2017年10月22日 台風21号通過前日に赤城山にかかった虹
何だか穏やかに過ぎていったランに続く台風が明日登場の予定
台風 21号が通過した「直前」と「直後」に、日本各地でとても美しい虹が観測されていました。台風通気後のものは、まだ強風が吹いていたり波が高かったりする中での虹ですので印象的な光景でもありました。
冒頭の写真は、ツィッターに投稿された群馬県の赤城山にかかった虹ですが、これは「虹」というより何か他の現象の呼び名がふさわしい気もしますが、山の部分を拡大しますと、下のようになっていまして、美しい限りです。
下は、台風かせ通過した後の琵琶湖上空にかかった虹の様子です。
2017年10月23日 琵琶湖上空の虹
琵琶湖でこんなに波が立つというのも珍しいそうですが、投稿された方は「琵琶湖が本気出した。まるで海みたい。。。」と書かれていらっしゃいました。
さて、台風21号(英語名:ラン)は、あっという間に上陸して、あっという間に過ぎていきまして、上陸前の勢力から考えると……確かに大したこともなく、という書き方はいろいろ問題があるのでしょうけれど、それでも、先日の記事「台風21号はカテゴリー3レベルに…」などで想定したような状態に比べると、非常に被害が少なく済んだというのは正直なところではないでしょうか。
何しろ、台風21号は上陸直前まで、アメリカの基準で「カテゴリー3」を超える勢力があったのですから、前記事で書きましたように、アメリカの災害リスク専門家が「被害額4兆円」というようなことを想定しても不思議ではなかったと思います。
しかし、いくつかの悲劇的な災害や出来事はありましたけれど、全体として台風21号は、今年や昨年の夏の豪雨被害などとは比べることもできないものだと言っていいと思われます。
そして、もうすぐ 11月になります。
さすがに、そろそろ台風シーズンも終わりに……と思っていた今日、アジア地域の天候監視を担当しているアメリカ軍の「合同台風警報センター(JTWC)」が、
「熱帯低気圧が 10月24日に台風に発達し、28日頃、日本列島に接近する見通し」
と、10月23日午後に発表しました。
合同台風警報センターは、アメリカ海軍と空軍が合同で太平洋からインド洋海域で発生する台風や熱帯低気圧を監視しています。
その合同台風警報センターが発表した最初の予想進路図は下のものです。
台風21号の次の低気圧(発達すれば台風22号)の予想進路
・NOAA
ご覧になればおわかりかと思いますが、これは「今回の台風21号と大体同じコース」です。
もちろん、これだけ先の予想となりますと予想円も大きく、正確なコースはわかりようがないですが、この予想円からは、どう転んでも再び関西と関東は影響を受けそうです。予想より東に進んだ場合は日本の影響は軽微でしょうけれど、西にずれた場合は、日本列島全体が影響を受ける可能性があるかもしれません。
この低気圧は、現時点(10月23日午後3時)では、まだ台風に発達していませんので、気象庁から発表はないですが、合同台風警報センターの予測通りに 24日頃に台風に発達してからは気象庁から情報が得られるはずです。台風に発達しなければ気象庁からの発表はないですが、日本列島周辺の海水温度はとても高いままですので、台風に発達すると思われます。
ところで、日本周辺海域の海水温度が高いことは、先日の記事、
・スーパー台風として日本列島に突入する可能性が極めて高まる台風21号 / LAN 。それは北緯33度線に向かって一直線に勢力を増大させてくる
2017/10/19
でも気象庁の図を載せましたけれど、この「高い海水温度」は、「平年と比べるとどうなのか」ということを載せていませんでした。
日本周辺の世界のどこもかしこも異常に高い海水温度。そして低い気温
日本の周辺海域の海水温度の平年との差異も気象庁のデータでわかります。
下の図がそうですが、ちょっと見づらいものかと思いますけれど、「1」とか「-1」などの数字は平年との海水温度の差です。たとえば、「2」とあれば、平年より 2℃高いということです。ちなみに、海水温度の平年差が 2℃というのはなかなかの差異です。
・気象庁
九州の南方沖が平年より 2℃も高いという状態となっていまして、異常とまでは言わないですけれど、かなりの高さではあるようです。
