チリの湖で5月29日に起きたこと
上の写真は、南米チリにある、あるいは「かつてあった」リエスコという湖の「水のあった時」と「水が消えた後」の写真です。
それほど小さくは思えないこの湖の水が「一晩ですべて消えた」のでした。
チリ政府の管轄機関は、一体何が起きたのかを調査するために動き出しているようですが、発生したばかりということもある上に、何しろチリでは前代未聞の出来事であるだけに、原因などの憶測がネット上で論争されています。
消えた湖のある場所は、地球上で最大の地震が起きた場所
この湖は、下のような写真を見る限り、少なくとも地元の人たちには親しみをもたれていた湖であり、ビーチであったようです。
この湖の現在の様子を撮影した動画が YouTube に投稿されていましたが、下のような状況で、動画を見る限りは水はまったく見えません。
どうやら「すべて消えた」ということになりそうです。
5月29日のリエスコ湖の様子
https://www.youtube.com/watch?v=iclS0teo0Uo
しかも、何だか「すでに乾燥している」というような感じも見てとれまして、水が消えたと共に「砂漠と化した」という趣もあります。
ちなみに、このリエスコ湖の広さは、報道によりますと約 1400ヘクタールということで・・・えーと、ちょっとその広さがわかりませんが、Google などで調べてみますと、
> 1400ヘクタールは、東京ドーム約299.4332個分です
ということだそうで、東京ドーム約 300個分ということで、やはりそんなに小さなものではないと思われます。
ちなみに、このリエスコ湖のある場所の名前もなかなかすごくて、チリの地方行政区分は、アメリカなどと同じ「州」なのですが、このリエスコ湖のある州の名前。
それは・・・・・アイセン・デル・ヘネラル・カルロス・イバニェス・デル・カンポ州・・・。
これは、Wikipedia を引いてみますと、
アイセン・デル・ヘネラル・カルロス・イバニェス・デル・カンポ州は、南アメリカ大陸チリ共和国の南部にある州である。
と、説明よりも地名そのもののほうが長いという珍しい州名となっています。
リエスコ湖は、このアイセン・デル・ヘネラル・カルロス・イバニェス・デル・カンポ州(もうフルで書かんでええわ)の中のプエルト・アイセンという町の近くにあります。
チリのアイセン・デル・ヘネ(略)にあるリエスコ湖の場所
・Google Map
地名の長さに感動して、湖の水が消えたことを忘れてしまっていましたが(だめじゃん)、いずれにしましても、このリエスコ湖の水が消えたということについて、ネットなどで言われている中で、最も気になる考えが、
・この場所は「地球で最大の地震を発生させた断層の真上」であること
・この場所が現在活動の活発な環太平洋火山帯の上にあること
なのでした。
その断層は「リキーネ・オフキ断層帯(Liquine-Ofqui Fault)」と呼ばれるもので、下の位置にあります。
リキーネ・オフキ断層帯
今回、水が消滅したリエスコ湖が断層上にあることがおわかりかと思います。
このリキーネ・オフキ断層は、「ナスカプレート沈み込み帯」というところに位置しているのですが、この場所は、世界での観測史上最大のマグニチュードを記録した 1960年のチリ地震(マグニチュード 9.5)が発生した場所と重なります。
この1960年のチリ地震は、長さ約 1,000キロメートル、幅 200キロメートルの領域を震源域として発生した、近現代史上だけでなく、推測される過去の地球の地震すべての中でも最大級だと考えられています。つまり、このマグニチュード 9.5というのは、通常の地球では、これ以上の規模の地震は起こりえないという規模といえます(地球が通常でなければ、これ以上の地震も起こり得るのかもしれないですが)。
チリの過去の巨大地震の発生場所
・東京大学地震研究所
そういう場所にある湖の水が「突然消える」ということが起きたために、地質活動に何かが起きているのではないかと考える人々がいるのです。
地震と「水」の関係
