昨日、お知り合いの方から、「何だかすごいでかい低気圧が日本の下にあるんですが……」と知らせていただきまして、見てみると、以下のようなものでした。参考までに、関東に大きな被害を与えました台風15号の大きさを比較のために載せています。
2019年9月12日午前の上空の大気の流れの状況
台風15号に続いて日本にやってくるかもしれないメガ暴風雨
地球全体の図は以下のようになり、地球規模で見ても、そうとう巨大な低気圧だと言えます。
「あー・・・これ、台風にならないよね?」と、気象ニュースを見てみますと、以下の通りでした。
Yahoo! 気象ニュースより抜粋
Yahoo! 2019/0912
台風16号発生か
千葉県の停電など、台風15号の後遺症が続いていますが、フィリピンの東海上で台風が発生しそうです。というのは、現在の熱帯には3つの台風の卵となる雲の渦巻きがあるからです。
一番東のマーシャル諸島近海のもの(1)と、フィリピンのすぐ東海上(3)のものは、熱帯低気圧になるまで時間がかかりそうですが、真ん中のフィリピンの東海上にあるもの(2)は、すでに熱帯低気圧になっています。
気象庁では、この熱帯低気圧が24時間以内に台風になって北西進すると予報しています。
ということで、この巨大な熱帯低気圧は、台風になるようです。
24時間以内とありますが、気象庁がこれを発表したのが、9月12日午前9時ですので、9月13日までには台風になる可能性が高いようです。
もちろん、先ほどの熱帯低気圧の範囲が、そのままの大きさで台風になるわけではないでしょうけれど、少なくとも、台風15号よりは巨大な台風になりそうですね。
千葉や鎌倉など関東の一部では、いまだに電力が復旧していない地域もあるところへ、またこんな台風が、仮にでもこちらに向かってくるのは困りますね。
この熱帯低気圧が台風16号になった後、どのような進路を取るかは、現段階では何ともいいようがないですが、世界の気象機関の進路予測は以下のようになっています。
台風16号の進路予想
最も多い予測は、そのまま西の方に進み、台湾や中国のほうに向かうコースの予測ですが、関東のほうに向かう予測も若干存在します。
今後の高気圧の勢力や風の流れの変化によって、状況は変わってくるでしょうけれど、この巨大な台風が日本に向かう可能性はゼロではないということになりそうです。
今回の台風15号の被害は、台風の影響でこんなに長く電気や水道のインフラがシャットダウンしたというのは、戦後の日本では、ほぼ聞いたことがないものではないかと思っています。
台風通過直後は、それほど大きな人的被害がなかったこともあり、まさか、こんなに大きなダメージが与えられていたとは想像もつきませんでした。
9月12日現在でも、40万軒以上が停電で、全面復旧の目処は立っていないと報じられています。
また、農業被害も深刻なようで、産経新聞によれば、9月11日の時点で、千葉県の農林水産業の経済的被害額が 126億円に達したそうで、これは、千葉県での台風による農林水産被害としては過去最大だそうです(これまでの過去最大は 2017年の台風21号と22号による 46億円)。
しかも、ここには漁船や漁港関係の被害は加えられていないということで、今後、農林水産関係の被害額が大きく増加する見込みのようです。
大西洋でもまた
なお、この「暴風雨の連鎖」は、大西洋でも発生しそうで、9月の頭に、史上最強のハリケーンといわれ、アメリカで非常事態宣言が出されたハリケーン・ドリアンは、アメリカ本土へは影響を与えなかったのですが、バハマ諸島を壊滅させたことは、地球の記録などで記事にさせていただいていました。
9月11日には、バハマ諸島の中で最も被害が大きかったアバコ島という島などを中心に、「行方不明者が 2500名にのぼっている」ことが報じられました。
それは以下の記事で取りあげさせていただいています。
また、このハリケーン・ドリアンでは、バハマ諸島にあるグランドバハマ島という島の石油貯蔵施設が完全に破壊され、原油の流出が続いています。
バハマ諸島の美しい島々は、ハリケーン・ドリアンによって、短期間では回復することができないようなダメージを与えられましたが、何と、このカリブ海やフロリダ方面に、「再び強力なハリケーンが近づくかもしれない」のです。
これは、現在はまだアフリカ沖から移動している位置にあり、今後、熱帯低気圧になることが予測されています。その後、ハリケーンになるかどうかわからないのですが、少し前にドリアンのような超強力なハリケーンが生まれたあたりと同じような海域を通ってきますので、ハリケーンになる確率は高そうです。
これがまた、アメリカ海洋大気庁 (NOAA)の進路予測は無慈悲なもので、この熱帯低気圧は、今後、「ハリケーン・ドリアンと同じようなコース」を辿り、NOAA の予測とおりだと、
「またもバハマ諸島を直撃する」
のです。以下が進路予測です。
大西洋上を進む熱帯低気圧の進路予測
現時点では、この熱帯低気圧は、フロリダ州などを直撃する進路を取ると予測されているようです。
この大西洋からカリブ海にかけての小さな島々は、最近繰り返しハリケーンの被害を出していまして、今回は、バハマ諸島がドリアンの直撃を受けましたが、その前は、2017年にハリケーン・イルマでカリブ海の島々が壊滅させられました。
以下の記事などで取りあげていました。
現在発達している熱帯低気圧の予想進路は、 2017年のハリケーン・イルマとほぼ同じとなっていまして、まだハリケーンに発達していくかどうかはわからないですが、バハマ諸島を含めて、さらなる被害が出る可能性があります。
その予想コースにあるのは、以下のような国と島々で、最近のハリケーンの被害を受けているところが多いです。
ところで、ハリケーンの規模は、カテゴリーの 1から 5であらわされ、5が最大ですが、この「カテゴリー 5のハリケーン」という現象も、「 21世紀的な現象」です。
カテゴリー5のハリケーンは、2000年代になり急激に増加したのです。
以下は、1920年代からの約 100年の「カテゴリー5のハリケーン」の推移です。
10年ごとのカテゴリー5のハリケーンの発生回数
・Are Category 5 hurricanes such as Dorian the ‘new normal’?
戦後の時代に関しては、カテゴリー5のハリケーンが、2000年代に入ると共に急激に増加してきたことがわかります。
この「 21世紀タイプの自然災害」という表現は、このブログにはよく出てくる概念で、雹嵐や大規模森林火災といったものは、基本的に、「21世紀に入った途端、大幅に増加した」自然災害です。
以下の記事などで取りあげています。
カナダの前代未聞の山林火災から浮かぶ「カタストロフィック」という言葉。そして、山林火災というのは「最近新しく登場した自然災害」であることを再確認する
今年に関しましても、雹も山火事も、どちらもすごいですが、これらと同じように、カテゴリー5のハリケーンというものも、21世紀に増えたもののようです。
今後はどうかと予測しますと、台風やハリケーンの強さを決定する大きな要因のひとつが海水温度ですが、この海水温度が高い状態が続いている現況では、今後もいくらでも強大な暴風雨が発生する要素があると考えざるを得ません。
仮に、今後発生する台風16号が日本や関東を直撃したり、まだ名称がない大西洋のハリケーンの卵が、カリブ海の島々を直撃したりするような無慈悲なことは起きないとは思いますけれど、しかし、この、
「自然の無慈悲」
というキーワードも 21世紀に顕著なものであり、21世紀に入ってから、そのような事例をどれだけ見てきたことかと思います。
いずれにしましても、秋が終わる頃までは、相当不安定な気象が続きそうです。
そして、今年という括りだけではなく、来年もその次の年も、基本的には同じような気象が続いていくという可能性が比較的高いように思います。