なお、「世界全体はどうなのか」といいますと、下のように、平年より海水温度が高いところが多いです。しかも、「大変に高い海域」が多いです。
・Ocean temperatures and sea level
赤が濃くなればなるほど「海水温度が平年より高い」のですけれど、世界中とても高いですね。太平洋も大西洋もとても高いです。
日本の九州の沖のほうも非常に海水温度が高く、これだと、夏と同じように台風が発生して、勢力が維持されているのも不思議ではないのかもしれません。
しかし、「気温」は違います。
この1年以上、「世界の気温は急落している」ということがあります。
つまり、今起きていることは、
・海水温度は平年より異様に高い海域が多い
・気温は平年より低い場所が目立つ始めている
という「高い海水温度と低い気温の組合せ」という気候が荒れるための条件が、世界のいろいろな場所で整っているといとうことで、世界中で気候が荒れる原因のひとつはこれなのかもしれません。
2016年夏からの急激な世界の気温の低下は、過去記事、
・2016年夏からの短期間で平均気温が1℃も急落した歴史的な気温崩壊局面の地球
2016/11/30
に記したことがあります。
ちなみに、海水温度がなぜ上がり続けているのか、その理由はわからないですが、「気温」あるいは「地表などからの影響」ではなさそうだというデータがいくつかあります。
たとえば、その中での、「深海の温度の推移のデータ」を見ますと、こちらも年々上がっている。
下のグラフは、NOAA (アメリカ海洋大気庁)による 1979年から 2017年までの「海面から海底 700メートルまでの海水温度の推移」です。
・World Oceans vertical average temperature 0-700 m depth since 1979
海底 700メートルくらいまでを含めると、さすがに地表や気温の影響は受けないと思われますが、それが上がっているということは、「海底の下、つまり海の地下側から来る熱が増えている」と考えたほうが合理的ではないでしょうか。
というわけで、まあ、これだけが原因ではないでしょうが、荒い天候の劇的な増加や、以前はなかったような天候のシステムが作られる原因のひとつが、このような「海と大気の気温の異常」ということもあるのかもしれません。
ところで、タイトルに「最後の台風」と書いたのですが、その意味は台風の英語名にあります。
台風に英語名があることはご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、台風には 14カ国が加盟している「台風委員会」という組織により英語の名称がつけられています。これはあらかじめ「 140 の英語名」が台風にはつけられているのです。
「 1番」は 「ダムレイ」という名前の台風で、ここから始まり、140番目の「サオラー」まで発生順に命名されます。
気象庁によれば、台風の年間発生数の平年値は25.6個で、大体 5年くらいで台風の名前が一巡しますが、では、140番目までいったらどうなるかというと、「 1に戻る」のです。
英語名ランの台風 21号は「 139番目」でした。
ということは、次の台風が「 140番目」ということになるのです。
台風の英語名の最初と最後の5つずつ
・気象庁
もし明日、台風が発生すれば、その台風は、日本では「台風22号」、そして国際的な名称は「サオラー」という英語名が自動的につけられ、それは「 140番目の台風」ということになります。
なお、「サオラー」というのは、ベトナムに生息している、ほとんど幻といえるような稀少な動物で、下のようなものです。これは 1994年に捕獲されたサオラーのイラストで、写真より姿がわかりやすいと思いますので、こちらを載せました。
サオラー
・Pseudoryx nghetinhensis
ベトナムで野生のサオラーが確認されたのは、1996年と 1998年くらいという幻の中の幻的な動物です。
そんなわけで、進路も、あるいは誕生するのかどうかも今は不明確な台風22号(サオラー)が、仮に発生したのなら、今回の台風21号と連続して同じようなコースで日本に近づく可能性が出ています。
これがサオラーのように幻の台風となれば、それも趣深いですが、しかし、台風22号が幻となったとしても、日本周辺の海水温度を見る限り、台風シーズンがこのまま終わるのかどうかは微妙な感じとなっています。