九州での4月の地震の後も、水に関しての様々なことが起きたことが報じられていまして、地震、あるいは地下の異変と「水」には何らかの関係があるということが言える気はします。
下は、5月23日の産経ニュースの報道からの抜粋です。
枯れた温泉、出ない湧水 「水の国」熊本の地下で何が…
産経ニュース 2016/05/23
熊本地震の被災地では温泉の源泉が枯れたり、湧き水の名所で水が出なくなったりする異変が生じている。
熊本県は阿蘇山麓から流れる地下水の豊富な地域で、特に観光資源への打撃は大きい。
地震の影響で地下水の流れが変わったことが原因とみられ、専門家は「これほど大規模な変化は珍しい」としている。
この熊本の変化は、専門家をして、
> 東日本大震災などでも地下水の変化が見られたというが、辻村教授は「これだけ広範囲に大きな影響があるのは聞いたことがない」と驚く。
というほどのものだそうですが、チリの場合は、「湖の水がすべて消えた」ということになるわけで、規模がさらに大きいです。
そして、この出来事は「南米チリの環太平洋火山帯で起きた」ということにも、やや気になる部分があるのでした。
最近の環太平洋火山帯で「水が消えた」他の事例
過去記事、
・何となく呪われ感の強くなっている南米に浮かんだ光の原色を思わせる「ピンクの太陽」の場所を眺めていて気づいた「もうひとつの33度」の世界
2016/03/11
などで書きましたように、チリだけではないですが、最近の南米は全域が何となく不穏です。
3月から続くチリの海岸での大量死(こちらに一覧のリンクがあります)は、もはや異常とも言える規模と回数になっていて、さらに、チリを含めた環太平洋火山帯では、火山活動も地震も非常に活発な状況となっています。
実は、環太平洋火山帯では、少し前にも「川の水が消えた」という現象が報告されています。
発生したのはメキシコで、しかも3月、4月と続けて起きているのです。
これに関しては、
・メキシコ:シンクホールの発生と共に「一晩で」地底へと消えた川
地球ブログ 2016/03/06
・メキシコで「またも川がシンクホールに飲み込まれて突然消滅」。しかも今度は2つの川が同時で、これで今年に入り消えた川は3つめに
地球ブログ 2016/04/26
という記事に書いたことがあります。
2016年2月29日に消滅したメキシコのアトヤック川
共にシンクホールの発生と共に川の水が消滅したということになっていますが、それなりの水量を誇る川の水が「全部消える」というのは、どれだけ大規模な地質的現象なのかということで、特別に異常なことかどうかはわからないですが、少なくとも「普通によくあるようなことではない」とは思います。
少し古いですが、やはり環太平洋火山帯に位置する中米のコスタリカで、2011年に発生した地震の後に「川が消えた」ということがありました。
2011年7月13日の地震の直後に水が消滅したコスタリカの川
当時の報道は以下のようなものです。
コスタリカのハンツベリーで一瞬にして消えた川の水
7月13日午後2時11分頃、コスタリカのウパラを震源とするマグニチュード 5.3の地震があった。商店などで棚から物が落ちる程度の被害があっただけで、特に人的被害は報告されていない。
ただし、地震の後、ひとつだけ奇妙な現象が起きた。
町の中央近くを通っていた川が「消えた」のだ。
大地の中に水が消えていったとするのが妥当だとしても、このような現象がどうして発生したのかはわかっていない。
また、当地の市民はこの川から生活水を調達しているので、給水に関する懸念も出ている。
それぞれの川の水がその後戻ったのかどうかはわかりません。
いずれにしても、熊本の例や、このコスタリカの例のように「地中に大量の水が消えていく」という現象には、地震も含めて、何らかの地質的変動が関係していると考えるのが妥当な気もします。
そういう意味で、今年になり、メキシコ、チリと続けて発生している大量の水の消失が環太平洋火山帯の活動の何かと関係があるのかどうかは気になります。
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