはあります。
そういう地で「真冬の 19.1 ℃」というのは、かなり度を越えた気温だと思われます。日本で例えてみれば、東京の2月の最高気温が 58℃になったという感じですかね(何かちがうと思う)。まあ、例えはよくないですが、そのように、かなり例外的な気温だったようです。
なお、ヨーロッパ全域としては、非常に気温の低い状態が続いているようでして、「ほぼ全域氷点下」の日なども多いです。中でも、ウクライナは北極レベルの気温となっています。
2月10日のヨーロッパ各地の気温
今年のヨーロッパの冬は、セルビアやオーストリアでドナウ川が凍結したり、60年ぶりに黒海が凍結していまして、ヨーロッパは、他の地域よりも「早くミニ氷河期的な状態に突入している」感じがあります。
この理由のひとつとして、2015年の記事、
・海の巨大な変化とミニ氷河期の関係(2):「温暖化が招く寒冷期」からの気温の回復に40年から100年かかるという気候モデル…
2016/02/13
で、英国サウサンプトン大学の研究者たちの研究による、「大西洋の海流の循環が突然崩壊することにより、ヨーロッパ全域が氷河期のような状態になる可能性」についての論文をご紹介しました。
海流は、特に大西洋に流れる海流は、アメリカやアフリカから暖かい海流を運んできてくれていますが、「これが崩壊した」可能性があるのです。
地球の海洋の大きな循環システム
・Was an imminent collapse of the AMOC a mainstream climate prediction?
詳しいところは、その過去記事を読まれていただければ幸いですが、サウサンプトン大学の研究者たちは、「これからの欧州の気候の可能性」として、
・寒冷期が約 20年続く
・気温の温暖化への回復には約 40年かかる
・イギリスなど一部地域では、寒冷気温からの回復に「1世紀」かかる
というような結論を述べていました。
ヨーロッパの一部では、今後数十年以上の非常に長い寒冷化に突入する「可能性」はあるようです。今年のヨーロッパは、その徴候をかなり見せていたと思います。
そして、今はもはや「地球温暖化」とか「地球寒冷化」とか、そういうひとつの方向性は見出しにくいです。
オーストラリアも今のままの状態が加速すると、「 50 ℃」などという気温になる日がないとも言えません。何しろ、すでに 48℃は超えているのですから。
あるいは、「アイスランドに夏日が来る」とか。
そして、寒いところはますます寒くなる。
いやまあ、もうこれはカオスそのものだと、つくづく感じます。
そんなわけで、今回は気温について最近の状況をご紹介させていだきました。
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